AirBnBで借りた広尾のアパート
AirBnBは世界中で違法か黒々としたグレー、と書いたが、その後、ではこれからどうすべきなのか、ということを考えてみた。
結論から言うと、「正しい貸し手が正しい物件を正当に貸すことを合法にすべき」だと思う。つまり、違法行為は明確にし、それ以外は合法的に貸し出しができるように法律の方を変えるべきだ、と思うのでした。
何に違反しているのか
違反しがちな法律は下記のようなものになる。
- 賃貸契約違反(オーナーに許可を取らない「又貸し」は日米とも大罪。自分が住んだまま同居人を住ませるのも許可なしはダメ。借り手が異常に保護されていた昔の日本の法律の元では、借り手を追い出す方法は「秘密の又貸し摘発」以外にほぼ無かったくらい。)
- ホテル税違反(賃貸収入を所得として申告するのは当然のことながら、プラス、ホテル税を払わないといけない。AirBnB経由の賃貸は、サンフランシスコで年間1270万ドルとされるが、だとしたらサンフランシスコのホテル税(Transient Occupancy Tax)14%、トータル180万ドルが発生しているはず)
- ホテル営業にかかる各種法規違反(消防法で一般住宅より厳しい設備が必要な場合もあるし、借り手に保険をかけることが義務づけられているケースもある)
- ゾーニング違反(宅地でホテル(商用施設)を営業してはダメ)
また、
- 賃貸物件で借り手を守る法律に違反
というのもある。多くの都市/国で、借り手は法律で守られており、賃料の上げ率の上限が法律で定められていることもある。そのせいで、一旦貸したらどんなにひどい借り手でも中々追い出せない、という困った事態も発生する。AirBnB先進都市、サンフランシスコでは、アパート丸ごと借り手を追い出して面倒な借り手をシャットアウト、かわりに法律で守られていない都合のいい短期滞在相手にAirBnBで貸し出すケースもある。Ellis Actというカリフォルニアの法律があって、賃貸業を辞めてアパートを他の用途に変える場合は追い出しOKなので、これを悪用しているのであった。(AirBnBは商用レンタルで、居住用アパートじゃない、という論理)。
(しかし、この逆で、AirBnBでうっかり1ヵ月以上連続して貸し出すと、住宅の借り手としての強い権利が発生し、そうそうのことでは追い出せなくなってしまう、という危険もあるのだが。)
AirBnBのメリット
えー、真っ黒ジャーン、と思うかもしれないが、メリットを考えてみると、結構革命的だったりする。
「これまで固定化していた資産を流動化し、経済を活性化する」
というのがそれ。経済的アウトプットというのは、経済活動に投入される土地+労働力+資本+[目に見えないいろいろなもの]で決まる。今まで無駄に遊んでいた住宅を賃貸に回せる、ということは、「土地、労働力、資本」といった、限りある資産を新たに費やすこと無く経済が発展するという夢のような仕組みである。つまり、[目に見えないいろいろなもの]としてショートターム賃貸のマーケットプレースという[知恵]を投入したことで経済が拡大する。わーすごーい。
もちろん、「代わりに従来のホテルの売り上げが減る分のアウトプット減少するのはどうするの」という問題はある。しかし、ここは、Craigslistの発展によりアメリカの新聞業界が縮小したのと同じ。Craigslistがカバーする領域は従来の新聞が提供して来たClassified広告だけではなく、さらに大きく広がったものでもあり、従来流動化していなかった様々な労働力や知恵や出会いwが流通するようになったことで社会のあり方が地味ながらも大きく変わった。(Craigslistで出会ったアメリカ市民と結婚することでビザを獲得して働いている日本人の知人がいるが、彼も、新聞の出会い欄で見つけた相手に電話することはきっとなかったことでしょう。アメリカ的には、これによりきちんと経済活動をしてGDPが増え、かつ税金を納める人も一人増えたことに。)
しかも、AirBnBで嫌な思いをした、と言う人は、極めて少ない。なんといっても、これまでの利用者は、それなりにインターネットサービスのアーリーアダプターなので、問題があれば皆ソーシャルメディアでブーブー言うはず。それが極めて限られる、ということは、本当に問題が極めて限られるのでありましょう。(起こった問題に付いては、前回のエントリーを参照願います。)
