安藤忠雄は、この1977〜81年という時期に表層の特性を活用し、作風を確立した建築家だ。言い換えると、彼は本論考で叙述し始めている「ポストモダニズム」の歴史の中に位置づけられ、建築における表面性を発見した建築家の一人で […]
「ポストモダニズムの歴史」by倉方俊輔
連載17から続く。 本連載の読者は、キッチュやアイロニーといった近年はあまり耳にしない言葉についても、表層と深く関わる概念として、すでに親しんでいるに違いない。これらは現在、坂本一成に似つかわしくない言葉と思われている […]
1977〜81年という時代に、建築家の眼が表層にこそ向いていた事実は、坂本一成の作品の変化からも明らかになる。 坂本一成は1978年に3軒の住宅を完成させた。それらは『新建築』1979年2月号に収められている。そのう […]
渡辺豊和が「仮面劇の建築化」という言葉を書いたのは、1976年の「中内邸」発表に際してだった。この手法に依拠することで「1½吉岡邸以後の久方ぶりの設計であったせいもあって〈中略〉また違った方法を探り出せるのではないかと […]
では、「平和な時代の野武士達」が当時の建築界に与えた影響は、どのようなものだっただろうか。 まず、前回に述べたように、その内容は1941年生まれの安藤忠雄や伊東豊雄を論じたものではない。扱われている建築家は、1937 […]
2023年4月に始まったこの連載では、日本の建築史の中に「表層期」を発見した。1977〜81年の建築の実作と言説は「表層」への着目によって特徴づけられる。 具体的な考察はまだ終えていないが、ここまでに明らかになったこ […]
前回に論じた谷口吉生ともう一人、表層という時代のテーマを境界面から問題にした重要人物に原広司がいる。 1981年に発表された文章を読もう。まさに「境界論」と題された論考は、次のように始まる(注1)。 「はじめに、閉 […]
谷口吉生は、境界面を問い続けてきた建築家である。「金沢市立図書館」(現・金沢市立玉川図書館、1978年)について、1979年に谷口吉生は「内と外とが、たえず一方が他方の仮像となって感知されるような曖昧性のある空間である […]
前回、丹下健三と槇文彦について見ていったように、1977〜81年には皆、「表層」に憑かれたのだった。それぞれの建築家の中心思想や世代論を越えたその拡がりから、引き続き、この時代の建築を捉えたい。 黒川紀章の「利休ねずみ […]
前回から続く。 1977年、初めてタイルを外装に使ったヒルサイドテラスが完成した。1969年に完成した最初のA棟・B棟の外壁は打ち放しコンクリートだった。これは1973年に第2期としてC棟が竣工した際に、それと同じ吹付 […]