《たった6日間で……》
■腕時計百科事典[87]
腕時計を捨てる方法
吉田貴之
■クリエイター手抜きプロジェクト[599]イベント編
Devfest in 信州2019
古籏一浩
■映画ザビエル[85]
「たられば」の呪い
カンクロー
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■腕時計百科事典[87]
腕時計を捨てる方法
吉田貴之
https://bn.dgcr.com/archives/20191202110300.html
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以前、腕時計を手放す方法についてまとめましたが、今回は「腕時計を捨てる方法」について考えてみましょう。もちろん、可能であれば売るなどして、少しでもお金になれば嬉しいのですが、どう頑張っても売れない腕時計もすくなからず存在します。その腕時計の最後のオーナーとして、腕時計の一生を終える方法をまとめました。
▼腕時計を分解する
腕時計を捨てるからといって、いきなりゴミ箱に投げ入れる人はいないでしょう。まずは腕時計をできる限り分解して、分別しやすい状態にするべきです。
ここでのポイントは、クォーツ時計と機械式時計とでは分解作業の楽しさが異なる、ということです。機械式時計の分解は、腕時計マニアにとって、一生に一度体験できるかどうかのエンターテイメントです。一方で、クォーツ式時計の分解は中身のシンプルさに、がっかりしてしまうかもしれません。
▼分解できたら
もしうまく分解できたのであれば、捨てるのはもう少し待ってください。バラバラにした部品の中に、売れるものがあるはずです。革ベルトや電池などの消耗品は難しいかもしれませんが、それ以外の部品については欲しがっている人がいるはずです。
特に、キズのない風防、竜頭、裏蓋、ブレスレットのコマ、テンプなどは需要がありますので、モデル名や型番などを付記して、オークションサイトやフリマサイトに掲載してみましょう。
▼それ以外の部品の捨て方
あらためて、残った部品をみてみましょう。バラバラになったムーブメント、針や文字盤、風防、ケースと裏蓋、革ベルトや尾錠などでしょうか。もしかしたら箱やケースなども残っているかもしれません。
革ベルトや箱、取説、パッキンなどは、可燃ごみとして捨てることが出来ます。クォーツ式時計についている電池は、地域のルールに則り、適切に処分しましょう。特に、ソーラー時計などに使われている充電池には注意が必要です。可燃ごみとリサイクルゴミ以外で、残っている部品はおおむね「不燃ごみ」のはずです。
▼腕時計の供養
思い出のつまった腕時計を捨てるのはしのびない、という方のために、福岡県の恵蘇八幡宮(えそはちまんぐう)では「時計の供養祭」を実施しているそうです。事前に連絡すれば郵送でも対応してくれるそうですので、気になった方は調べてみてください。
【吉田貴之】[email protected]
イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
https://www.idia.jp/
腕時計ポータルサイト:腕時計新聞
https://www.watchjournal.net/
兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。
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■クリエイター手抜きプロジェクト[599]イベント編
Devfest in 信州2019
古籏一浩
https://bn.dgcr.com/archives/20191202110200.html
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今回は、11月23日に長野県長野市で行われた、GDG信州の DevFest 2019 のようすをレポートします。
● Devfest in 信州2019(GDG信州/GDG Cloud 信州共催)
https://gdg-shinshu.connpass.com/event/151084/
まず、塩尻市から長野市に行くまでけっこう時間がかかるので、朝早くから起きて荷物を積み込みました。役割としては一応、映像撮影とガジェット展示係です。映像は三脚とiPhoneのみ。
昔のようにビデオカメラを持っていくことはなくなりました。と言っても、念のため車には、Panasonicのビデオカメラを積み込んではあります。
展示するガジェットはM5Stick/C/Vと関連パーツ、そしてレトロコンピューターとしてSHARP mz-700とmz-1500にしました。今回は個人的な事情で10月末からいろいろあって、ほとんど準備ができなかったという理由もあります。
mz-80Bとか、持って行きたかったところですが無理でした。他にもレコードとプレイヤーを持って行こうかと思いましたが、レコード針をつけてないし、確認時間もとれないのでやめました。そもそも会場が図書館なので、レコードの音楽を流せるのかどうか、分からないからでもあります。
