[2893] 電子書籍、突き進むべし

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《民主党のおかげで私はすっかり保守に目覚めました》

■電網悠語:日々の想い[161]
 電子書籍、突き進むべし
 三井英樹

■ショート・ストーリーのKUNI[83]
 ほっといてくれ
 ヤマシタクニコ

■ローマでMANGA[31]
 日本のMANGA言語とイタリアの才能を混ぜて新しい漫画を作る!
 midori



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■電網悠語:日々の想い[161]
電子書籍、突き進むべし

三井英樹
< https://bn.dgcr.com/archives/20100722140300.html
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「自炊」と、自己人体実験を繰り返している。自炊とは、書籍を裁断してスキャンして取り込む作業の総称。人体実験とは、どの程度のことが許されて、何にイラつくのかを試す作業。

自炊で言えば、裁断からスキャン、そして検証(ページ落ちやズレなど)までの時間的な測定。多くのデータが、ちょっとググれば出てくるけれど、やはり自分で試さないと分からないことは多い。

特にコンテンツに関する嗜好性によって、設定方法は異なるだろう。私の場合、5割が漫画、2割が小説、残りが技術系。傾向的には漫画は微増(昔の捨てられないものが圧倒的)で、技術系が増加中。共通項は、写真は少ないが図が多い。更に、部分的にカラーが入るものが混じる。総じて漫画は昔の方が手の込んだ製本が多く、自炊にはそれなりに気を使う。

自炊処理としては、単一の処理を集中した方が私には効率が良さそうな感じなので、白黒だけ、カラーだけと処理をして、PDF結合でまとめる。作業的には、3:2ぐらいの割合で裁断とスキャンをして、最大でも3時間程度にするのが、苦に感じないコツ。それ以上だと肉体労働色が苦痛に感じだす。また、OCRをかけるとKindle2ではページ送りが極端に遅くなるなど、まだまだデバイス依存があることも分かっているし、その意味で自炊済み具材を捨てにくい状況が続く(かといって、再度スキャンし直すかどうかは微妙)。


人体実験としては、読む場所や集中度、その他活用に関しての主観的な事柄。克服したいのは、基本的には通勤時間帯。mailニュースやTwitterでの情報収集も有効ではあるけれど、自分がお金を出しても学ぼうとしたことを読む時間がなくて辛い。

  ・電子書籍、読む速さ低下 満足度は同じ 紙と比較調査(asahi.com)
  < http://www.asahi.com/culture/update/0707/TKY201007060729.html
>

そうした観点では、上記の調査は私にとっては殆ど意味がない。ゆっくり座って本を読むときの、デバイス別快適度調査に興味がない。ゆっくり読めないけど、読みたいから工夫している。理想的な読書スタイルが現実的なら、電子書籍は正に本の再現だし、そのUIに勝負が付けば、書架節約率だけの競争になる(それはそれで魅惑的だが)。

ただ、この調査で面白いのは、パソコン(PC)との比較だろうと思う。明らかに、読書に関して低い満足度しか得られていない。

  比較のため、パソコン(PC)でも同じ小説を読んでもらった。その後、使
  い勝手に関する満足度を7段階で採点するアンケートをしたところ、iPad、
  キンドル2、紙の本は、それぞれ5.8点、5.7点、5.6点とほぼ同じだった。
  パソコンは、3.6点と低かった。(asahi.com)

ここでいうPCが何を指すのかは、よく分からない。Adobe Readerなのか、他の専用ソフトか、あるいはそれらが搭載されている統合環境としてのPCなのか。私的には、PCは他のことができ過ぎて読書に集中できないことが一番ネックで、次はPDFリーダが貧弱すぎるのが障壁。漫画のトーンの表示に関して比べれば差は明確で、PCではモアレ(網目のつぶれ)が酷い。更に適正な大きさに調整することが微妙に面倒。検索したり、文献をコピーしたりする作業には、最適に近いのかもしれないが、やはり読書へのノイズが大きい。更に考えれば、姿勢なのかもしれない。PCモニターと顔との位置関係は、読書には余り向いていない気がする。


