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2020/05/16

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  • 天使に見捨てられた夜 (新装版)

    桐野夏生,2017,天使に見捨てられた夜(新装版),講談社.(1.12.25)AVでレイプされ、失踪した一色リナの捜索依頼を受けた村野ミロは、行方を追ううちに業界の暗部に足を踏み入れた。女性依頼人が殺害され、自身に危険が及ぶ中、ようやくつかんだリナ出生の秘密。それが事件を急展開させた…。乱歩賞受賞直後に刊行された圧巻の社会派ミステリー。「ミロシリーズ」第2弾!女性探偵、ミロが主人公のハードボイルド小説シリーズ、第二作。ろくでもない男への情愛に自らを傷つけながら、隣人のゲイ、「トモさん」との友情を育むミロのこころの成長が印象に残る。最後は、あっと驚くような結末に至る。極上のサスペンスが味わえる作品だ。天使に見捨てられた夜(新装版)

  • ポリティコン 上・下

    桐野夏生,2014,ポリティコン上・下,文藝春秋.(1.10.25)上理想社会の実現を目指し、東北の寒村に建設された唯腕村は、もはや時代遅れとなったユートピア思想の残滓である。村の人間関係に倦み、強烈に女を求める青年・高浪東一は、謎の男と村に流れ着いた美少女・マヤを我がものにしようともがき、自らの運命を狂わせてゆく。理想郷を舞台に繰り広げられる、絶望郷のごとき愛憎劇!下村の理事長となった東一は、危険なビジネスに手を染め、マヤとも愛人契約を結ぶ。だが、心の渇きは癒されず、あるまじき手段で関係を断ち切ってしまう。十年の後、都会の片隅に沈んだヤマは、憎むべき東一の成功を知る。再会した二人を待ち受けるのは、破滅か新天地か―。性愛の暗部を容赦なく抉った衝撃作!本作の主な舞台である唯腕村は、武者小路実篤等による「新し...ポリティコン上・下

  • 家父長制の起源──男たちはいかにして支配者になったのか

    アンジェラ・サイニー(道本美穂訳),2024,家父長制の起源──男たちはいかにして支配者になったのか,集英社.(1.10.25)《各界から絶賛の声、多数!》家父長制は普遍でも不変でもない。歴史のなかに起源のあるものには、必ず終わりがある。先史時代から現代まで、最新の知見にもとづいた挑戦の書。――上野千鶴子氏(社会学者)男と女の「当たり前」を疑うことから始まった太古への旅。あなたの思い込みは根底からくつがえる。――斎藤美奈子氏(文芸評論家)家父長制といえば、“行き詰まり”か“解放”かという大きな物語で語られがちだ。しかし、本書は極論に流されることなく、多様な“抵抗”のありかたを丹念に見ていく誠実な態度で貫かれている。――小川公代氏(英文学者)人類史を支配ありきで語るのはもうやめよう。歴史的想像力としての女性...家父長制の起源──男たちはいかにして支配者になったのか

  • なぜ働いていると本が読めなくなるのか

    三宅香帆,2024,なぜ働いていると本が読めなくなるのか,集英社.(1.9.25)【人類の永遠の悩みに挑む!】「大人になってから、読書を楽しめなくなった」「仕事に追われて、趣味が楽しめない」「疲れていると、スマホを見て時間をつぶしてしまう」……そのような悩みを抱えている人は少なくないのではないか。「仕事と趣味が両立できない」という苦しみは、いかにして生まれたのか。自らも兼業での執筆活動をおこなってきた著者が、労働と読書の歴史をひもとき、日本人の「仕事と読書」のあり方の変遷を辿る。そこから明らかになる、日本の労働の問題点とは?すべての本好き・趣味人に向けた渾身の作。日本人の読書と労働の歴史を読み解くユニークな論考。まあまあおもしろかったのだけど、長時間労働に縛り付けられたら、とてもとても本を読む余裕などもて...なぜ働いていると本が読めなくなるのか

  • 引き裂かれた自己──狂気の現象学

    R.D.レイン(天野衛訳),2017,引き裂かれた自己──狂気の現象学,筑摩書房.(1.8.25)世界から隔絶されているように感じられ、絶望的な孤独のなかで自分自身が分断されていく―統合失調症とはそうした病である。しかし、患者の世界に徹底的に寄り添い、彼らの声に真摯に耳を傾けていくなかでみえてくるのは、苛烈な現実に身を置かざるをえなかったひとりの人間が、それでもなんとか生きようと苦闘する、その姿である。従来の精神医療のあり方に疑問を抱き、反精神医学運動の旗手となった異才の精神科医R.D.レイン。その主著にして、ドゥルーズ=ガタリらの現代思想や、今日のサブカルチャーにも多大な影響を与えつづける古典的名著。統合失調症の治療となると、もっぱら抗精神病薬の処方である昨今であるが、オープンダイアローグ、妄想・幻覚・...引き裂かれた自己──狂気の現象学

  • ユリゴコロ

    沼田まほかる,2014,ユリゴコロ,双葉社.(1.7.25)ある一家で見つかった「ユリゴコロ」と題された4冊のノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。この一家の過去にいったい何があったのか―。絶望的な暗黒の世界から一転、深い愛へと辿り着くラストまで、ページを繰る手が止まらない衝撃の恋愛ミステリー!各誌ミステリーランキングの上位に輝き、第14回大藪春彦賞を受賞した超話題作!快楽殺人に取り憑かれた女性、彼女は自分の母なのか?末期がんの父親をもつ主人公は、快楽殺人とその衝動を綴ったノートを発見し、読み耽る。父親のトラウマとなった男の子の死は、快楽殺人者、母の所業であった。そうとも知らず、父は母と一緒になり家族をつくる。幾重にも張り巡らされたできごとの伏線、それが新たなできごとによって徐々につ...ユリゴコロ

  • 海を抱く──BAD KIDS

    村山由佳,2003,海を抱く──BADKIDS,集英社.(1.7.25)超高校級サーファーであり誰とでも寝る軽いやつと風評のある光秀。一方、まじめで成績優秀、校内随一の優等生の恵理。接点のほとんどない二人がある出来事をきっかけに性的な関係をもつようになる。それは互いの欲望を満たすだけの関わり、のはずだった。それぞれが内に抱える厳しい現実と悩み、それは体を重ねることで癒されていくのか。真摯に生きようとする18歳の心と体を描く青春長編小説。二人の主人公、恵理と光秀──高校生の女の子と男の子の繊細なセクシュアリティのありようが、とてもリアルに描かれている。大人の鑑賞に耐えられる青春小説の傑作だ。過去の記憶と重ね合わせ、甘酸っぱく切ない感傷に浸れるかもしれない。海を抱く──BADKIDS

  • マタハラ問題

    小酒部さやか,2016,マタハラ問題,筑摩書房.(1.6.25)働く女性が妊娠・出産・育児を理由に退職を迫られたり、嫌がらせを受けたりする「マタニティハラスメント(マタハラ)」。労働局へのマタハラに関する相談は急増し、いまや働く女性の3人に1人がマタハラを経験していると言われている。本書は「NPO法人マタハラNet」代表による「マタハラ問題」の総括である。マタハラとは何なのか。その実態は、どのようなものなのか。当事者の生の声から問題を掘り下げる。以下は、小酒部さんが立ち上げたNPO、「マタハラNet」に寄せられた、マタハラ発言の数々である。「相談なしに妊娠するな」「堕ろす覚悟で働け」「妊娠するとわかっていたら、君なんか雇わなかった」「妊娠したの?迷惑だ」「あなたがどうなろうが私は知らない。妊娠は自己責任だ...マタハラ問題

  • 【旧作】お姫様とジェンダー──アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門【斜め読み】

    若桑みどり,2003,お姫様とジェンダー──アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門,筑摩書房.(1.6.25)コレット・ダウリングの『シンデレラ・コンプレックス』が刊行され、話題をよんだのは一九八二年。すでに二十年以上になるが、その間、「白雪姫」「シンデレラ」「眠り姫」などのプリンセス・ストーリーは、ますます大量に生産され、消費されている。大量に消費されるからその影響力も絶大である。本書では、ディズニーのアニメを題材に、昔話にはどんな意味が隠されているかを読み解く。いつの間にか思い込まされている「男らしさ」「女らしさ」の呪縛から、男も女も自由になり、真の男女共同参画社会を目ざす。若桑さんは、勤務先の女子大での授業、「ジェンダー文化論」にて、学生に、ディズニーのアニメ、「白雪姫」、「シンデレラ」、「眠り姫」を...【旧作】お姫様とジェンダー──アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門【斜め読み】

  • 【旧作】性と愛の日本語講座【斜め読み】

    小谷野敦,2003,性と愛の日本語講座,筑摩書房.(1.6.25)「恋愛」という言葉が近代になってつくられたことはよく知られている。では「恋人」はどうか。徳川時代には「情夫・情婦」というのがあったが、それはどういう意味で使われたのか?「情欲」や「不倫」はいつ頃生まれたのか?また「逢い引き」は?本書では、『太陽の季節』『チャタレイ夫人の恋人』等の文学作品、各時代に流行った歌謡曲やマンガ等を材料に、時に外国語との比較を交えながら、性と愛にまつわる日本語の意味の由来や変遷をたどり、日本語の面白さを発見していく。色恋、セクシュアリティに関連する言葉、その変遷をたどる。小谷野さんは、冒頭、「パートナー」という言葉への違和感を吐露しているが、わたしも同じように感じてきた。パートナーという言葉には、「たんに排他的な性交...【旧作】性と愛の日本語講座【斜め読み】

  • マンゴーと手榴弾──生活史の理論

    岸政彦,2018,マンゴーと手榴弾──生活史の理論,勁草書房.(1.5.25)沖縄戦の最中に手渡された手榴弾と、聞き取りの現場で手渡されたマンゴー。「こちら側」と「あちら側」の境界線を超えて行き来する、語りと記憶と「事実」。ストーリーの呪縛から逃れ、孤独な人生について、過酷な世界について、直接語り合おう。「約束としての実在論」へ向けた、ポスト構築主義の新しい生活史方法論。構築主義の極北には、価値相対主義の断片、その集積のみが残る。調査対象者の語りがすべてかぎかっこに括られ、いかなる一般化、普遍化も禁欲されるとすれば、提示されるものは、個別的にして一回性の断片のみである。「構築されたもの」を削ぎ落としたあとに、それでも残る「本質」を希求する、というわけでもない。断片に宿る普遍性をできるだけ盛ることなく提示す...マンゴーと手榴弾──生活史の理論

  • 日本いまだ近代国家に非ず

    小室直樹,2015,日本いまだ近代国家に非ず,ビジネス社.(1.4.25)政治家の本分は、国民に最低生活、心身の安全、私有財産を保障、保全すべく、立法、既存法令の改正、廃止を行うところにあり、行政官僚の役割は、法令に則り細則を定め、公僕としてつつがなく法令を執行するところにある。ところが、日本では、政治家には立法の能力も意欲も欠落しており、官僚が、省益と自らの昇進をかけて、政治家を操り立法行為までをも担う。ないがしろにされるは、国民の生活、生命、財産、である。家産官僚制の残滓を引きずったまま、いまだ近代官僚制の鉄則さえ遵守されず、公益が官僚共同体の私益に蹂躙される現実が、小室政治学によって鮮やかに解き明かされている。目次プロローグ誤解だらけのデモクラシー理解第1章大いなる資質を具えた政治家とは―田中角栄だ...日本いまだ近代国家に非ず