ということで、2時間ほど一般道路(国道19号線)走って、イベント会場である県立長野図書館に到着しました。10時前でしたが、すでにほとんどの準備は終わっていました。まあ、いつもお任せで手伝わないんですが……。持ってきた展示品など、無事に搬入できました。
今回のイベントは、午前と午後の部に分かれていました。午前中はワークショップ(Google Local Home SDK or Tensorflow Lite Micro)があります。これは、Tensorflow Lite MicroとM5StickCを使って、何か作るというものです。
・TensorFlow Lite for Microcontrollers
https://www.tensorflow.org/lite/microcontrollers
プレゼンではGoogle Home miniを経由して、音声でM5Stackを制御してました。「OK Google、洗濯機を回して」というと、M5Stack画面に表示されている洗濯機の水槽がまわるというものです。
他にもM5StickCでジェスチャーによる反応を表示する、というようなものもありましたが、1時間半ですべてを終わらせるのは、なかなかシビア。さすがに2時間から2時間半くらいないと難しそうです。それでも、時間内に何とか終わらせた人はいました。
午前の部が終わると午後の部の準備です。県立長野図書館付近には食事をとれるところが少ないので、ローソンでサンドイッチを購入し昼食をすませました。ゆっくり食べてる時間もないのが、このDevFestイベント。
午後は2つのセッションとライトニングトーク、そしてパネルトークがあります。2つのセッションは技術的なものですが、現在の技術的な状況を知ることができるので、聞いているだけでも価値はあります。今回は珍しく予定時間よりも早く終わったため、余裕を持って進行することができたようです。
ガジェット品評会はmz-700、mz-1500、M5Stick/C/V、obnizと、自分が書いたobniz本、ラズパイ+タミヤのロボット、MSX(1Chip)、オリジナルキーボードなどを展示しました。
mz-700にはBluetoothカセットを入れておきました。このBluetoothカセットを使えば、古いマシンでもiPhone/AndroidなどとBluetooth経由でデータのやりとりができる、便利なシロモノです。私は発売当初に米国のアマゾンで購入しましたが、今は日本のアマゾンで並行輸入品があるようです。
・Ion Audio Cassette Adapter Bluetooth Music Receiver for Cassette
Decks by ION Audio [並行輸入品]
https://www.amazon.co.jp/dp/B019THH3Y0/
mz-1500にはQuickDisc(中身はサンダーフォースというゲーム)を入れておきましたが、すでに誰も知らないようなメディア。ついでに3.5inchフロッピーディスクとMOディスクも展示しておきました。ちなみに自宅には新品の5inch 2Dのフロッピーディスクもあります。
ラズパイとタミヤのロボットの組み合わせは、カメラで顔認識し、ロボットがその人の正面を向くようになっていました。高速に動くわけではなく、1〜2秒に一度くらいの回転、動きといったところです。
ガジェット展示会の後は、ライトニングトークです。機器の不具合により、予定した順番がどんどん変わっていき、3番目の人が最初に発表するような事態になってしまいました。それでも、無事にライトニングトークは終了しました。
今回のイベントの日は、本当は長野えびす講煙火大会(花火大会)が開催される予定でした。
・長野えびす講煙火大会
http://www.nagano-cci.or.jp/ebisukou/
しかし、台風19号による千曲川が氾濫被害により、中止となってしまいました。そして、今回のDevFestのイベントでも、テーマとして取り上げられました。テーマは「災害とITと」です。
実際に災害に遭った人が話すというのは、説得力がありました。当事者とそうではない人では、情報の差がかなりあります。3.11の震災の時にはスマートフォンが普及していなかったため、情報ハブとなった人の意見もありました。
現在では個人がスマートフォンを持つ時代です。情報ハブとなる必要はなく、個人で情報がとれる時代です。なんですが、実際には必要な情報を得ることができないのが現状。
結構批判が多かったのが、テレビの報道に対してでした(NHKに対して、というべきか)。まず、自衛隊が人を救助するような映像はいらない、ということです。テレビ局としてはドラマチックな演出をしたいのか、救助映像の方が視聴率がよいと判断したのか分かりませんが、全然意味のない映像だというのが現場(当事者)からの意見でした。
実際のところ、当事者以外の人に対してアピールするだけのもので、まったく役に立たないということでした。では、テレビ局は何を映せばよかったのか?
