「100万ダウンロード突破!」「App Store無料ランキング3位!」――。スマートフォン向けアプリの「人気度合い」を強調するために、このような文言を各社が使うのはもはや見慣れた光景になっている。

 こうしたダウンロード数やランキングは、実は「カネで買われている」ケースがあることが徐々に明らかになってきている。

17時に始まる“一斉ダウンロード”

 「超絶、高還元ポイントで即交換OK。アマゾン券、大量入荷。6月14日(日)17時~新着スタートです!」

 毎日17時になると「お小遣い稼ぎはヒゲ猫ゴマっち!」や「くまぷれ」、「アプリで稼ごう」といった「お小遣いアプリ」と呼ばれるアプリに一斉に「新着情報」が現れる。そこに並ぶのは、ゲームアプリに加えて、誰もがその名を知る「Yahoo!JAPAN」(ヤフー)、「Amazon」(アマゾンジャパン)、「Gunosy」(グノシー)、「AWA」(AWA*1)など。お小遣いアプリを経由してこれらのアプリをダウンロードすれば、ユーザーはポイントをもらえる仕組み。ポイントは、LINEやAmazonのギフトカードやゲーム内アイテムに換えられる。

*1 サイバーエージェントとエイベックス・デジタルとの共同出資による音楽配信の新会社
お小遣いアプリに並ぶ、各社のアプリ。ダウンロードすると10~30ポイントもらえ、1ポイント1円分のAmazonギフト券などと交換できる。

 お小遣いアプリのユーザーは、ポイント目当てにアプリをダウンロードする。そのままそれらのアプリを使い続けるユーザーもいるかもしれないが、そもそもポイントだけが目当てだったユーザーがダウンロードしたアプリを使うのはまれだろう。場合によっては、すぐに端末から削除してしまうかもしれない。かくして、実際にアプリを利用はしない“幽霊ユーザー”によるダウンロード数だけが膨れ上がっていく。

 ユーザーがアプリをダウンロードする際に利用する「App Store」には、無料アプリのランキングである「無料ランキング」や、有料アプリのランキングである「有料ランキング」などがある。ランキングは3時間ごとに更新され、ランキングを見て、人気の高いアプリをダウンロードするユーザーも少なくない。

App Store内の「ランキング」。ランキングを見て、人気のアプリをダウンロードするユーザーも少なくない。

 ランキングは、ダウンロード数に応じて変化する。そのため、お小遣い目当てで多くの人がダウンロードすれば、その分ランキングは上昇する。「App Storeの場合、数時間で加速度的にダウンロード数が伸びたり、24時間以内に飛躍的にダウンロード数が伸びたりしていることをランキングに大きく反映しているようだ」(アプリ開発会社)。

 ダウンロード数を瞬間的に上げることによって、アプリをランキング上位に食い込ませることができる上、ランキングを見た一般ユーザーがダウンロードをすれば、さらにダウンロード数が上がる、という効果が見込めるわけだ。

 具体的な方法は図の通りだ。アプリ開発元が、お小遣いアプリなどに自社アプリを「広告」出稿する(①)。お小遣いアプリのユーザーに対し、主に夕方17時ごろ、広告主のアプリのダウンロードを促す通知が届く(②)。広告出稿されるアプリは無料であるケースがほとんどだ。お小遣いアプリユーザーは、アプリを選んでApp Storeへ行き、アプリをダウンロードする(③)。お小遣いアプリへ戻るとポイントが追加されている(④)。17時~18時といった特定の時間に多くのユーザーがダウンロードすることによって、App Store内のランキングが上昇し、例えば、それまで100位前後だったアプリが、突然トップ10位以内に急上昇する(⑤)。そのランキングを見て、さらに一般ユーザーがダウンロードする(⑥)。

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