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Q100: 日本振興銀行が破たんし、「ペイオフ」が2010年9月に初めて発動されました。英語では何と言いますか?
A:専門用語としては、deposit payoff (預金の返済)。
「ペイオフ」(返済)とは「預金ペイオフ」の略だと言える。
ペイオフ制度を簡単に言うと、「銀行がつぶれても、1000万円までは保険がかかっているので、銀行側が預金を返済する(depositをpay offする)」こと。これを用語(名詞)にしたものが、deposit payoffです。
でも、専門用語は、一般の人には何のことか分かりにくいので、具体的に内容を説明したほうがよいでしょう。たとえば、ジャパンタイムズでは、次のように説明しています(2010年9月11日付)。
The government's protection only covers up to ¥10 million in deposits as well as interest on the principal.
(政府による保護では、預金1000万円と、この元本の利子までしか保証されない)
ペイオフのことを、deposit insurance(預金保険)やdeposit protection(預金保護)の制度、と説明してもいいでしょう。
I’m paying off a debt.
■英語(payoff)の説明
名詞のpayoff(返済)の元になっている表現はpay offで、「(借金など)を全部支払う、支払い終える」こと。このように2語だけど、実際には1つの動詞として機能するものを、句動詞(phrasal verb)といいます。
分解して考えてみましょう。まずpayは、お金を「支払う」。
offは「~から離れて」→「すっかり解放される」
ですから、pay off a debtならば、「借金をすっかり支払い終え」た結果、借金からすっかり解放されることになります。全部支払うことで、借金苦から、離れて(off)暮らすことができ、安心です。
このpay off a debtを、預金にあてはめると、pay off a depositで、「(保険がかけられている分の)預金をすっかり返済する(払い戻す)」こと。預金というのは、銀行側から見ると、預金者からの借金です。
pay off a depositを名詞にすると順が逆になり、deposit payoffで、これが日本語の「ペイオフ」です。そのまま解釈すると、「(保険がかけられている分の)預金の返済(払い戻し)」です。
これに対して、預金を日常的に「引き出す」にはwithdrawを使います。銀行が破たんし、預金者から見て「預金を払い戻せ(銀行に貸した私のお金を返せ)」「もう解約だ!」という借金ニュアンスのときは、pay offを使います。
■ペイオフ制度の説明
昔の日本では、「銀行は倒産しない、預金は絶対安全」でしたが、今では「銀行も倒産する、1000万円までしか安全ではない」時代となりました。
昔は「護送船団」と呼ばれた政府の保護政策で銀行は守られていましたが、銀行が放漫経営になってしまいました。そこで「ビッグバン」(the Big Bang)とも呼ばれた規制緩和が行われ、「ペイオフ」も2005年4月に解禁されました。
銀行というものは決済システムで1つの生命体のようにつながっているため、1行が倒産すると、他行も連鎖倒産しやすくなります。しかし日本振興銀行(東京)は決済システムに入っていない特殊な銀行だったため、連鎖倒産も取り付け騒ぎも予想されませんでした。そこで2010年9月に破たんしたとき、「ペイオフ」が初めて発動されました。
銀行の預金を元本1000万円(とその利子まで)は保証する(insureする)、というのは、実は「保険」(insurance)です。ペイオフ業務を担当しているのも、預金保険機構(the Deposit Insurance Corporation)です。
ペイオフは、「破たんした金融機関の預金者への払い戻し制限」などと説明されますが、具体的には「1000万円までは保険がかけられている」ということです。この保険料は、各銀行が預金保険機構に支払っています。預金のうち1000万円を超える分については、銀行の債務状況(支払い能力)によって減額されて戻ってきます。
■ペイオフの歴史
アメリカでは、1930年代の金融恐慌の教訓として1933年に預金保険制度ができました。その中核となるのがペイオフで、日本も1971年にこの仕組みを取り入れ、預金保険制度を作りました。しかし実際に発動すると銀行連鎖倒産が起きるかもしれず危険なので、なかなか発動できなかったものです。
預金保険機構の元祖アメリカ版は、the Federal Deposit Insurance Corporation (FDIC)で、現在の保証額は1人につき$250000(およそ2000万円)まで。
FDICはペイオフを(insured) deposit payoff、つまり「(保険で保証されている分の)預金の払い戻し」と呼んでいます。この文脈の中では、単にpayoffと略して使います。このために日本語では「ペイオフ」となりました。
なお、銀行破たんのときは、できれば他行に買収してもらい業務を引き継いでもらうのが常道。ペイオフはアメリカでも最後の手段です。
■単独で使うと、誤解される
payoffには、悪事の「口止め」という、犯罪イメージがあります。この表現の元は、pay someone offです。悪事が誰かに知れてしまったとき、その人に大金を支払って(pay)、自分の悪事からは「離れて」<off>いてもらう、つまり「口止めする」という意味。
この犯罪イメージがあるため、payoffとだけ言うと誤解を引き起こします。銀行ニュースでの「ペイオフ」を文脈なしにpayoffとだけ言うと危険。相手が専門用語を知っている人ならば、正確にdeposit payoffと言いましょう。一般の人に対しては、内容を具体的に説明しないと、何のことかわかりません。英字新聞は一般向けメディアなので、「ペイオフ」は必ず内容を説明しながら報道しています。(deposit) payoffというわかりにくい専門用語にはまったく触れないのも普通です。
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「ペイオフ」(返済)とは「預金ペイオフ」の略だと言える。
ペイオフ制度を簡単に言うと、「銀行がつぶれても、1000万円までは保険がかかっているので、銀行側が預金を返済する(depositをpay offする)」こと。これを用語(名詞)にしたものが、deposit payoffです。
でも、専門用語は、一般の人には何のことか分かりにくいので、具体的に内容を説明したほうがよいでしょう。たとえば、ジャパンタイムズでは、次のように説明しています(2010年9月11日付)。
The government's protection only covers up to ¥10 million in deposits as well as interest on the principal.
