妖怪・伝説好き。現実と幻想の間をさまよう魂の遍歴の日々をつづります 時々音楽ネタ。英語勉強中なので英語の投稿もするかも。
江戸時代とはどんな時代だったのか? 伝説的キャラクターと妖怪から見る江戸時代の空気
今回は結論から入ります。 江戸時代とはどんな時代だったのか? 天下泰平の環境下で「憂き世」が「浮き世」へと移り変わっていった時代 物語や舞台作品において神仏と人間との結びつきが薄らいでいく時代 そして世の人たちが妖怪をあまり信じなくなってもっぱらキャラクターとして楽しむようになった時代 江戸時代の人たちはおそらく中世の人たちよりもわれわれ現代人に近い人たち、そしてわれわれ現代人が考える「日本人」のイメージの土台となった人たち。そんな人たちを生み出していった時代 さて、今年(2025)の大河ドラマは蔦屋重三郎(1750-1797)が主人公。今年1年で江戸時代の文化がどれだけ話題になるでしょうか。…
地域タグ:茨城県
京都大原の地にて、大蛇伝説と源氏物語とツチノコを追う!…って欲張りすぎ?
本年2025年は巳年、ということで蛇絡みの伝説のひとつでも取り上げておかなきゃいかんだろう、というわけで、本投稿の舞台は京都の大原地区。 タイトルからもご推測いただけると思いますが、まったく繋がりがなさそうな3つのテーマを強引に結びつけて書いたので目次は必須。興味のあるテーマだけお読みになってもOKです、という親切設計(笑) 1.大原に伝わる大蛇伝説 2.ツチノコブームの震源地? 3.伊勢物語と源氏物語 3-1.大原の地にある伊勢物語ゆかりのスポット 3-2.源氏物語との関わり 3-3.「小野」の地名についてまわる神秘的なイメージ 1.大原に伝わる大蛇伝説 大原エリアと言えばおそらく三千院と寂…
地域タグ:京都市
歌は魂なり ~藤原定家と平家物語との意外な関係。そして彼を巡る怪奇伝説について
“さざ波や 志賀の都は 荒れにしを 昔ながらの 山桜かな” By 平忠度(1144-1184)from 千載和歌集 前回の投稿で藤原定家(1162-1241)の名前をチラリと出しましたが、今回は主役級の扱いで。 まず↑の画像は京都府京都市下京区にある新玉津島(にいたまつしま)神社。賑やかな五条エリアにあるこじんまりとした神社ですが、↓の説明板に書かれているようにもともとは藤原俊成(としなり/しゅんぜい。1114-1204)の邸宅内にあった神社です。 祭神の衣通姫は歴史上の人物で近親婚がらみの妖しい伝説を持っている人物です。この人だけでもネタになりそうな面白さを持った人物ですが、ここでは↓のWi…
地域タグ:京都市
葛の葉伝説が伝わる地、信太の森にて歌を鑑賞す ~源頼朝との意外なつながり
“和泉なる 信太の森の 尼鷺(アマサギ)は もとの古枝に 立ち返るべし” By 源頼朝(1147-1199) from 古今著聞集 1.葛の葉伝説のルーツはいずこ? 2.源頼朝が信太の森を詠んだ歌 2-1.信太の森とはどこにあったのか? 2-2.頼朝が握っていた権力の問題 2-3.女性の財産権の問題 2-4.この地域を侵食していった勢力の存在 1.葛の葉伝説のルーツはいずこ? 上記の画像は安倍晴明にかかわる「葛の葉伝説」で知られる大阪府和泉市にある信太森葛葉稲荷神社(しのだのもりくずのはいなりじんじゃ)。伝説ではこの地で安倍晴明の父親、安倍保名がキツネが化けた女性(葛の葉)と結ばれて生まれた子…
地域タグ:和泉市
あけましておめでとうございます。 年の瀬も迫ったころになって急に年賀イラストを描きたくなって作業を開始、予期せぬ年末進行(?)突入して年の瀬の雰囲気を味わう余裕もなくあっという間に年が明けてしまいました。 で、なんとか描きあげたのが↓の絵。 …この絵のためにわたくしの年末が消えたのでした(笑) 「かわいい笑顔と必殺技で世の悪を爆殺!」 これぞ魔法少女と特撮ヒーローの華麗なる融合… ...これは新年の初日の出に宿るめでた~い太陽光エネルギーを封じ込めた羽子板の玉が敵の体内にめりこむとそのエネルギーを放射、エネルギーが火花となって体外にあふれ出るほど大量に注ぎ込まれつつ内部から破壊、爆殺するという…
地域タグ:北区
中世のヘンテコ説話からかつての日本人の信仰世界と世界観を覗き見る ~京都・五条エリア
1.「宇治拾遺物語」にあるちょいとおもしろい説話 1-2.この説話に秘められた神仏の世界観 2.かつての日本人の信仰/精神世界をさらに探ってみる 2-1.浄土宗や修験道との関係 2-2.五条の地に伝わる他の説話・伝説 1.「宇治拾遺物語」にあるちょいとおもしろい説話 京都市の中心部、五条駅周辺の五条エリアには五條天神社という神社があります。「天使の宮」などとも言われていて京都市内(洛中)でももっとも古い神社の一つ、らしい。名前が「天神社」ではありますが、主祭神は菅原”天神さま”道真ではなくスクナビコナノミコト(少彦名命)、ほかにオオナムチノミコト(大己貴命)とアマテラスオオミカミが祀られていま…
地域タグ:京都市
伊勢神宮と仏教との関係を探る ~新古今和歌集から奈良の大仏を経て朝熊ヶ岳へ。ちょっと鎌倉初期の政治事情も。
“神風や みもすそ川の そのかみに 契りしことの 末をたがふな” ---by 藤原(九条)良経(1169-1206) from 新古今和歌集(1871) 前に何度か新古今和歌集の神祇歌をネタにしたのでもう一度。歌の作者九条良経は源頼朝と朝廷の橋渡し役を担った藤原(九条)兼実の息子です。百人一首にもこの人の歌が収録されています。 その百人一首の選者である(新古今和歌集の選者のひとりでもある)藤原定家は彼の九条家の家司的な立場にありました。この良経さん、定家からも将来を嘱望されていたようですが、満年齢37歳の若さで死去。 この歌は彼が平重衡によって焼け落ちてしまった奈良の大仏&大仏殿が無事再建され…
地域タグ:伊勢市
現世と異界のあわいで ~琵琶法師と霊犬伝説に秘められし謎を探る! In 山形県