実験の中で感じているのは、PC系(情報操作/詳細検索)+ケータイ系(オーガナイザー)+Kindle系(閲覧)の三種コラボ辺りに収束する予感。それ以上には減らない、そして今PCとケータイで済ましている現状に問題があるのではないかという予想。この三種をの必要性は実は今でも変わりなくて、大抵の会議には、ノートPCと紙資料とケータイはぐちゃぐちゃとACアダプター込みで持ち込んでいる。

会議が集中している日は、溢れんばかりの資料と機材を束ねて、引越ししているような感じさえする。時々はトートバックに詰めて会議室を移動する。無様ではあるけれど、移動が問題なのではない。全てがデータとして管理されていれば良い訳でもない。短い時間内に手際よく諸々決めるためには、PCだけでは余り効率的ではなく、だから工夫している。

映画などに出てくるような、すべてのデータがクリック(或いはタッチ)ひとつで検索できて、見やすく一覧され、更にドリルダウンできる環境は、SIerがそこに価値を認めていない現状ではまだまだ先だろう。しかし、それが達成できたとしても、会議が円滑に進むかというと少し微妙だと思っている。

いつも、頭をよぎるのは、「AKIRA」の1コマ。極秘情報が微妙に漏れるきっかけのシーン。膨大な予算案の表の横に、「アキラ」と落書き(メモ)された紙切れ。それが確信や疑念を膨らませて、ドラマの緊迫感を高めた。

思えば、教科書も書かれてあるコンテンツのみが大切なのではなかった。文字が読めないほど描いた落書き、ページの端っこを埋めたパラパラ漫画。授業と関係ないことばかりだった気がするけれど、私にとっては大切な情報だった。

この辺りまで考え出すと、もはや単なるデジタル化だけの話ではなくなる。今まで自分達がしてきた情報処理の根本から再考する必要がある。電子書籍は、そのための大切な一歩だと思う。


デバイスとしては、(主にPDFの)表示速度とメモリ容量が問題となるのだろう。様々な実機を試せる場所は少ないけれど、幾つかの展示会で触ってみている。もっとこうした場が常設されることを期待したい。

モニタ部分が、液晶になるのか、Eink系になるのか微妙だけれど、後者だとしたら、画面のリフレッシュは重要な要素だ。あのチラつきを気にする人は多いだろう。白黒がカラーになるのにも、それ程時間はかからないようだ。けれど、現時点の実験結果からすれば、私には白黒で充分なものが7割以上だと思われる。どれが自分の感覚にマッチするかは、実際に見てみないと分からないだろう。iPod時代のイヤホン選び以上に大変な作業になるだろう。今のうちに目を肥やしておかないと。

あと、iTunes的な母艦も必要だろう。メモリ量がどんなに増加しても、持ち歩くものである以上、紛失のリスクは避けられない。そして、いまKindle2で試している感覚では、最低でも500冊のレベルで持ち歩きたい。馬鹿げた話かもしれないが、iPodで500曲を持ち歩いている人は普通だろう。今に本もそうなる。そして、500冊を持ち歩く=500冊を一度になくす可能性がある、ということだ。だから、母艦が必要になる。バックアップは避けられない。更に、総合的母艦に育てるなら、同じコンテンツの別バージョンに関する割引システムも必要だ。もう、同じコンテンツをベータ/VHS/DVD...と買い換えるのは勘弁して欲しい。

いま書籍系では、この辺りを利権絡めてゴニョゴニョやっているのだろう。今の書店を守るとかなんとか言いつつ、すっごく使いにくいUIとややこしい手続きが襲いかかってくるようで怖い。だから、自炊に踏み切った。あと10年ぐらいは、PDFというファイルフォーマットは生き残るだろうし、デバイスはドンドンと安くなるだろうし、自分だけの快適さを求めてもバチはあたらないと決めた。

さっさと新しい仕組みに行って欲しい。コンテンツは後から付いてくると思う。それで、教科書のデジタル化と国産Kindleの大量生産まで突き進む。山ほどの場数を短期間でこなせば、あっという間にデジタルリテラシの上昇に寄与するだろう。その子達が、世界に出て行く。そういう投資を選ぶべき時に来た。この話は、また別の機会に。