(政府による保護では、預金1000万円と、この元本の利子までしか保証されない)
ペイオフのことを、deposit insurance(預金保険)やdeposit protection(預金保護)の制度、と説明してもいいでしょう。
I’m paying off a debt.
■英語(payoff)の説明
名詞のpayoff(返済)の元になっている表現はpay offで、「(借金など)を全部支払う、支払い終える」こと。このように2語だけど、実際には1つの動詞として機能するものを、句動詞(phrasal verb)といいます。
分解して考えてみましょう。まずpayは、お金を「支払う」。
offは「~から離れて」→「すっかり解放される」
ですから、pay off a debtならば、「借金をすっかり支払い終え」た結果、借金からすっかり解放されることになります。全部支払うことで、借金苦から、離れて(off)暮らすことができ、安心です。
このpay off a debtを、預金にあてはめると、pay off a depositで、「(保険がかけられている分の)預金をすっかり返済する(払い戻す)」こと。預金というのは、銀行側から見ると、預金者からの借金です。
pay off a depositを名詞にすると順が逆になり、deposit payoffで、これが日本語の「ペイオフ」です。そのまま解釈すると、「(保険がかけられている分の)預金の返済(払い戻し)」です。
これに対して、預金を日常的に「引き出す」にはwithdrawを使います。銀行が破たんし、預金者から見て「預金を払い戻せ(銀行に貸した私のお金を返せ)」「もう解約だ!」という借金ニュアンスのときは、pay offを使います。
■ペイオフ制度の説明
昔の日本では、「銀行は倒産しない、預金は絶対安全」でしたが、今では「銀行も倒産する、1000万円までしか安全ではない」時代となりました。
昔は「護送船団」と呼ばれた政府の保護政策で銀行は守られていましたが、銀行が放漫経営になってしまいました。そこで「ビッグバン」(the Big Bang)とも呼ばれた規制緩和が行われ、「ペイオフ」も2005年4月に解禁されました。
銀行というものは決済システムで1つの生命体のようにつながっているため、1行が倒産すると、他行も連鎖倒産しやすくなります。しかし日本振興銀行(東京)は決済システムに入っていない特殊な銀行だったため、連鎖倒産も取り付け騒ぎも予想されませんでした。そこで2010年9月に破たんしたとき、「ペイオフ」が初めて発動されました。
銀行の預金を元本1000万円(とその利子まで)は保証する(insureする)、というのは、実は「保険」(insurance)です。ペイオフ業務を担当しているのも、預金保険機構(the Deposit Insurance Corporation)です。
ペイオフは、「破たんした金融機関の預金者への払い戻し制限」などと説明されますが、具体的には「1000万円までは保険がかけられている」ということです。この保険料は、各銀行が預金保険機構に支払っています。預金のうち1000万円を超える分については、銀行の債務状況(支払い能力)によって減額されて戻ってきます。
■ペイオフの歴史
アメリカでは、1930年代の金融恐慌の教訓として1933年に預金保険制度ができました。その中核となるのがペイオフで、日本も1971年にこの仕組みを取り入れ、預金保険制度を作りました。しかし実際に発動すると銀行連鎖倒産が起きるかもしれず危険なので、なかなか発動できなかったものです。
預金保険機構の元祖アメリカ版は、the Federal Deposit Insurance Corporation (FDIC)で、現在の保証額は1人につき$250000(およそ2000万円)まで。
FDICはペイオフを(insured) deposit payoff、つまり「(保険で保証されている分の)預金の払い戻し」と呼んでいます。この文脈の中では、単にpayoffと略して使います。このために日本語では「ペイオフ」となりました。
なお、銀行破たんのときは、できれば他行に買収してもらい業務を引き継いでもらうのが常道。ペイオフはアメリカでも最後の手段です。
■単独で使うと、誤解される
payoffには、悪事の「口止め」という、犯罪イメージがあります。この表現の元は、pay someone offです。悪事が誰かに知れてしまったとき、その人に大金を支払って(pay)、自分の悪事からは「離れて」<off>いてもらう、つまり「口止めする」という意味。
この犯罪イメージがあるため、payoffとだけ言うと誤解を引き起こします。銀行ニュースでの「ペイオフ」を文脈なしにpayoffとだけ言うと危険。相手が専門用語を知っている人ならば、正確にdeposit payoffと言いましょう。一般の人に対しては、内容を具体的に説明しないと、何のことかわかりません。英字新聞は一般向けメディアなので、「ペイオフ」は必ず内容を説明しながら報道しています。(deposit) payoffというわかりにくい専門用語にはまったく触れないのも普通です。
このコーナーでは、時事英単語や、 英文を読む上で必須となる基本の英単語などを、 イラスト入りのイメージトレーニング方式で楽しく解説します。 解説・監修は元ジャパンタイムズ編集局長の伊藤サムさんです。
※トップページでは各クイズはランダムに表示されます。 ぜひ何度もアクセスして全部のクイズに答えてみてください。
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※イラスト・ 写真の一部にマイクロソフト社などのクリップアート類を許諾条件 に基づいて使用しています。
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