↑の画像は平家伝説と小泉八雲の「耳なし芳一」ゆかりの地、山口県下関市の赤間神宮にある芳一堂に鎮座する芳一の像です。↓はそのお堂。 ↓は現地の説明板。もともとの阿弥陀寺という名称にはおそらく「安徳天皇や平家の怨霊を(阿弥陀如来の慈悲で)浄土へと導く」みたいな意図がこめられていたと考えられますから、廃仏毀釈による阿弥陀寺の廃止と現在の名称への変更はもともとのコンセプトを大きく損ねてしまっていることになりますねぇ。 そして↓は時宗の創始者、一遍(1239-1289)の足跡を描いた一遍聖絵(一遍上人絵伝。13世紀末作)の1コマ。 第1巻での甲斐善光寺を舞台にした場面で遍歴の琵琶法師が犬に追い立てられて…
地域タグ:山形県
鹿を巡る伝説・信仰の世界を踏み分け進んでみる ~猿丸太夫の百人一首の歌を足がかりに
“奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき” --猿丸太夫(生没年不詳) from 百人一首 史上に名高い歌人の中でも喜撰法師(六歌仙のひとり)と並んで謎めいた存在となっている猿丸太夫。架空の人物説も。上記の歌はそんな彼の代表作(もしかしたら唯一の歌?)です。 前回の投稿で金沢市にある彼を祭神にした猿丸神社を紹介した際にこの歌を挙げたので今回は主役級の扱いで。 今回のテーマは「鹿」です。 1.猿丸太夫の歌を鹿狩りをテーマにした歌を通して鑑賞してみる 1-1 万葉集に出てくる鹿狩りの歌を鑑賞してみる 1-2 鹿狩りと和泉式部を巡る伝説を見てみよう 2.鹿の「利用」と鹿にまつわる不思…
地域タグ:奈良市
オリジナルのヒーローを描いてみました。 その名も「六道浄魔戦記Kagari(かがり)」! このヒーローを主人公にした小説を書いているところでして、その表紙に使うつもりで描いたものです。ビジュアルが先に登場、できるだけ早いうちにKindle出版したいなぁ、と思っております。 白山信仰をベースにしたヒーロー物で、石川県を中心に北陸地方をメインの舞台としています。そう、このところ白山信仰がらみの投稿をしていたのもこの前フリだったのです! 今年大きな被害を受けた能登の人たちがスーパーヒーローのように不屈の闘志で復興するのを祈るとともに、この物語を通して石川県とより深い縁を築けたら嬉しいな、と思いつつ制…
地域タグ:金沢市
“年経(ふ)とも 越の白山 忘れずは かしらの雪を あわれとも見よ” ---藤原顕輔(1090-1155) from 新古今和歌集・神祇歌(1912) この歌の作者は院政の創始者にして権力の絶頂を極めたとも言われる白河上皇の近臣として羽振りを利かせていた(でも途中で失脚→白河上皇の死後に復活)人物。 詞書には「加賀守として現地に赴任した際に白山宮をお参りしたのを思い出しながら日吉大社の白山宮にて詠んだ」とあります。 歌意は「以前白山宮をお参りしてからずいぶんと年を経た今もこうして白山の社にお参りにやってきました。もし白山の神さまがわたしをお忘れでないのなら、この白髪頭になったわたしを哀れとお思…
地域タグ:大津市
猿沢池の伝説を追って室生の地へ飛ぶ! ~奈良・猿沢池&室生龍穴神社
“補陀落(ふだらく)の 南の岸に 堂立てて 今ぞ栄えむ 北の藤波” -新古今和歌集 神祇歌(1854) いつもわたくしの投稿をお読みになってくださっている方(ありがとうございます!)でしたら↑の歌を見て「あれ?前回のnoteをシェアした投稿で取り上げていたのと同じだぞ」と気づかれるかも知れません。 その前回の投稿でかっこつけて「noteでは2000文字以内で収めるのがいいらしい。その気になればわたしにだってできるよ!」みたいなことを書いたのですが、いかんせん2000文字ではやはり短すぎる。書きそびれたことが多々あるのでnoteの投稿を土台にしつつさらに別の記事を書いてみることにしました。 朝に…
地域タグ:奈良県
Noteを更新しました。ご一読いただければ幸いです。 Noteの投稿は2000文字以内がいい、みたいな意見を読みました。長文投稿ばかりしている身からすると正直「2000文字程度で何が書けるんだよ」とか思ったりもするのですが😅、やってみた。 やろうと思えばできるぞ、と。70年代に長~い曲を書いていたのに売れたいがために80年代にコンパクトな曲に大転換を目指したプログレッシブ・ロックのミュージシャンみたいな気分?😆 note.com ランキング参加中神社仏閣・古墳・歴史的建造物めぐり ランキング参加中日本の歴史 ランキング参加中歴史
地域タグ:奈良市
「聖なる地」は「恐怖の地」でもあり ~東西の信仰から見る自然への畏怖の念
↑の画像は金沢市の「仏(みほとけ)の楽苑」で撮影した堂々たる不動明王像。一応妙応寺というお寺が管理しているらしいのですが、駐車場の一角にあってちょっと怪しい…じゃなくて不思議な雰囲気(笑) この不動明王の持つ刀は「降魔の剣」と呼ばれる煩悩を滅するための剣。ドラゴンの倶利伽羅龍の姿を取ることでも知られていますね。 一方比叡山では山を駆け回る「回峰行(かいほうぎょう)」という厳し~い修行では挑む行者は白装束を身にまとうだけでなく、同じ名を持つ「降魔の剣」という名前の短剣(小刀)も携帯するそうです。これは信仰の邪魔をする魑魅魍魎を倒すためでも、熊や猪といった物理的な危険を及ぼす野生動物を退けるためで…
戦国時代におけるキリシタン信仰普及の真相を探る ~乱世におけるメシア思想の視点から
1.キリスト教伝来と禁教化 2.キリスト教の急拡大には弥勒菩薩への信仰がかかわっていた? 3.日本のマリア信仰の背後には如意輪観音信仰あり? 4.豊臣秀吉による「弥勒の世の到来」、そして禁教へ 5.京都市内のキリシタン関連史跡から推測する女人救済との関係 1.キリスト教伝来と禁教化 ↑の画像は京都府京都市下京区にある「フランシスカン・チャペル」です。ここは豊臣秀吉によるキリシタン弾圧の象徴として知られる1597年に起こった「日本二十六聖人」発祥の地とされています。↓が説明板。 彼らは長崎に連行されて処刑されるのですが、説明板にあるように後にローマ教皇ピウス9世によって1862年に列聖されていま…
地域タグ:京都市
Noteを更新しました。ご一読いただければ幸いです。 以前に清少納言と中宮定子についての投稿をしたことがありましたが、この投稿ではそんな二人のエピソードを「枕草子」から紹介してみました。 note.com ランキング参加中神社仏閣・古墳・歴史的建造物めぐり ランキング参加中日本の歴史 ランキング参加中歴史