  • 小室直樹 日本人のための経済原論

    小室直樹,2015,小室直樹日本人のための経済原論,東洋経済新報社.(1.3.25)稀代の社会科学者にして数多くのベストセラーを輩出した小室直樹氏。その経済論の代表的著作『小室直樹の資本主義原論』と『日本人のための経済原論』を合本して復刻。経済学の基本、日本経済、日本社会の問題点を、博覧強記の著者が古今東西の逸話を取り混ぜながら解説。目指すところは「あなた自身が経済学者になれ」。著者の数ある著作の中で、まず最初に手にしたい小室思想の入門書。『ハゲタカ』著者・真山仁による解説文掲載。『資本主義論』と『経済原論』の合本、総700ページ近い大著。現代経済学の最良のテキストであるとともに、資本主義の駆動原理、官僚制の逆機能等、経済を活性化あるいは沈滞させる社会的要因についての考察がひかる。小室先生の経済学には、社...小室直樹日本人のための経済原論

  • 【旧作】猫のいる日々、不思議な猫たち【斜め読み】

    大佛次郎,1994,猫のいる日々,徳間書店.(1.2.25)大佛先生ほど、たんなる猫好きにとどまらず、数多くの猫たちの福祉に貢献した人はいない。捨て猫に餌と寝場所を提供し、その数、つねに15匹前後、生涯に500匹ほどの猫の面倒を見たという。本作には、猫にまつわるエッセイと、猫の童話とが収録されているが、どれも猫好きには興趣が尽きない内容だ。ジャック・ダン、ガードナー・ドゾワ編(深町真理子・浅倉久志・酒井昭伸・田中一江・山口緑・小川隆・羽田詩津子ほか訳),1999,不思議な猫たち,扶桑社.(1.2.25)猫―ひとびとからこよなく愛されながら、冷酷な動物として忌み嫌われ、神としてあがめられるいっぽう、悪魔の手先として虐殺までされた、不思議な生きもの。最も身近な存在でありながら底知れぬ謎をもつ猫は、人間の想像力...【旧作】猫のいる日々、不思議な猫たち【斜め読み】

  • 【旧作】ネコのこころがわかる本、なぜ、猫はあなたを見ると仰向けに転がるのか?(キャット・ウォッチング1)【斜め読み】

    ネコの魅力は、徹底して自己本位で、けっして無条件では人間に媚びない点にある。ミャーと鳴いて、からだを擦り寄せてくるときは、ちゅーるをあげないといけないし、ツメ研ぎの上に寝転がるときは、おしりをぽんぽん叩いてやらないといけない。連綿と受け継がれてきた野生と、幼年期の社会化と人間との共生で培われてきた社交性、この両者の気まぐれな表出、これが最大のネコの魅力だ。地位獲得のための闘争と、その結果としての独裁者や社会的追放者が存在するのは、すべての動物種のなかでイヌとサル、それにヒトの社会だけである。ある社会集団に所属することによる利益は、すべての個体にとって平等というわけにはいかない。なぜなら、ヒトをも含む動物界において、生物学的にもっとも優れた社会が同時に民主的であるとはかぎらないからである。したがって、その社...【旧作】ネコのこころがわかる本、なぜ、猫はあなたを見ると仰向けに転がるのか?(キャット・ウォッチング1)【斜め読み】

  • 女性失格、九死一生

    小手鞠るい,2021,女性失格,文藝春秋.(12.31.24)女とは何か?人はどうやって女になっていくのか?岡山の片田舎に生まれた女の子が、性に目覚める。進学校に進み、京都の有名私立大学に進学。そこで男たちと次々に「共犯関係」を結んでいくが、同時に性の対象とされることにも息苦しさを感じていた。そこから逃れるために結婚をするが、それでも女という性から逃れることができず不倫にのめり込む。結局は離婚してしまい、ボロボロになり……。女という性をやめられず、女という性から逃れられない「生」の先には何が見えるのか?太宰治の『人間失格』を下敷きに、「女性が女性であることで覗きこむ深淵」を照らし出す意欲作。女という着ぐるみを身にまとって生きることの悲しみを、太宰治の『人間失格』になぞらえて描き出す。自らのジェンダーロール...女性失格、九死一生

  • 夜の谷を行く

    桐野夏生,2020,夜の谷を行く,文藝春秋.(12.30.24)山岳ベースで行われた連合赤軍の「総括」と称する凄惨なリンチにより、十二人の仲間が次々に死んだ。アジトから逃げ出し、警察に逮捕されたメンバーの西田啓子は五年間の服役を終え、人目を忍んで慎ましく暮らしていた。しかし、ある日突然、元同志の熊谷から連絡が入り、決別したはずの過去に直面させられる。連合赤軍事件をめぐるもう一つの真実に「光」をあてた渾身の長編小説!1971-72年に連合赤軍が引き起こした「山岳ベース事件」。当時小学生だったわたしには、TVで中継される「あさま山荘事件」の印象だけが強烈に残ったが、12名の若者が「総括」のもとでリンチの果てに殺害された「山岳ベース事件」を、のちに、書物により知るところとなる。「山岳ベース」から逃げ出した西田啓...夜の谷を行く

  • とめどなく囁く

    桐野夏生,2019,とめどなく囁く,幻冬舎.(12.29.24)塩崎早樹は、相模湾を望む超高級分譲地「母衣山庭園住宅」の瀟洒な邸宅で、歳の離れた資産家の夫と暮らす。前妻を突然の病気で、前夫を海難事故で、互いに配偶者を亡くした者同士の再婚生活には、悔恨と愛情が入り混じる。そんなある日、早樹の携帯が鳴った。もう縁遠くなったはずの、前夫の母親からだった。『柔らかな頬』と同様の、とある失踪者をめぐるサスペンス長編小説。主人公、早樹の心理描写が実に繊細でつい感情移入してしまうことだろう。あまり劇的なことは起こらないのに、ぐいぐい物語世界に没入させる筆力は、さすがというほかない。とめどなく囁く

  • 柔らかな頬

    桐野夏生,1999,柔らかな頬,講談社.(12.28.24)「現代の神隠し」と言われた謎の別荘地幼児失踪事件。姦通。誰にも言えない罪が初めにあった。娘の失踪は母親への罰なのか。四年後、ガン宣告を受けた元刑事が再捜査を申し出る。三十四歳、余命半年。死ぬまでに、男の想像力は真実に到達できるか。ミステリーとしてもロードノベルとしても、最高の作品。カスミの娘、有香の失踪の真相は最後までわからずじまいだが、カスミの娘探しに伴走する末期がんの元刑事、内海の夢というかたちで、いくつかの蓋然的な真相が語られていく。謎解きと大団円を期待する読者は、「藪の中」を彷彿とさせる虚構に宙吊りにされ、見事に期待を裏切られる。大胆な構成と筆力に圧倒される長編小説だ。柔らかな頬

  • 顔に降りかかる雨(新装版)、奴隷小説

    桐野夏生,2017,顔に降りかかる雨(新装版),講談社.(12.27.24)親友の耀子が、曰く付きの大金を持って失踪した。被害者は耀子の恋人で、暴力団ともつながる男・成瀬。夫の自殺後、新宿の片隅で無為に暮らしていた村野ミロは、耀子との共謀を疑われ、成瀬と行方を追う羽目になる。女の脆さとしなやかさを描かせたら比肩なき著者の、記念すべきデビュー作。江戸川乱歩賞受賞!探偵、村野ミロが活躍するシリーズもの、第一弾小説。桐野さんは、女性を主人公とするミステリー小説としての展開のなかでも、男の粗暴さ、暴力性をさり気なく描き出すことを忘れない。女、男に限らず、人間の底知れぬ悪意についても。東京-冷戦終結後のベルリン、ネオナチ、SM、ネクロフィリア等々、ストーリーのなかに散りばめられたモチーフもアクセントして効いている。...顔に降りかかる雨(新装版)、奴隷小説

  • ネットリンチが当たり前の社会はどうなるか?

    仲正昌樹,2024,ネットリンチが当たり前の社会はどうなるか?,ベストセラーズ.(12.26.24)人間は、自分が思っているほど理性的ではないし、公共的意識も高くない。現代人はいま恐怖心と猜疑心に満たされており、「友/敵」思考が過激化する社会に生きている。“ネットリンチ”が当たり前に行われているSNS空間はまさにそうであろう。「敵」を破壊し尽くさないと気が済まない人たちが蔓延している。何がきっかけで、本当の全体主義体制へと変貌するか分からない。そんな現代の闇を直視し抗うための“知恵と教養”が詰まった必読書である。ナチス、統一教会、新型コロナウィルス等にまつわる自由権の侵害について再考する論評集。たしかに、脊髄反射的なキャンセル、吊し上げ、敵意をむき出しての排除に対しては嫌悪するが、キャンセルカルチャーへの...ネットリンチが当たり前の社会はどうなるか?

  • 不審なチラシ

    マンションのポストに不審なチラシが入っていた。あたかもマンション共有部分のネット回線を運用する事業者であるかのように騙って、各世帯内のネット回線を安く提供しますよという旨の文書。調べてみたら、「アンサー合同会社」というau回線を仲介する事業者が配布したチラシだった。「アンサー合同会社」は福岡市南区に法人登記されているようだが、事業内容、資本金、役員構成はもちろんのこと、オフィスの所在地、電話番号も不明。そもそも、チラシでは「ライフライン事務局」としか名乗っておらず、会社名さえ明記していない。管理組合の役員という立場上、無視するわけにもいかず、管理組合のライングループの注意喚起のメッセージを投下。数時間後、注意喚起を促す掲示がマンション内に貼り出された。対応が鬼速い。政府がガソリンなどの補助金を削減したため...不審なチラシ

  • 憲法とは国家権力への国民からの命令である

    小室直樹,2013,憲法とは国家権力への国民からの命令である,ビジネス社.(12.25.24)さすが博覧強記の小室先生、現代史上の実に細かな事実をもとに、目からウロコの憲法論が展開されている。小室先生は、憲法のなかでも第十三条がもっとも重要であるとする。すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。「幸福追求」権には私有財産保全のそれが含まれるが、26年にわたって超低金利政策により国民の資産を毀損し続けた政府は、憲法に違反してきたことになる。戦後教育批判──近代教育の本旨はナショナリズム高揚のためにあるという主張は承服しかねるが、立憲主義の要諦を学べるとても良い本である。目次第1章失われてい...憲法とは国家権力への国民からの命令である

  • 【旧作】アジア・女・民衆 (アジアが見えてくる1)【斜め読み】

    松井やより,1987,アジア・女・民衆(アジアが見えてくる1),新幹社.(12.25.24)若いとき、松井さんの著作をとおして、アジア、とくにそのグローバルサウスにおける貧困、環境破壊、性と労働力の搾取といった問題群についてたくさん学ばさせてもらった。本書は、講演録であるが、タイ、ビルマ(現ミャンマー)、フィリピン、パキスタン、バングラディシュ等でのからだをはった取材、調査、そこで得られた経験と知識にもとづく、わたしたちグローバルノースに生きる者たちへ突きつけられる問いは鋭く、手厳しい。グローバルサウスにおける悲惨はいまも変わらない。わたしは、NGOに寄付することしかしていないが、ほかにできることはないか、模索していきたい。  松井やよりさんについて アジア女性資料センター  【旧作】アジア・女・民衆(アジアが見えてくる1)【斜め読み】

  • 【旧作】誰のために子どもを産むか【斜め読み】

    青木やよひ編著,1985,誰のために子どもを産むか,オリジン出版センター.(12.23.24)青木さんは、1980-90年代に、エコフェミニズムの旗手として活躍されていた方だ。当時は、イヴァン・イリイチ等の産業社会、学校化社会、病院化社会批判が注目され、一方で、欧米のフェミニズムのように母性、専業主婦、性別役割分業への内省、批判に徹しきれなかった日本のフェミニズムにおいて、女性性なり女性の身体性なりを否定しない、といった風潮のなかで、エコフェミニズムが幅広い支持を集めたのであった。「男なみになる」ということは男なみに環境破壊や戦争に加担することである──そうした認識のもとで、妊娠、出産、子育て、介護といった労働を再評価する、それは、女性の身体性を肯定する価値観として受容されたのであった。2000年代には、...【旧作】誰のために子どもを産むか【斜め読み】