◎環境設定メモ:
・裁断機:楽天オークション系で購入
・スキャナ:ScanSnap1500をヤフオクで入手
・書籍:BookOff系の主に100円もの(未だ自分の財産には手をつけられない)

【みつい・ひでき】感想などはmit_dgcr(a)yahoo.co.jpまで
・金浦空港にて。NWAに慣れていたので、大韓航空のFAが眩し過ぎ。
・RIAC:RIAコンソーシアム:ビジネスセミナー XVI
ユーザ視点での開発プロセス:成功事例の裏側
< http://www.riac.jp/2010/07/b-xvi.html
>
日時:7月28日(水)14:00〜17:30(13:30より受付開始)
 会場:秋葉原UDXカンファレンス
 ※司会やります、お時間あればお越し下さいm(_"_)m
・mitmix : < * http://www.mitmix.net/
>
・Twitter : < * http://twitter.com/mit
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■ショート・ストーリーのKUNI[83]
ほっといてくれ

ヤマシタクニコ
< https://bn.dgcr.com/archives/20100722140200.html
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その日もぼくはパソコンに向かってだらだらと仕事をしていた。ふと時計を見ると12時をまわっている。もう寝支度にかかってもいいころなのだが、そういうときに限って人間は何か食べたくなるものじゃないか。そうだよね? ほんの少し、口寂しいというかものたりないというか、なにか落ち着かないというか、そんな気分になるものだ。

などと説明している間にも、ぼくの足は勝手にキッチンの冷蔵庫のほうに向かって動き始めた。足が勝手に動くのだから仕方ない。

するとぼくは驚いた。ぼくがこれから向かおうとしていた冷蔵庫の前にはすでに先客がいて、今しも冷蔵庫の扉に手をかけようとしているところだ。ぼくが事態を把握できずに頭の上空30センチくらいの空間に特大クエスチョンマークを浮かばせていると、男はそのままためらいもせず、冷蔵庫を開け、ふふふ〜ん、と鼻歌を歌いながら中を物色し、やがてにんまりと笑みを浮かべるとチーズ鱈の袋を取り出した。そして、冷蔵庫の扉を閉め、戸棚から皿を一枚出してそこへチーズ鱈の中身を半分くらい、ささ、さっとあけた。

男はそのまま無言でそばのテーブルにつき、むしゃむしゃと食べ始めた。ぼくがすぐそばにいるのにまるで気づいていないように。なんだよこいつ。しかも、その食べっぷりがどことなく不快感をあおる。男の風貌も、どことなく不快だ。どこが不快なのかと聞かれてもうまく言えないと思うけど。そう、どこにでもいるふつうの男だけど、すごく不快なのだ。

すると、男は急にぼくに気づいたように目を上げ、ぼくをまともに見た。
「やな感じだろ?」
「え?」
「真夜中に冷蔵庫から何か探して食ってる男ってさ」
「え...まあ」
「特にさ、冷蔵庫の中をぐるりと見渡し、チーズ鱈に気づいてにたりとしたところなんか、もう、ぞっとしたろ」
「ええ」
「君もね、いつも思ってるわけ。もう寝る時間なのにいじましくものを食べる習慣って、かっこ悪いと。改めないと、と」
「ん...まあ」
「そこでおれは、そういう行為がいかにみっともないかをわからせるためにここにいるわけだよ」
「はあ?」
「つまりさ。おれみたいな男が夜中に冷蔵庫を開けて、何かないかと物色して、あげくのはてにチーズ鱈を出してむしゃむしゃと食べてたら『こいつぶんなぐってやろうか』と思うくらいみっともないだろ。君のしようとしてたことはそういうことなんだよ。おれはそれを見せてやったんだよ」
「はあ」
「じゃあ今日はこれで」

そういうと男の姿はふっと消えた。何なんだ、あいつは。幻覚か。それともぼくはねぼけているのか。でも、チーズ鱈の中身は確実に減っている。

次の日、ぼくはまた夜中にだらだらとパソコンで作業をしていた。友だちに頼まれて、結婚式の案内状をパソコンで作ってやることにしたのだ。「案内状? まかせておけよ! そんなもの、寝ててもできるさ!」と言ったものの、いざやるとなると、ついついネットで遊んだりおしゃべりしたりでなかなかとりかかる決心がつかず、始めたのはついさっきだ。