地域タグ:京都市
以前やっていたNoteを再開することにしました。こっちのはてなブログは長文メイン、Noteの方はもうちょっと軽めの雑記風の路線で行こうかと思っています。 もしよかったら併せて一読いただければ幸いです。 シェアした投稿は水木しげるファンの方ならおなじみかもしれない妖怪とその妖怪伝説の舞台となった石川県の旧大聖寺藩の混沌とした歴史についてです。 note.com ランキング参加中神社仏閣・古墳・歴史的建造物めぐり ランキング参加中妖怪さんこんばんは ランキング参加中日本の歴史 ランキング参加中歴史
地域タグ:加賀市
江戸時代の怪談から女人救済の世界を垣間見る ~京都・誓願寺ほか
“晴れやらぬ 身のうき雲の たなびきて 月の障りと なるぞ悲しき” ~和泉式部(978?-不明) このところ出だしに歌を紹介することが多くなっているので今回も踏襲してみました。なかなかに見栄えがするかなぁ、と(笑)あと最近「~を覗き見る/垣間見る」ってタイトルが多いですね。ちょっとマンネリ化?😅 紫式部や清少納言と同時代に生きたおなじみの女流歌人、和泉式部。紫式部と清少納言は前者が今年(2024年)の大河ドラマのの主人公になったように現実的な視点から語られる傾向が強い(紫式部に関しては有名な地獄堕ちの伝承もありますが)のに対して和泉式部は各地に彼女を巡る伝説が伝わっているなど何かと神秘のヴェー…
地域タグ:京都市
路傍の石仏から女人救済の世界を垣間見る ~千葉県北西部・その他
“龍女は仏に成りにけり などかわれらも成らざらん 五障の雲こそ厚くとも 如来月輪隠されじ” ---作者不詳の今様歌謡 「梁塵秘抄」に収録 ↑は後白河法皇が編んだ今様歌謡集「梁塵秘抄」に収録されている歌。 当時の流行歌謡にどっぷりはまっていた後白河法皇がそれを後世に残すべく(?)編纂したことによって本来なら時代の移り変わりとともに忘れ去られるはずだった当時の流行歌の数々が現代の我々も楽しむことができる、という「奇跡の歌集」。 後白河法皇という人物、賛否両論(かなり”否”寄り?)があって評価がなかなか難しいのですが、タダ者ではない感覚の持ち主だったのは間違いないようです(単なる変わり者?/笑)。 …
地域タグ:印西市
建礼門院徳子の歌から平家物語と中世日本の世界観を覗き見る ~京都大原・寂光院その他
“思ひきや 深山の奥に 住居(すまい)して 雲居(くもゐ)の月を よそに見むとは” --建礼門院徳子(1155-1213?)作として平家物語に登場 日本史を代表する「悲劇のヒロイン」ともいえる建礼門院徳子、源平合戦の最終章たる壇ノ浦の合戦において息子の安徳天皇、母の平徳子など平家一門とともに入水するも源氏方に(髪の毛を熊手で引っ掛けて引き上げるというかなり荒っぽいやり方で)救助され、その後京都大原の寂光院にて亡き一族の菩提を弔いながら余生を送ったと言われています。 ただし彼女の生涯や人となりに関してはよくわかっていないことが多く、没年も「歴代皇紀」をはじめとした各種文献に記された内容から121…
地域タグ:京都市
↑の画像は奈良県葛城市にある「傘堂(または唐傘堂)」。二上山から當麻寺、石光寺などの当地を代表する観光スポットを巡るルート上にあります。 名前は見た目が傘(唐傘)のような形状をしているため。現在は補強材が追加されていますが、もともとは中央の一本の柱だけで支えられていた面白い建築物です。 ↓はその柱のアップ。一辺約40センチほどとのこと。 ↑屋根から突き出している部分の瓦(隅巴瓦?)の瓦に本多の「本」の文字が見えますでしょうか? 一見すると休憩用の東屋のようにも見えますが、れっきとした「お堂」。大和郡山藩の初代藩主だった本多政勝(1616-1671)の菩提を弔うために当時の郡奉行であった吉弘統家…
地域タグ:葛城市
アマテラス降臨す! ~平安貴族の権力闘争を伊勢の地から覗き見る 伊勢・斎宮跡
本投稿は前回の投稿の補足みたいな位置づけになっています。 前回の投稿は↓。ご一読いただければ幸いです。読まなくても本投稿をお読みになるうえでとくに問題はありません…けど、も(笑) aizenmaiden.hatenablog.com 紫式部や清少納言、藤原道長の時代が活躍した時代では道長の一門の御堂流と彼の兄である道隆の一門の中関白家の間で権力闘争が繰り広げられていましたが、そのなかで道長はかなり陰湿な手口をいろいろと仕掛けてきていたようです。 そのひとつに藤原定子の母親、高階貴子(道隆の妻)へのネガティブキャンペーンがあったらしい。彼女は高階氏出身、この氏族は「南北朝の狂犬」こと(勝手に命名…
地域タグ:三重県
平安ノスタルジーの世界をたどる 清少納言と藤原定子、一条天皇 ~京都・鳥辺野陵
“あらたまる しるしもなくて 思ほゆる 古(ふ)りにし世のみ 恋いらるるかな” 「世の中が変わる様子もなく、ただただ過ぎ去ってしまった昔の世を恋しく思います」 ---清少納言が詠んだ歌。 近年「昭和ノスタルジー」ともいうべき風潮があちこちに見られます。「あの頃はおおらかでよかった」とか「日本が元気だった」とか。文字通りの「ノスタルジー」であって、今より当時が良かったわけでは必ずしもないわけですが、こうした風潮そのものが現代日本の状況をよく示しているのかも知れません。 そしてそんなノスタルジーを感じる方にとってこの清少納言の歌は「わかるわかる!と親近感を覚えるのではないでしょうか。 とはいえこの…
地域タグ:京都市
あなたの知らなくていい世界 ~ 安倍晴明と紫式部 in 京都御苑その他・後編
さて、前回の投稿の続き。これからが本番です。前編をまだお読みになっていない方はぜひご一読のほど、よろしくお願いいたします↓ aizenmaiden.hatenablog.com 前回の最後に少し触れた藤原道長の邸宅、土御門邸。現在の京都御苑の敷地内にあったのですが、残念ながら説明板の立て札のほかはなんにも残ってなくて寂しい。↓がその跡地の様子です。 ここで道長が栄華を極めるとともに、彼の権力の土台となった外孫の天皇たちが生まれた地でもあります。1016年に邸宅が火事で焼失してしまった際にはあの源頼光が再建の際の家具・調度品をすべて用意した、なんてエピソードも伝えられていたりしてなかなか興味深い…
