《gggで字字字を見る》
■わが逃走[170]
三年目のポスターの巻
齋藤 浩
■もじもじトーク[30]
字字字に行ってきました
関口浩之
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■わが逃走[170]
三年目のポスターの巻
齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20151112140200.html
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伊藤嘉朗建築設計事務所のポスターを自主プレしたのが三年前。
シンプルな幾何形態だけで何かできないか? また前から興味のあった『継手』の技術を図案化したい! という、いずれも習作としてあたためておいたアイデアをもとに二点シリーズとして仕上げた。
このときは鉄骨造(溶接)と木造(継手)という二つの相対する技術の対比をシンプルな色使いで提案。
伊藤氏からは二つ返事でOKをいただいた。これは別に長い付き合いだからという理由ではなく、プロとして対等の関係に立った上で制作意図が素直に伝わったから、ということなのだと思う。
思うに、いいデザインとは、必ずと言っていいほどこの“対等の関係”の上で成立している。このポスターは多方面で好評を得て、いくつかの本でも紹介された。
翌年も制作が決定。前回が好評だっただけに、それなりにプレッシャーを感じていた。
この年は構造美をテーマとした写真作品の制作も同時進行していた影響か、構造そのものが持つ機能美、力強さをいかに表現するかを、日常的に考え続けていた(今もそうだが)。
どうせなら今回も二点シリーズで見せたい。前回が鉄と木という素材の対比でもあったので、次はどういった関係で見せるべきか。
そもそも純粋に、美しい構造体とは? などと考える日々。
ちなみに、考えるときは机に向かっている訳ではない。アイデアが出る瞬間のほとんどは移動中の電車の中だったり、喫茶店でコーヒーを飲んでいる時だったり、散歩しているときだったりなのである。
そしてあるとき、確か神保町界隈を散歩してるときだったか、「そのまんま」ってのもアリかな? と思った。
建築って構造自体の美しさだよねえ。たとえ掘建て小屋にしたって、棒っきれと板を組み合わせて自立する訳だが、自立するってだけでじゅうぶん美しい。
ただし、その美しさをすべての人と共有できるかと言えば、ノーなのである。では、共有するためには、どのような工夫が必要か? そのためのモチーフとは?
で、気づいたのが、それ自体に幾何学的美しさをもつ立体トラス構造である。雪の結晶を美しいと感じる感性が全世界共通なら、立体トラス構造にも同じことが言えるだろう。
では、これと真逆な構造とは何か? 一概には言えないけど、完成すると構造そのものが見えなくなってしまうという点で、鉄筋コンクリート構造と言えるのではないか。それならシリーズを組むのもアリかもしれない。
そういえば、伊藤嘉朗建築設計事務所にはロゴがない。伊藤氏の思想から類推するに、そんなものは不要なのだろう。
しかし、どうせならその考えをうまくグラフィックに着地させるための工夫があってもイイのではなかろうか。
設計の根源というか、そういったものをとてもシンプルに、ちょっとした主張として残すというルールを定めるのも悪くはないはずだ。で、できたのがこれ。うん、アリだった。
画面のどこかに必ず直線と正方形を入れることとしてみたのだ。いわゆる面と線。まあ、何事にもあてはまるんだど、建築設計の概念をバラしてバラしてバラし続けて最終的に残るものは何か? と考えてみると、やはり面と線なのだ。
メインのモチーフも正解で、立体トラス構造はイメージどおりの仕上がり、鉄筋コンクリート構造にいたっては想像以上だった。今にして思えば、背景の青が平凡すぎたかな。
このポスターもクライアントから高評価だったのにくわえ、複数のコンペに入選するなどの結果を残せたのが嬉しい。
そして三年目だ。前回や前々回の焼き直しでもじゅうぶんイケるとは思うけど、素材や構造をモチーフにしつつも、新しい見せ方を提案したい、と思った。
最初はトラス構造やアーチ構造などの歴史を遡ってモチーフを探すのもアリかと思いラフも作ったが、どうにも二番煎じな印象になってしまう。
ふと机の脇を見ると、伊藤氏が制作した建築模型(3Dプリンタで出力したもの)がある。じーっと見つめる。これって“面”だよなあ。
で、直感的に決めた。今年は“面と線”でいく。面に関してはこの模型の中から外を見た印象をイメージする。
線はどうする? これはもうシンプルにケーブル構造だろう。
ケーブル構造の建築を伊藤氏が過去に手がけているかとか、そんなことは知らん! しかし、彼の建築脳の中にはあらゆる構造がひしめいている。なので、全然アリなのである。
伊藤氏の感想は、「橋梁のようなデザインは大規模すぎるイメージですが、そのくらいのでかい気持ちで行くのも良いのかな。今までと違うイメージもあり良いと思います」というもので、無事クライアントのOKを頂いた。
さて、世の中の評価はいかに?