法律は人間のためのものなので状況が変わったら法律も変えよう
さて、そもそも、法律は何のためにあるのかといって、それは人間がよりよく生きられるためでございます。現在の法律は、アパートにしろホテルにしろ、借り手が貸し手に比べて著しく当該物件の情報に疎く、かつ経済的にも弱者である、という前提に基づいてできている。一方で、AirBnB的な世界では、借り手と貸し手は相互に評価し合う対等な関係であり、しかもその評価内容はオンラインで誰でも見ることができる。また、貸し手も、自分の家を貸す以上、変な人には貸したくないわけで、実際見ていても、貸し手と借り手は同じような経済力や常識をシェアする人同士になるケースが多い。(ある程度のレンジはあるにしても)。なので、「近所の人が嫌がるような変な人」が泊まりにくる確率は低いはず。(だし、そういう人はレピュテーションが低くなるので自然に淘汰されると思われる。)
ということで、「貸し手、借り手の評判がオンラインで赤裸々に開示される」という現代の新たなイノベーションをベースとした新たなルールが作り出されてしかるべきだろう、と私は思うのでした。
落としどころとして思いつくことをあげてみると
- 所有する不動産のうち、貸し手が実際に住んでいるところと別荘一軒までは割と簡単なルールの元に貸せるが、それを超した場合はより厳しいルール(よりホテル的な設備整備、監査官による設備の検査など)が適用される
- ホテル税よりは安いある程度の税金を課し、それを財源に行政が物件のチェックを行う
- または、AirBnB自身が、その収益内で貸し手の物件のチェックを行う(そしてそれを行政がチェックする)
- 賃貸物件をオーナーの許可無く貸し出すのは違法にする
といったことがあるかと思います。
多分、「AirBnB、使ったこと無いけど嫌だ」という反発が多いと思われるので、「同じ地域内で、AirBnBで貸している物件と、そうでない物件の犯罪・問題発生率」といったデータを調査して、安全性を検証するといったことは必要になるでしょう。
あと、そういえば、East Palo AltoにIKEAが計画された時、East Palo Altoの人たちは、「交通渋滞が」「近隣環境が」と反対したが、IKEAがバスツアーを企画、反対派住民を、既にできていたIKEAに招待したところ、参加者は皆「あら素敵」「アレ欲しい」てなことになり、これならできてもOK、むしろ近くにあったらうれしいという賛成派に鞍替えしたという出来事があったが、そういう感じで、AirBnB利用が一気に伸びること自体が法律改正を後押しするかも。(サンフランシスコは実際そういう感じになっている)。
おまけ:AirBnBの代表的な競合
なお、上記、まるでAirBnBが一社で短期レンタルのマーケットプレースを運営しているかのように書いているが、本当はそれ以外にもいろいろあります。
Roomorama ヨーロッパとアジアに強い
HomeAway バケーションレンタル(別荘を数週間〜数ヶ月貸し出す)の老舗。公開済み。市場価値約30億ドル。
VRBO 競合のHomeAwayに2007年に買収されたバケーションレンタル。アメリカに強い。
FlipKey 旅行サイトNo.1のTripAdvisorが運営。
上記の議論は、こういうの全てひっくるめての「ショートターム賃貸」に関するもの。なお、AirBnBのイノベーションは、家丸ごとでなく、「居間のカウチ」「家の中の一部屋」から貸せるというところでございました。この市場も競合が雨後の筍のように発生しましたが。
+++PR+++
VRBOはvacation rental by ownerの頭文字
<アーリーアダプター>
英語で調べたがわからず。
定義を添えずに特殊用語を使ってはいけません。
ましてや辞書にもweblioにもエイジロウにも無いなんてのは初めてです。
いいねいいね
「アーリーアダプター」と日本語でGOOGLE検索すればたくさん出てきます。英語で調べたい場合はearly adopterでございます。
いいねいいね