地域タグ:京都市
今回の投稿では安倍晴明から今年の大河ドラマの世界にちょっとばかり迫ってみたいと思います。 なお、これは以前別のブログで投稿したものをちょっと書き直したものです。 ところで、80年代から90年代にかけての時代には今思うとかなり斬新なテレビ番組が放映されていました。 「宜保愛子の心霊スペシャル」「矢追純一のUFOスペシャル」「ユリ・ゲラーの超能力スペシャル」「川口浩の探検隊シリーズ」...このようにいかにもうさんくさい...じゃなくて神秘的かつ啓発的な番組がお茶の間を賑わせていたものでした。 というわけで、こうしたいかがわしい...じゃなくて神秘的な番組のスタイルを歴史の文脈でできないものか?とい…
地域タグ:京都府
源頼政の伝説から重量不定の法則(?)についての検証を試みる ~頼政塚・千葉県印西市
↑の画像鵺退治で有名な「源三位」こと源頼政(1104~1180)の首が葬られていると伝える「頼政塚」。とその説明板。千葉県印西市にあります。 平家政権打倒を掲げた以仁王に呼応して挙兵(1180年)するも追討を受けて敗北、最後は京都の平等院で自害して果てたとされる源頼政。そんな彼の首がどうして関東地方、千葉県にあるの? というのが今回のテーマのひとつ。 彼の鵺退治に関しては前回の投稿で取り上げましたが、出典元となる「平家物語」では彼は朝廷に怪異現象を起こしていた怪物、鵺を見事退治した報奨として伊豆国をもらっています。そして彼の息子である仲綱が国司となった、頼政自身は丹波と若狭にも所領を得た、とな…
地域タグ:印西市
万葉集より 「花散らふ この向つ嶺(を)の 乎那(おな)の嶺の 洲(ひじ)につくまで 君が齢(よ)もがも」(巻14 3448) 少し意味を取りにくい歌なのですが…「花が散っている乎那の嶺(山)が低くなって湖の洲に届くくらい低くなるまであなたが長生きしてほしい」というちょっと現実離れした意味にとる説が一般的なようですが、「この乎那の山に散っている桜の花びらが湖の洲にたどり着くまであなたに生き続けてほしい」という意味にとる説などもあります。 前者だと君が代みたいに永遠の繁栄を寿ぐ内容になるのに対して後者では目前に迫っている「君」の最期の瞬間をできるだけ引き伸ばそうとする儚い願いを感じさせる内容にな…
地域タグ:浜松市
前回の投稿で愛宕権現について触れましたので、せっかくなのでこの話題も。有名な戦国末期の名将、直江兼続(1560-1620)の兜の前立と愛宕権現との関係について。 ↓の画像は米沢神社&米沢上杉博物館で撮影してきたものです。 堂々たる「愛」の文字が強烈なインパクト! ↑イメージキャラクターのかねたん&その愉快な仲間たち ↑この兜の本物はこちら、上杉神社境内にある上杉神社稽照殿(けいしょうでん)で見ることができます。残念ながら撮影不可。後述する上杉謙信着用と伝える「色々威腹巻」もここで。 前回の投稿でも書きましたが、愛宕権現とこの神を進行する愛宕信仰は非常に複雑な背景なり土台を持っておりまして、正直…
地域タグ:米沢市
↑の画像は後述する東京都港区の愛宕神社です。 歴史や寺社・仏閣がお好きな方の中にはおそらく山も好きという方が少なからずいらっしゃると思うのですが、そんな山好きにとっての心強い味方、山と渓谷社から↓のような素敵な本が出ております。 2万5000分の1サイズの地図に記載&命名されている山々をいろいろな視点から類したものでして、歴史好きにとってもなかなかに面白い内容になっております。 いわゆる「平成の大合併」によって歴史的な地名の多くが失われてしまったわけですが、山は合併しようもなく、名前も変わっていない。今後も山体崩壊でも起こさない限りは変わらないでしょう(自治体が観光客誘致のためにどうでも名前に…
地域タグ:港区
これが乙女のポリシー? 「乙女」の地名の謎を探りに訪れてみた…が? ~滋賀県高島市、乙女ヶ池
↑の画像は滋賀県高島市にある「乙女ヶ池」で撮影したものです。 池の中央を縦断する形で橋(太鼓橋)がかけられていまして、なかなかに風情ある雰囲気を楽しむことができます。 そして今回の記事のタイトルはセーラームーンのEDテーマ曲(1993)から。これ歌詞がいいんですよねぇ。「いつだって女の子はなりたい自分になれる!」って内容。 youtu.be これは男の子向けのヒーロー物の主題歌によく歌われるテーマ(自分の道を貫け!そのためならいかなる困難にも立ち向かえ!的な)を女の子の価値観や世界観にしたって感じなんですけど(なのでこのタイトルは「男の美学」と似たような意味を持っている…ハズ)、なので女性が聴…
地域タグ:高島市
君は見たか、湖の向こうに西方浄土が現れるのを! ~琵琶湖を巡る他界観についてと鵜川四十八体仏と竹生島
↑の画像は琵琶湖の西岸、滋賀県高島市鵜川の地にある「鵜川四十八体石仏群」。近年SNSでよく撮影スポットとしてよく上げられる海上鳥居がある白髭神社の近く(車がガンガン通る道をちょっと歩きますが)にあります。↓が説明板 このエリアの西側に広がる比良山地で採石された比良石で作られたらしい阿弥陀如来像群。もとは名前の通り48体あったらしいのが現在残るのは33体。 全体的に表面が平べったい作りになっているのはこの地方の石仏の特徴だそうです。 ↑は首がちょっと不安定に修復(?)されていますが、顔立ちが周囲の石仏とは明らかに違います。頭部は別物? 前回の投稿では京都の北白川を産地とした白川石について少し取り…
地域タグ:高島市
今回はかつて日本でよく見られた群衆による「石投げ」、印地打ちについて。↓の「石合戦」のWikiページにあるように記録だけでも古代にまで遡ることができるという由緒正し~いコンセプト。 ja.wikipedia.org 地面に転がった石を拾って誰かに向かってぶん投げるというのは実に恐ろしい武器になるわけで、それが集団で行うともなれば殺傷力を備えた立派な軍隊にもなりうる。なにしろ元手がかからない遠距離攻撃用の武器、しかも身分を問わずに誰でも、石を握ったその瞬間から兵士にも暴徒にもなりうる、じつに恐ろし~い戦法ですね。 そんな石投げは寺社で行われるお祭りのイベントの一環でもあると同時に神仏の意思を示す…