  • ひとりの午後に、みんな「おひとりさま」

    上野千鶴子,2010,ひとりの午後に,日本放送出版協会.(12.23.24)「箱入り」だった子ども時代から胸苦しさに満ちた金沢での青春期、「枯れた」学生だった京都での日々。東大に招ばれ、逆風に身を置きながら、いまは亡き両親や敬愛する友、教え子、そして自らの行く末をおもう・・・。潔くてほろ苦い「大人のための」エッセイ集。フェミニストの上野も稀代の論客の上野も知らない読者向けに書かれたエッセイ集。親、思春期の思い出、加齢等々、さまざまなテーマで軽やかに文章が紡がれている。厳選された言葉のみで語られる自己と他者、そして世界。爽やかな読後感が残る。目次1思いだすこと菫の香水墓ほか2好きなもの声夕陽ほか3年齢を重ねて青春うたほか4ひとりのいま佇まい儀式ほか上野千鶴子,2012,みんな「おひとりさま」,青灯社.(12...ひとりの午後に、みんな「おひとりさま」

  • 【旧作】リブとフェミニズム、権力と労働【斜め読み】

    叢書、『日本のフェミニズム』は、のちに、『新編日本のフェミニズム』として改版され、現在も入手可能である。女性が、もっぱら男性の性欲を解発する記号として客体化、商品化される問題も、介護、看護労働をはじめとする対人サービス労働が安く買い叩かれている問題も、現在もなお解消されていない。遅々として解消が進まない女性差別の帰結が、非婚化、超少子化であろうが、生命と心身の再生産労働を、市場の外部にある家族、とくに女性の無償労働に担わせてきたことのツケが一気に回ってきた感がある。このアンソロジーには、まだ未来に希望をもてた時代の、荒削りながら、自らの心身を道具化し搾取する家父長制社会に抗う女たちの思いが多数収められている。井上輝子・上野千鶴子・江原由美子編,1994,リブとフェミニズム(日本のフェミニズム1),岩波書店...【旧作】リブとフェミニズム、権力と労働【斜め読み】

  • 冒険の国、ローズガーデン(新装版)

    桐野夏生,2005,冒険の国,新潮社.(12.21.24)永井姉妹と森口兄弟は、姉と兄、妹と弟が同級生同士で、常に互いの消息を意識してきた。特に、弟の英二と妹の美浜は、強い絆で結ばれていた。が、ある日、一人が永遠に欠けた。英二が自殺したのだ。美浜は、欠落感を抱えたまま育った街に帰って来る。街はディズニーランドが建設され、急速に発展していた。そこで、美浜は兄の恵一に再会する。バブル前夜の痛々しい青春を描く文庫オリジナル。桐野さん、小説家キャリアごく初期の作品。物語は淡々と進む。あっと驚くようなできごとも展開もない。あとの桐野作品と比べれば少々退屈かもしれないが、桐野ワールドの元型を本作に見ることができる。桐野夏生,2017,ローズガーデン(新装版),講談社.(12.21.24)女探偵・村野ミロの濃密な人生を...冒険の国、ローズガーデン(新装版)

  • 【署名】大阪高裁の“医大生による性的暴行”逆転無罪に対する反対意思を表明します。【呼びかけ】

    大阪高裁の“医大生による性的暴行”逆転無罪に対する反対意思を表明します。無茶苦茶な判決です。賛同の署名をお願いします。【署名】大阪高裁の“医大生による性的暴行”逆転無罪に対する反対意思を表明します。【呼びかけ】

  • 真珠とダイヤモンド 上・下

    桐野夏生,2023,真珠とダイヤモンド上・下,毎日新聞出版.(12.20.24)上1986年春。二人の女が福岡の証券会社で出会った。一人は短大卒の小島佳那、もう一人は高卒の伊東水矢子。貧しい家庭に生まれ育った二人は、それぞれ2年後に東京に出ていく夢を温めていた。野心を隠さず、なりふり構わずふるまう同期、望月昭平に見込まれた佳那は、ある出来事を契機に彼と結託し、マネーゲームの渦に身を投じていく。下時代はバブル全盛に。東京本社に栄転が決まった望月と結婚した佳那は、ヤクザの山鼻の愛人・美蘭のてほどきで瞬く間に贅沢な暮らしに染まっていく。一方の水矢子は不首尾に終わった受験の余波で、思いがけない流転の生活がスタートする。そして、バブルに陰りが見え始めた頃、若者たちの運命が狂い出す…。冒頭、主人公の一人でホームレスの...真珠とダイヤモンド上・下

  • 魂萌え! 上・下

    桐野夏生,200,魂萌え!上・下,新潮社.(12.19.24)夫が突然、逝ってしまった。残された妻、敏子は59歳。まだ老いてはいないと思う。だが、この先、身体も精神も衰えていく不安を、いったいどうしたらいい。しかも、真面目だった亡夫に愛人だなんて。成人した息子と娘は遺産相続で勝手を言って相談もできない。「平凡な主婦」が直面せざるを得なくなったリアルな現実。もう「妻」でも「母」でもない彼女に、未知なる第二の人生の幕が開く。夫の愛人と修羅場を演じるなんて、これが自分の人生なのか。こんなにも荒々しい女が自分なのか。カプセルホテルへのプチ家出も、「あなたをもっと知りたい」と囁く男との逢瀬も、敏子の戸惑いを消しはしない。人はいくら歳を重ねても、一人で驚きと悩みに向き合うのだ。「老い方」に答えなんて、ない。やっぱり、...魂萌え!上・下

  • 【旧作】男流文学論【斜め読み】

    上野千鶴子・小倉千加子・富岡多恵子,1997,男流文学論,筑摩書房.(12.18.24)吉行淳之介、島尾敏雄、谷崎潤一郎、小島信夫、村上春樹、三島由紀夫ら、6人の「男流」作家の作品とそれらをめぐる評論を、当世“札付き”の関西女3人が、バッタバッタと叩き斬る!刊行当初から話題騒然となり、「痛快!よくぞいってくれた。胸がスッとした。」「こんなものは文芸論じゃないっ!」など、賛否両論、すさまじい論議を呼び起こしたエポックメーキングな鼎談。面白さ保証付。若いときからいだいてきた、男性作家が描く女性のセクシュアリティに対する違和感を、本書が見事に言語化してくれたことを思い起こす。そんな女、いねえよ男性作家が自らと女性という他者のセクシュアリティを描くとすれば、生殖を可能とするために創り上げられた奇妙奇天烈な性的ファ...【旧作】男流文学論【斜め読み】

  • 学校が自由になる日

    宮台真司・藤井誠二・内藤朝雄,2002,学校が自由になる日,雲母書房.(12.17.24)「理不尽さ」に覆われた学校システムと、学校共同体主義者による見えざる内面支配を解除し、自由な学校・自由な社会を実現するためのプログラムを大胆に提言する。「リベラリズム教育論」の決定版。崇高なる国家共同体であれ、ノリと空気に支配された学校の教室空間共同体であれ、個人の自由を圧殺することに変わりはない。いじめや理不尽な校則に象徴される学校空間の不自由から脱却するにはどうしたら良いのか、リベラリズムを擁護しつつ議論が展開されている。内藤さんの「学校リベラリスト宣言」は、『いじめの構造──なぜ人が怪物になるのか』所収の論考とほぼ同一の内容。目次学校の何が問題なのか二つの尊厳観日本的メンタリティの構造ほか少年犯罪と新少年法「コ...学校が自由になる日

  • いじめの構造──なぜ人が怪物になるのか

    内藤朝雄,2009,いじめの構造──なぜ人が怪物になるのか,講談社.(12.16.24)人間が「怪物」になるいじめは、なぜ生じ、蔓延するのか?いじめ論で注目を集める研究者が、そのメカニズムを語り尽くす。いじめに興ずる中学生たちに、個人の尊厳や人権を説いても無駄である。彼ら、彼女らは、法の外にある祝祭空間、ノリの世界のなかで、ノラない、ノリが悪い、場の空気を損なう対象を、いじめ尽くす。「悪い」とは、規範の準拠点としてのみんなのノリの側から「浮いている」とかムカツクといったふうに位置づけられることだ。自分たちのノリを外した、あるいは踏みにじったと感じられ、「みんな」の反感と憎しみの対象になるといったことが、「悪い」ことである。「みんなから浮いて」いる者は「悪い」。「みんな」と同じ感情連鎖にまじわって表情や身振...いじめの構造──なぜ人が怪物になるのか

  • 【旧作】生きるのがつらい。──「一億総うつ時代」の心理学、生きづらい時代の幸福論──9人の偉大な心理学者の教え【斜め読み】

    諸富祥彦,2005,生きるのがつらい。──「一億総うつ時代」の心理学,平凡社.(12.15.24)この国の年間自殺者はもう何年も三万人を超えている。誰もが自分は「軽うつ」ではないかと疑いはじめている。この時代には確かに、私たちの生きる意欲を奪う何かがある。生きるのがつらい。もう、前向きになんか生きられない。そんな閉塞感が漂う世の中で、自分の苦しみにうまく対処し、身近な人と支えあいながら生きていくには、どうすればいいのか。反ポジティブシンキングの思想で語る、「一億総うつ時代」の心の処方箋。生きづらさをもたらす社会的経済的要因を考えずに、「気はもちよう」を地で行くだけの心理操作はいただけないが、諸富さんが推奨する「脱同一化」は、たしかに有効な方法であるように思う。生きていくためには、いろいろなスキルが必要です...【旧作】生きるのがつらい。──「一億総うつ時代」の心理学、生きづらい時代の幸福論──9人の偉大な心理学者の教え【斜め読み】

  • 緑の毒

    桐野夏生,2014,緑の毒,KADOKAWA.(12.15.24)39歳の開業医・川辺。妻は勤務医。一見満ち足りているが、その内面には浮気する妻への嫉妬と研究者や勤務医へのコンプレックスが充満し、水曜の夜ごと昏睡レイプを繰り返している。一方、被害者女性たちは二次被害への恐怖から口を閉ざしていたがネットを通じて奇跡的に繋がり合い、川辺に迫っていく―。底なしの邪心の蠢きと破壊された女性たちの痛みと闘いを描く衝撃作。文庫オリジナルのエピローグを収録。本書の読みどころは、人間の卑小、卑劣さを一身に体現したかのような、連続レイプ魔、サイコパスの開業医、川辺の人物造形にあるだろうな。最後は極悪人が成敗されるという安心のオチであるが、ストーリーよりも、一人ひとりの体温さえも感じさせる、登場人物の心象風景の細やかな描写が...緑の毒

  • ハピネス、抱く女

    桐野夏生,2013,ハピネス,光文社.(12.13.24)結婚は打算から始まり、見栄の衣をまとった。憧れのタワーマンションに暮らす若い母親。おしゃれなママたちのグループに入るが、隠していることがいくつもあった。お互いのことを、「○○ママ」と呼び合う、ママ友カーストが気色悪いことこの上ない。見栄の張り合いにうつつを抜かす子持ち専業主婦たちのどす黒い心象風景が印象に残る。人間の醜悪な、微に入り細を穿つ心象風景を描くことについては、おおよそ桐野さんの独擅場である。桐野夏生,2015,抱く女,新潮社.(12.13.24)「抱かれる女から抱く女へ」とスローガンが叫ばれ、連合赤軍事件が起き、不穏な風が吹き荒れる七〇年代。二十歳の女子大生・直子は、社会に傷つき反発しながらも、ウーマンリブや学生運動には違和感を覚えていた...ハピネス、抱く女

