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憎悪を増幅するプラットフォーム

先日、ひさしぶりにIT関係の記事を書いたら、わりと読まれました。

https://zenn.dev/tenjuu99/articles/833c063730bd6b

zenn にまともに記事を書いたのははじめてでしたが、「参考になった」バッジというものを送っていただきました。zenn の仕様もしらなかったので、なんだこれ?とおもったのですが、「バッジを受け取った著者にはZennから現金やAmazonギフトカードが還元されます。」と書いてあり、読み手が記事にたいして感謝の形としてお金を払うというようなことっぽいですね。たいへんありがたいことです。

この記事は zenn で書きましたが、はてなブックマークが194くらいついています。有用な批判もありましたが、はてなブックマークそのものが悪質なプラットフォームであるという結論に至ったため、コメントを非表示にしています。

この記事の、トップに表示されていたブックマークコメントは、以下のものです。こういう文脈で個人名が出されるのは不快だとおもわれるため、念の為個人名は伏せておきます。

元のXって人に限った話じゃないけど、Webで声だけ大きい人ってWebサイトのような一見さんが対象のUIの専門家であって、一日に何時間も触るUIは専門領域が異なるのだから、下手に口出しするとアホ丸出し発言になるね

わたしの記事は、X氏の見解に対する批判を意図して書いていますが、それは意見にたいするものでしかありません。「Webで声だけ大きい人」「下手に口出しするとアホ丸出し発言」などは、ただの個人への誹謗中傷でしかなく、またわたしの記事になんの関係もありません。このコメントはつまるところX氏を「声だけ大きいアホ」と戯画化する以外の意図がなく、これがたくさんのスターを集めるトップコメントなのです。ちなみにはてなブックマークのガイドラインを読むと、アルゴリズムによる順位調整をおこなっており、「多くの方にとって有益な投稿がより多くのユーザーの目に触れることを目指してい」て、「建設的な情報を優先」しているそうです。沈黙。X氏を嫌いな人たちが、X氏の"失態"に溜飲を下げるためにスターを付与していたようにしか見えませんでしたが。

記事執筆者であるわたし自身への批判であればまだ甘受しないでもないですが(それを甘受する意味もわかりませんが)、無関係な第三者への人格批判に類する愚劣なコメントが記事にぶらさがっていて気持ちよかろうはずはありません。そのように読まれること、またそういう誘導をかけられることは記事の書き手として不快でしかありません。それはわたしが注意深く避けたかったことです。

これがたいへん不快だったため、自身の記事にたいして、次のようなコメントをはてなブックマークに投稿しました。

記事の筆者ですが、X氏への陰口をここに書いている人は消してください。こういうところで誹謗中傷をしている人たちは恥を知れ。

このときわたしはまだオーナー機能なるものをしらず、zenn でこれが設定できるらしいことを知り、このコメントを警告の意味で先頭に置くべくいそいでオーナー機能を利用できるようにしました。

そのすぐあとくらいですが、わたしのコメントにかぶせて「おれに言えるのはXはクソだってことだけだな」というような内容のコメントが投稿されました(書かれた内容を確実には覚えていませんが)。これはすぐ削除されましたが、同じ投稿者がつづけて次のコメントを投稿しました。

現場業務をろくに知りもしないでUIの是非など語れるか。UIは常に従であって主ではない。その程度のことすらわきまえずにクソUIだなんだと宣う奴はどれだけ名が売れていようがクソ以外の感想を持てない。

これなども、名前を書いていないというだけで、先ほどのものとおなじくただの個人への誹謗中傷です。なぜ他人の記事でこういった無関係な個人の誹謗中傷をやるのでしょうか。自分の責任で本人に言ってください。陰口でしかなく、ダサいです。

