十善戒

仏さまの心を見つめよう

日々の暮らしの中で、心がけたい10の項目があります。それが十善戒です。そしてそれは

  

身(しん) 身体の行い 不殺生 不偸盗 不邪婬
口(く) 言葉の行い 不妄語 不綺語 不悪口 不両舌
意(い) 心の行い  不慳貪 不瞋恚 不邪見

に分けられます。この身口意(しんくい)の実践行である十善戒を心がけて生活することで、みなさんの「生きる力」が湧いてくるのです。次の十善戒絵解き図では、実際に心がけるべき内容が示されています。

十善戒絵解き図

下の画像の各部分をクリックすると、拡大画像と解説をご覧になれます。

十善戒絵解き図
  • 殺生
    殺生

    殺生とは「生きものを殺す」ことで、仏教の中でも最も重い罪です。
    図には、刃物を持って人を殺そうとする鬼が描かれます。人を殺すなんて…、とは誰もが思うこと。しかし、日々悲惨な事件が報道されています。
    殺生に対する仏さまの教えは「不殺生=むやみに生きものを傷つけない」。この教えは、ただ生きものを殺さないというだけでなく、その生命をより良く生かしていこうと教えます。一方で私たちは日々、多くの生きものの命を戴かなければ生きていけぬ存在です。その事実をしっかり見つめ、日々「あらゆる生命を尊重しよう」という気持ちで生活します。

  • 偸盗
    偸盗

    偸盗とは「与えられていないものを奪う」こと。
    図には、お金を盗もうとしている子どもの鬼、成長して本屋で本を盗む鬼、大人になってとうとう泥棒となってしまった鬼が描かれます。
    大量生産、大量消費の現代―、新しいものが満ちあふれる毎日。あれも欲しい、これも欲しい、流行に乗り遅れたら大変だ、と私たちの欲望を刺激します。その刺激はやがて自分のものと他人のものの区別まで見失わせるのかもしれません。
    そんな迷いに駆られたとき、清らかな自分本来の心を見つめなおしてみましょう。偸盗に対する仏さまの教えは「不偸盗=盗まない」。日々「他人のものを尊重しよう」という気持ちで生活します。

  • 邪婬
    邪婬

    邪婬とは「男女の道を乱す」こと。
    図には、幸せそうな男女の仲を裂こうとする鬼が描かれます。
    売春、買春、援助交際に出会い系サイト…、もろもろの欲望はさまざまで、蜜のように甘く、種々さまざまなかたちで私たちの心を惑わします。しかし、相手への気づかいや思いやりのない関係は必ず不幸へと結びつきます。
    邪婬に対する仏さまの教えは「不邪婬=男女の道を乱さない」。日々「お互いを尊重しあおう」と心がけて生活します。

  • 妄語
    妄語

    妄語とは「嘘をつく」こと。
    図には、腹の中で相手を馬鹿にし、蛇になった舌で嘘をつく鬼が描かれます。
    今、世の中の色々なところで嘘、偽りがはびこっていると思いませんか? 騙されるほうが悪いの?バレなければ関係ないの? しかし、清らかなあなた本来の心は知っています、あなたが嘘をついていることを…。
    妄語に対する仏さまの教えは「不妄語=嘘をつかない」。日々「正直に話そう」と心がけて生活します。

  • 綺語
    綺語

    綺語とは「意味のない無益なおしゃべり」のこと。
    図には、口先だけの調子いいことばでおしゃべりに熱中する鬼たちが描かれます。
    ゴシップ、うわさ話は楽しいですねぇ。でもその話って本当のことなの? それは話す意味があるんですか? ひょっとしたらあなた自身が周りの人からうわさされているかもしれませんよ…。
    綺語に対する仏さまの教えは「不綺語=無意味なおしゃべりをしない」。日々「よく考えて話をしよう」と心がけて生活します。

  • 悪口
    悪口

    悪口とは「汚いことば」のこと。
    図には、斧となった乱暴なことばで罵る鬼が描かれます。
    日本語はとても美しいことばです。その美しいことばも今や-。「ムカツクぜ」「てめぇ~、ざけんなよぉ」…。
    悪口に対する仏さまの教えは「不悪口=粗暴なことばを使わない」。日々「優しいことばを話そう」と心がけて生活します。

  • 両舌
    両舌

    両舌とは「他人の仲を裂くことば」のこと。
    図には、仲の良い二人を裂こうと耳元でそれぞれの悪口を囁いている鬼が描かれます。
    妬みや嫉妬から? 自分が仲間になれないから? なぜ二人の仲を裂きたいのだろう…? そんな気持ちが湧いてくる自分自身の心の奥を覗いてみましょう。理由は分かりましたか? 清らかな心に雲はかかっていませんでしたか?
    両舌に対する仏さまの教えは「不両舌=中傷しない」。日々「おもいやりのあることばを話そう」と心がけて生活します。