地域タグ:京都市
昇龍は巨樹を頼る? ~左甚五郎作の龍の彫刻から龍伝説をさぐる
↑の画像は日本三景のひとつ天橋立のビュースポットとしてもおなじみ、成相寺(なりあいじ)の本堂にある「真向の龍」。成相山の中腹に位置している傘松公園からさらに山を登ったところにあります。 この成相寺、西国三十三ヶ所観音霊場のひとつ、住所からして京都府宮津市成相寺、という由緒正しいお寺です。わたくしが参拝したときには天橋立周辺には観光客がたくさんいる一方で、このお寺にはあまりいない印象でしたが。 この「真向の龍」は左甚五郎作と伝えられる彫刻作品。↓のような伝説が伝えられています。 ...江戸時代、この地が干ばつに苦しめられているときに地元の人たちが雨乞い祈願のために龍の彫刻を成相寺に奉納することに…
地域タグ:宮津市
Kindleで電子書籍を出版しました。しかも二冊同時刊行! なのでちょいと宣伝でも。 シャイなわたくしはこれまで宣伝をあまりやってこなかったのですが、やっぱり利用できるものは利用しないと誰の目にもとまらずに終わってしまうんで(笑) それぞれ3篇を収録した短編集です。内容は普段のわたくしの投稿と同路線、神、仏、そして妖(あやかし)の世界。ジャンルで言うと幻想文学とか伝奇小説といったところでしょうか。 投稿した画像はそれぞれの表紙。自費出版をしたことがある方なら誰もが、必ず、直面することになるのが「表紙をどうしようか?」という悩み。多くの活字系の自費出版本は風景の写真を背景に文字だけ、もしくはそれ…
月を見て何を思う?和歌から垣間見る月の神さまの立ち位置について
“さやかなる鷲の高嶺の雲井より影はやはらぐる月よみの森” ----by 西行法師(1118-1190) "やみ深き 浮世をてらす ちかひには 我まどはすな 月よみの神" ---by 鴨長明 (1155-1216) どちらも伊勢にある月読宮(つきよみのみや)を訪れた時に詠んだ歌とされています。実は伊勢には伊勢神宮の内宮の別宮である「月読宮」と外宮の別宮である「月夜見宮」があり、どちらも(つきよみのみや)と読んだりします。紛らわしいことこの上なしで彼らはどちらを訪れて歌を詠んだのでしょうか? 西行の歌に関しては角川ソフィア文庫「訳注新古今和歌集」で内宮の方と書かれていますが、鴨長明の方はちょっとよ…
地域タグ:伊勢市
かつての葬送の地にて法華経の世界を垣間見る ~京都化野念仏寺と岡山の福田海はなぐり塚
↑の画像は京都府京都市、嵯峨鳥居本化野町(いつも思うことですが京都の地名って面白いですね)にある化野念仏寺。 観光スポットとしても有名なところですが、その中でもとくに撮影スポットとなっているのがこの「西院(さい)の河原」。ちなみにこのエリアの内部での撮影は禁止です。↓は現地の説明板。 ↑は入口 化野(あだしの)と言えば蓮台野や鳥辺野と並ぶ「葬送の地」。立地的にかつての京の都の境界に位置していたと同時にあの世とこの世の境界線としての位置づけでもありました。京の都は中国の長安を元にして作られた一方で中国の都のように周囲を城壁で囲まみせんでした(これは奈良の都も同じですが)。その理由としていくつかの…
地域タグ:京都市
A history of Ise grand shrine with some poems
↑ is the entrance of Ise grand shrine Naiku with rising sun. "Not sure who's here, though Shedding tears filled with awe" "なにごとの おはしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる" Composed by Saigyō(1118-1190) who is a Buddhist monk and poet when he visited and worshiped to Ise grand shrine. It's often said this poem is …
Yoshizaki Gobou -the beginning of great success of Jōdo Shinshu in Fukui and Ishikawa prefectures
↑A statue of Rennyo The images I posted on this post are the site of "Yoshizaki Gobou" in Awara city, Fukui prefecture. it's located in the prefectural border between Fukui and Ishikawa. If you have visited Kyoto city you may see two large Buddhist temples near Kyoto station. One is Higashi(means "E…
前回の投稿と連携した投稿です。この投稿だけでも内容を楽しんでいただけるよう努力しましたが、両方読んでいただければ超うれしいです(笑)↓ aizenmaiden.hatenablog.com 今回の記事の舞台となるのは滋賀県大津市にある石山寺。今年(2024年)の大河ドラマの影響もあって「紫式部がこの寺で源氏物語の着想を得た!」「源氏物語を執筆した!」などと大売り出し中!…なわけですが、この石山寺と紫式部ならびに源氏物語との結びつきはおもにお寺が所蔵する「石山寺縁起絵巻」(もっとも古い巻は鎌倉時代)によるもので、その内容は史実に基づいているのか?となると「???」な感じ。 この石山寺縁起では紫式…
地域タグ:大津市
