電子浮世絵版画家の東西見聞録[81]Corel Painter Sketch Pad、身欠きにしんと茄子の煮物
── HAL_ ──

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●手軽に描ける感覚が感動的な「Corel Painter Sketch Pad」

久しぶりに静かな興奮を覚える、素敵なアプリケーションに出会いました。その名もCorel Painter Sketch Pad。Painterの名前が付いているので「ペインターの廉価版かな?」と思ったら大間違いでした。このソフトは、名前の通りスケッチするためのソフトだったのです。起動すると、ディスプレイいっぱいにSketch Padが広がります。それは、なんとなくArtRage 2に似ています。

ArtRageは、イーフロンティアから販売されているお絵かきソフトです。油彩や水彩など絵を描くための道具がそろい、筆に水を含ませたり、絵の具の濃度を上げたり、様々な機能が付きとても楽しいソフトです。私もずいぶん楽しませてもらいましたが、結局のところ、本気で絵を描こうと思うとPainterを立ち上げてしまい、徐々にArtRageを立ち上げる回数が少なくなりました。パッケージの絵まで描かせてもらったのに、不義理な私です。

実はSketch Padもそんなものかなと思っていたのですが、じつは絵を描くためのソフトではなかったのです。もちろん、本気で取り組めば絵は描けます。ですが、そんな気にはさせないソフトです。


スケッチはアイデアを練る時に行う行為です。Sketch Padは、そのアイデアを練る準備のための面倒な手続きがいらないのです。まず、立ち上げると白い紙が広がります。その上で鉛筆を使い、アイデアを練っていく、アナログの世界観なのです。鉛筆はPainter 11に搭載されたスケッチ鉛筆と同等で、この鉛筆はタブレットのペンを少し斜めに傾けると、まるで本物の鉛筆を使っているかのように線の幅が広くなります。適当に線を重ねながら、必要な線を太くしたり、影を付けたり、気軽にスケッチが出来るのです。

もちろん、鉛筆だけではなく水彩や油彩ブラシ、インクペン、ぼかし筆等々が揃ったパレットがあり、カラーパレットやツールも、丸いフロートしたパレットになってどこにでも置いておけます。ArtRageはパレット位置が固定でした。それらパレットの表示非表示は、キーボードで簡単にできます。さらに、筆の太さや、筆の選択までがキーボードで行えます。パッドの回転も可能ですし、画面の拡大縮小表示もすべてがPainterと同じ扱い方で作業できます。intuos4のキー割り当てをすると、さらに独自の使用感を得られるでしょう。

なにより、このSketch Padはファイルが一枚だけではなく、次々に紙を追加できるスケッチブックだったのです。スケッチして、アイデアが詰まったら新しい紙を広げ鉛筆を走らせ、再び元の紙をめくってみたり、自在にSketch Padの中でアイデアを練り直せます。もちろん、レイヤー機能もあるので描いたものを移動して、別レイアウトさせることも出来ます。面白いことに、描いたものの形の確認用に作ったのか、左右や上下の逆転機能があります。そして、保存もせずにそのまま終了してしまっても、数頁にわたり描きためたアイデアは次の起動時、瞬時に現れます。そのまま閉じて引き出しにしまう感覚で、ファイル保存の行為すら行うことはないのです。

Sketch Padのファイルは特別な形式で保存されていますが、描いた一枚ずつの絵はPainterのrifやPhotoshop psd、pngやjpegにも書き出すことが出来、さらにそのままMail添付も出来るという楽しさです。別に絵を描くでもなく、チャート図や地図など手軽に描いて手軽に送ることが出来そうです。インポートも出来るので、他のソフトで描いた絵もファイリングできてしまいます。縦横比が違っていてもお構いなしなので、このあたりが電子メディアの良いところですね。
< http://www.dgcr.com/kiji/20090706/01 >

テキストだけでは良さがあまり上手く伝えられないの歯がゆいのですが、私にとってSketch Padは、面倒なことは考えずに手軽に描ける感覚が感動的だったのです。こういう製品は使ってみなければ分かりませんね。お試しダウンロード版もあるので、是非使ってみて下さい。デッサンにも使えそうなので、次回の銀座アップルストアでCorel Painter Sketch Padを紹介しようと思っています。興味のある方はぜひお越し下さい。