わたしの記事をダシにして、ほぼ無関係な人を誹謗中傷している人たちがいる、という状況は、かなり不快なものです。ふつうのブログなどであれば、投稿者がコメントの表示非表示を制御できますが、はてなブックマークというのはかなり悪質でそういう制御ができません。返信機能もなく、言いっ放しの世界です。ここに挙げたコメントなどは、議論でも意見でもなく、個人攻撃でしかないわけです。わたしが警告を出そうと、当然、誰もX氏への中傷コメントを削除などしません。むしろ、その警告にかぶせるようにX氏への誹謗中傷を投稿してきた人がいたということが象徴しているように、個人攻撃に耽溺する人たちが溢れ、その言いっ放しをはてなブックマーク運営が許容しつづけているわけです。

この件に対してはてな社に問いあわせました。問いあわせ内容は明確に覚えていませんが(なぜ問い合わせ内容がメールで返ってこないのだろうか)、ヘイトコメントを放置するな、記事に無関係なコメントで不快だ、こちらからコントロールする手段もなく、はてなのコンテンツなのだからそちらでモデレーションしろ、そちらのポリシーが甘すぎるからこういった中傷コメントが溢れている、といった強めの批判内容だったとおもいます。

はてな社からの返信は次のようなものです。

こちらは、はてなサポート窓口 ポリシーチームです。
大変お手数をおかけいたしております。

当該記事のコメントを確認いたしましたが、ご指摘のようなヘイト表現に相当するものではなく、批判論評の範疇であると判断しています。

ヘイト表現については下記のように定義しています。

  • 個人の意見や論評の範囲を超え、明らかに特定の属性に対する攻撃や排除を呼びかけるコメントやタグの投稿
  • 専らヘイトスピーチ、ヘイトクライムに類する情報をブックマークするなど、差別的な情報の拡散や誘導を目的としたサービス利用

また、迷惑行為、嫌がらせとしては下記のようなものがそれに相当すると考えています。

  • 専ら第三者に対する攻撃を目的としてサービスを利用する行為
  • 非公開となった記事を故意に外部サイトに転載してブックマークする行為

上記のような投稿、利用については注意勧告やコメントの公開停止、サービスの利用停止といった措置をそれぞれ取っております。

しかしながら、本記事に対するコメントのように個人の感想として否定的表現を投稿することについては、基本的には論評の範疇であり規制されるべきと考えておりません。
もし、言及された当事者が、論評の範囲を越え権利侵害に相当すると考える場合には、プロバイダ責任制限法に基づき対応をいたします。

なお、はてなブックマークでは安全性、健全性を保つ取り組みとして、コンテンツのモデレーションをさまざまな方法で行っており、
詳細な考え方については、下記ガイドラインに記載しております。

■はてなブックマークガイドライン
https://b.hatena.ne.jp/guide/guideline

また、記事の書き手がコメント表現をコントロールできないとのご指摘については、すでにご対応いただいておりますようにご自身のコメントをトップ表示していただく他、
コメント全体の非表示機能も提供しております。ご利用をご検討いただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

わたしが問い合わせでヘイトコメントと言ったのは、もちろんヘイトスピーチを意図して使っているわけがありません。常識的に文脈から判断できるものだとおもいますが、はてなのサポート窓口は話をズラして「これはヘイトスピーチではない」としているわけです。

言及された当事者が、論評の範囲を越え権利侵害に相当すると考える場合

このくだりも、会社の態度として卑怯としか言いようがありません。誹謗中傷であるかどうかという判断は避けて、当事者たちが紛争するがままに任せようというわけです。どこからどうみても誹謗中傷であり、その誹謗中傷をブーストしているのははてなですが、当事者が気付かなければ問題なしというわけです。観測されないかぎり権利の侵害という事実はない!というシュレーディンガーの誹謗中傷説の立場なのでしょうか(法的にはどういった解釈になるのかは気になるところですが)。この返答を踏まえるなら、自由な陰口のためのアーキテクチャーと呼ばれても不都合はありません。それに、「ガイドラインに記載しております」と言いながら、「コメントの表現には気くばりをお願いします」「他者へのリスペクトを忘れずに」などのガイドラインを運営の方は読んだのでしょうか?わたしは読みましたが「Webで声だけ大きい」「アホ丸出し」「クソ以外の感想を持てない」などが、どのようにガイドラインに合致しているのかは理解できませんでした。はてな社の判断として、これらのコメントには「気くばり」があり「他者へのリスペクト」がある表現なのでしょうか。