  • 慳貪
    慳貪

    慳貪とは「むさぼり」のこと。
    図には、「誰にもやるものか」と金品、ご馳走を抱え込んでいる鬼が描かれます。
    物質文明に生きる私たちは、私たちの生活を便利に、快適にしてくれるモノによって豊かさを享受しています。でも、その行きつく先はどのような社会なのでしょう? モノが溢れ、モノに執着し、そのモノ無しには生きていけない…。「お金さえあれば幸せに暮らせる」と多くの人が勘違いしている日本で、今何が求められているのでしょう…?
    慳貪に対する仏さまの教えは「不慳貪=ものに執着しない」。日々「惜しみなく施しをしよう」という気持ちで生活します。

  • 瞋恚
    瞋恚

    瞋恚とは「怒り」のこと。
    図には、髪を逆立て、モノを投げつけ怒鳴り散らす鬼が描かれます。周りの人々は困り果てていますが、この鬼にとって悪いのはいつも相手なのです。
    ムカツイたり、キレたり、暴力をふるったり…。でも、その怒りはどこからくるのでしょう? 悪いのは本当に相手だけなのでしょうか?
    瞋恚に対する仏さまの教えは「不瞋恚=怒らない」。日々「にこやかに暮らそう」と心がけて生活します。

  • 邪見
    邪見

    邪見とは「まちがったものの見方」のこと。
    図には、椅子にふんぞり返り偉そうに指図する鬼が描かれます。自分中心にしか物事を考えられない鬼は、常に自分は偉く正しいけれど、「周りの奴は馬鹿だ」と思っています。そして悪いことに、恨みは人一倍です。
    皆さんの周りにも1人や2人、こんな人がいませんか? というか…、ひょっとしたら、あなた自身がこんな鬼になっていませんか?
    邪見に対する仏さまの教えは「不邪見=まちがった考え方をしない」。日々「正しく判断しよう」と心がけて生活します。

  • 金色の阿字
    金色の阿字

    梵字で書かれた「阿字」は大日如来という仏さまを、阿字の下の「蓮華」は慈しみの心を、阿字と蓮華を包み込む「月輪」は智慧を象徴し、まさに大日如来の慈悲と智慧が世界の中心で光り輝き、世界の隅々まで照らしていることを表しています。それはまた、私たち自身の心そのものも表し、私たちの心が仏さまと同じく、満月のように清らかで穢れなく輝いていることも表しています。
    今、あなたの心は満月のように輝いていますか? 雲に覆われて、満月の輝きが鈍っていませんか?

  • 阿字を覆う三毒
    阿字を覆う三毒

    私たちの愚かな行いは、「三毒」という、私たちの「貪(とん)」(むさぼり)、「瞋(じん)」(いかり)、「癡(ち)」(おろかさ)の煩悩によって起こります。
    ここに描かれた三匹の鬼はその三毒を表し、その三毒が、本来清浄である私たちの阿字の輝きを覆い隠し、欲望のままに「身(からだ)」と「口(ことば)」と「意(こころ)」から「十悪」の鬼を生み出していくのです。

  • 閻魔大王
    閻魔大王

    「殺生」「偸盗」「邪婬」「妄語」「綺語」「悪口」「両舌」「慳貪」「瞋恚」「邪見」の十悪を犯した人々が落ちる恐ろしき地獄の世界。
    火炎の頂上で閻魔大王が私たちの行いに裁きを加えます。自由気ままに生きてきた報いが今…、火の海、血の池、針の山で亡者たちが永い永い責め苦を受けています。この時、犯してきた様々な罪をどんなに悔やんでも後の祭り…。今一度、日々の生活を振り返りましょう。

  • 金剛鉤菩薩
    金剛鉤菩薩

    鉤(ものを引っ掛ける金具)で、私たちを悟りの世界へ引き寄せてくれます。

  • 金剛索菩薩
    金剛索菩薩

    索(縄)で、私たちを悟りの世界へ導いてくれます。

  • 金剛鎖菩薩
    金剛鎖菩薩

    鎖で、悟りの世界へ導いた私たちを守ってくれます。

  • 金剛鈴菩薩
    金剛鈴菩薩

    鈴を鳴らして、私たちが悟りの世界へ導かれたことを喜んでいます。

  • 地獄図
    地獄図

    「殺生」「偸盗」「邪婬」「妄語」「綺語」「悪口」「両舌」「慳貪」「瞋恚」「邪見」の十悪を犯した人々が落ちる恐ろしき地獄の世界。
    火炎の頂上で閻魔大王が私たちの行いに裁きを加えます。自由気ままに生きてきた報いが今…、火の海、血の池、針の山で亡者たちが永い永い責め苦を受けています。この時、犯してきた様々な罪をどんなに悔やんでも後の祭り…。今一度、日々の生活を振り返りましょう。

  • 極楽図
    極楽図

    十善戒の実践で目指すべき世界。美しい極楽の世界です。それはまた、とても晴やかで清々しい心の状態でもあります。