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「なんとなく」で全部使っていませんか? GA4とLooker Studioの適切な使い分け方(寄稿:小川卓)

GA4とLookerStudio

株式会社HAPPY ANALYTICSの小川卓(id:ryuka01)です。

Google Analytics 4 (以下「GA4」)は多種多様なレポート機能があり、更に深掘りするための探索機能も用意されています。

その一方で難しさを感じる人も多くいるのではないでしょうか。

また、Googleは情報を可視化するためのLooker Studioというサービスを無料で展開しています。

LookerStudioのレポート例

Looker Studioのレポート例

どちらも数値を表示するという意味では一緒です。

ですが、これらの機能は業務においてどのように使い分けるのが良いか? そしてそもそも、すべて利用する必要があるのか? と迷うこともあるはず。

今回は、そんな疑問をテーマにし、お届けいたします。

GA4とLooker Studio、それぞれのレポート機能の特徴

まずは、それぞれのアウトプット手法の特徴を確認してみましょう。

GA4は大きく分けて「レポート」と「探索」機能が用意されています。まずは「レポート機能」から見ていきましょう。

GA4のレポート機能:初心者はまずここから!

LookerStudioのレポート例

GA4のレポート例:レポート>集客>トラフィック獲得 で見られる画面


レポート機能は、GA4が最初から用意しているレポートをクリックして表示することができます。その中から、必要なレポートを選択し確認するという使い方になります。

自由にレポートを作ることはできませんが、サイトについての基本情報を一通りチェックすることができます。

サイトを以下のようなファネルととらえたとき、各数値をチェックできるのが「レポート」機能となります。

例えば、以下のような数値を知りたい場合はレポート機能を利用することがおすすめです。

  • 「サイトにどの地域から訪れているかを知りたい」
    • GA4の操作画面:レポート>ユーザー属性>ユーザー属性の詳細 を選択すると表示される
  • 「PCとスマホ、どちら成果につながっているかを知りたい」
    • GA4の操作画面:レポート>テクノロジー>ユーザー環境の詳細
  • 「サイトへの流入はどこから来ているのかを定期的にチェックしたい」
    • GA4の操作画面:レポート>集客>トラフィック獲得
  • 「どのページがよく見られているかを知りたい」
    • GA4の操作画面:レポート>エンゲージメント>ページとスクリーン
  • 「商品ごとの売り上げを知りたい」
    • レポート>収益化>eコマース購入数

レポート機能はサイトの「健康診断」に活用したいときにフィット

レポート機能の特徴としては、

  • 最初からレポートが用意されているため、どのレポートを見ればよいか分かれば、操作は簡単
  • 期間の変更や表示する項目も一部変更可能
  • データをダウンロードして加工も可能

になります。

イメージとしては「ウェブサイトの健康診断」のためのレポート群になります。定期的に数値を確認するのには向いていますが、数字の変化原因を調査したり、改善案のヒントを見つけることは難しいです。

今回紹介する中では、最も初心者向けとなります。

GA4の「探索」機能:さまざまな要因を「探る」ときに便利

GA4の探索機能は名前の通り、深堀りをして気付きを探していくためのレポート群となります。

探索レポートの例:ファネルデータ探索

探索レポートの例:ファネルデータ探索

探索レポートの最大の特徴は「自分で自由に項目を組み合わせてレポートを作成していく」という部分にあります。探索レポート画面を開いたときに最初に表示されるのは空白の画面です。

探索レポートの例


この状態から「表現方法」「どの項目を利用するか」「どういう条件で表示するか」を選び、必要に応じて「特定のデータだけに絞り込む(例:新規訪問のみ、商品をカートに入れたけど購入していないユーザー)」ことができます。

自由度が非常に高い分、何を見るかを最初に決めておかないと利用するのが難しい機能です。

探索機能で用意されているテンプレートの種類は以下の通りです。(探索ページ>テンプレート ギャラリー から一覧が見られます)

