上坂すみれ9枚目のシングルは、表題曲「POP TEAM EPIC」がTVアニメ『ポプテピピック』のOPテーマとなっている。カップリング曲「増殖罵倒少女の愚恋」では初めてのアーティストとコラボし、「ミッドナイト♡お嬢様」は自ら作詞も担当するなど、話題満載。多彩な才能を見せるアーティスト・上坂すみれの最新の姿に迫る。
キーワードはディスコミ&ライブ&ヴァンパイア!
――まずは最新シングルについて聞かせてください。前回のリリースから半年ほどですが、“今回はこんな感じでいこう”とか、方向性を決めてのスタートだったんでしょうか。
いえ、実は毎回、“シングルを作ろう会議”みたいなことはなくてですね。曲が3曲揃ったら出るみたいな、本当にそれぐらいの感じなんです。なので、結構バラバラというか、結果としていい意味でバラエティーに富んだラインナップになったと思っています。
――表題曲「POP TEAM EPIC」はTVアニメ『ポプテピピック』のOPテーマ曲ですが、あえて「(ポップ・チーム・エピック)」と読ませてるんですね。これはなぜなんですか。
最初、仮のタイトルしかついていなくて「上坂さん、考えてね」みたいに言われたんです。テーマ曲なので『ポプテピピック』の作品イメージから離れるわけにはいかないし、それでいて端的に表す言葉=タイトルはなんだろう、って。いろいろ考えているときに、マンガの表紙を見たら大きなタイトルの下に小さく「POP TEAM EPIC」と書いてあるんですよね。これで「ポプテピピック」とは読まないのに、読ませてしまってる。響きはとってもいいのに、特に何も示してないところがこの漫画の通りだな、これはこれでカッコいいなと思って。だったら「POP TEAM EPIC」をそのまま読んでしまってもいいかな、と思ってつけました。
――最初にこの曲を聴いたとき、歌詞を見たとき、どんな印象を受けましたか。
サウンドが一番の主役っていうか、響きが重視されている感じがしましたね。歌詞には意図的にカタカナがいっぱい使われていて、意味が伝わる前に音が通りすぎていくというか。ディスコミュニケーション感がすごいなぁ、って思いました。
――ボリューム感のある歌詞を追いかけても、理解が追いつかない……。
そうですね。意味を読み込むとか、この単語の印象が立つとか、そういう歌詞ではないと思うんですね。でも、音はハッキリ聞こえるので、“ハッキリ歌うけれど無表情”みたいなイメージで歌いました。ポプ子とピピ美も、口は笑っているけど目は笑っていませんし……。歌ったあとの加工も結構多かったので、私の歌い方というよりは、いろんな“重ね”とか“加工”とか、サンプリングによって魅力が膨らんだ曲かな、という感じがします。
――カップリング曲「増殖罵倒少女の愚恋」、これもインパクトのあるタイトルですね。
SCREEN modeさんに曲を書いていただくのは初めてだったんですが、表題曲とはうってかわってノリやすいというか。ライブに向いている曲だなという感じがしましたね。畑亜貴さんに歌詞を書いていただくのはすごく久しぶりだったんですけど、今回の歌詞は攻撃的な感じではあるんですが、内省的な部分も秘めているというか、言葉に力強さがあるので、そういうところを意識して録りましたね。ライブで盛り上がれる一曲になっているんじゃないかなと思います。
――そして「ミッドナイト♡お嬢様」。これは上坂さんの作詞ですね。ちょっとエロ可愛いストーリー仕立てになっています。
先に曲があって、そこから詞を書いたんですが、イントロに館の扉が開くみたいな音が入っていたんです。夜っぽい印象の曲だったので、館に棲んでいるヴァンパイアをイメージしたら合うかな、と思いました。ちょっと可愛い、こんなヴァンパイアがいたら楽しいかな、と思いながら書きました。キャラソンっぽい感じもして、私はキャラソンにセリフが入っているのがすごく好きなので、セリフも入れてみました。
――セリフも歌詞も可愛いです! 歌い方とか、ちょっと意識して変えてみたりしたんですか。
詞の感じとか、愉快でごきげんな雰囲気は、それに合わせてちょっと可愛さが出るといいな、とは思いましたけれど、あまり強く意識してこういう風に歌おう、というのはなかったですね。あくまで曲の雰囲気に合わせて、という感じでした。
――この9th Single『POP TEAM EPIC』を、ファンのみなさんに勧めていただくと?