京都府宇治市の中心エリア。宇治十帖の舞台ゆえに源氏物語ゆかりの地として紹介されることも多い観光名所。しかし近年のオーバーツーリズムの影響で人が多すぎて…源氏物語では地名の宇治を「憂し」と結びつけられる場面がしばしば出てきますが、今の状況が続くとまさに「憂しな観光スポット」になりかねない勢い。京都の有名な観光スポットはどこでも似たような状態ですが…😓 一方で宇治十帖は必ずしも源氏物語におけるメインの部分ではなく、作品全体の主人公たる光源氏も出てきません。それどころか宇治十帖そのものが紫式部作ではなく別人の手によるもの、という説さえあります。(個人的にはこの説に投票したい) そのため宇治を源氏物語…
地域タグ:宇治市
伊勢の水銀と梅毒からシューベルトの生涯へと思いを馳せる(小林一茶も)
前々回の投稿では丹砂(硫化水銀)と伊勢地域についてちょっと書きました。水銀から作った白粉を伊勢の御師たちが商人と結びつきつつ売りさばいていた、と。 伊勢の御師たちがかつてどれだけ羽振りがよかったかは現在でも残っている江戸後期に建てられたという御師の屋敷の門↓からもうかがえます。 ↑こちらは現在神宮文庫の入口(神宮文庫黒門)になっている「福島みさき大夫の黒門」 ↑こちらは現在神宮徴古館にある葉山大夫邸門 御師に案内されて伊勢を訪れた人たちを宿泊させる必要もあったというもあると思いますが、それでも大邸宅をうかがわせる堂々たる門。 いや~宗教&観光&水銀ビジネスが組み合わさると儲かるんですねぇ~と唸…
伊勢の地から浜松へ、天照大御神と稲荷信仰をさらに追う!(でもかなり脱線)
今回は前回の投稿の補足みたいな内容です。前回の投稿は↓で。ご一読いただければ幸いです。 aizenmaiden.hatenablog.com ↓の画像は静岡県浜松市にある岩水寺。この名前を冠した鉄道駅が遠州鉄道(遠州岩水寺駅)と天竜浜名湖鉄道(岩水寺駅)にそれぞれあるというなかなかにグレードの高いお寺です。 ↓が境内図。広い境内にいろいろある…というよりもあちこちに社やお堂が点在している感じでしょうか。今回のメインテーマとなるのは境内図の上の方に見える「金城稲荷神社」です。 トップの画像と↓がその神社の様子です。 前回の投稿で中世においてアマテラスオオミカミがしばしば稲荷の神様、とりわけダキニ…
現在南海トラフ地震への注意が呼びかけられている状況、何事も起こらなければよいのですが。こうした自然災害に関しては今も昔も備えることと祈ることしかできないのかもしれません。 日本列島ならびに周辺には4つのプレート(北米プレート、ユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート)がひしめき合うように存在しており、これらのプレートの活動が地震や噴火をもたらすとともに美しい景観や地下資源をもたらしている。そしてこのメリット・デメリット両極端な面がそのまま日本の特徴にもなっています。悩ましいですねぇ。 ちなみに2007年に日本ではじめてダイヤモンドが発見(ずっと日本にはダイヤモンドはないと言われ…
↑の画像は比叡山の山中にある弥勒石仏。無造作に置かれている印象ですが、かなり古いものらしく鎌倉初期ころの作とのこと。広大な境内を誇る比叡山延暦寺の西塔から横川へと行く途中にあります。途中に京都と滋賀の県境もあります。 なんでも数百年もの間忘れ去られていた状態が続いた後、1959年に茂みの中から「再発見」されたそうで、実に数奇な歴史を持った像です。ずっとそこにいたにもかかわらず気づかれないと存在していないと見なされてしまう。面白いものですね。 傷みも見られますが(後述)、堂々たるお姿。像高2.5メートルほどだそうです。 ところで、室町時代には「弥勒(ほかにも身禄とか)」という私年号が一般人(庶民…
印象派の150周年記念イヤーにイラストと遺跡で光と戯れてみた!
久しぶりの投稿となりました。このところお絵かきに没頭しておりまして。そのうちの一枚がコレ↓ タイトルは「Rainy Shade of Love」。梅雨時の光景を前景&後景に百合の世界を表現してみました!神社の神紋も百合! イギリスのプロコル・ハルムの1967年のヒット曲に「A Whiter Shade of Pale(邦題:青い影)」という曲がありまして、タイトルはこれをもじってつけました。 ↓の動画。「どこかで聴いたことがある!」という方もいらっしゃるのでは? この曲の方は浮気がバレで顔が蒼白になる歌詞ですが、絵の方は純愛で(雨に濡れた傘の下で)顔が真っ赤になった状況、みたいな。 画像が妙に…
前回、前々回に続いての大津ネタ。↑は滋賀県大津市の長安寺にある通称「関寺の牛塔」。 京都駅からJR琵琶湖線に乗って10分ほど、大津駅のほど近くにあります(最寄り駅は京阪電鉄の上栄町駅)。「大津事件」の現場を伝える碑からも近いです。オーバーツーリズムがいよいよ破滅的な状況になりつつある(?)京都駅周辺の混雑ぶりとの落差に驚愕すること疑いなしの快適な観光&散策が楽しめるところです。ちと車の交通量が多いけど。 この関寺の牛塔は高さ3メートルを越える堂々たる石造宝塔で↓はその傍らに立つ説明板。かつてこの地には関寺という非常に大きなお寺があり、そこには金色に輝く五丈(約15メートル)もの弥勒菩薩像が安置…
旅人よ 危ぶむなかれ その旅路 志賀の山越え 仏とともに ~志賀の大仏(滋賀県大津市)
前回の投稿でも触れましたが、先日滋賀・京都に行ってきました。滋賀県の西側、湖西エリアや大津エリアにはステキないくつか石仏がありまして、それを見て回るのも今回の旅行の大きな楽しみでした。 そんなステキな石仏のひとつが大津市にある「志賀の大仏」。↓ 「大仏」と書いて「おぼとけ」と読むそうです。「しがのおぼとけ」。おぼとけ!...じゃなくておぼえとけ!😴 以前から見てみたいと思っていた仏さまでした。 天智天皇の大津京跡からもそれほど離れていない(徒歩40~50分くらいだったでしょうか)場所にあります。 この仏像がある場所はもともと大津と京の都を結ぶ「志賀越え」または「山中越え」と呼ばれる街道の入口で…