それは上空のヘリからの俯瞰映像をゆっくりと流せばよい、というものでした。これは、どういうことかというと、どこが浸水しているのか(自分の実家、もしくは親族の家が浸水しているのかどうか、どこまで行くことができるのか)を把握したいからという理由によります。
次に大規模災害が発生した後、IT系などでは災害用にアプリを作ったり、新たなサービスを開発したりするが、これも実際には使われないという点です。
結局のところ、「Twitter最強」というオチ。もちろんLINEでもいいのですが、LINEは閉じた空間なので、Helpを出しても近い範囲にしか届かないという理由もあります。
実際私もLINE使ってやってましたが、結構災害時には使いにくいので、結局Twitterに。「その時、多くの人が使ってるサービス上で展開するのがベスト」というのが結論といったところです。
それから、災害時にどのようなデータが提供できるかを、あらかじめ行政は告知しておくとよいのではないか、という意見もありました。確かに行政しか持つことができないデータというのがあります。
また、役に立ったものとしては、川が映っているライブカメラという意見もありました。IoT機器なら通信が途切れたかどうかも、重要な情報になるという意見もありました。災害に関するパネルトーク/ディスカッションは、身近なものだったせいか、けっこう意見もあり、有益だったと思いました。
ということで、イベントは無事終了し懇親会へとなだれこむのでした。
【古籏一浩】[email protected]
http://www.openspc2.org/
ところが、駐車場が満車で懇親会へとなだれこめないという、ナントモなオチで終わりました。サイゼリアでピザを2切れ食べて、少々のエスカルゴ等とソフトドリンク飲んで終わり……ということで、家に帰ってからたくさん食べて、さっさと寝ました。(翌日は農作業があるので)
・みんなのobniz入門
https://www.amazon.co.jp/dp/4865942165/
・InDesign自動化サンプルプログラム逆引きリファレンス上/下
https://www.amazon.co.jp/dp/4844396846/
https://www.amazon.co.jp/dp/4844396854/
・創って学ぼうプログラミング
https://news.mynavi.jp/series/makeprogram
・みんなのIchigoLatte入門 JavaScriptで楽しむゲーム作りと電子工作
https://www.amazon.co.jp/dp/4865940936
[正誤表]
http://www.openspc2.org/book/error/ichigoLatte/
・After Effects自動化サンプルプログラム 上巻、下巻
https://www.amazon.co.jp/dp/4844397591
https://www.amazon.co.jp/dp/4844397605
・IchigoLatteでIoT体験
https://www.amazon.co.jp/dp/B06X3X1CHP
http://digiconcart.com/dccartstore/cart/info/2561/218591
・みんなのIchigoJam入門 BASICで楽しむゲーム作りと電子工作
http://www.amazon.co.jp/dp/4865940332/
・Photoshop自動化基本編
http://www.amazon.co.jp/dp/B00W952JQW/
・Illustrator自動化基本編
http://www.amazon.co.jp/dp/B00R5MZ1PA/
・4K/ハイビジョン映像素材集
http://www.openspc2.org/HDTV/
・クリエイター手抜きプロジェクト
http://www.openspc2.org/projectX/
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■映画ザビエル[85]
「たられば」の呪い
カンクロー
https://bn.dgcr.com/archives/20191202110100.html
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◎作品タイトル
さざなみ
◎作品情報
原題:45 Years
公開年度:2015年
制作国・地域:イギリス
上映時間:95分
監督:アンドリュー・ヘイ
出演:シャーロット・ランプリング、トム・コートネイ、ジェラルディン・ジェームズ
◎だいたいこんな話(作品概要)
イギリスの郊外で、リタイア後の人生を穏やかに送るケイトとジェフ夫妻は、週末に結婚45周年の記念パーティーを控えていた。月曜日の朝、ケイトは日課である愛犬との散歩から戻り、届いていた一通の手紙を夫のジェフに手渡した。