【さいとう・ひろし】[email protected]
http://tongpoographics.jp/
1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。
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■もじもじトーク[30]
字字字に行ってきました
関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20151112140100.html
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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。あっという間に11月ですねー。「今年もよろしく〜」って挨拶したのが最近のような気がしますが……(笑)
あと数回デジクリにメルマガ書いたら「デジクリゆく年くる年」号の季節になりますね。
今年は原稿書くのがいつも前日の夜または当日の朝になってしまい、デジクリ編集部に「原稿ドタキャンなのかな」とご心配かけすることもありましたが(すみません)、どうにか休まずに続けられています。
今日で「もじもじトーク」は30号なので、デジクリデビューして約一年半ですねー。これからもよろしくお願いします!
今日は虎ノ門ヒルズで開催のセミナーに参加してました。最後のセッションが終わったのが18時でした。
打合せやイベントが終わると、いつもなら急ぎのタスクが溜まっていて、喫茶店に駆け込んで、ノートパソコンを広げるのが常なのですが(ほぼ100%)、あれっ、今日は久しぶりに急ぎのタスクがなさそうじゃありませんか!!!
ということで、虎ノ門からひと駅となりの銀座駅近くで開催されている『もじもじ』な展覧会に立ち寄ることにしました。
●「ggg」というギャラリー
まず、今日立ち寄った会場の説明をさせてください。
それはggg(ギンザ・グラフィック・ギャラリー:ginza graphic gallery)というギャラリーです。銀座駅から徒歩5分ぐらいのところにあります。
グラフィックデザインと密接なかかわりがある大日本印刷が、画廊のメッカである銀座にgggを1986年に設立し、1991年にギャラリー建物を新築されたようです。
ここではグラフィックデザインやタイポグラフィなどの展覧会を定期開催しています。セミナーやイベントを開催できる会場も併設されています。
・gggのWebサイト
http://www.dnp.co.jp/gallery/ggg/
僕は文字好きなので、AXISフォントなどを手がけるタイプデザイナー鈴木功氏のトークイベントに参加したり、定期開催されるデザインや書体の企画展に何度か立ち寄ったことがあります。
gggサイトで開催されてる企画展を調べて、興味のある展覧会にふらっと立ち寄ることをおすすめします。入場無料の企画展が多いです。気軽に立ち寄れる雰囲気だし、画廊と違い売り込みをされることもありません。これ、大事です。
そうそう、大日本印刷の前身である「秀英舎」は銀座が発祥の地なんです。活版印刷で有名な会社です。なのでgggを銀座に設立したんですね。
大日本印刷が秀英体という書体のメーカーであり、印刷業界では有名な会社である理由は秀英舎が前身であるからなのです。
でも、現在の大日本印刷(DNP)は印刷屋さんというよりも、エレクトロニクスや素材の分野で高いシェアをもつ製品もたくさん製造していますよね。印刷だけでは食べていけない時代ということです。
●「字字字」という展覧会
11月の企画展のテーマは「字字字」です。「大日本タイポ組合」が主催するイ
ベントです。
テーマはまさに文字です。立ち寄らないわけにはいきませんよねw
会場名称が「ggg(ジージージー/スリージー)」でイベント名称が「字字字(ジジジ)」なんです。なんか、ややこしい。
この企画展の入り口のパネルに主催者のこういうコメントがありました。
『こんにちは、大日本タイポ組合です。「カタカナは漢字の一部からできているんだから、カタカナを組み合わせたら漢字のようになるんじゃないか」と思いついたのがきっかけで、文字を組み合わせたのが1993年。
東京タイプディレクターズクラブ(東京TDC)に憧れて、いっそのこともっとビッグな名前にしようと「大日本タイプ組合」と名付け自画自賛したものの、未だに無冠。むしろ名前に縛られて、とにかくなんでも文字でこなさなくならなくなったのは自業自得というべきか。
モジモジしているうちに気付いたら22年経ってしまいました。これまでやってきたこと、これからやっていきたこと、自問自答しつつまとめてみたら、文字通り文字だらけです。
ここggg(ジージージー)での展覧会、タイトルは「字字字」といいます。よろしくお願いします。』※ggg 大日本タイプ組合 企画展のあいさつより引用
これを読んでから企画展のパネル数十点を見学したのですが、展示作品をとても楽しめました。
そして、それぞれの展示作品の横に、作品名とコメントが書かれたタグたくさん置かれていて、持ち帰れるようになってました。とても親切な企画展だなぁと思いました。
展示作品の撮影許可とメルマガ記事掲載の許可をいただきましたので、いくつか紹介します。じゃ〜ん。
http://goo.gl/mxO0b0
最初の作品ですが、一瞬、スマイルが二つ並んだ楽しいグラフィック作品に見えてしまします。だけど、その作品のタグには『Smilemarkの顔が「ジ」と「じ」になっています』と書かれています。
おぉー、「ジ」と「じ」ではないですかーーー! こういうの好きです。
一番下の写真ですが、会場の『ggg』の立体ロゴに「ウ冠」と「横線」を加えて『字字字』にしています。楽しいです。
一時間ぐらい見学しましたが、カタカナ、ひらがな、アルファベットと漢字がお互いの違いを主張しつつも、仲良く共存していることを感じました。
たまには、パソコンや仕事から一時間でもいいので距離をおいて、文字やグラフィック、芸術にゆっくりふれあうのもいいなぁと思いました。
芸術の秋なので、皆さんも肩の力を抜いてアートを楽しんでみてはどうですか?