  • DACとパワーアンプを直結しYellow Magic Children聴いて悶絶する

    ふと、思いついて、USBDACをパワーアンプに直結してみたら、音が激変。(通算二度目)一つ一つの音がよりクリアに、微粒子がふわーっと広がっていくかのような(どんなんやねん)音場に変わった。プライマーのプリアンプはクローゼットにしまった。オーディオセットがこれまた一段とシンプルになった。 で、久しぶりに、『YellowMagicChildren〜40年後のYMOの遺伝子』を聴く。YMC "YellowMagicChildren#01"LIVEMOVIE[DIGEST]やばい、やはり、巧い、巧すぎる。アンドロイドが弾いているかのような、正確無比なベースラインが心地よい。DAOKOの「在広東少年」、最高やな。夢見心地になる万華鏡のような音世界(どんなんやねん)に浸る。トム・ヨークの福岡公演に行かなかったのが悔や...DACとパワーアンプを直結しYellowMagicChildren聴いて悶絶する

  • 毒母育ちの私が家族のしがらみを棄てるまで

    越田順子,2017,毒母育ちの私が家族のしがらみを棄てるまで,彩図社.(12.12.24)子どもの頃から「妹なんだから我慢しなさい」と言われ続け、新婚生活も初めから母と同居、母との葛藤に気づかず味方になってくれなかった夫と別れることになった。母は私がいないと生きていけないと言ったから、母に尽くすことにした。望まれるがままに母と暮らすための家も建てた。給料もほとんど渡してきた。それなのに、母は遺言に、私が渡したお金で貯めた貯金を姉に渡すと書いた。私がやってきたことはすべて勝手にやったことだから自己責任だと言った。気がついたとき、私はもう子どもも産めない歳になっていた。私はなんのために生きてきたのだろう…。娘の生を否定し、娘婿を娘から奪って、あまつさえ娘の収入と資産を奪い尽くす毒母。不思議なのは、越田さんが、...毒母育ちの私が家族のしがらみを棄てるまで

  • わたしの神様

    小島慶子,2015,わたしの神様,幻冬舎.(12.11.24)TV局の「女子アナ」三人のあいだの、嫉妬、怨恨、憎悪を描く長編小説。小島さんがかつて身を置いていた世界であるだけに、人物造形がとてもリアルに仕上がっている。ここまで人間の卑小さ、意地汚さを描き尽くしたのは、お見事と言うほかない。なかなかにエグい。わたしの神様

  • パーソナリティ障害とは何か

    牛島定信,2012,パーソナリティ障害とは何か,講談社.(12.11.24)境界性、自己愛性、反社会性……。私たちはパーソナリティ障害とどう向き合うべきか。第一人者が豊富な症例をもとにその本質に迫る。「見捨てられ不安」を抱く境界性、尊大さの背後に別の人間像を隠し持つ自己愛性、「恥の心理」を抱える回避性……。精神科臨床の最前線に立つ著者が、豊富な症例をもとに、現代の病ともいえるパーソナリティ障害の心理構造から周囲の接し方まで丁寧に紹介する一冊。本書では、スキゾイド、サイクロイド、妄想性、反社会性、境界性、自己愛性、回避性、強迫性、演技性、以上のパーソナリティ障がいが取り上げられている。なかでも、境界性パーソナリティ障がいについては、たいへん興味深かった。境界性パーソナリティ障害の特徴として、まず挙げておかね...パーソナリティ障害とは何か

  • 【旧作】病的性格【斜め読み】

    懸田克躬,1965,病的性格,中央公論新社.(12.11.24)取り扱う概念も学説も、さすがに古くなってしまっているのは否めないが、今日の、パーソナリティ障がいの概念体系に接続されるコンセプトの元型が提示されていて、なかなか興味深かった。それから、使用する言葉と文体が、非常に美しい。文学的素養を備えた精神科医の分析を読むのは、実に心地よい。【旧作】病的性格【斜め読み】

  • 娼婦論

    金完燮(李幸子訳),2002,娼婦論,日本文芸社.(12.10.24)ベストセラー『親日派のための弁明』の著者が語る韓国人女性を激怒させた問題の女性論。訳文がひどいのはおいておくとして、この金完燮という人、いまでいう「炎上商法」を旨とする作家なのか、いろいろと暴言がひどい。オヤジに囲われた水商売女も、夫に経済的に依存する既婚女も、不得意多数の客を相手にする売春女と変わらぬ娼婦である──この点については同意する。あるいはある男性が、すごく美しい娼婦に惚れて、彼女にアパートを買ってあげ、また毎月の生活費もまかない、ただ自分だけ利用することができる「専属娼婦」にしたら、これも法律には抵触しない。このようなケースでは、男性や女性が既婚者ならば、まだ姦通罪で処罰することができる場合があるが、おたがいが未婚ならばなん...娼婦論

  • 【旧作】社会不安障害──社交恐怖の病理を解く【斜め読み】

    田島治,2008,社会不安障害──社交恐怖の病理を解く,筑摩書房.(12.10.24)人間にとって不安とは身近なものである。しかし、それが度を越え、日常生活に支障をきたすまでになった場合、不安障害の可能性が出てくる。とりわけ現代においては、「社会不安障害」(SAD)と呼ばれるものが最も多く、対人恐怖がその症状の典型として現れる。本書は、具体的な症例を紹介しながら、病気としての登場の経緯、治療にあたっての留意点、薬に関する知識などを解説し、この病に悩む人々への一助を提供しようとするものだ。社会不安障がいは、ASDやADHDと同様、サービス経済化が進行し、他者とのコミュニケーションが欠かせぬ職業が増加するとともに顕在化したものであろう。新たな疾病なり障がいなりがつくり出され、効能があるとされる薬剤が濫用される...【旧作】社会不安障害──社交恐怖の病理を解く【斜め読み】

  • 【旧作】わたしって共依存?【斜め読み】

    河野貴代美,2006,わたしって共依存?,日本放送出版協会.(12.9.24)恋人、友達、家族…誰かのそばから離れられない自分を「依存症」ではないかと不安に思っているアナタへ。親密な関係は、苦しくもあたたかいもの。人に頼り・頼られることのススメ。相手に依存されることで承認欲求が充たされ、自らに依存する相手がなくてはならない存在になる。それが、共依存である。相手が、アルコール、薬物、ギャンブル等の依存症者である場合、依存症ゆえのトラブルに対処することで、依存症者は嗜癖の泥沼から抜け出すすべを失う。依存症の様態によっては、自らも相手と一緒に、生活や人生の破綻の憂き目に合う。自己は他者との関係性のなかでしか存在しえないわけであるから、依存されることに依存する、依存することに依存される関係を断ち切ることは難しい。...【旧作】わたしって共依存?【斜め読み】

  • 痴漢外来──性犯罪と闘う科学

    原田隆之,2019,痴漢外来──性犯罪と闘う科学,筑摩書房.(12.8.24)痴漢は犯罪であり、同時にその一部は「性的依存症」という病気でもある。東京都心のとある精神科クリニックで開かれる、通称「痴漢外来」。ここでは性的依存症の「治療」プログラムによって、通常30%台と言われる痴漢の再犯率を3%にまで抑えている。痴漢行為を行うのは、どんな人なのか。彼らに共通する「認知のゆがみ」とはなにか。どうすれば痴漢をやめさせることができるのか。最新の研究成果に基づき、痴漢をはじめとする性犯罪・性的問題行動の実態に迫る。窃触(痴漢)、盗撮といった性犯罪は、歪んだ性欲の発露に端を発する、「やめるにやめられない」、一種の強迫神経症の現れであり、まぎれもない依存症──プロセス依存、行為依存の病気である。もちろん、病気だからと...痴漢外来──性犯罪と闘う科学

  • 問題少女──生と死のボーダーラインで揺れた

    長田美穂,2006,問題少女──生と死のボーダーラインで揺れた,PHP研究所.(12.7.24)リストカット、万引き、売春、フーゾク――。境界性人格障害(ボーダーライン)と診断された彼女の死から見えてきたものとはなにか。生と死。正常と異常。自分の外側と内側。人間は、つねにその境界線(ボーダーライン)を揺れ動く。リストカット、摂食障害、薬物依存、セックス依存……。つい境界線を越えてしまうことが、どの人にも起こりうる時代になった。そういった問題ごとが、もう他人ごととはいえない時代になった。本書は、女性ジャーナストが長年追い続けた「問題少女」の観察記録である。彼女・レイカは、鬱病とも境界性人格障害(ボーダーライン)とも診断されていた。だが、著者・長田との関係、つまり取材する者とされる者の関係をこえ、「友人」とし...問題少女──生と死のボーダーラインで揺れた

  • 夜また夜の深い夜

    桐野夏生,2014,夜また夜の深い夜,幻冬舎.(12.6.24)私は何者?私の居場所は、どこかにあるの?どんな罪を犯したのか。本当の名前は何なのか。整形を繰り返し隠れ暮らす母の秘密を知りたい。魂の疾走を描き切った、苛烈な現代サバイバル小説。奇想天外なストーリーではあるが、そこはファンタジー小説と割り切って読めば、ぐいぐいと物語世界に引き込まれ、一気読みしてしまうことだろう。主人公の舞子とエリス、アナとのシスターフッドが印象に残る。桐野夏生「夜また夜の深い夜」書評心の闇を癒やす不幸また不幸夜また夜の深い夜

  • だから荒野

    桐野夏生,2013,だから荒野,毎日新聞出版.(12.6.24)傲慢な夫や息子たちに軽んじられながら家庭を支えてきた主婦・森村朋美は46歳の誕生日、ついに反旗を翻す。衝動にかられ夫自慢の愛車で家出、日本列島を西へ。〈壊れかけた家族〉を桐野夏生が激しく愛おしく描く傑作長編小説!中年既婚女性を主人公にしたロードノベル。朋美が愛想を尽かした夫、浩光の、ミソジニー(女性蔑視)、卑小な小市民性が実によく描かれている。一つの家族が解体し、家族の外部に、救いとなる人間関係が紡がれ、しかし、それさえはかなく消え去ってしまう無常感が読後に残る。だから荒野

  • さらばOcnモバイルOne

    先日、OcnモバイルOneから、Simカードに不良があるかもしれないので、電話して交換を申し込めという、いかにも旧電電公社、現NTTグループらしい居丈高なハガキがきた。早速、申し込もうとしたところ、やっとつながったと思ったら、痛恨の操作ミスで、電話が切れてしまった。その後、何度かけても、話し中でつながらない。あのさ、Simカードの不良があるかもしれないのだったら、無条件に、交換すべきでしょうに。いい加減にあたまにきて、MNPを利用して、日本通信に乗り換えた。本人認証はマイナカード、けっこう手こずったが、なんとか申し込み完了。基本料金は、月々、290円wわたしは、パソコンのヘヴィユーザーではあるが、スマホはそうでもない。どいつもこいつも馬鹿面さげて6インチ程度の画面とにらめっこして、きんもー☆だyoさらばOcnモバイルOne

  • リストランテ アモーレ

    井上荒野,2015,リストランテアモーレ,角川春樹事務所.(12.5.24)姉弟で切り盛りしている目黒の小さなリストランテ。色艶に満ちた皿の数々と、それぞれの事情を抱えたアモーレども(罪深い味わいに満ちた男と女)を描く幸福な物語。美味しそうな料理と色恋とのコラボは、井上さんのおはこの一つ。シェフの杏二は、とんでもない女たらしなのだが、「若いイケメン」であることから、嫌悪感をいだかせない。フルコースのお料理を平らげたかのような読後感。とてもおしゃれな長編小説だ。リストランテアモーレ

