"聖書アプリに誓います"『ステイ・フレンズ』


 ミラ・クニス版『抱きたいカンケイ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110428/1303909730)?


 LAで働くアート・ディレクターのディランと、NYでヘッドハンティングをするジェイミーは、それぞれ恋人に振られたばかり。ある日、ジェイミーがディランをNYの会社にスカウトすることになり、恋愛に痛手を抱える二人は意気投合して友情を深めて行く。やがて、割り切った関係と申し合わせてセックス・フレンドになることにした二人。だが、互いの家族に会う内に微妙な感情が生まれてきて……。


 『ブラック・スワン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110512/1305173515)のライバルことミラ・クニスが、何を思ったか『抱きたいカンケイ』そっくりのセックスフレンドもの映画に出演ということで、ここでもまたナタリー・ポートマンとの対決再びか!?と興味本位で鑑賞。……とかなんとかいいながら、ラブコメとかロマコメとか、実は好きだ。


 情報量がすごい! 会話のテンポも、セリフ回しも、矢継ぎ早ながら無駄がない。何気ない会話のシーンも全て伏線と関係の変化の描写に費やされている。ランタイム109分で、この手のジャンルとしては気持ち長い目かと思ったが、単に主役二人のカッコ良さ、可愛さを撮ったシーンも含めて無駄がない。


 ミラ・ク○ニスからフ○ラ・クニスへ……と、まあ最初はそんなイメージだったが、段々と表情の豊かさや演技にハマっていったね〜。『ブラック・スワン』でイメージを固定してしまうのはもったいない! ジャスティン・ティンバーレイクも『ソーシャル・ネットワーク』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101030/1288442495)の時と同様、軽さとビジネスライクなシビアさを併せ持つキャラなんだが、今回はベクトルを変えて好青年的な味も出して来た。
 同僚のウディ・ハレルソンも目立ちすぎず、しかし決め所は抑えていい味を出している。ここらあたりのサブキャラが出しゃばりすぎないバランスが絶妙。家族のキャラもいいし、マジック披露で出落ちキャラかと思わせた甥っ子ちゃんもいいポジション。


 特に目立った「イベント」が起きないところも良い。家族が死ぬとか、ライバル出現とか、どっちかが結婚を強いられるやら、一切なしで二人の関係だけできっちり語る。だから不思議と「シーン」として印象に残るところは少ない(フラッシュモブは最高だよ!)のだが、自然と自分の日常に重ね合わせて染み込んで来る。恋愛とは、あくまでお互いがそれぞれを、そして自分を認め合えるかどうか、という本当に大元のところを描いているのだ。
 主人公二人の個性がそれぞれ「薄情」と「情緒不安定」と語られるのだが、それらは当初二人が付き合ってた相手から言われたのみで、他は特に誰からも言われることがない。それなのに自分だけ「その通りだオレは薄情だ」「私、情緒不安定なの」と連呼し続ける。お互いでさえもそうではないとわかっているのに、自分のことだけはわからない。自意識が邪魔をして本当の自分を出せない。一時とは言え特別だった相手にそういうことを言われて真に受けてしまう、逆に意固地になってしまう、そういうことってあるよねえ。
 二人のそれぞれ異性の片親のいない家族像が対比になっていて、そこもまた引っかかりの一因になっているのだが、その親との関係に抱えた問題すら、それぞれの親と対話することで解消される。


 甘いだけの話でなく、それでも恋愛の楽しさと人と通じ合うことの喜びを描いた秀作。すっごい真面目な映画だったよ。


 ところで映画の内容はさておき、観ながら個人的なことをずっと考えていた。要するにさる女性のことを、あれこれ考えていた。一緒に観たかったな、とか、結構気が合うと思うんだけど付き合ったらこんな風になれるかな、とか、今でもいい友達のつもりだけど気持ちがすれ違ったりしてないかな、とか。そんなこんなを考えていたら、エンドロールでは自然に体育座りになってしまい、家に帰ったら無意識に?聖書アプリをダウンロードしていた! 影響され過ぎだろ!


 ちなみに映画で使われていたのはこれ(http://www.take-an-oath.com/)らしい。聖書アプリで探してて見つからなかったのだが、実は録音アプリだった。触って誓いの言葉を録音するというイヤな仕様である。こちらの記事(http://d.hatena.ne.jp/susahadeth52623/20111013/1318505916)では小覇王氏に悪用するのではという疑惑をかけられたが、そんなことはいたしません! 結局、見せびらかしてネタにしただけであった。でもこれから何か誓いますかね、フフフフフ。まあ色々ありましたけど、ありがとうありがとう『ステイ・フレンズ』!