するとぼくは驚いた。ぼくのすぐ横にあの男がいるのだ。パソコンを出して、なにか作業をしている。思わずその画面をのぞきこみ、ぼくはぞーっとした。

デスクトップがフォルダやファイルのアイコンだらけで、しかもそれが整列も整頓もされず、ぐちゃぐちゃになっている。見苦しいことこの上ない。さらにのぞきこむと、フォルダやファイルの名前が「ファイル5」とか「ファイル7」って、それでわかるのか。ファイルはファイルと書かなくてもファイルだろ。「テスト1」「テスト2」あたりはいいとして「テスト16」「テスト24」なんて、一体どんだけテストする気だ。何のテストか知らないけど。

dmgファイルもいくつも散らばってるし、デジカメから移したままと思える「RIMG××××」という数字と記号だけのファイルもいっぱいあるけど、どうする気だ。早く何とかしないとわからなくなるぞ。かと思うと「思い出」なんていやに情緒的な名前のファイルがあるのはなんだ。ひょひょひょっとしてエロ? 「重要」「マル秘」というファイルがデスクトップに堂々とあるのもどうなんだか。

のぞきこんでいるうち、次第にぼくは自分の顔の左半分くらいがひくひくと痙攣し、ゆがんでくるのがわかった。そのデスクトップのあまりのひどさに...ではなく、それと似たようなものをどこかで見たことがあったからだ。どこだったろう...。

ぼくのデスクトップだ!

すると男はにたりと笑ってぼくを見た。
「こういうデスクトップって、いらつくでしょ? もっと整理しろよ、とか思うでしょ? こいつ、ばかじゃないのかと思うでしょ?」
「そ、それをぼくにわからせるために来た、とでも」
「そうそう」
「何がそうそう、だよ!」
「いや、別にいいんだよ。だれが何と思おうがどれだけむかつこうが、きみのパソコンなんだから」
「じゃじゃじゃ、じゃあ、そんないやみなことすんなよ!」
「そうだね。じゃあ今日はこれで」
またしても男はふっと消えてしまった。

3日後、ぼくはやはりパソコンに向かってだらだらとしていた。それにも飽きたので、テレビでも見ようかと思い、椅子を半回転させてテレビのほうを向いた。すると、先客がいた。またあの男だ。男はリモコンを勝手に使ってテレビの電源を入れる。ぼん、と音がして画面が出ると、男はリモコンをせわしげに使ってどんどんチャンネルを変える。

ニュース番組が映り、アナウンサーが「内閣支持率がまた落ちました」というと「あったりまえだろ!」と言ってすぐにチャンネルを変える。そこではこぎれいなセットの中で若いキャスターが某女優に向かい「いつもほんとにおきれいで」と言ってるところだったが、男は「お世辞いうな! どこがきれいなんだよ!」とつっこみ、またチャンネルを変える。

今度はドラマだ。「え、そんな...」「ほんとなの、啓一さん、あたし」「そんな、君が、君が余命一年だなんて!」思わず、お、これって初めて見るドラマだな、どうなるんだろうと思って身を乗り出すぼく。すると男は「くっさ〜。なんじゃこりゃ!」とまたチャンネルを変えてしまった。あんまりだ。何の権限があってそんな...いや、しかし、これも...???