  • 安全に狂う方法──アディクションから掴みとったこと

    赤坂真理,2024,安全に狂う方法──アディクションから掴みとったこと,医学書院.(12.4.24)アルコール、薬物、ギャンブル、仕事、恋愛、セックス、拒食・過食等々、人はさまざまなもの、こと、人に執着、固着する。赤坂さんは、アディクションが、抑えがたく癒しがたい生きづらさから逃れるためのものであるとする。そして、アディクションが、人が自死しないための切羽詰まった逃避である、とも。固着による苦痛、苦悩から逃れるための固着もまた、別ようの苦しみをもたらす。何かに固着すること。こだわらずにいられず、そのことが頭から離れず、実行せずにいられない気持ちになること。しかしその実行によって、新たな苦しみが生まれてしまうこと。考えてみれば不条理きわまりないこうした状態に、ある年齢以上の人間のほぼ全員が悩んだことがあるは...安全に狂う方法──アディクションから掴みとったこと

  • 誇大自己症候群

    岡田尊司,2005,誇大自己症候群,筑摩書房.(12.4.24)「普通の子」が、些細なことから突発的に凶悪な事件を起こす。彼らはなぜ、世間を震撼させる犯罪者になったのか?従来の精神医学ではとらえきれない病理を、「誇大自己症候群」という切り口から探る。そこに共通するのは、幼児的な万能感やヒーロー願望、現実感に乏しいファンタジー傾向、他者への共感性の欠如や自己正当化などである。そしてそれらは、とりもなおさず、現代の大人たち、ひいては社会全体に見られる心的傾向なのだ。本書では、この病理を徹底分析、自己の呪縛が肥大化した現代を検証しつつ、その超克を見据えた画期的論考。しつけや教育の寛容化や少子化により、根拠のない過剰な自尊心──誇大自己をもったままの「大人こども」が増えている。学校で、職場で、不幸にも、呪物クラス...誇大自己症候群

  • 解縛──母の苦しみ、女の痛み

    小島慶子,2017,解縛──母の苦しみ、女の痛み,新潮社(Kindle版).(12.3.24)母親の憑依、屈折した子供時代、15歳からの摂食障害。女子アナとしての挫折、男社会の理不尽。鋭い筆致で自らを見つめた魂の手記。理想を押しつけ、娘を思い通りにしようとする母。憧れと恐れを抱かせる9歳年上の姉。女たちの軋轢に向き合わなかった父。絶望感から私は15歳で摂食障害に陥った。自立を求めて「女子アナ」になるが、男性社会のなかで挫折と理不尽を経験。育児をきっかけに不安障害を発症し、死を願うまでに。そんな私を救ったのは――。鋭い客観性で自らを見つめ、包み隠さずつづった衝撃の手記。本書では、親への呪詛が延々と綴られている。わたしも、過保護・過干渉の母親と、酒が入ると暴言を吐きまくり、ときには母に暴力を振るう父親を忌み嫌...解縛──母の苦しみ、女の痛み

  • 社会政策の社会学

    武川正吾,2009,社会政策の社会学──ネオリベラリズムの彼方へ,ミネルヴァ書房.(12.2.24)新しい社会政策の概念に基づきながら、社会政策の理論・応用・実証について、社会学の立場から探求してきた研究成果の集大成。骨太の論考集。社会政策学は、雇用や社会保障における問題性とその解決策を講じる実践的な学問なのだから、そのときどきの政治権力と、ときには対峙し、ときには協働するのが筋である。にもかかわらず、社会政策学は、ほとんど政治的アリーナの蚊帳の外に置かれ続けてきた。雇用や社会福祉の政策を検討する審議会には、政治家、官僚、労組と経営者団体の代表者、そして社会政策学の専門家が参加するのが、自由権と社会権が保障された民主主義社会、とくにコーポラティズムに立脚した福祉国家の鉄則である。しかし、この国の意思決定の...社会政策の社会学

  • 書籍処分

    書架のスペースを空けるために既読本を処分。今後もばんばん読んでは捨てていかないといけない。死ぬまで不労所得で生活できる目処が立ち、子ども食堂や無料学習塾のお手伝い、保護猫活動、本の執筆等々、これからやりたいことをいろいろ考えるのが楽しい。落ち着いたら、ずいぶんご無沙汰の釣りにも行きたいなあ。体調もすこぶる好調なので、家に閉じこもるつもりはない。なんと恵まれていることよのう。書籍処分

  • デンジャラス

    桐野夏生,2017,デンジャラス,中央公論新社.(12.1.24)三番目の妻・松子とその妹・重子を傍に置きながら、重子の義理の息子の嫁・千萬子を寵愛した谷崎潤一郎。女たちの嫉妬と葛藤が渦巻くなか、それに翻弄される自分自身の姿までも創作の糧とした文豪の尽きせぬ「業」を、作家・桐野夏生がさらに新たな小説へと昇華させる。晩年の谷崎潤一郎と女性たちが一つ屋根の下で繰り広げた四角関係をスキャンダラスに描く。気に入った女たちを周囲に侍らせ、観察するという「男の夢」の完成と崩壊は、好評だった最新刊『猿の見る夢』とつながるテーマ。また、女性の一人語りで展開される濃密な物語はヒット作『グロテスク』にも通じるところがあり、桐野氏の新たな代表作として広く手にとってほしい。君臨する男。寵愛される女たち。文豪が築き上げた理想の“家...デンジャラス

  • 【既読本】生活保護から考える【再録】

    稲葉剛,2013,生活保護から考える,岩波書店.(7.17.2020)この一冊で、わが国における最低生活保障の制度の欠陥と問題点とが、とてもよくわかるようになる。民法で定められている「直系血族およびきょうだいの扶養義務」と生活保護法における「補足性の原理」の関係、この奇々怪々な問題を、本書は明解に説明してくれている。この部分を理解できるだけでも、本書を読む価値はある。一九四七年八月一八日の衆議院司法委員会の議事録には、興味深いやりとりが残されています。民法改正をめぐって扶養義務規定を廃止すべきとする加藤シヅエ議員の質問に対して、当時の片山哲内閣の鈴木義男司法大臣が以下のように答弁しているのです。「扶養の範囲等をきめることは、次の立法に譲りまして、いきなりこれを廃止してしまうというのも行き過ぎだから、少くと...【既読本】生活保護から考える【再録】

  • 【既読本】女性労働と企業社会【再録】

    熊沢誠,2000,女性労働と企業社会,岩波書店.(7.20.2020)「女性労働」の典型ともいえる職業的キャリアを築いきた女性たちのライフヒストリー、被差別女性労働者を原告とする裁判の判例等をまじえて、女性労働者たちが直面しつづけてきたさまざまな困難を論じる。引用されている海外の研究からもわかるとおり、女性の労働問題は日本固有のものではない。ただ、現在に至っても、日本における男女間の労働条件の不平等は圧倒的に大きい。本書が書かれて20年、いっこうに問題が解消されていない現実に気付かされる。女性が多数を占めるケア労働の評価を高める、その根拠が興味深い。ペイ・エクイティの要求は、従来の職務評価方式をジェンダー的な先入観の批判を通して修正させる意義も担っている。従来の方式では、「男の仕事」・上位職務を特徴づける...【既読本】女性労働と企業社会【再録】

  • 【既読本】ブラックバイト、ブラック奨学金【再録】

    「ブラックバイト」。学生が、労働法を知らないことをいいことに、サービス残業、むちゃなシフトを強いて、「やめたい」と言うと、「賠償金を支払え」と恐喝する。そこまでいかなくとも、「こういう働かせられ方はおかしいのでは」という学生の正しい思いは、「社会の厳しさを知らない」、「そんなんじゃ世の中生きていけない」と脅され、封印される。そして、「ブラック奨学金」。国家と金融業者が結託して、学生と親たちから高額の「教育ローン」をむしりとる。利息のみならず、延滞金の課しかたがえぐい。JASSO(日本学生支援機構)と金融業界のやり口の、このえげつなさよ。次世代の育成どころか、日本の奨学金制度には「金融搾取」の疑いさえかけられている。JASSOが1年あたり徴収する利息や延滞金は非常に膨大だ。2015年度には、約387億円の利...【既読本】ブラックバイト、ブラック奨学金【再録】

  • 【既読本】アンダークラス【再録】

    橋本健二,2018,アンダークラス──新たな下層階級の出現,筑摩書房.(7.31.2020)『日本の階級社会』と同じく、SSM(SocialStratificationandMobility=社会の階層化と移動)調査等のデータにもとづき、「階級未満の階級」の実像に迫る。「失業者・無業者」も含めれば、日本のアンダークラスはもはや膨大な人口クラスターだ。貧困、病気、孤立、絶望の淵に立つ人々の苦しみが、生きたデータとその解釈により、立ち現れる。アンダークラスの人々に、最低所得、教育・職業訓練・雇用機会の保障をしなければならないのは、「もしかしたらわたしが彼女、彼であったかもしれない」からである。それだけではない。アンダークラスの利益を擁護することは、倫理的にも正しい。現代リベラリズムの基礎を築いた倫理哲学者のジ...【既読本】アンダークラス【再録】

  • 女の一生

    伊藤比呂美,2014,女の一生,岩波書店.(11.30.24)「月経とは?」「摂食障害について教えてください」「セックスが苦痛です」「むなしくてたまりません」「子どもがひきこもっています」「別れたい」「恋をしました」「一人で死ぬのが怖い」……。年を経ても尽きない女の悩み。いくつもの修羅を引き受け、ひたすら生き抜いてきた著者が、親身に本音で語りかける人生の極意とは。伊藤さんは、自らのままならない女の身体に振り回されながら、同時に、セックス、出産、授乳と、それを満喫しきった人でもあった。「わたしはわたし、あなたはあなた」、自他の境界線を踏み越えず──踏み越えざるを得ないからこその歓びがあるとしても──、自らのテリトリーをしっかり守りながら、自らの身体と向き合い続けること、それが、女を生きる、ということなのだろ...女の一生

  • BD34301EKV搭載DAC

    労組地域連合の大会での用務。博多駅前では、「クリスマスマーケットin光の街・博多」が開催されており、けっこう賑わっていた。大会にわたしの所属単組からは参加者ゼロ。残念なことだ。けっこうな数の組合員がいるのだから、だれか一人くらい参加しても良さそうなのに。労組の活動も含めて、民主主義を維持するためには、それなりのコストがかかる。権利だけは主張して義務を果たさなければ、民主主義が成り立つわけない。帰宅後、BD34301EKV搭載DAC、VMVSMSLD2RD/Aコンバーターが到着。在宅していたのに、手渡しでも置き配でもなく、宅配ボックスに放り込まれていた。配達員が低賃金過重労働なのはわかっているので、苦情を申し立てるつもりはまったくないのだが。アマゾンに配送を委託されている人たちが労組を組織して、待遇改善をは...BD34301EKV搭載DAC

  • 家族、この不条理な脚本──家族神話を解体する7章

    キム・ジヘ(尹怡景訳),2024,家族、この不条理な脚本──家族神話を解体する7章,大月書店.(11.29.24)LGBTの権利や性教育を認めれば「家族が崩壊」する?私たちを無意識に拘束する「健全」な家族という虚像が作りだす抑圧や差別、排除を可視化する。日韓累計25万部『差別はたいてい悪意のない人がする』著者待望の第二作。日本の私たちもまったく同じ風景を見ている、同じ滅びの道を辿っている…と何度も思った。「家族という脚本」を強制し続けることによって個人が抑圧され、幸せに生きていけない社会。そんなところにいたくないと思う人に、ぜひ届いてほしい。――太田啓子(弁護士、『これからの男の子たちへ』著者)「正常な家族」がある限り、「異常な家族」という烙印(スティグマ)は残り続ける。家族というシナリオには、女性差別や...家族、この不条理な脚本──家族神話を解体する7章