COREL Corel Painter Sketch Pad 体験版ダウンロード
< http://www.corel.com/servlet/Satellite/jp/jp/Product/1231253537915
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◇Macで楽しいタブレットデッサン:Painter ワークショップ 第3回目
日時:7月8日(水)19:00〜20:00
会場:アップルストア銀座

第1回目は「デッサンとは?」と題して、デッサンの基本的な考え方を学び、第2回目は「絵に対する苦手意識」。そして、第3回目で「デッサン事始め」として、いよいよ本格的にデッサンをはじめます。描く物はリンゴ、前回までの2回に参加された皆様、そしてBlogをご覧の皆様も是非リンゴを描いてArtist HAL_に送って下さい。当日、コメントを挟ながらご紹介したいと思います。デッサンで遊んでみたい、デッサンを研究したいなどデッサンに興味のある方、是非ご参加下さい。
mailto:[email protected]
< http://www.dgcr.com/kiji/20090629/01 >

デッサンは、技術的には輪郭線や視覚的特徴をつかむ絵画の基本的な訓練の方法として修行をつまなければならないと思われています。現在、多くのカルチャーセンターなどでデッサンを学ぶことは出来ます。しかし、本来デッサンには描くための手順は存在しません。デジタルの時代、Macとタブレット、そしてPainter等、グラフィックソフトがあれば手軽に始められるのです。今回のこの講座はアカデミックな考え方に留まらず、Painterとタブレットを生かした新しいデッサンの考え方を、月に一度のペースで参加者と共にゆっくり勉強できたらと考えています。

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◇本日のお薦めYouTube Music──デヴィッド・ボウイ
(David Bowie、1947年1月8日─)英国

前回のトムウエイツは、68号で紹介済みでした。すっかり忘れていましたが、それだけしびれる存在だということでご了承下さい。
さて、今回はカリスマ的存在デヴィッド・ボウイです。この人はめまぐるしく変わるロック界の中では、ビジュアル面で独自の表現をした人です。カウンターカルチャーの騎士と言ってもいいでしょう。もちろん、音楽的にも独特で優れた作品を多く残しています。1972年、コンセプト・アルバム『ジギー・スターダスト The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』は架空のロックスターを名乗り、一年半もの長期にわたる世界ツアーを果たしています。大成功したにもかかわらず、一貫した同じスタイルに固執することもなく、常に新しい音楽性を模索し、現在でも素敵な紳士としての側面を見せて活躍しています。

David Bowie's "Space Oddity"
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Life On Mars?
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Ziggy Stardust
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Heroesを年代による違いでお楽しみ下さい
Rare "Heroes" 1977 Bing Crosby Special
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Heroes (live)
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●身欠きにしんと茄子の煮物

身欠きにしんは大好物のひとつです。今では「にしん蕎麦」は全国的にポピュラーな存在ですが、元々は京都の料理ですよね。ちょっと調べてみたら、明治15年頃、京都の蕎麦屋「松葉」の二代目が考案したそうです。にしん蕎麦は冬の食べ物ですが、にしんそのものは干物なので一年中使ってもおかしくない料理素材です。かつては海のない地方の貴重なタンパク源だったのでしょう。そして、夏野菜の定番・茄子を合わせて炊いた「身欠きにしんと茄子の煮物」に木の芽を乗せていただきました。

カチカチになって売られている「本干し身欠きにしん」の調理はひと手間かかります。最近では「ソフトにしん」というものもありますので、それを利用してもいいでしょう。まずは米のとぎ汁に前日から浸けて戻し「あく抜き」します。翌日、戻したにしんをゆでこぼし、流水できれいに洗って鱗などを取り下ごしらえします。茄子はへたを落として縦に切り込みを入れ、縦半分にして水に浸け、こちらも「あく抜き」します。

鍋に日本酒、味醂、砂糖、醤油、出汁を沸かし、一口大に切ったにしんを加え、弱火強の火加減で煮込みます。にしんがほぼ煮えたら、下処理した茄子の水分を拭き、鍋に加え煮たら出来上がりです。油の強いにしんには香り付けとして実山椒、山椒等をあしらいます。季節感と共にお召し上がり下さい。
< http://www.dgcr.com/kiji/20090706/02 >

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