すると男はぼくのほうを向いてにっこり笑った。
「こんなふうに次々チャンネルを変えて、つまみぐいしては文句を言うやつってみっともないと思わないか?」
「ぼぼ、ぼくがそうだというのか!」
「さあ?」
「そ、それこそ勝手だろ! 自分が見たいものを見て、たたた、たとえテレビに向かってつっこんだとしてもだれに迷惑かけてるっていうんだ!」
「もちろんだれにも迷惑なんかかけていないさ。じゃあ、これで」
男はまた、すうっと消えてしまった。

さすがの温厚なぼくも頭にきた。こんなことが続いてはたまったもんじゃない。
それで会社で話してみたところ、意外に経験者が多いことがわかって驚いた。
そればかりか、経験者は解決策も教えてくれた。

「先輩に『そういうときはなすびを食べさせると出なくなる』と言われ、試したらほんとに出てこなくなったよ」
「よくあることだよ。おれの場合、蚊取り線香をたいたら出なくなったけどね」
「シャンプーを変えたら出なくなったよ」
「最終的には開き直ることだね。自分は何も悪いことはしていない、みっともないのがどうした、と開き直るのだ」

なるほど。そこでぼくはシャンプーを変え、蚊取り線香をたき、家の中のあちこちに皿に盛ったナスビを置いておき、思いっきり開き直ったところ、はたして何が効いたのか、あの男は出てこなくなった。

そういうわけで、ぼくは今夜も夜中に冷蔵庫をあさるつもりでいる。もちろんパソコンのデスクトップの整理なんかするもんか。

【ヤマシタクニコ】[email protected]
みっどないと MIDNIGHT短編小説倶楽部
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■ローマでMANGA[31]
日本のMANGA言語とイタリアの才能を混ぜて新しい漫画を作る!

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< https://bn.dgcr.com/archives/20100722140100.html
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●あ〜〜、ついに中途退職!?

前回、デ・アゴスティーニ「MANGAの描き方」シリーズのアート・ディレクターとの食い違いの話をした。

私はテーマに沿った内容から入ろうとする。あるテーマで漫画を作るときに、どうしたらいいかと考えようとする。ディレクターは絵から入る。テーマに沿ったキャラを「でっち上げ」、その背景を「でっち上げ」る。それがデ・アゴスティーニの欲しいものだから仕方がないのだけど。

電話でグチグチと1時間半から2時間かかって文句を言われるのに、若干というか、だいぶ嫌気がさして、ボスに「違った認識で書かなければならないようですと、私には難しい仕事です」とメールを書いたせいか、しばらくグチグチはなくなっていた。しばらくおとなしかったディレクターから7月頭に電話があった。またもや、グチグチと怒り、だが、今回は1時間半ではなく30分で「良い日を!」という嫌みで電話が切れた。

「いかにもやる気のない文章だ」などというのは、まったくその通りなので、それについての反論はない。ただ、ああ最早これまで! と思ってしまった。このシリーズを実際に制作している、グラフィック・スタジオのボスにメールを書いた。

「各号のテーマの切り口などディレクターと話し合い、互いの意見を言います。それで結局採用されるのは彼の意見。提出されたラフの点検をし、その後私がオーケーを出して、それに対してさらにディレクターが直しの要求をする。私の文章の切り口が彼の意見と違い、長短についても間違いだとされる。つまり、双方で時間の無駄。私は使えないものを作って報酬を泥棒しているのと同じこと。そちらさえよければ、私がこの仕事から手を引くことを提案します」と書き送り、めでたく承認された。

仕事を中途で放棄するのは、なんとも気持ちが晴れないけれど、どう考えても双方無駄なことをしているのは事実なので、選択は間違ってないと思う。

同時に受け持っている同じシリーズのウエブサイトの方では、私(と、コミックス・エージェンシー「ネコノアシ」の相棒ジョルジャ)はスタッフ、登録者ともに受けが良く、ミステリーである。冊子ではこんなに仕事ができないのに。こちらでは、私たちへの更なる参加要請ともに、報酬アップが決まった。

ウエブの報酬は、額で言えば冊子のほぼ並みの月給から見ると1/3であったのが、並みの月給の半分くらいまであがる。つまり、月額人並みの給料+1/3だったのが、人並みの給料の半分、ということになる。正直生活に不安があるけれど、思うように仕事をして評価されるのは嬉しい。

これを基盤に、ますますMANGA好きのイタリア人のために、知っていることを惜しみなくお届けして、新しいMANGAが生まれる基盤を作りたい。さらに人並みの給料が得られるようなお仕事に発展すれば言うことなし。