  • ホットプレートと震度四

    井上荒野,2024,ホットプレートと震度四,淡交社.(11.28.24)数々の「おいしい小説」を手掛けてきた著者が贈る――“食にまつわる道具”を通して揺れ動く老若男女を描いた短編集。「今年のゼリーモールド」「ピザカッターは笑う」「コーヒーサーバーの冒険」「あのときの鉄鍋」「水餃子の机」「錆び釘探し」「ホットプレートと震度四」「さよなら、アクリルたわし」「焚いてるんだよ、薪ストーブ」の9篇を収録。結婚祝いに贈られたお揃いの鉄鍋。夫の元カノから譲り受けるホットプレート。クリスマスプレゼントのピザカッター…“食にまつわる道具”をめぐり、揺れ動く心を切り取った短編集。井上さんの短編小説は、年を追うごとに完成度を増しているように思う。作品一つ一つを読了するごとに、なんとも言えない余韻に浸るとともに、巧いなー、と感心...ホットプレートと震度四

  • 受援力──“介護が日常時代”のいますべてのケアラーに届けたい本当に必要なもの

    町亞聖,2024,受援力──“介護が日常時代”のいますべてのケアラーに届けたい本当に必要なもの,法研.(11.28.24)本書を一言で表せば“読むピアサポート”です。受援力(じゅえんりょく)とは、困ったときに誰かに助けを求めることができる力のこと。介護に直面したときに大切なのは、この「受援力」を発揮することです。ある日突然、介護に直面すると、生活が一変してしまい、どうしていいかわからない状況に追い込まれ、精神的に追い詰められてしまう人も少なくありません。介護はプロの力を借りることができますし、利用できるサービスもいろいろあります。すべてを自分で抱え込む必要はないのですが、「人に助けてもらう力」が弱いと、自分で何とかしようとしてしまいます。一時的なことなら、それでもいいかもしれませんが、介護は終わりが見えま...受援力──“介護が日常時代”のいますべてのケアラーに届けたい本当に必要なもの

  • 義母を弔う

    山口で義母の葬儀。少人数での家族葬だったが、葬儀は、残された者が故人を偲び悲嘆を癒やすための儀礼に過ぎないので、そもそも盛大に行う必要などまるでない。認知症を患い老衰で亡くなるというのは、当人にとっていちばん楽ちんな死に方なのかもしれない、そう思った。義母が亡くなったのは昨日の早朝だったが、同日、USBDACS.M.S.LD400EXもお亡くなりになった。通電しても電源が入らない。ちーん。二年ともたなかったなあ。とりま、クローゼットにしまっていたSMSLSU-8で代替しているが、良い音を聴きたい病気が治まらず、VMVSMSLD2Rをポチった。根が貧乏性なので、100万円クラスのDACには手が出ない。それでも高音質を我慢できないとなると、中華DAC一択となる。もっと散財しても良いご身分ではあるが、できるだけ...義母を弔う

  • 【旧作】アプローチとしての福祉社会システム論【斜め読み】

    訓覇法子,2002,アプローチとしての福祉社会システム論,法律文化社.(11.27.24)福祉生産・供給システムを考察するための新たな概念を提示。ヨーロッパ諸国と日本との対比を軸に、福祉社会システムの歴史的発展と現状を体系的に展開する。やや難解なところもあるが、訓覇さんの専門であるスウェーデンの社会保障、社会福祉施策についての記述が実に細かい。社会福祉における選別主義と普遍主義の軸は、現在もそう変わっていない。日本、米国、イギリスは選別主義のままであるし、スウェーデンやデンマークは普遍主義のままだ。その国の福祉の水準は、民主主義のレベル──政治的エリートへの接近可能性、労働組合による勤労者の包摂度、個人の家族からの自立度、これらによって決定されるものであるのだろう。目次アプローチとしての福祉社会システム論...【旧作】アプローチとしての福祉社会システム論【斜め読み】

  • 「ハラスメント」の解剖図鑑──アウトorセーフの「境界線」と「根拠」がわかる!全48種のハラスメントを完全網羅

    宮本剛志,2024,「ハラスメント」の解剖図鑑──アウトorセーフの「境界線」と「根拠」がわかる!全48種のハラスメントを完全網羅,誠文堂新光社.(11.27.24)「女性ならではの視点だ」「妊娠中だから無理しないで」「ウェブ会議は画面オンにして」……それ今、不適切です!2022年4月に中小企業でもパワハラ防止対策を実施することが義務付けられました(大企業は2020年から)。職場でも、ハラスメントはパワハラだけでなく、マタハラ、セクハラ、モラハラ、アルコールハラスメントなど、多岐に渡ることが周知されてきています。それにも関わらず、労働局などに寄せられる労働相談のトップはいまだに「いじめ、嫌がらせ」で、大企業では法律施行後も年間1万8千件以上のパワハラ相談が寄せられています。研修などで社員教育を進める企業も...「ハラスメント」の解剖図鑑──アウトorセーフの「境界線」と「根拠」がわかる!全48種のハラスメントを完全網羅

  • ケア労働の配分と協働──高齢者介護と育児の福祉社会学

    後藤澄江,2012,ケア労働の配分と協働──高齢者介護と育児の福祉社会学,東京大学出版会.(11.26.24)ケア労働を生命再生産労働と位置づけ、英国と韓国の事例も紹介し、家庭と地域社会が協働でケア労働を行なう仕組みを提示する。市場のグローバル化や少子高齢化などの社会変動が進むなかで,育児や高齢者介護などのケア労働も変容している.本書は,ケア労働を「生命再生産労働」と位置づけ,英国と韓国の事例も紹介し,家庭と地域社会が協働してケア労働を行なえる仕組みを提示する.問題意識はよく理解できるのだが、ケア労働の最適配分と、ケアの供給主体としての、国家、自治体、企業、地縁集団、ボランタリーアソシエーション、家族の協働のあり方を模索するという点で、隔靴掻痒の感想しかもちえないな。ケア労働が、生命と尊厳の維持に必要不可...ケア労働の配分と協働──高齢者介護と育児の福祉社会学

  • 【旧作】ハタチの原点──仕事、恋愛、家族のこれか【斜め読み】

    阿部真大,2012,ハタチの原点──仕事、恋愛、家族のこれから,筑摩書房.(11.26.24)就活、失敗したくないし、恋愛も結婚もしたいし…。自分の将来って、どうなるの?76年生まれの社会学者が、20代に向けて熱く語る、まったく新しい「生き方」ガイド。この社会の仕組みも、見えてくる。「好きを仕事に」というメッセージは、職業が人間の願望、志向性に合わせて成立しているのではない以上、「仕事は生計を得るため」というそれよりも、就職した若者をよけいに苦しませることになりかねない。また、「好きを仕事に」したならしたで、「自己実現系ワーカホリック」に陥るリスクも生じる。若者が、継続できる仕事を模索するのにじゅうぶんな猶予を与えられるためにも、また、人生のいつであっても、学びなおせる、あるいは転職できる機会を保障される...【旧作】ハタチの原点──仕事、恋愛、家族のこれか【斜め読み】

  • 自然死(老衰)で逝くということ──グループホーム「わたしの家」で父を看取る

    三浦耕吉郎,2024,自然死(老衰)で逝くということ──グループホーム「わたしの家」で父を看取る,新曜社.(11.25.24)医療的な論理ではなく介護的な実践による、尊厳ある生のなかでの逝き方とは?超高齢者の終末期に過剰な医療的措置を施されたり、尊厳死という名の死の自己決定を強いられたりすることなく、いかに穏やかな自然死(老衰死)を迎えることができるのか。実父の最期の6日間の介護記録とその後のグループホームでのインタビューから、終末期のとくに疾患のない高齢者に対する「日常的なケア以外のことは何もせずに看取る」作法を考える。団塊世代が大量死する時代を迎えて、わたしたちが遠ざけてきた「死」が、ごく日常の風景として可視化されつつある。過剰な医療による延命措置が疑問視され、在宅での穏やかな死が望まれるようになって...自然死(老衰)で逝くということ──グループホーム「わたしの家」で父を看取る

  • ぼっち死の館

    齋藤なずな,2023,ぼっち死の館,小学館.(11.23.24)老いを生き、描く76歳作家の「純」漫画!舞台は高度経済成長期に建てられた団地。現在そこにはひとり身の老人たちがいつか訪れる孤独死、「ぼっち死」を待ちながら猫たちと暮らしている。そんな彼女らが明日迎える現実は、どんな物語なのかーーー自らも団地に暮らす76歳の著者が描く、私たち全員の未来にして、圧倒的現在。『夕暮れへ』にて日本漫画家協会賞優秀賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門収集賞を受賞した齋藤なずな、渾身の最新作。粗いタッチでありながら、とことんリアルな人物描写が印象に残る。とにかく人が死ぬ。次々に死んでいく。しかし、それは、高齢者ばかりが住む団地では、ごく日常の光景なのだ。メメント・モリ。死と隣合わせの超高齢社会の日常をたっぷり体感できる作品...ぼっち死の館

  • ママナラナイ

    井上荒野,2020,ママナラナイ,祥伝社.(11.23.24)「ママナラナイわね、お互いに」斉藤尚弥は不動産会社に勤務する三十六歳。近頃、何もかもうまくいかない。男性器も心も折れてしまい、おまけに仕事も絶不調―通称“川の家”と呼ばれる高台にある家に住む、夫婦への立ち退き交渉が難航していたのだ。夫人によれば、立ち退きを強く拒否しているのは夫の方らしいのだが…。夫人の協力を得て交渉を続けるうちに、やがて思いもよらない事実が判明し―(表題作)。この世に生を享け、大人になり、やがて老いるまで―ままならぬ心と体を描いた美しくも不穏な、極上の10の物語。ウェットな心象風景の描写にこころがざわつく。こころも身体も自らの意思で制御できず、ただただ外界のできごとに振り回され、嗤うしかない宙ぶらりんの状態に落とし込まれる。人...ママナラナイ

  • あちらにいる鬼、ママがやった

    井上荒野,2019,あちらにいる鬼,朝日新聞出版.(11.22.24)人気作家・みはるは講演旅行を機に作家・白木と男女の関係になる。一方、白木の妻・笙子は夫の淫行を黙認、平穏な生活を送っていた。だが、みはるにとって白木は情交だけに終わらず、〈書くこと〉を通じてかけがえのない存在となる。父と母、瀬戸内寂聴をモデルに3人の〈特別な関係〉に迫る問題作。荒野さんは、この小説で、父、井上光晴とその愛人、瀬戸内寂聴、そして母とのドロドロの三角関係を描き出した。作家・井上光晴とその妻、そして瀬戸内寂聴…長い三角関係の心の綾井上荒野さん「あちらにいる鬼」白木篤郎(井上光晴)の女癖の悪さ、虚言癖が、うんざりするほど細かく描写されている。生皮──あるセクシャルハラスメントの光景に登場する性加害者、月島光一のモデルは、荒野さん...あちらにいる鬼、ママがやった

  • 婦人相談員物語──その証言から女たちの歴史を紡ぐ

    村本邦子・松本周子,2024,婦人相談員物語──その証言から女たちの歴史を紡ぐ,国書刊行会.(11.22.24)婦人相談員は売春防止法によって設置され、性暴力、DV、人身売買など、さまざまな困難を抱える女性たちに寄り添ってきた。本書は、これまであまり光をあててこられなかった婦人相談員の証言から、彼女たちの人生とともに、彼女たちが出会ってきた女性たちの物語を紡ぎ、女性の苦難とつながりの物語を歴史(herstory)として記録したものである。婦人相談員(女性相談支援員)、婦人保護施設(女性自立支援施設)、母子生活支援施設は、売春防止法、DV防止法、女性支援法(困難な問題を抱える女性への支援に関する法律)、児童福祉法を根拠法に、性搾取、暴力被害、貧困等で苦しむ女性たちの保護、自立生活支援を行ってきた。本書は、婦...婦人相談員物語──その証言から女たちの歴史を紡ぐ