【せきぐち・ひろゆき】[email protected]
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/
1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。
その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。
小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。
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編集後記(11/12)
●大学四年時に埼玉県の公立学校教員採用試験に合格し、赴任先の中学校まで決まった。わたしのそれまでの人生で一番の成功だった。教育学部の出身ではないわたしが、超高倍率の試験を突破したのはほとんど奇跡だ。ところが、大学の学務課の手落ちで(わたしも不注意だったのだが)、この期に及んで教員免許状交付には一科目不足していることが判明、採用は取り消しになった。相当なショックを受けたはずだが、全然思い出せない。中央大学の通信教育で哲学を受講して、翌年教員免許状を交付されたが、その頃はもうガッコのセンセーになる気は失せていた。結局、それがよかった。一年後に出版社に入った。
編集の仕事は天職だった。中学校の社会科教師になれなくて本当によかったとつくづく思う。日本史、世界史をようやく理解しつつあるのがここ数年だ。あの頃のわたしは無知蒙昧。あり得ないほどのアホが先生? 考えただけでゾッとする。さて、文藝春秋7月号の、佐藤優「中国、韓国、ロシアの『歴史教科書』日本はいかに描かれているか」は、三国がどういった思想と歴史観の上に立って日本という国家を見ているかについての考察で、じつに興味深かった。歴史教科書には、その国の次世代を担う若者が知っていなければならない知識や思考法が詰め込まれている。どういう日本観が植え付けられているのか。
中国の歴史教科書は基本的に、反日教育でナショナリズムを煽るのではなく、世界史の中で中国がどう振る舞ってきたかを描こうとしており、反ファシズム陣営として米英などと共に大戦で勝ったこと(ウソつけ)を強調する。階級闘争史観と徹底したリアリズムに貫かれていて、行き詰まったら自分に都合のいいものに入れ替えればいい、帳尻をあわせればいい、臨機応変であることが歴史から学べることだと言う。ロシアの歴史教科書は他の二か国に比べて内容が圧倒的に難しく大学レベル。日本に対する復讐戦であった第二次大戦における対日戦争の記述からは、ロシアという国家の狡猾な部分が読み取れる。
韓国の歴史観は日本にとって脅威である。世界の教科書の中でも極めて珍しい「テロリスト史観」で貫かれている。「我が国の先達はここまで追い詰められ、テロをせざるを得なかった」という歴史が延々と綴られている。歴史の書き換えをしたり、肝心なことを記さないのも特徴で、カーッと頭に血が上がる怒りの感情が底流を貫いている。自民族内での同質化の比重が非常に高いため、普遍性がない。この教科書を読んで世界と渡り合う客観的な知性や歴史観を持てるとは思えないという。こういう歴史観を持った国が隣にあることを、我々はあらためてしっかり認識しておかねばならない。嗚呼、厄介な国だ。(柴田)
●Ingress続き。今の土地に引っ越してきて6年。Ingressをやり始めてから地図を眺めることが増え、町の位置関係がわかってきた。町名を聞けば、どのあたりかわかる。
区画整理のできていない古い土地が結構残っているため、交差点が直角にはなっていない。向いている方向に地図(スキャナー画面)を動かさなくても、行き方が把握できるようになりつつある。
点と点が繋がるようになった。曲がり角の先に何があるか、どの道路がどの道路に繋がっているのかわかりはじめた。今まで横切るだけの道路を歩いていけばどこに出てくるのか、そこに何があるのかわかるようになった。続く。 (hammer.mule)
http://m2college.net/fes4/
まにまにフェスティバル(まにフェス)P4
伯母が大阪豊中のお伽工房で3人展。陶、ジュエリー、革カバン。11/22〜29。
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