気鋭の経済学者グレン・ワイル氏『デジタル民主主義が世界を変える』」を読んで

  米マイクロソフトの研究組織に籍を置く気鋭の経済学者グレン・ワイル氏。台湾の前デジタル担当相、唐鳳(オードリー・タン)氏と協働し、デジタル技術を駆使した「新しい民主主義」の社会実装を探究する。どんな構想なのか彼の言葉から読み解く。

日経ビジネス電子版2024年8月29日付

 民主主義は太古の時代にできたシステムを継承したものだ。デジタル技術が進んだ現代にも、そのまま生かそうとするのは、自動車の自動運転技術を開発する一方で馬用の道路を残すようなレベルの話と言っていい。

 データの改ざんが難しいブロックチェーン(分散型台帳)技術を用いる「プルラリティー(多元主義)」という考え方は、次世代の「デジタル民主主義」の象徴だ。序列がなく、リーダーも必要ない分散型の自律組織(DAO)による統治につながる。そこでは、意見が異なる人たちやグループが議論を重ね、お互いを分かり合うことが大切になる。

 私にとってコミュニケーションは、ビジネスで最も重要なポイントだ。プロジェクトを進める際は、チームメンバーとの知識共有やレビューなどのプロセス設計に極端なほどこだわる。インターネットを主軸にした実効性のあるコミュニケーションについて、適切な教育システムが確立されるべきだろう。

 ガイアックスも国内で初めて、DAOを使った歴史的建造物への小口投資プロジェクトや、DAOを組成・運用するツールの提供を始めた。組織内のコミュニケーションと統治を変えるDAOは主体的な意思決定を実現し、経済の合理性に大きなインパクトを与えるだろう。(談)

(上田祐司 ガイアックス社長)

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