最近はシングルを3か月ごとぐらいに出していて、いろいろな曲があるのですが、今回はとくにバラエティに富んだ3曲で、それぞれ楽しめると思うので、「POP TEAM EPIC」のPVとも合わせて、ぜひ聴いてみてください。
――いつもPVは凝られていますよね。今回の見どころを教えてください。
ジャケットに近い雰囲気で撮ることが多いんですが、今回はジャケットとも全然違っていて、「私」=上坂すみれのイメージが強く出ている感じですね。廃工場が舞台で、衣装は「白雪姫」っぽいものと、セーラー服の二種類です。サビの部分では振り付けもあります。絵面的には暗めですが、ちょっとシュールで、キャッチーで、カッコいい映像に仕上がっていると思います。
声優・上坂すみれ、ハシゴを外される……
――『ポプテピピック』の声優としてのお話も聞かせてください。3話のAパートにてピピ美役を演じられましたが、原作との出会いはいつだったんでしょうか?
最初のきっかけはスタンプですね。すごく流行っていて。で、「原作のマンガがすごい!」って話が聞こえてきたので、読んでみたんです。最初は謎のマンガだなっていう感じでした。キャラ設定が全然ないし、口調とかも毎回変わるし。
――キャラ設定が「短いほう」と「長いほう」しかないって、おかしいですよね?
そうなんですよ。でも、だからなんとでも作れるというところがすごいな、自由だな、と思えてきて。キャラクターのセリフというより“作者の声”みたいな。代弁者みたいな感じなのかな。常識をくつがえす、すごく破壊的なところもあって、何かに対するアンチテーゼのようなものも感じました。思い詰めてしまったときなどに読むと、とてもよいのではないかと思います。
――思い詰めたとき、ですか……?
なんというか、視野が広がりますよね。大爆笑っていう感じではなくて、でもずっとニヤニヤできる。パロディーネタとかがいきなり出てきて、いきなりすごいことを言う。いつも攻めてる感じがするんですよね。「こういうマンガが世の中にあるなら、私ももうちょっと頑張れるかな」って思えるのではないかと。
――そんな視野が広がる作品(!?)のヒロイン・ピピ美役を演じてみていかがでしたか。スタッフとはどんなやりとりがあったのでしょうか。
アフレコの前にディレクターやプロデューサーがブースに来てくださったんです。で、「えーっと、何も考えてません」とか、「なので、ディレクションはありません」みたいな話をされたんです。本当に「何もない」ということだけを伝えたかったらしく……大丈夫かな、と…。キャラクターを演じるというよりは、台本のあるラジオ、みたいな。ポプ子役の小松未可子さんと「どうしよう、どうしよう……」って。ふたりの掛け合いが多いから「何も考えないほうがいいかもしれない」「そうだね、考えるだけ無駄だよね」ということにだんだんなっていき、そのうち小松さんが持っていた“カニの爪ボールペン”で遊んでいました。見た目がカニの足ソックリで、カシャって握ると爪が動いてはさめる、でもボールペン、というモノです。
――すみません、アフレコ中に“遊んで”いた状況が見えません……。
ディレクションはないと言いつつも、リテイクはあったんです。「ここはもうちょっとキレ気味でお願いします」とか。監督たちは、私たちがどう演じるのか最初はまかせてみようと思われたみたいで、作品イメージが全然ないわけじゃなかったんですよね。それは、この場を借りてお伝えしておいたほうがいいと思います。
――大人たちが有意義な話し合いをしている間、ふたりは“カニの爪ボールペン”で遊びながら待っていたと……。
そうです。すごく不安なんですよ、そういうときって。ガラスの向こうの副調整室の声はこちらには聞こえないので、監督たちにどんなこと言われてるんだろう、とか思うんです。でもこの作品は、緊張したからってうまくできるものではない気がしたので、リラックスするしかないなと。とにかく不思議なアフレコでしたね。
――不安も抱えて頑張ったのに、3話のAパートだけだったんですよね?
