ニュース

水素カローラは、15%トルクアップと給水素時間40%短縮のアップデートでオートポリス参戦 地熱発電のグリーン水素など使用

オートポリスを練習走行する水素カローラ

約2か月でトルクアップなど水素カローラをアップデート

 トヨタ自動車はカーボンニュートラル社会実現に向けて開発中の水素エンジンを搭載したカローラ(以下、水素カローラ)を、スーパー耐久第4戦オートポリスにルーキーレーシングから「32号車 ORC ROOKIE Corolla H2 concept」として参戦すると発表した。水素カローラは5月21日の富士24時間レースに参戦、7月31日~8月1日に行なわれる第4戦オートポリスでは5時間レースに参戦することになる。

 エントリーリストに記されたドライバーは、井口卓人選手、佐々木雅弘選手、モリゾウ選手、松井孝充選手。モリゾウ選手は、トヨタ自動車 代表取締役社長であり、ルーキーレーシング代表でもある豊田章男氏のドライバーネームで、富士24時間レースに引き続き社長自ら水素タンクを背負って走る。

 トヨタは、5月の富士24時間レースからの2か月間で水素カローラをアップデート。主なアップデート内容として発表されているのは、「エンジン内での水素の異常燃焼を抑えつつ、性能を向上(約15%トルクアップ)」「水素エンジンのメリットである応答性の更なる向上」に加え、「水素充填時間の短縮 約40%向上 約5分→約3分」「FH2Rに加え大林組・トヨタ自動車九州のグリーン水素使用」を挙げている。

 前回の富士24時間レースでは、24時間走りきるための作り込みがされていた水素エンジンだが、今回は5時間レース。この15%トルクアップなどはスプリント(24時間と比べて)のためかどうかは不明だが、着実にカイゼンが進んでいるということになる。

給水素時間や、グリーン水素についても変更

大林組が大分県で運営している地熱発電設備。この発電設備で発電した電力で水素を製造している

 驚くのは水素充填時間、つまり給水素時間の40%短縮になる。水素の充填は圧力差によって充填を行なうため、基本的には短縮はなかなか難しい部分になる。とくに、水素カローラでは新型「MIRAI」に搭載された70MPaのタンクを流用しているため、70MPa以上の圧力を使って送り込むことになる。ここで40%の短縮ができたのは、なにか大きな工夫が行なわれたと見られる。

オートポリスでの水素充填装置
水素充填トラックは1台となっていた

 また、前回の富士24時間では、水素カローラが使用する水素には福島県浪江町のFH2Rで製造された再生エネルギー由来のグリーン水素を全量使用していたが、今回のオートポリスでは地元生産の水素も併用。

 1つは、福岡県にあるトヨタ自動車九州の宮田工場に設置された太陽電池パネルで発電され製造したグリーン水素。もう1つは、大林組が手がける大分県の地熱発電由来のグリーン水素になる。

トヨタ自動車九州の宮田工場の太陽電池パネルで発電された電気で製造された水素をためる水素タンク。この水素もオートポリス戦で使われる

 水素カローラでは、これらのグリーン水素をFH2Rを50%、大林組の地熱発電水素を30%、トヨタ自動車九州の太陽光発電水素を20%の割合で使用。およそ半分を九州で生産されたグリーン水素でまかなうことになる。

 ちなみに、水素には色はついていないが、一般的に再生可能エネルギーなどCO2を環境に放出しない形で発電された電気によって製造された水素をグリーン水素といい、CO2を環境に放出する形で製造された水素をグレー水素という。そのほかブルー水素やイエロー水素などあるが、水素カローラでは、グリーン水素を使用することでカーボンニュートラルなレース走行を実現している。

 トヨタはこの水素カローラによる水素エンジン開発をカーボンニュートラル社会へ向けての選択肢を増やすものとしている。従来の内燃機関の改良型エンジンでカーボンニュートラルを実現することで、自動車産業の雇用を守るとともに、多くの産業と連携しようとしている。

 今回のオートポリス戦でも多くの企業・団体と協力体制を築いている。

岩谷産業株式会社:移動式水素ステーション運営
株式会社大林組:グリーン水素供給
株式会社鈴木商館:水素充填、水素関係部品
大陽日酸株式会社:移動式水素ステーション運営
トヨタ自動車九州株式会社:グリーン水素供給
豊田通商株式会社:移動式水素ステーション運営
福島県浪江町(FH2R):グリーン水素供給
NEDO:グリーン水素供給(FH2R)