朝食の席で、開封した手紙の内容に動揺を隠しきれないジェフ。そこには、山岳事故で亡くなったジェフのかつての恋人が、凍結されたままクレバスの中で見つかったことが記されていた。
そのような手紙が、わざわざスイスからジェフの元に届いた理由は、当時の宿帳に配偶者として記録が残っていたためだった。ジェフは、未婚の男女が一緒に宿泊できるような時代ではなかったからだと説明し、ケイトも結婚前の、さらに知り合う前の恋愛だからと軽く受け流していた。
しかしジェフはその日を境に、これまでと違う行動を取り始めた。普段は外出したがらないのに街まで出掛けたり、長年の禁煙もまるでなかったことのように煙草に火をつけ、屋根裏部屋で思い出の品に浸る。
初めは気にも止めなかったようなジェフの恋人の話の中に、ケイトは少しずつ引っかかりを感じるようになる。一度芽生えた不信感は日を追うごとに膨らみ、屋根裏で見つけたスライド写真によって、ジェフの恋人が当時妊娠していたことを知り、ケイトの心の波紋は、もはや「さざなみ」にはとどまらず、何かが決壊してしまった。
金曜日、一人で黙って外出したジェフを追いかけて探し回るケイト。街でジェフを見つけることは出来なかったが、旅行代理店で彼がスイス旅行を考えていたことを知る。その夜、帰宅したジェフにケイトは不満をぶつけ、今はただ土曜日のパーティーだけ何事もなかったようにやり遂げたいと告げる。
そして、土曜日。ジェフは、ケイトよりも早く起きて朝食を用意し、一緒に犬の散歩に行こうと誘う。その夜のパーティーには多くの友人が集まり盛況の中、スピーチを求められたジェフは、ケイトへの感謝を涙ながらに述べるのだが。
◎わたくし的見解/さざなみどころやおまへん
かなりよく出来た心理劇であるため、強くお勧めしたいにもかかわらず、同時に勧められる対象が極めて少ないことに参っちんぐ。身も蓋もない言い方をすると、永遠に若い女への嫉妬から逃れられない、老齢のシャーロット・ランプリングを眺める映画なので、それ以上でもそれ以下でもないのだ。
そんな年になってまで、ジェラシーとかあるのかよ。とか、なんでこんなシニアのセックス・ライフを見せられるさ。とか、そもそもジジイとババアが何しようが知ったことか。みたいな心ない声がバンバン聞こえてきそうで怖い。
私だって「君の名は。」はそれなりに楽しんで鑑賞したものの、今まだ上映されている「天気の子」を観ようというモチベーションはないのだから、それも仕方がない。
この年になってしまうと、若年層の惚れた腫れたに興味が示せないように、若者だって大人の男女の愛などには関心を持てなくて当然だと思う。その上、この作品は人生の締めくくりが視野に入っている夫婦の物語なのだから、若者はおろか30代のいい大人にさえ、何が面白いのか分からないと言われる可能性も大きい。
でも、本当に良い。台詞で高らかに想いを述べる舞台演劇とも違って、まさに繊細な心の機微を表情から読み取れるところは映像作品ならでは。妻ケイトを演じるシャーロット・ランプリングの三白眼は本作でも輝きを放っているが、何気に夫側の演技も白眉だ。
しっかり者の妻に対して、夫のジェフは手紙の中身を知るまでは、どちらかと言えば呆け切ったご老体でしかなかった。そんな人が、50年近く前の恋人が若き日の姿のまま凍結されていると知っただけで、冗談みたいに気持ちだけ当時に戻ってしまう。その感覚と自身の現在の姿とのギャップを感じながら、それでも思いを馳せずにはいられない。
冷静に考えてみれば当然の反応だし、「許してやったら? おばあちゃん」と自分が娘や孫なら言ってしまいそうだが、妻の気持ちもまた分からなくもない。自分はこの何十年もの間、その恋人の代替品でしかなかったかも知れない。という疑念は生まれたが最後、決して拭い去ることは出来ない。夫婦に子供がいなかったことも、ケイトの心を深くさいなむ。
観る側にとっては、夫がかつての恋人を雪山登山で殺したのかと勘ぐってしまうほど、静かながらスリリングに展開していく。淡々と同じような一日のルーティンを、月曜から週末のパーティーまで描いていく中で、邦題のとおり小さなさざなみ程度だったはずの動揺が、日増しに大きな波風として立っていく様は見事だ。
ふと、タル・ベーラ監督の「ニーチェの馬」というアート映画を思い出した。馬の飼い主である老いた男とその娘の質素な暮らしだけが映し出され、6日間で世界あるいは命の火が消える。
「さざなみ」も月曜日から土曜日までの、たった6日間で45年に及ぶ結婚生活が終焉する。神話や聖書になぞらえているからだが、どちらでも描かれていない7日目には新たなものが生まれるはずだ。
そう思わなければ、やりきれない程のバッド・エンディングであることも、勧める当てが見つけづらい理由の一つである。
【カンクロー】[email protected]
映画ザビエル
http://www.eigaxavier.com/