探索レポートの例

  • 自由形式:項目を選択して表やグラフを作成する
  • コホートデータ探索:条件を指定して継続率などを確認する
  • ファネルデータ探索:チェックポイントを指定して、その通過人数と通過率を確認する
  • セグメントの重複:データを特定の条件でグルーピング(=セグメント)し、それぞれのセグメントの重複を見る
  • 経路データ探索:指定したページの前後の閲覧ページなど動きを確認できる
  • ユーザーエクスプローラー:一人ひとりの行動ログをチェックする
  • ユーザーのライフタイム:初回流入から、どれくらい継続してサイトを利用しているか、収益を上げているかなどが確認できる

このテンプレートの中から選び、見たい情報を設定していくという形になります。

例えば、以下のような数値を知りたい場合は探索機能を利用することがおすすめです。

  • 「あるページから次、どこに移動したかをチェックしたい」(経路データ探索)
  • 「先月初めて訪問した人のうち、何割が今月も来ているかを知りたい」(コホートデータ探索)
  • 「どのファイルがどのページで何回ダウンロードされたかを新規とリピートに分けて知りたい」(自由形式)
  • 「記事を見た人のうち、何%が申し込みフォームにたどり着いたかを知りたい」(ファネルデータ探索)
  • 「会員登録した人の、具体的な行動を確認したい」(ユーザーエクスプローラー)

探索機能はサイトの「治療」につなげるためのレポート群

探索機能の特徴としては、

  • 自分で自由に項目を組み合わせてレポートを作成できるので、レポート機能で用意されていない集計も可能
  • 探索機能でしか見れないデータがある(コホートや導線など)
  • セグメントというデータを絞り込んだ状態で表示する機能が用意されている
  • ただし、過去データに関しては最大14カ月前までしか見ることができない

になります。

イメージとしては「ウェブサイトの治療」のためのレポート群になります。レポート機能で問い合わせが減っているのを確認したら、その原因を探るために探索機能で深堀りをするという形です。

そのため、利用するには「お題」があったほうがサイト改善に役立ちますし、利用する上で迷いが減るのではないでしょうか。

レポート機能よりは難易度が高いですが、サイト分析を行う方にとっては欠かせません。

Looker Studio:複数ツールのデータをまとめて表示したい、大勢と共有したいときに

Looker StudioはGA4とは別のサービスですが、ブラウザ上で利用するということは変わらず、GA4のデータを取り込んで表やグラフを作成することができます。

また、作成したレポートを他の人にURLや権限を付与して共有することができ、GA4の閲覧権限などを持っていなくても見てもらえることができます。

Looker Studioは大きく分けて「編集側」と「閲覧側」に分かれます。Looker Studioにデータを表示するためには、誰かがまずはレポートを作成する必要があります。

そのため編集画面から、どういった項目をどういう形式で表示するのか。そのような設計を行ったうえで作成します。イメージとしてはパワーポイントのようにスライドのページがあり、その中にエクセルのように表やグラフなどを入れていくものになります。

Looker Studioの編集画面

Looker Studioの編集画面

そして編集が終了したら、それを公開して他の方に見てもらうという形になります。

閲覧側は表やグラフの中身を直接編集することはできませんが、期間変更や、デバイス、流入元の絞り込みなどが行えます。

そのため、誰かに依頼してデータを出してもらった後に「前年同月のデータも見たい」と再度依頼するのではなく、自分自身が期間を変えて、データを同じフォーマットで出しなおすことができます。

Looker Studio

絞り込み用のプルダウンを設定することで、閲覧者も絞り込みができる

例えば、以下のような運用を行いたい場合にLooker Studioの利用がおすすめです。

  • 「GA4を利用するのに抵抗がある(難易度が高い)あるいは権限付与ができない場合にデータを共有」
  • 「サイトにとって重要な情報のみをピックアップしたレポートを作成し、クライアントや上司に共有する」
  • 「GA4以外のデータもレポート上に表示したい」
  • 「印刷やダウンロードして他の人に共有できる状態のレポートが欲しい」

