インターネットイニシアティブ(IIJ)は6月28日付けで前総務審議官の谷脇康彦氏を副社長に起用することを決めた。谷脇氏は東北新社やNTTによる接待問題で2021年3月に更迭され、同月に総務省を退職していた。世間から批判を浴びた人物の起用に、「また天下りか」「IIJがNTTの尻拭いか」といった批判の声も聞かれる。IIJの創業者で会長を務める鈴木幸一氏に、波紋を呼ぶ人事の真意について直撃した。
次の総務事務次官候補と目されていた谷脇氏をスキャンダルが襲ったのは21年2月のこと。週刊文春が、菅義偉首相(当時)の長男が勤務する東北新社から国家公務員倫理規程に違反する接待を受けていたことを報じた。2月末に減給処分で幕引きを図ったが、追い打ちをかけるように3月頭に今度はNTTによる接待が報じられ、3月8日に官房付に更迭。3月16日に停職3カ月の処分が下され、同月末に退職した。NTT側からは澤田純社長などが出席し、NTTグループが運営するレストランで高額な会食が行われていた。
IIJの鈴木幸一会長は谷脇氏とは旧知の仲だったという。鈴木会長の話を聞きながら振り返っていこう。
「谷脇氏は若い頃から知っている。知り合ったのは確か、谷脇氏が米国のワシントンに駐在していたとき(編集部注:02年から在米国日本国大使館でICT政策担当の参事官を務めていた)。米国が覇権を握るIT分野の政策について、相当熱心に勉強していた」
谷脇氏の退職を知り、鈴木氏は動き出す。
「谷脇氏が総務省を辞めたと聞いて、会いに行った。『今、何をしている?』と聞いたら『何もしていない』と。それはもったいない。『これまで税金を使って通信政策について勉強してきたのだから、それを社会に還元しなさい』と諭して、うちに呼んだ」
谷脇氏は「そんなことをして、本当に大丈夫ですか」と固辞したという。確かに、総務省の第三者委員会である情報通信行政検証委員会が21年10月に「会食の影響で行政がゆがめられたとは認められなかった」と結論づけ、22年3月には東京地検特捜部も不起訴処分とした。とはいえ、行政の信頼性を大きく損ねた責任は免れない。
しかし鈴木氏は意に介さない。
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