●MANGA言語解説ビデオを企画

デ・アゴスティーニの冊子は、今やめてもやめなくても、100号で完結。永遠の仕事ではないので、その先を考えているところだった。今すぐ報酬とは結びつかないけれど、MANGA言語を解説する10分程度の動画を作成して、YouTubeで順次アップししたらどうかというアイデアが生まれた。

ジョルジャと二人でおしゃべりしながら、なるべく簡単にMANGA言語を解説し、それに関連する日本文化にまで言及してしまおうというもの。YouTubeでアップしたものをコンテンツとし、それをDVDや本にする。

と言ってたら、ウエブのスタッフがこの話をおもしろがった。そのビデオブログをサイト内でやらないか? と言ってきた。私たちは本も絡めて、一緒にやらない? と持ちかけている。自分たちで小さな出版社を探して細々と出すよりは、デ・アゴスティーニというネームバリューを利用できるなら願ったり叶ったりだ。

実現すれば、初めて日本人(と、日本とMANGAを理解するイタリア人)による、イタリア人のためのMANGA解説書になる。デ・アゴスティーニのウエブ担当者が乗っても乗らなくても、ともかく自作ビデオ→本はやるつもり。

●相棒ジョルジャのプロデュース能力

コミックス・エージェンシー「ネコノアシ」を一緒に立ち上げたジョルジャは、プロデューサーの能力があるみたいなのだ。彼女は、ローマのコミックス学校の校長の娘で、教務課長として次々と新しいアイデアを出していった。今、毎年行っている東京のアニメーター学院への二週間の体験留学も、発案から実施までジョルジャが原動力になっている。

30歳過ぎて、途中で放棄してい大学卒業を目論み、仕事の合間に勉強をして、次々に単位を取り、あと2単位を残すのみになった。その中で書いた論文を手直ししてあちこちに売り込み、興味を持つ出版社を見つけ、今年9月に出版が決まった。まず、自分へのプロデュースを行ったわけ。

次に、学校で「視覚コミュニケーションの歴史」を教えている先生に、本を出さないかと持ちかけた。この先生の授業には私も何度か出席したことがあり、わかりやすい解説から得た「ものの見方」は私の授業にも役立っていて、私も「本を出せば?」と言ったことがある。

ただ、彼は頭がすごくアーティストで、思いや知識やアイデアはたくさんあるけれど、現実に結びつけるのが今ひとつ下手。いま彼の能力を知るジョルジャがお尻を叩き、思いと知識を言葉に出させ、本にすべくイントロとエンディングを決め、その中間のつながりを埋めつつある。

イタリアMANGAの描き方の本も、ジョルジャのプロデュースで動き出す。いつかやりたいと思っていたことのひとつだ(いつかやりたいことは他にも、地球を外から見る、というのがある。これはまったく別の話だ)。ジョルジャは動くとなると、方法論を組み立てどんどん動くから、きっと実現する。娘といっていい年齢の友人と組んで、実現に向けて動くのは楽しい。

エージェンシーも、当初はイタリア人作家の作品を日本に売り込むことを主な業務にと考えていたのだが、日本の現在の市場では、ほとんど現実的ではないことは、何度か日本でいろいろ出版社と話してみてわかった。

コミックス・エージェンシー「ネコノアシ」はイタリア内部に向かおう、ということになり、MANGAの描き方の本とビデオを手始めに、やっと私の夢である「日本のMANGA言語とイタリアの才能を混ぜて新しい漫画を作る」プロジェクトが動き始めた。

【みどり】[email protected]

はいはい、そうです。民主党のおかげで私はすっかり保守に目覚めました。「保守」というと「右翼」で、目を吊り上げて、はちまきして日本刀持って、自分の主張だけ声高に押し通す、通らないとキレる──というようなイメージを漠然とお持ちの方もいらっしゃいましょうが、日本を日本として保ちたいという素朴な思いに目覚めただけ。

