新鮮な食材を売りに、米ニューヨークを中心に支持を集めるネットスーパー、フレッシュダイレクトの幹部が7月上旬、堀口園(鹿児島県志布志市)など九州の伊藤園の契約茶畑や製茶工場を訪れた。
フレッシュダイレクトは1999年設立で、2002年にサービスを開始。健康への意識は高いが、忙しくて買い物時間が十分に取れない高額所得者などの利用が多い。今回の訪問の狙いや事業の現状を、共同創業者の1人、デイビット・マキナーニー氏に聞いた。
訪問の目的や、伊藤園との取り引きの状況は。
マキナーニー:茶葉が育つ過程や、商品化されるまでの工程を目の前で見て、緑茶のことを詳しく学ぶためだ。堀口園などを訪れてお茶の生産に携わる人たちに実際に接し、日本人が日々どのようにお茶と向き合っているかを学ぶことができた。今回は私にとって初めての来日で、日本には1週間滞在する。(マキナーニー氏は7月6~12日のスケジュールで日本に滞在し、その後は宮崎県内の委託工場や、東京都内の伊藤園本社などを訪れた。取材日は7月8日)。
緑茶の魅力、米国の消費者に伝える
マキナーニー:米国では緑茶の認知度が上がっていて、緑茶という商品がどこでどのように作られたか、興味を持つ消費者が増えている。当社のように食品を提供する企業には、消費者を啓蒙する使命がある。緑茶の魅力を私が肌で感じ、消費者に直接伝えたいと考えた。
伊藤園という企業についても、より詳しく知りたかった。当社では10年ほど前から伊藤園の商品を扱い、現在は茶葉や抹茶、茶飲料「おーいお茶」など24品目を販売している。伊藤園商品の売り上げは1年で25%以上伸びた。現在販売する商品の魅力を顧客にしっかりと伝え、取扱品目数を今後増やすことも考えたい。
今回の訪問で得た知識や経験を、どのように消費者に伝えますか。
マキナーニー:ツイッターやインスタグラム、フェイスブックなどのSNS(交流サイト)で発信する。米国では緑茶のほか、抹茶の市場も大きく成長している。お茶に関する情報発信を続け、消費者の流行の一歩先を行く存在であり続けたい。
事業の現状は。
マキナーニー:現在は(米東海岸の)5つの州で事業を展開し、ニューヨーク、フィラデルフィアなど大都市に顧客を多く抱える。事業エリアは今後も広げていく。
1時間配送の新サービスを開始
マキナーニー:今年春からは「フードキック」という新たなサービスも始めた。これはフレッシュダイレクトとは別の企業を立ち上げて展開しているもので、注文を受けてから1時間以内に食品を配送する。注文の翌日に届けるフレッシュダイレクトのサービスから、品目数を絞って展開している。
フレッシュダイレクトでは鮮魚70品目、青果で860品目を扱うが、フードキックでは鮮魚5品目、青果100品目と限定している。フレッシュダイレクトで扱う品目の中から、特に鮮度が良く、量も確保しやすいものをフードキックで取り扱っている。
生鮮食品の宅配では、米ネット通販最大手、アマゾン・ドット・コムが「アマゾン・フレッシュ」を展開するなど競争が激しさを増しています。
マキナーニー:アマゾンとは基本的に顧客層が異なる。フレッシュダイレクトには幾つかの異なる顧客層がいるが、最も多いのが若い家族だ。彼らは健康への意識が高く、新鮮な有機食材へのニーズが強い。当社は食材の品質にこだわり、質の高い食品の提供を続ける。
現在の売上高や利用者数などの動向は。
マキナーニー:当社はプライベートカンパニーのため、売り上げなどの情報は公開していない。ただ利用者数、売上高とも急速に拡大を続けている。
登録会員記事(月150本程度)が閲覧できるほか、会員限定の機能・サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。