そうなんです! ふつう、キャラクターは何話か演ってみて、やっとつかめていくものだと思うんです。1回目はまだ全然固まってないのに、それっきり……。
――公式サイトには放送前からキャストとしてクレジットされていますよね。あたかも「長いほう」はずっと上坂さん、みたいな印象でした。違ったんですね。
せめて1話に出ていたらまだいいんですけど、私たちふたりとも出てないんですから。本放送を観た人は「小松と上坂は不祥事を起こしたのか!?」「それでサシカエになったんじゃないか!?」とか、思っているかもしれないじゃないですか。まさか、私自身がキングレコードにハシゴを外されるとは、思ってもみませんでした。
――1回しか演じていないのに恐縮ですが、ピピ美役として、ファンのみなさんにアニメ『ポプテピピック』をアピールしていただけますか。
なんですかね……人をだますのはよくないと思います。でも映像的には素晴らしいものになっていますし、実験的なこともたくさんやっていて、とても情熱がこもった作品だと思います。いろんなパロディとか、アニメだからって守りに入らない『ポプテピピック』の攻める姿勢を、みなさんに最後まで観ていただきたいですし、みなさんが観てくださって長く続けば、私ももう1回できるかもしれないので……どうかお願いします。
(温)泉の精・ピピ美と、正直者(?)・ポプ子による「温泉イラスト」は、2018年2月10日(土)発売予定の『アニメディア3月号』にも掲載される。本誌だけに掲載される、上坂さんのピピ美役裏話も必見なので、ぜひチェックしてほしい。
◆プロフィール
上坂すみれ【うえさか・すみれ】 12月19日生まれ。神奈川県出身。スペースクラフト・エンタテインメント所属。2013年にシングル『七つの海よりキミの海』でアーティストデビュー。9th single『POP TEAM EPIC』収録の「ミッドナイト♡お嬢様」は、「踊れ!きゅーきょく哲学」に続き作詞も担当。声優としては、表題曲「POP TEAM EPIC」がOPテーマのTVアニメ『ポプテピピック』や『キリングバイツ』(稲葉初役)などに出演。
<リリース情報>
シングル『POP TEAM EPIC』
キングレコードより1月31日発売
期間限定アニメ盤・通常盤:1,404円
初回限定盤:1,944円
<TVアニメ『ポプテピピック』情報>
■TOKYO MX1・BS11:毎週(⼟)深夜 1:00~
■AT-X:毎週(⽉)22:30~ ※リピート放送:毎週(⽔)14:30~/毎週(⼟)6:30~
■とちぎテレビ:毎週(⽔)23:00~
■中国放送:毎週(⽔)深夜 1:25~
◆スタッフ
原作:大川ぶくぶ(竹書房「まんがライフ WIN」)
企画・プロデュース:須藤孝太郎
シリーズ構成:青木純(スペースネコカンパニー)
コンセプトデザインワークス:梅木葵
音響監督:鐘江徹
音響効果:小山恭正
音響制作:グロービジョン
音楽:吟(BUSTED ROSE)
音楽制作:キングレコード
シリーズディレクター:青木純(スペースネコカンパニー)、梅木葵
アニメーション制作:神風動画
製作:キングレコード
◆キャスト
ポプ⼦:三ツ矢雄二、江原正士、悠木碧、古川登志夫、小松未可子、中尾隆聖、日笠陽子、玄田哲章 ピピ美:日髙のり子、大塚芳忠、竹達彩奈、千葉繁、上坂すみれ、若本規夫、佐藤聡美、神谷明
他
<連載サイト> 竹書房の4コマウェブコミック配信サイト「まんがライフ WIN」にて連載中!
http://mangalifewin.takeshobo.co.jp/rensai/popute/
公式 HP
hoshiiro.jp
公式 Twitter
hoshiiro_anime
(c)大川ぶくぶ/竹書房・キングレコード