2014年2月28日。世界最大級のビットコイン(Bitcoin)取引所であるマウントゴックス(MtGOX)が民事再生手続きを申請したことが明らかになった。
MtGOXが取り扱っていたBitcoinとはどのようなものなのだろうか。電子マネーとは何が違うのだろうか。また、MtGOXの破綻によってBitcoinは円天のように崩壊してしまうのだろうか--まずは破綻の経緯から解説していこう。
マウントゴックス(MtGOX)とは?
MtGOXは最古参のBitcoin取引所で、一時は世界シェア7割の業界最大手だったが、昨年10月に中国のbtcChinaに抜かれ、最近ではスロベニアのbitStamp、ロシアのBTCeに押されて、最近はシェア2割程度まで落ち込んでいた。
MtGOXとはMagic the Gathering Online eXchangeの略で、もともとP2PソフトeDonkeyの作者Jed McCaleb氏がトレーディングカードMagic: the Gathering売買のために立ち上げたのだが、2010年Bitcoinの方が需要を見込めるとして、Bitcoin取引所に方向転換。2011年にフランス人起業家Mark Karpeles氏に売却、不正侵入の標的となって競合他社が撤退する中、世界最大の取引所となるまで成長した。
ビットコインとは
Bitcoinとは日本人ナカモトサトシ氏が発明したとされるP2P貨幣である。2008年11月に英語の論文が暗号メーリングリストで公開され、翌2009年1月にプロトタイプが稼働し始めた。ナカモトサトシの正体は不明で、2010年半ばを最後にインターネット上での活動は停止している。
当初Bitcoinは暗号専門家の中でも国家による通貨発行権の独占に反対する無政府主義者、サイファーパンクと呼ばれる人々の間での遊びとして使われ始めた。2010年5月には掲示板Bitcoin Forum上で米国フロリダ州で2枚のピザを1万BTCで購入するという書き込みがあり、数日後に実際ピザが届いたことから、実際のモノの取り引きが始まったとされている。
爆発的に広まった理由は何か
このBitcoinが爆発的に広がったのは2011年2月に立ち上がった闇サイトSilk Roadでの決済に使われ始めたからだ。
Silk Roadは違法ドラッグや殺人依頼、児童ポルノなどを扱うオンライン・マーケットプレイスで、TORと呼ばれる匿名化ソフト上で所在が分からないように運営されていた。銀行口座のように犯罪の足がつきにくく、クレジットカード番号のように悪用される心配のないBitcoinは、無法者との違法取引には最適だったのだろう。
Bitcoinは2011年秋に米国上院の公聴会で規制すべきかどうか議題に取り上げられて、さらに知名度を高めた。またウィキリークス(WikiLeaks)は2012年4月付のFBIによるBitcoinの報告書をリークしている。米国政府によってクレジットカードやPayPalによる寄付を止められたウィキリークスにとって、Bitcoinやそこから派生したLitecoinによる送金は、主要な資金源になっているという。
Bitcoinがマネーロンダリングや違法取引の温床となっていることから米財務省FinCENは2013年3月、Bitcoin取引所は国際送金事業の登録を行い、マネーロンダリングの対策をすべきとのガイドラインを公表した。翌4月には欧州キプロスで通貨危機が勃発、ペイオフが予定されていた銀行預金からの逃避先としてBitcoinが脚光を浴びて価格は高騰、総流通量は1000億円を超えた。
Silk Roadは2013年10月、たまたま別の容疑で捜査を受けていたFreedom Hostingと呼ばれるレンタルサーバー事業者の捜査の過程で発見され、FBIによって摘発された。ところが皮肉にもSilk Road摘発のニュースによってBitcoinの知名度は全世界に広がった。中国で外国為替規制を回避して国際送金できる手段として人気を博し、ポータルサイトのBaiduや業界3位の通信事業者である中国電信が取り扱いを始め、btcChinaは10月にMtGOXを抜いて世界最大のBitcoin取引所に踊り出た。こうした動きを受けて中国人民銀行は12月、仮想通貨に関する注意喚起を通知した。
暴落の引き金を引いたのは
一時は1000ドルを超えていたBitcoinがこの通知を受けて暴落し、現在は550ドル前後の水準で取り引きされている。今年2月に入ってMtGOXによる利用者への支払いは滞りがちとなり、2月7日にBitcoinの支払いを停止した。2月10日には支払いの遅延がBitcoinの技術的な問題に起因するとしていたが、同じ問題に見舞われて2月11日にBitcoinの支払いを中断したBitStampは15日には支払いを再開している。
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