ビッグコミック創刊物語

ビッグコミック創刊物語 (祥伝社黄金文庫)

ビッグコミック創刊物語 (祥伝社黄金文庫)

まだ、漫画が子どものものだと思われていた60年代後半、青年コミックというジャンルを開拓した「ビッグコミック」とその創刊に携わった人たちの奮闘を描くノンフィクション。
ビッグコミックを創刊した伝説の編集長、小西湧之助は、漫画雑誌を作ろうとは思っていなかった。大人が読むに耐えうる文芸誌をつくろうと考えていた。だから漫画家とは呼ばず作家と呼んだし、掲載作も作品と呼んだ。
でもまだ漫画の地位が低かった時代、小学館でも青年コミック誌に人材をまわそうという空気は薄く、かつては行き場のない編集者が集まる“吹き溜まり”と社内で揶揄された。小西湧之助は吹き溜まりを水の澱んだ沼になぞらえ、自分たちを泥底に棲む夜行性の小ナマズにたとえ、“でも、いつか世の中を揺り動かす大ナマズになってやる”と誓った。ビッグコミックのシンボルマークのナマズは、そういう意味が込められている。
創刊号は、手塚治虫、石森章太郎、さいとう・たかを、水木しげる、白土三平と文字通りビッグな五人の作品で誌面構成され、革新的な雑誌となった。その後、青年コミック業界の中心となって、オリジナル・スピリッツ・スペリオールと兄弟誌を増やし成長していったのはご存知の通りだ。
それらの経緯や、「ゴルゴ13」の誕生の秘密、なぜ「ビッグコミック」には長期連載が多いのかなどの「偉大なるマンネリズム」の理由など、この本には詳しく書かれている。コミック好きなら要チェックタイトルだろう。