  • シドニーの虹に誘われて

    李琴峰,2024,シドニーの虹に誘われて,集英社.(11.20.24)2023年、世界最規模のプライド・パレード「マルディ・グラ」に参加するため、7年ぶりに渡豪した著者。いたるところで11色のプログレス・プライド・フラッグがはためくシドニーの地で、何を見、何を思ったのか。一人の性的少数者として向き合ったこの国のLGBTの歴史とバックラッシュ、そして国会で成立・施行された「LGBT理解増進法」を巡る日本の状況を観照し、丹念に綴った長編紀行。著者撮影による口絵写真2頁付き。眠らない街を探訪したエッセイ「歌舞伎町の夜に抱かれて」も併録。セクシャルマイノリティのための祭典、マルディ・グラへの参加体験とシドニー紀行の文集。李琴峰さんは、このほど、自らが、レズビアンであることに加え、トランス女性であることをカミングア...シドニーの虹に誘われて

  • わたしはわたし。あなたじゃない。──10代の心を守る境界線「バウンダリー」の引き方

    鴻巣麻里香,2024,わたしはわたし。あなたじゃない。──10代の心を守る境界線「バウンダリー」の引き方,リトルモア.(11.20.24)友だち、親、先生、SNSが…毎日しんどい。本当は嫌なのにNOと言えない。そんな人間関係に悩むあなたへ。モヤモヤの正体は、「バウンダリー」にある!?本書は、中高生の困りごとに向き合うスクールソーシャルワーカーの鴻巣麻里香さんが、10代が抱えている人間関係の悩みやしんどさについて、「バウンダリー」を糸口に対処法を見つけ出し、助けになる知識と作戦を伝える本です。バウンダリーとは、「わたしはわたし、あなたはあなた」という、自分と相手の間に引く境界線のこと。たとえ家族でも、友達でも、教師でも、恋人でも、バウンダリーを踏みこえるのはNGです。お互いの心地よい距離感を見つけて、ちょう...わたしはわたし。あなたじゃない。──10代の心を守る境界線「バウンダリー」の引き方

  • 【旧作】ディープ・エコロジー考──持続可能な未来に向けて【斜め読み】

    フリッチョフ・カプラ、アーネスト・カレンバック(靍田栄作訳),1995,ディープ・エコロジー考──持続可能な未来に向けて,佼成出版社.(11.19.24)人間と自然との「共生」を築く近未来へのビジョン―。“環境ブーム”の真偽を問い、今、ここにひもとかれるエコロジーの深思想。カプラとカレンバックが唱えるディープ・エコロジーは、きわめて穏当なものである。人間はガイア、地球環境のガンであり、滅亡すべきである──こうしたベネター等の反出生主義にも通底する過激な思想ではない。人間も含めたあらゆる有機体と有機物、無機物の相互依存性、循環を、システミックに捉えること、これが、カプラ=カレンバックのディープ・エコロジーの要諦であろう。あらゆる生命システムは、独立した部分に分けることができない全体である。システムの重要な性...【旧作】ディープ・エコロジー考──持続可能な未来に向けて【斜め読み】

  • <愛国心>に気をつけろ!

    鈴木邦男,2016,<愛国心>に気をつけろ!,岩波書店.(11.19.24)日本への愛を汚れた義務にするな!「愛国運動」に身を投じてきた著者が、排外主義が高まる現代に覚悟をもって挑む。右か左かではなく、マトモかクズか。その点で言うと、鈴木さんは、まごうことなきマトモな右翼であった。自由と平等、生存を保障するしくみとしての社会を、内発的に支持し、維持する努力を続けること、そこにおいてしか「愛国」のよすがはないことを鈴木さんは教えてくれている。目次第1章美しいが、毒ももつ“愛国心”第2章スローガン化した政治の危うさ第3章自由のない自主憲法か、自由のある押しつけ憲法か第4章“愛国心”が汚れた義務となるとき<愛国心>に気をつけろ!

  • 政策志向の社会学──福祉国家と市民社会

    武川正吾,2012,政策志向の社会学──福祉国家と市民社会,有斐閣.(11.18.24)変化を求められる公共政策、社会学に何ができるか―グローバル化、脱工業化、個人化に対応した新しい公共政策のために。学会報告をもとにとりまとめられた論考集。各々の論文が短めなので読みやすい。社会政策の中心課題は、最低生活保障とジェンダー平等にあると思うが、具体的には、部分的ベーシックインカムとしての給付付き税額控除、児童手当、基礎年金の再構築、第3号被保険者制度の廃止、ケア労働も含めた最低賃金の引き上げ等が焦点的な課題となるだろう。研究は遅々として進まないが、わたしも、雇用政策と社会保障における脱商品化、脱ジェンダー化の可能性を追求していきたい。目次公共政策における社会学―公共社会学のために二一世紀型の社会政策―二〇世紀的...政策志向の社会学──福祉国家と市民社会

  • 【旧作】ケアのゆくえ 科学のゆくえ【斜め読み】

    広井良典,2005,ケアのゆくえ科学のゆくえ,岩波書店.(11.18.24)「ケア」を,人と人との間の「関係性」と捉え,「成長・拡大なき時代」における「科学」との関わりのなかで考えるとき,明らかになるものは何か.森林療法・臨床心理学・遺伝医療・代替医療・ソーシャルワーク・園芸療法・身体操法など「ケア」をめぐるパイオニアとの対話を軸に,日本社会の課題と展望を示す.要素還元主義的な科学、対症療法的な医学の限界を見極め、身体知、コミュニティ、自然と人間を超越した存在への包絡(スピリチュアリティ)の可能性を論じる。というと、難しそうだが、森林療法、園芸療法、漢方医学、鍼灸等を想起すれば、ホリスティックな実践の有効性は明らかであろう。まとめよう。本章の前半の「関係としてのケア」に関する議論では、ケアという概念を「関...【旧作】ケアのゆくえ科学のゆくえ【斜め読み】

  • 社会福祉士になろう!

    梅本政隆,2024,社会福祉士になろう!,青弓社.(11.17.24)「社会福祉士」は、業務独占ではなく名称独占の資格であり、医師、看護師、保健師、介護士等もソーシャルワーク(社会福祉相談援助)の機能を果たすことが少なくないが、福祉職の活躍の場は、各種社会福祉事業所、行政機関、病院、学校等、次第に拡大してきた。本書の良いところは、社会福祉協議会、地域包括支援センター等で働く社会福祉士へのインタビューから、実際の業務内容やキャリア形成のあり方がとても良く理解できる点にある。大学社会福祉専攻課程への進学を考えている高校生はもちろんのこと、同課程に在学中の学生にとっても、将来、就くであろうソーシャルワークの具体的な中身を把握するのに参考になるだろう。社会福祉士になろう!

  • 不払い労働二件

    リモート(Zoom)で労組全国連合の定期大会。そのあと、マンション管理組合の理事会。おおよそ、睡眠、食事、入浴、排泄等を除いた人間の活動は、以下の3つに大別できる。1.賃労働2.不払い労働3.ボランタリーな活動労組上部団体やマンション管理組合の活動は、2.不払い労働、に当たる。不払い労働には、家事、育児、介護労働も含まれるが、これらは誰かがやらなければいけない活動である。労組にせよ住民組織にしろ、ほとんど誰も役員にはなりたがらない。けれども、誰かがやらなければ、これらの組織は瓦解してしまう。だから、任期は最長でも3年程度というお約束で、引き受けましょうよ。「私生活中心主義」がきわまり、カネになることか、自分の欲望を満たすことしか考えない風潮が強まっている。ごはん食べるのはいいけれども、自分の食器くらい洗い...不払い労働二件

  • 錠剤F

    井上荒野,2024,錠剤F,集英社.(11.15.24)短編の名手が、日常の隙間にひそむ「孤独」を描き出す―著者史上最もグロテスクで怖い10の物語から成る、最高精度の小説集。バイト先のコンビニに現れた女から、青年は「ある頼みごと」をされて―「ぴぴぴーズ」。男を溺れさせる、そんな自分の体にすがって生きるしかない女は―「みみず」。刺繍作家の女は、20年以上ともに暮らした夫の黒い過去を知ってしまい―「刺繍の本棚」。女たちは連れ立って、「ドクターF」と名乗る男との待ち合わせに向かうが―「錠剤F」。…ほか、あなたの孤独を掘り起こす短編10作を収録!読んでいて、ざわざわ、もやもやする不快感が、人間の負の感情に慣らされて、いつの間にか快感に変わっていく。こんな不思議な感覚を味あわせてくれる作家は、井上さんをおいてほかに...錠剤F

  • その話は今日はやめておきましょう

    井上荒野,2018,その話は今日はやめておきましょう,毎日新聞出版.(11.14.24)一人の青年の出現によって、揺らぎ始める定年後夫婦の穏やかな日常─。老いゆく者の心理をとらえた著者の新境地。ロードバイクでのサイクリングを共通の趣味とする老夫婦と、家事手伝いとして雇われた青年との確執を描いた長編小説。だれでも老いる。老いるとともに心身ともに弱っていくのはこれまただれでも一緒だ。それがわかっていても、老いを認め、受け入れていくのは、なかなか難しいことでもある。そこいらへんの哀しさがとてもよく描かれているように思った。人口構成の高齢化が進んでいるのだから、老人を主人公とした、琴線に触れる物語がもっとあって良い。その話は今日はやめておきましょう

  • ベーシックインカム

    井上真偽,2019,ベーシックインカム,集英社.(11.14.24)遺伝子操作、AI、人間強化、VR、ベーシックインカム。未来の技術・制度が実現したとき、人々の胸に宿るのは希望か絶望か。美しい謎を織り込みながら、来たるべき未来を描いたSF本格ミステリ短編集。日本語を学ぶため、幼稚園で働くエレナ。暴力をふるう男の子の、ある“言葉"が気になって――(「言の葉の子ら」第70回推理作家協会賞短編部門ノミネート作)豪雪地帯に取り残された家族。春が来て救出されるが、父親だけが奇妙な遺体となっていた。(「存在しないゼロ」)妻が突然失踪した。夫は理由を探るため、妻がハマっていたVRの怪談の世界に飛び込む。(「もう一度、君と」)視覚障害を持つ娘が、人工視覚手術の被験者に選ばれた。紫外線まで見えるようになった彼女が知る「真実...ベーシックインカム

  • グレートウーマンに会いに行く──それぞれの人生と活動にリスペクトを込めて

    福島みずほ編著,2024,グレートウーマンに会いに行く──それぞれの人生と活動にリスペクトを込めて,現代書館.(11.14.24)福島みずほが、今いちばん「会いたい人」に会いに行く。大好評のYouTube企画『グレートウーマンに会いに行く』待望の書籍化!『グレートウーマンに会いに行く』は、2023年11月より社民党副党首福島みずほのYouTubeチャンネル「みずほチャンネル」にて定期発信されている対談企画である。本書は、福島みずほと22名の女性先駆者、すなわち「グレートウーマン」による対談を完全書籍化。ケアワーク、教育、平和、そしてウーマンリブ・フェミニズムなど、彼女たちの取り組むテーマはいずれも現代社会の抱える問題と地続きである。女性たちは先駆者としていかに闘い、道を切り開いてきたのか。1960年代以降...グレートウーマンに会いに行く──それぞれの人生と活動にリスペクトを込めて