後述しますが、↑はわたくしの自作の大津絵です(笑)本投稿の表紙用。 先日滋賀県の大津市へ観光に訪れた際に当地の名物「大津絵」を見る機会がありました。もっとも現地ではあちこちで見られるので嫌でも目につくのですが(笑) 大津絵。かつて東海道の要衝だった大津において土産物として描かれ、販売された絵。元禄時代頃から普及するようになり、江戸時代を通して広い範囲で高い人気を博すことになった。 浮世絵と並ぶ江戸時代を代表する大衆芸術...のはずなのですが、土産物として作られ、売られたこともあって消耗品のように扱われたため現在ではごくわずかしか現存していない。 そして明治に入って東海道の要衝としての大津の重要…
前回の投稿の姉妹編とも言うべき内容です。↓併せてご一読いただければ幸いです(読まなくても本投稿をご理解いただくうえでとくに問題ありません)。 aizenmaiden.hatenablog.com 前回の投稿では各地に伝わる稲荷のキツネが人間のお使いとして大活躍する(ただししばしば悲劇的な結末を迎える)伝説について取り上げました。この手の伝説でとくに知られているのが秋田県と山形県に伝わる「与次郎(よじろう)稲荷神社」です。かなり詳しい内容の伝説が伝えられているうえにWikiのページもあるので興味があれば御覧ください↓ ja.wikipedia.org で、↓が秋田県、かつて久保田城があった千秋公…
日本最大勢力の神社といってもおそらく過言ではない稲荷神社。その歴史は少なくとも奈良時代以前にまで遡ることができると言われていますが、現在のような全国各地に無数の神社や祠が建てられ、信仰されるようになったのは江戸時代に入ってからと考えられています。 その理由として挙げられるのが徳川家康がライバルを倒すための呪力を手に入れるためにダキニ天(荼枳尼天)を信仰していたため...とも言われています。この点に関しては以前に投稿したことがあります。 ↓ご一読いただければ幸いです。 aizenmaiden.hatenablog.com そして見事天下統一を果たした家康はその加護への感謝の意図を込めて稲荷信仰の…
Unmasked ~化粧の正体 若狭・丹後の化粧地蔵を追ってみた!
神さま/仏さまの像に色を塗りたくる(化粧をする)習慣が各地に見られます。有名なのでは青森・津軽地方の化粧地蔵と九州南部の田の神さぁ(田の神さま)がまず挙げられると思いますが、前者のルーツは京都の化粧地蔵だと言われており、現在でも京都の中心部においても路傍に白く化粧を施したお地蔵さまを祀った祠を見ることができます。 この京都の北部、旧丹後国やお隣福井の若狭国では京都中心部よりもさらにこの習慣が根強く残っているようで、先日わたくしが訪れた時にはあちこちで印象深いステキな像と出会うことができました。そこでこの化粧が施された仏像(以後化粧地蔵で統一)について書いてみることにしました。 ↓の画像は八百比…
↑は「賀恵渕のシイ(スダジイ)」。千葉県君津市。 関東屈指の秘境線にして全国屈指の不採算路線として知られるJR久留里線のエリアにある巨木です。最寄り駅はそのJR久留里線の小櫃駅(おびつ)。 一応八坂神社の境内にあります。「一応」というのは神社そのものがもともとこの樹を祀ることを前提に創建されたと考えられるから。説明板には「樹冠は境内の大半を覆っている」と書かれていますが、この樹木に合わせて境内が確保されている、といった方が適切に思えます。 現地の説明板 なんと言ってもその異形な姿に圧倒されます。写真でも十分にその異形さが伝わるのではないでしょうか?成長をはじめたかなり早い段階で斜め...という…
曲亭馬琴(滝沢馬琴:滝沢は本名、馬琴はペンネーム。なので正確な筆名は曲亭馬琴。でも本投稿ではよく知られた滝沢馬琴で押し通します/笑)の代表作「南総里見八犬伝」はその名前の通り南房総をメインの舞台にした大長編作品ですが、その冒頭に登場するのが房総半島の西端にある洲崎神社です(当時は神仏習合で「洲崎明神」でしたが)。 振り返るとすぐに浜辺。南国テイストたっぷりな入口。 洲崎神社&養老寺のマップ 後述する役小角を祀った岩屋の説明 この神門をくぐると拝殿へと続く長~い階段が待ち受けております。 でも振り返るとなかなかにいい景色 ↑が拝殿。↓がその裏にある拝殿。色彩のコントラストがなかなかに印象的 「◯…
「酒呑童子絵巻」 根津美術館所蔵 というわけで後半です。前編を読んでくださった方、ありがとうございます。 前編ではもともと武士とは「破邪/辟邪の力」を朝廷から期待されており、その力でもって災厄やケガレが朝廷に降りかかるのを防ぐ役割を担っていた。酒呑童子伝説で有名な源頼光とその子孫が代々任じられていた「大内守護」という役割においても現代的な警備員や近衛兵とは違い呪術的な力も求められており、それこそ本来の意味での「武力」であった...しかしそれも鵺退治でおなじみの源頼政が打倒平家に挙兵して敗死したのを機に「武力」といえば「破邪/辟邪」ではなく現在の我々が思い浮かべる暴力的な力が主流になっていく..…
勝川春亭「頼光朝臣酒呑童子オ退治之図」 先月末、京都府福知山市にある大江山へ鬼退治へ出かけてきました。 当日の天気予報は朝方まで曇り、午前の半ば過ぎくらいから曇りになる...だったのですが、朝から降り続けていた雨は止む気配はおろかどんどん強まり、有名な鬼嶽稲荷神社に到着するころには暴風&雪に見舞われる始末。 雲海が見られることで知られる当神社前の絶景スポットでは霧&もやで何も見えず(というか強風にあおられて立ってられなかった)、もう少し先に進めば大江山の主峰、仙丈ヶ岳まで(&酒呑童子が住んでいたと言われる「鬼の洞窟」も)行くことができたのですが、「さすがにこれ以上はちょっとマズい」と判断して志…
伊福部昭「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏狂詩曲」でゴジラと遭遇す
ゴジラがアカデミー賞をとっちゃった(?)ために便乗ネタになりそうですが…伊福部昭先生の作品についての投稿でも(これでも投稿する時期をちょっとズラしたんですよ😄) 伊福部昭「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏狂詩曲」 井上喜惟(指揮)・久保田巧(ヴァイオリン)・アルメニアフィル 収録作...って見づらいですね(苦笑) 伊福部昭の作品には日本的な面とより広い意味でのアジア的な面、さらにスラブ的な面をも持ち合わせているとよく言われ、いかにも日本的な作品と思わせる一方で普遍的なクラシック作品としての魅力も備えていると思います。 彼の作品に関して評論家の片山杜秀氏が以下のようなことを書いていたのが印象に残…