複数人でデータを見たいときに最もおすすめ。ただし、分析用途には不向き

Looker Studioの特徴としては、

  • レイアウトや利用できる表現方法が多彩で望み通りのレポートを作成しやすい
  • 閲覧側の利用難易度は低い(編集側の編集難易度は高い)
  • GA4以外のデータも取り込めるので(例:サーチコンソール、広告、自社データ)複数の管理画面をそれぞれ見に行く必要がない
  • データを出す側の人間の負荷が減る(データ出しの依頼が減る)
  • 探索機能でしか出せないデータもある(コホート探索など)

といったところでしょうか。

イメージとしては「サイトの状況を大勢の人にわかりやすく共有」するためのサービスとなります。

GA4に詳しくない人にデータを提供するという意味では最もおすすめです。ただ、基本的にはデータ可視化のためのサービスなので分析用途には向いておらず、深堀りをしたい場合はやはり探索機能の利用が必要となります。

GA4(レポート、探索機能)とLooket Studio、それぞれどう使い分ける?

これら3つのアウトプットをどのように使い分ければよいのか? は、会社規模やGA4を使って集計をしたいのか分析したいのかによっても変わってきます。数人しかレポートを見ておらず、GA4の使い方も把握している場合は、レポート機能と探索機能の2つを利用するのが良いかと思います。

しかし、GA4の数値を見る人が多かったり、それぞれリテラシーが違う場合、GA4以外のデータも見たい場合はLooker Studioの利用もおすすめします。

例えば、あるオウンドメディアではこのような使い分けを行っています。

【レポート機能】
GA4権限を持っている人が、サイト全体の流入や、記事の閲覧数などを必要な時に都度チェックしている。見たい内容は、その都度変わり定期的にチェックするわけではないので、Looker Studioでレポートを作るほどではない。

【探索機能】
サイトトップや各記事からどのページに移動しているのか、記事や流入元の間接効果を確認など深堀して数値を見る。またデザインを変えたり、レイアウトを変えたりした際に、評価を行うために複数のレポート(経路分析、ファネル分析、自由形式とセグメントの掛けあわせ)を見るために活用。また制作会社が改善案を出すためにも利用。

【Looker Studio】
ライターが自分が書いた記事の数値をチェックするために利用、また設定しているKPI(表示回数、検索流入数、キーイベント率)の進捗を確認するためにサイト責任者が月に数回チェック。


最後にそれぞれの違いをまとめた比較表を用意しましたので、参考にしてみてください。

比較表

項目名 GA4のレポート GA4の探索 LookerStudio
データ閲覧期間 永続 直近2ヶ月or14ヶ月
※無料版の場合
永続
遷移(導線)分析 ✕ ◯ △(一部再現可能)
コホート分析 ✕ ◯ ✕
集客の間接効果 △ ◯ △
セグメント利用 △(比較機能あり) ◯ ✕
オーディエンス利用 ◯ ◯ ◯
フィルタ機能 ◯ ◯ ◯
GA4以外データ取り込み △
※サーチコンソールやGoogle広告等の一部
â–³
※サーチコンソールやGoogle広告塔等の一部
â—¯
URLでの共有機能 × △(プロパティ内共有は可能) ◯
表現やレイアウト自由度 ✕ △ ◯
データの自動更新 ◯ ◯ ◯
使いやすさ △ × 〇
作成や編集の手間 〇 △ ×
権限付与の必要性 必要 必要 必要/不要の選択可能

最後に

今回はGA4のLooker Studioの特徴と利用シーンを探ってきました。併用がおすすめではありますが、誰がどれをメインで利用するのか? に関しては会社ごとに変わってきます。

「なるべく手間がかからず必要なデータを手軽に見られる」ことが大切なので、それぞれの機能を使ってみて、自分たちにあった結論を出していただければ!





* *

今回、寄稿いただいた小川卓氏による過去の連載記事もあわせてご覧ください。

また、Googleアナリティクス4のオンライン勉強会のレポートもご覧いただけます。


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著者名:小川卓 株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。ウェブアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてウェブ解析の啓蒙・浸透に従事。