映画については好みが固定化されてきており、こういったコラムを書く者としては年間の鑑賞本数は少ないと思います。その分、だいぶ鼻が利くようになっていて、劇場まで足を運んでハズレにあたることは、まずありません。
時間とお金を費やした以上は、元を取るまで楽しまないと、というケチな思考からくる結果かも知れませんが。
私の文章と比べれば、必ず時間を費やす価値のある映画をご紹介します。読んで下さった方が「映画を楽しむ」時に、ほんの少しでもお役に立てれば嬉しく思います。
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編集後記(12/02)
●偏屈BOOK案内:週刊文春編「私の大往生」
「大往生」を〈「広辞苑」で引くと〉なんて、文藝春秋が言ってる。まあいいか、慣用句みたいなもんだから。でも、「大往生」って「十分に寿命を全うしたので、満足に思います」という意味で、身内だけが使えるセリフだろ。他人が遺族に対して使うのは失礼である。ましてや、本人が「私の大往生」なんて言うわけがないだろう。恥ずかしい。……意地悪で難癖つけてみました。
週刊文春が、人生を達観した先達たちに「理想の死に方」を尋ねる連続インタビューを行い、それをまとめたもの。中村仁一、渡邉恒雄、外山滋比古、佐藤愛子、酒井雄哉、やなせたかし、小野田寛郎、内海桂子、金子兜太、橋田壽賀子、出口治郎、高田明、大林宣彦、柳田邦男の14人。インタビューは、それぞれの死生観をうまく引き出す。その後の「大往生アンケート」6問は愚問。
中村仁一(医師)の「理想は『孤独死』と『野垂れ死に』」に大賛意。大ベストセラー「大往生したけりゃ医療とかかわるな」の著者。穏やかで安らかに死にたい、というのが多くの人にとって理想だ。それが自然死(実態は餓死)で、不安もなければ寂しくもない。いい気持ちのまどろみの中で死んでいける。放っておくと全部穏やかに死ねるように、自然の仕組みはできているのだ。
今の医学はすべて自然死に逆行している。例えば「胃ろう」で、患者の身体は気持ちよく死のうとしているのに、あえて苦行を強いて生かしている。医療は「老い」と「死」には無力だ。治せないにもかかわらず治そうとする。結果的に本人に苦痛と負担を与えている。しかも、1分1秒でも長く生かすのが医療の使命になってしまっている。病院では「自然死」というのはありえない。
いっぽう介護職でも、食べさせるというのが使命で、患者がいやだというのに長時間かけて、高カロリーの脂っこいものを無理やり押し込む。拷問である。患者は物凄く苦痛であろう。さらに家族は、患者を支えているかと思いきや、自然死の大きな障害になる。いま人間の死に方は、本人ではなく殆どが家族の意向で決まる。病院で診てもらうことで納得して、安心したいだけなのだ。
「長期間にわたって強制人工栄養を注入していると、関節が拘縮して、最後はこれが人間か、という姿になってしまうんです」。そこでようやく家族が気付く。どんな形でも生きていてほしい、というのは家族の都合であって、本人の意向ではない。死ぬよりもつらいことを強いて、本人を苦しめている。これは恐怖である。わたしは家族に、事前にしっかりと伝える。楽に死なせてくれ。
死を見つめるとか、向き合うとかは絶対に無理デス。きれいごとの言葉で何となく分かったような気がするだけだ。一年の計は棺桶にあり、という中村は段ボール製の棺桶を入手、大晦日と元日に入って、自分の過去を振り返る。どれだけ周りに支えられて生きてきたかがわかる。今年はどう生きるかを確認する。一年の計は棺桶にあり。閉所恐怖症気味なわたしなど、絶対パニクるな。
中村はがんを「非常に良い病気」と言う。経験上、放置されたがんは痛みがないという。比較的最後まで意識があるので、身辺整理ができる。親しい人にお礼とお別れがいえる。下手に治療すると、早期発見だったとしても再発に怯えながら生きなければならない。老人なら手遅れの方が幸せだ。知らない間は明るく普通の生活をし、最後は消えるように逝ける。あ、これに決めた。(柴田)
週刊文春編「私の大往生」2019 文春新書
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166612298/dgcrcom-22/
「大往生」は英語で「die in peace」になるらしい。
●今更ラグビー、アルゼンチン対トンガ続き。座っていたのはトンガ陣地側。トンガがアルゼンチンを攻めていたら、反対側になって見えにくいなぁ、こっち側で試合が進むといいなぁと思っていた。
開始7分で、アルゼンチンがトライ、コンバージョンキック。ずーっとトンガ陣地側での試合。17分、20分にもアルゼンチンがトライ。いいのよ、見えやすいのよ。でも、その頃から段々とトンガ頑張れと思い始めた。
まわりも同じだったようで、トライやキックを決められたら、歓声よりもため息が増えていったし、頭を抱える人も出てきた。(hammer.mule)