第2話 価値を伝える

<これまでのあらすじ>
第1話 ウォールストリートから八日市へ


リーマンショックの煽りを受け、30年来の取引先であった一流メーカーからの仕事を失ったラブリー。

北川社長は藁をも掴む思いで、ネット直販に活路を見いだそうとします。当時は“ E C サイトといえば楽天”の時代。そこでさっそく相談してみたところ、

幸いにも担当者が熱心に相談に応じてくれ、同社は 50年前の創業以来初めて「自社ブランド商品のネット販売」を開始、自ら市場と向き合うことになったのです。



(最寄り駅の八日市駅 予想してたより立派な駅舎)

とはいえ、
長らく有名メーカーのパジャマを作ってきたと言っても、ラブリーの社名など誰も知りません。せっかく作った販売サイトも、楽天市場の膨大な数のテナントの中に埋没してしまいます。

そこで、楽天から提供される様々な広告手法を利用することになるわけですが・・・それには相応の費用もかかります。


「確かにお金はかかります。でも、まずはサイトを訪問してもらわないと始まらない。数十万円の売上げしかない段階で、数十万円を使ってバナー広告を出したりメルマガを打ったりしました」 (北川社長)

↑ 楽天は出店料よりこっちのほうが、よっぽど儲かってそう。(ちきりん心の声)


それにしても、これじゃあ売上げが全然足りません。30人の従業員がいれば、最低でも月商 1000万円は必要のはず。

その 10分の 1も売上げない段階で、多額の資金をネット広告に投じるのは勇気が要ったでしょう。


「うちはネット通販業者としてゼロから起業したわけではなく、その時点で既に 30人の社員を抱えていました。

だから一枚でも注文が欲しかったし、なにをやってでも短期間で軌道に乗せる必要があったんです。一年やってダメなら撤退する覚悟で、できることは何でもやろうと」 (同)

・・・まさに背水の陣。



そんな努力の甲斐もあり、楽天市場での売上げは少しずつ上向き、1年後には「まだまだ十分ではないけれど、伸び率を見る限り、いけるかもしれないと思えるレベル」に達します。

さらにその後、同社の商品は高い評価を獲得、なんとパジャマランキングでトップを取るような商品が出始めるのです。


「世の中に 2000円、3000円のパジャマが溢れている中、1万円もするパジャマがランキングトップに躍り出るなんて驚きました。

しかも 3年後には、自社企画パジャマの直販だけで事業が成り立つところまで注文が増えてきたんです」 (同)


ただし間違えないように。同社が成功したのは、「広告をバンバン打って、認知度を上げたから」ではありません。

そうではなく、「市場が評価する価値を提供していたから」+「その価値を、商品、サイト、広告を通じて、顧客に伝えることに成功したから」ですよね。

市場に価値が提供できていない供給者がどんだけ多量の広告を打っても、商品が売れ始めるなんてことはありません。



では、同社商品のどんな価値を、市場は評価したのでしょう?


ひとつは、「圧倒的な素材(生地)の質」です。

昔から高級品を作っていたラブリーですが、直販商品となれば中間マージンがかからないため、今まで以上に素材にお金を掛けることが可能になります。圧倒的に「気持ちいい!」生地が使えるのです。


けれど問題は、「顧客が素材の質を理解し、相応の対価を払ってくれるのか?」ということです。

「これまで 1万円以上の価格で売れていたのも、高級ブランドのタグがあったからです。

それがなくなり、素材の質だけで消費者にその価値を理解してもらえるのか、その価値に、相応のプレミアム料金を払ってもらえるのか、半信半疑でした」 (同)


ところがフタを開けてみると、アラびっくり!

消費者はその質を理解し、7000円、8000円、時には、1万円、1万5千円という価格を受け入れるのです。

しかも、プレゼント用に買ってから自分用に買い直す人、冬用を買ってから春用も買い足す人など、リピート注文も続々と入ります。

パジャマを買った人に商品を送るとき、別のパジャマの生地をサンプルとして一緒に送るだけで、次はそのパジャマの注文が来るというのだからびっくりです!(←あたしもこの作戦にひっかかってリピート購入しました・・)



でもね・・・なんか、話がうますぎませんかね?


デフレのど真ん中ですよ?
リーマンショックの後ですよ? 
身近なお店には 2000円のパジャマが溢れてるんですよ?


なんで 1万円もするパジャマが(しかもノーブランドなのに?)、順調に売れ始めたのでしょう?


そこには・・・


「市場の選択」における偶然の大幸運があったのです!



「市場の選択」って?

あっ、この本に出てきた、婚活市場で 200連敗したイケメン男性の話ですね?
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そうです。でも、市場の選択に失敗したイケメン男性とは逆に、ラブリーは偶然にも「自社にベストフィットした市場の選択」をしていたのです。


「それだけじゃわかんないよ。もっと具体的に説明してくれ!」 って?


もちろん説明しますよ。・・・・次回のエントリで!


そんじゃーねー

<関連サイト>

→ 初コラボ 真夏用レディース ちきりんパジャマが新発売!

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→ 真冬用 信じられない肌触りのオーガニックコットンパジャマ


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