米世論調査機関ギャラップの調査によれば、デンマークが世界で一番幸福な国となったそうだ。消費税25%、所得税45%、でも出産費用はじめ、小学校から大学までの教育費、病院の入院、治療費、葬儀代まで国家が負担する。食料自給率は300%、エネルギー自給率156%を達成している。支払った税金が、確かに自分たちの生活を支えているという信頼があっての高税。そして投票率は80%を毎回下らないそうで、国民のほとんどが政治に関心を持っている。学校では歴史の授業に重きを置き、「正しい歴史」教育を通して自国の成り立ちを知り、次世代が何をすべきかと若者自身が考え、若いうちから政治に関心を持つ、のだそう。

それが私の言う「保守」。国民が政治に関心を持てば、多数を嵩に懸けてマニフェストにない闇法案の成立を謀る政党や、つまらない揚げ足取りばかりで、政治家を正しく評価しないおかしなマスコミのあり方にも疑問を持ったりするだろうに。

(『なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか』ケンジ・ステファン・スズキ著/合同出版)

イタリア語の単語を覚えられます!と言うメルマガだしてます。
< http://archive.mag2.com/0000075559/index.html
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■編集後記(7/22)

・石井秀一「墓地散歩」を読む(日刊スポーツ出版社、2010)。墓マイラーのためのガイドブックにしては280ページ超と厚過ぎる書籍だ。持ち歩きにはまったく適していない。この本は日刊スポーツ新聞レジャー欄で1年間、51回、登場人物65人の連載エッセイを再編集したもので(目次で51人。総登場人物197人とか)、メインは登場人物の残した興味深いエピソードだ。「この本は、もちろん過去に生きた人々の、生きた言葉を拾うことに重きをなした。死の周辺、『あの人』はどんな言葉を発したのか、その情景はいかばかりであったか。その多くは残された書物などから引用し、再現を試みた」とあとがきにある。スポーツ紙の連載だけに、なじみ深い人物が多く、知られざる話、心にしみる話、笑える話など、各人5ページで要領よく収まっている。本文2段組み下段には人物データ、お墓データ、所在地地図、お墓の写真などが収容されている。小さな文字でびっしり、読み応えがある。だから、ひとりひとりの情報量はかなり多い。ストレートなタイトルから、のんきなエッセイかと思っていたが、これはフィールドワークと文献読み込みにかなり時間をかけた労作だ。巻末に別刷り16ページの「霊園ガイドマップ」がある。青山、谷中、雑司ヶ谷、小平、多磨、染井の各霊園と、築地本願寺、池上本門寺の霊園マップ、そのほかが収録されている。これは便利、たぶん本からとり外して用いるのだろう。わたしは墓マイラーではないが楽しめる一冊だった。(柴田)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4817202777/dgcrcom-22/
>

・昨日紹介された「『タッチ』全一巻を作ろう(Daily Portal Z)」を読んで軽くショック。同じ裁断機なのに、裁断面を表示するライトがLEDに変わっていた......。/iPadに否定的なニュースがちらほら。私はiPadで読書というより、iPhoneより大きくなって見やすくなるだろうスケジュールアプリやメール、金銭管理アプリを稼働したいと思っていて、使っているスケジュールアプリのiPad版が出るまではと思っている。読書したくても、最近の過密スケジュールではなかなか。図書館から予約本が届いたと連絡が入っているのに、取りに行けなかったり。で、iPadは暇しているかと言うと、過去に自炊しておいた漫画を「ComicGlass」使って家族が読んでるよ。漫画に限らず、連番JPEGファイルをZipで圧縮したものを、解凍しなくても直接読めるアプリ。二枚のファイルを並べての見開きにも対応しているので、漫画の見開きぶち抜き迫力画面も問題なし。で、ちょっと疑問が出てくる。読書だと長時間占拠されるわけで、読書中にちょっとスケジュールを、なーんてどうなのさ? 空いている時間にだけ確認なんて意味ないわけで、結局パソコンかiPhoneで確認? 二台目導入はiBooksもしくは電子書籍市場が成熟してからだと思っているんだけど......。いや、読書だけなら他の機種でも......うーん。(hammer.mule)
< http://portal.nifty.com/2010/07/21/a/
>
『タッチ』全一巻を作ろう(Daily Portal Z)
< http://comic-glass.ryusuke.net/
>
ComicGlass。有料化したみたい。現在は半額の115円。