浜名湖の水産物は龍神飛翔の夢を見たか? それと貝を神格化した女神さまについて
過去2回の投稿で夭折の日本画家、青木繁(1882-1911)の作品を取り上げました。せっかくなのでもう1回取り上げて「青木繁3部作」にしようかと目論んでみた次第にて候。 冒頭の画像は彼の代表作の一つ、「大穴牟知命(オオアナムチノミコト)」。これは日本神話の有名な1シーンを描いたもので、美しい八上比売(ヤカミヒメ)の心を射止めたオオアナムチ(オオナムチ、オオクニヌシ)が彼の兄弟である八十神(たくさんいる兄弟の総称。なので複数)の怒りを買って殺害されてしまったときの様子。 八十神が熱した大きな石をオオアナムチのもとへと転がし、その石を全身に受けた彼は焼け死んでしまいました。 その後、彼の母親の嘆願…
前回の投稿では夭折の日本画家、青木繁(1882-1911)作「日本武尊」と南房総の史跡を取り上げました。 そして青木繁と南房総と言えばやはりこの作品を挙げなければ片手落ちになってしまうでしょう...というわけで↓は彼の代表作にして未完の作品「海の幸」。 この作品は彼が20代前半の頃に千葉県館山市布良(めら)に滞在していたときに描かれました。現在でもこの地に滞在した家が記念館として残されています。↓は現地にあった説明板。土日のみ開館、平日に訪れたので見ることはできませんでした。 そして青木繁が滞在した地のすぐに近くには「布良崎神社」という神社があります。↓の画像です。 なかなかに味のある目つきを…
前回の続きです。↑の画像は前回も投稿した房総半島と三浦半島で発見された洞穴遺跡(赤と青の◎印)の分布図、そしてこれらの中には火葬で葬られた人骨も発見されているところもあります。 ↓は前回の投稿。併せてお読みいただければ幸いです。 aizenmaiden.hatenablog.com 前回の投稿ではこれを根拠に古墳時代における大和朝廷の勢力の伸張に強く抵抗した勢力が関東地方には存在(それもひとつやふたつではなく)していたのではないか、という見解を提示してみました。 そして三浦半島と房総半島の洞穴遺跡の分布を見ると日本神話の有名なエピソードが想起されます。 そう、ヤマトタケルの東征神話! ヤマトタ…
「ヤマトタケルノミコト”の”戦い」ではなく”との”戦いです。 ↓の画像は房総半島の南西端の近く、千葉県館山市にある船越鉈切神社&海南刀切神社で撮影したものです。道路を隔てて近距離に位置している両神社は解説板にあるようにペアのような関係にあります。 その昔、神さまがこの地で人々を苦しめていた大蛇を退治するために鉈を研いだ石...その名も「鉈研ぎ石」! ↓はちょっと見づらいですが説明板です。 船越鉈切神社の方は本殿が海蝕洞穴の中に設置されており、この空間が「鉈切洞穴」として県指定の史跡となっています。 ↑の説明板にあるように縄文時代から人間の居住空間として使用されてきただけでなく、古墳時代には葬送…
--------------------------------- Ho!Ho!Ho! むかし達谷の悪路王 まっくらくらの二里の洞 わたるは夢と黒夜神 首は刻まれ漬けられ ------------------------------- 上記の詩は宮沢賢治作「原体剣舞連」の一部です。今回ご紹介する岩手県平泉にある達谷窟毘沙門堂(たっこくのいわやびしゃもんどう)とこの地に伝わる伝説上の人物「悪路王」が登場しています。当時でも岩手県では有名だったのでしょうか。 ↓がその達谷窟毘沙門堂の入り口。 桓武天皇の時代、京都の朝廷では「軍事と造作」の両方を展開、平安京の造作で臣民に負担をかけ、軍事によって征服…
前回の投稿に続いて「天下人に影響を及ぼした(かもしれない)神仏の存在」について。 「その1」はこちら↓ aizenmaiden.hatenablog.com 今回ご紹介するのは岡山県岡山市にある最上稲荷。正式名称は最上稲荷山妙教寺。ここの稲荷も前回紹介した豊川稲荷と同じく荼枳尼天を祀っているのですが、ここでの名称は「最上位経王大菩薩」。長い! 最上稲荷の本殿、霊光殿 豊川稲荷と同様、仏教寺院です。広大な境内にいろいろな建物がありまして、どこがメインなのかちょっとわかりずらいところなのですが。日蓮宗の寺院としてのメイン(根本大堂)と最上位経王大菩薩(荼枳尼天)を祀る寺院としてのメイン(霊光殿&霊…
豊川稲荷妙厳寺の大本殿 前回に引き続き武田信玄の西上を阻んだ(かもしれない)神仏のネタです。 日本でもっとも数が多い神社は八幡神社、ついで稲荷神社と言われています(稲荷を祀った小さな祠を含めればおそらくこちらが1位でしょう)。東京などは江戸時代に「伊勢屋、稲荷に犬の糞」と言われたほど稲荷神社がたくさんあり、現在でもあちこちに見かけることができます。 八幡神は軍神としての面を持ち合わせていたわけですが、稲荷神社も怨敵調伏の力を持つと言われる荼枳尼天を多くの戦国武将が信仰していた(神仏習合の時代)と言われているので日本の神社のトップ1&2がいずれも「戦いに勝つ、敵を退ける」ご利益を持っている神さま…
秋葉山本宮秋葉神社(上社)の拝殿 昨年の大河ドラマの影響でちょっと話題になった浜松エリア。それに乗じた...わけではありませんが訪れてきました。大河ドラマの舞台を見るために…じゃなくてアニメ「ゆるきゃん」の聖地巡りで(笑) ゆるきゃん車両 ラブリー! そんな浜松エリアの名物のひとつが冬場に吹く冷たく乾いた風「遠州のからっ風」。年末シーズンにわたくしが訪れたときはよりによって連日強風注意報が発表、夕方ころになると体感温度マイナス10℃くらいのそれはそれは寒~い風に身を晒す状況に陥りました。 Beautiful, but Sooooo cold! ↑とくにこれを撮影しているときに(笑) 「まずい、…
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