  • 枠組み外しの旅──「個性化」が変える福祉社会

    竹端寛,2012,枠組み外しの旅──「個性化」が変える福祉社会,青灯社.(11.13.24)既成のドミナントな価値観を相対化し、社会福祉援助、教育、医療等の現場で、「魂の脱植民地化」をはかるにはどうすればよいのか。竹端さんは、自らの経験と参考文献から思考を重ねる。援助、教育、医療の対象は、自己自身でもある。再帰的コミュニケーションのなかで、他者とともに自己も変容していくこと、そこにおいてしか、囚われからの解放とよりよく生きる力の回復はありえない。自らが適切・適正な支援と信じてきたものが、「保護・管理」の思想に基づく「『過剰なケア、過剰な治療、過剰な援助』の常態化であった」と気づくこと。これは一見すると完全なる自己否定であり、また大変厳しい自己覚知である。だが、「統合失調症という病気の重さ」を創り出している...枠組み外しの旅──「個性化」が変える福祉社会

  • 【旧作】「小規模多機能」の意味論──すでにあった、もうひとつの福祉システム【斜め読み】

    岩下清子・佐藤義夫・島田千穂,2006,「小規模多機能」の意味論──すでにあった、もうひとつの福祉システム,雲母書房.(11.13.24)グローバリゼーションの進展に伴う介護の産業化の中で、もうひとつの福祉システムが脚光を浴びている。小規模多機能事業所は、北欧型を目指してきたこれまでの福祉制度とは異なる、日本のオリジナルな福祉システムだ。社会福祉、社会事業は、一つには、上からの国策として、もう一つには、グラスルーツの地べたからの民間実践とその制度化によって成立してきた。「宅老所よりあい」や「富山型デイサービス」は草の根からのすぐれた実践であり、それらは新たな介護保険や障がい福祉サービスとして制度化されていった。本書では、すぐれた民間実践が制度化されて失われる、大切ななにか──杓子定規なコンプライアンスや計...【旧作】「小規模多機能」の意味論──すでにあった、もうひとつの福祉システム【斜め読み】

  • 【旧作】地域社会と福祉文化【斜め読み】

    【旧作】地域に福祉を築く【斜め読み】一番ヶ瀬康子・小林博・馬場清編著,2002,地域社会と福祉文化,明石書店.(11.12.24)戦後地域では伝統的な生活文化や教育・福祉力の低下、生活環境の悪化が進んだ。その流れを変えるものとして、住民同士の共生を模索する動きや豊かな環境づくりなど地域で新しい福祉文化が誕生しつつある。その取組みを紹介し地域と福祉文化の関わりを考える。介護保険制度施行から間もない2000年代初頭、1980年代から活性化した住民参加型福祉の実践が全国各地で花開いていた。1960-1970年代の「闘う地域」から1980-1990年代の「助け合う地域」への転換。これは、人口構成の高齢化にともなう変容であった。その後、実質賃金の低下、非正規雇用の増加等による家計の逼迫により、地域福祉の担い手であっ...【旧作】地域社会と福祉文化【斜め読み】

  • 【旧作】地域に福祉を築く【斜め読み】

    一番ケ瀬康子,1992,地域に福祉を築く,労働旬報社.(11.12.24)『人生百歳・最後は一週間』のために。ゴールドプラン、老人保健福祉計画づくり、在宅介護にどうかかわるか?生協組合員や女性は安心な老後づくりに今何ができるのか?“老後は人権”だから私たちのボランティア精神に期待がかかる。「高齢者保健福祉推進10カ年戦略」(厚生省)が策定されて3年目に出版された本書には、のちに深刻化する在宅福祉の空洞化問題が余すところなく指摘、予見されている。一番ケ瀬先生は、1979年に政府が策定した「新経済社会7か年計画」中の「日本型福祉」構想を手厳しく批判する。内閣府がとりまとめている「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」によれば、日本社会における高齢者と別居子との接触頻度は、米国、スウェーデン等と比較して著...【旧作】地域に福祉を築く【斜め読み】

  • 減量と視力維持と

    半年と少しのあいだに、体重が10キロ減って、55キロになった。意図して減量したわけではない。ごく自然と食べる量が減り、ごく自然と体重が落ちていった。もともと少食だったのだが、現在は、「一人前」の1/4程度の分量しか食べない。さらに少食となって起こったもう一つの変化は、味覚が鋭敏になり、食べものがより美味しく感じられるようになったことだ。身体感覚も軽やかになり、すこぶる調子が良い。この歳になって、はじめて「腹八分目」の効用がわかった。これからさらにさらに食べる量を減らそうと思っているので、最終的には、体重は50キロ前後まで落ちるのではないだろうか。気になるのが、慢性的な眼精疲労と視力低下だ。二週間ほど前から、就寝前に、「トロピカミド点眼液」をさすようにしているが、こころなしか、視界がクリアになった感じがする...減量と視力維持と

  • 日常に侵入する自己啓発──生き方・手帳術・片づけ

    牧野智和,2015,日常に侵入する自己啓発──生き方・手帳術・片づけ,勁草書房.(11.11.24)自己啓発書はどのように生み出され、誰によってどのように読まれているのか。自己啓発書には結局のところ何が書かれてあるのか。各年代の生き方指南書、「手帳術」ガイド、掃除・片づけで人生が変わるとする書籍、さらには自己啓発書の作り手と読者へのインタビュー、質問紙調査の分析から「自己啓発の時代」を総合的に考究する。わたしは、自己啓発書なるものは、ほとんど読んでいない。胡散臭く、内容が陳腐で役に立たないし、なによりそのようなものを読むというのが耐えがたくみみっちいと思えるからである。自己啓発書を読んで、競争に出遅れないようにしようとか、恋愛や結婚を成就させて幸せになろうとか、安直すぎるのだ。本書では、手帳術、片付け術を...日常に侵入する自己啓発──生き方・手帳術・片づけ

  • 精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本

    大熊一夫,2009,精神病院を捨てたイタリア捨てない日本,岩波書店.(11.11.24)この国の精神保健の明日を描くために。精神保健最先進国イタリアからの渾身のルポと、日本への提言。第1回フランコ・バザーリア賞受賞(2008年)記念作品。イタリアにおける精神科病院の解体と地域精神保健福祉の仕組みづくり、その歴史と実相に迫る。フランコ・バザーリアをはじめとする、精神医療の改革に奔走した人々の思いが臨場感たっぷりに描き出されている。目次第1部日本の悪夢―一九七〇年、鉄格子の内側に潜入恐怖と絶望と退屈の病棟私設強制収容所不肖の息子とその親第2部目からウロコ―一九八六年、精神保健先輩国を訪ねる精神病院を廃絶?世界の精神保健事情バザーリアの後継者を招く第3部精神病院の終焉―二〇〇六年夏、ローマの友からの便り取材意欲...精神病院を捨てたイタリア捨てない日本

  • 【旧作】乱造される心の病【斜め読み】

    クリストファー・レーン(寺西のぶ子訳),2009,乱造される心の病,河出書房新社.(11.10.24)内気な人々はどのようにして病人にさせられたのか?巧みな広告戦略で普通の人々を精神疾患に仕立て上げ、恐ろしい向精神薬で巨利を貪ろうとする精神病産業の実像に迫る。「内気」であったり、ときおり不安感にさいなまれたりするのは、なんら異常なことではなく、矯正されなければならないわけではないし、ましてや、治療されなければいけないいわれはまったくない。ところが、DSM(「精神疾患の診断・統計マニュアル」)第三版では、外向的、社交的ではなかったり、強く持続的な不安感をもったりする者には、「社会不安障がい」のラベルが貼られることになってしまった。いったん、疾病なり障がいなりがつくり出されれば、それを治療するための、巨大な向...【旧作】乱造される心の病【斜め読み】

  • 【旧作】ボーダーラインの心の病理──自己不確実に悩む人々【斜め読み】

    町沢静夫,1990,ボーダーラインの心の病理──自己不確実に悩む人々,創元社.(11.9.24)モンロー、太宰、ヘッセのような、いわゆるボーダーラインの人びとが、最近とみにふえてきている。精神科医である著者は、その原因を社会構造の変化にあると考え、独自のデータをもとに分析した。まさに現代社会の病いを体現しているとも言えるこれら境界例の人びとの症例は、私たちに何を語るのだろうか。わが国でいち早く「境界性パーソナリティ障がい」について取り上げた本作であるが、「身近にいる困った人」についての理解を深めるためにも、良い本であるように思う。自己同一性の欠如、衝動性の制御困難、これがボーダーライン当事者の特徴であるが、彼女、彼らは自己の善悪の価値規範の妥当性を問おうとせず、幼稚極まりない自らの価値観を他者に投影する。...【旧作】ボーダーラインの心の病理──自己不確実に悩む人々【斜め読み】

  • 【旧作】スウェーデン人はいま幸せか【斜め読み】

    訓覇法子,1991,スウェーデン人はいま幸せか,日本放送出版協会.(11.8.24)本書が出版されて33年が経過しているが、スウェーデンは、いまもなお、「胎児から墓場まで」の高福祉高負担社会を維持し続けている。それは、偶然でも、不自然なことでもない。スウェーデンが、デンマークと並んで、世界一の高福祉社会を実現し、維持し続けてきたのには、それなりの理由がある。思いつくままに、列挙してみよう。◯伝統的、基層的な家族が、エマニュエル・トッドの類型でいう「絶対核家族」(lafamillenucléaireabsolue)であり、家族、親族間、とくに子どもが親を扶養する慣習が希薄であったこと。◯カトリシズムの浸透を排し、ルーテル教会(福音ルター派のプロテスタンティズム)を中心に置く教区が形成され、相互扶助、連帯のエ...【旧作】スウェーデン人はいま幸せか【斜め読み】

  • 夜をぶっとばせ、僕の女を探しているんだ、だめになった僕

    井上荒野,2012,夜をぶっとばせ,朝日新聞出版.(11.7.24)いじめにあっている長男、シメジしか食べなくなってしまった娘、そしてろくに働かない夫。ある日、メル友募集の掲示板に書き込みをしたことで、35歳の主婦・たまきの人生は転がりはじめる……直木賞作家が掬いあげるように描く、不穏で明るい家族の姿。どうしたら夫と結婚せずにすんだのだろう。「思い切ったこと」がしたくなったある夜、ネットの掲示板に書き込んだことで、たまきの日々は「何かが決定的に」変わりはじめる―直木賞作家が掬いとる、あかるく不穏な恋愛小説。夫、雅彦から連日レイプされるたまき。たまきは、入手したパソコンを利用し、出会い系サイトで男を漁る。表題作に、後日譚、「チャカチョンバへの道」が付く。ここでは、雅彦の視点から、たまきと、たまきの親友にして...夜をぶっとばせ、僕の女を探しているんだ、だめになった僕

  • それでもバカとは戦え

    適菜収,2021,それでもバカとは戦え,日刊現代.(11.6.24)こんなに辛口、いや激辛の政治批評はなかった!「ストップ・ザ・自公政権」安倍・菅内閣の2年半の失敗と罪をバッサリ一刀両断。現代の政治家たちの薄さと軽さを、その言動から鋭くえぐり、ギャフンと言わせる痛快無比の政治コラム集。永田町が風雲急を告げるこの時期、国民が今なすべきことは何か。その指針となる一冊だ。無責任な政治が続くと、ついつい有権者はあきらめや慣れで、政治に無関心になってしまう。「どうせ何も変わらない」と投票に行くことさえおっくうになり、放棄する。しかし、それこそ思うツボ。国民の無関心と無気力が三度の飯よりも好きなのが、だれあろう、無責任な軽薄政治家たちなのである。だから筆者は「それでもバカとは戦え」と、啓蒙・鼓舞する。ここにある「戦う...それでもバカとは戦え

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