別にこのはてな社の回答には驚きはしませんでした。というかあまりに予想どおりすぎる内容でした。もちろん事前にガイドラインは読んでおり、これをBANできそうな項目がないことは確かめたうえで問い合わせをしています。そのうえで、こういった誹謗中傷やコンテンツモデレーションに対しすこしは企業努力をしているのではないかという期待もなくはなかったのですが。

はてな社の回答からあきらかであるのは、わたしの記事についたいくつかの誹謗中傷としか言えないコメントを「論評の範疇」としていることです。いったい何にたいする「論評」だというのでしょうか。

これに対して、わたしはすぐに返信をしましたが、かなり切れています。

御社は記事の書き手を舐めてるんですか?

まず、ヘイトスピーチだと言っていませんが。個人攻撃だと言っています。

なぜ私の記事に、もとのサービスと無関係なところで記事と無関係な他人への誹謗中傷が掲載されることが「批評論評の範疇」なのですか?

わたしがそのコメントを気にいらない、ということではなく、不健全なインターネットをつくるのをやめろと言っています。

「ご利用をご検討いただければ幸いです」ではなく、御社でコメントのモデレーションをしろといっています。

御社のサービスをつかって書かれた記事でもないのに、こちらの責任であるはずがないでしょう。

はてなのサービスをつかって書かれたわけでもない記事に対して、勝手に第三者が第三者を誹謗するコメントがついて盛り上がっている。新聞社や公人のような常に論評にさらされるべき立場でもない記事の書き手としては、単に理不尽な状況でしかない。

これに続く回答には驚きました。

こちらは、はてなサポート窓口 ポリシーチームです。

インターネット上に広く公開された記事に対しては多様な意見が投稿されうるものであり、また、意見を述べる自由があると考えています。
これははてなブックマークに限定されたものではありません。
意見が誤っていたり誤読がある可能性もありますが、さらにそれを正す意見が述べられることにより、より健全な言論に近づいていくことを目指しています。

サービスの健全性を守るため、はてなブックマークでは弊社基準に沿ってコンテンツのモデレーションを行っておりますが、
基準についてご希望に添えない場合、それ以上の対応はできかねます。
ご了承いただきますよう、よろしくお願いいたします。

インターネットに広く公開された記事に対して述べられる多様な意見を、誰が問題にしたというのだろうか。どうしてこの人はいきなりわたしに説教をしてきたのだろうか。わたしは、「多様な意見」など問題視しておらず、偏りのある個人への誹謗中傷を問題視している。わたしの記事にぶらさがったコメントは、「誤読」や「間違い」の類いではなく、誹謗中傷だとはっきり述べたはずです。この誹謗中傷にたいして、はてなに記事を書いたわけでもないわたしが、コメントで釘を刺す必要があったのが、まずおかしい。このような警告が必要であるのは、はてな社がコンテンツのモデレーションを行っていないためでしかありません。わたしの「警告」はどこが「健全な言論」なのでしょうか。ついでにいうが、はてなブックマークのガイドラインでは「コメント欄での議論は推奨していません」とあり、どうやって誤りや誤読を糺すのだろうか。アーキテクチャー自体がいいっ放しを許容しているうえに、モデレーターはいないと自ら白状している。健全な言論などおこるはずがないのです。「家が公道に開かれているかぎり玄関前で糞便を垂れながす自由がある」とでも主張したいのでしょうか。糞便を回収するかどうかはこちらの健全性の都合であり、その規準についてご希望に添えない場合、糞便は放置しますのでご了承ください、と言うのでしょうか。どうやってご了承すればよいのでしょうか。

個人のブログで誹謗中傷する分には、 まだそういう覚悟込みでやってるんでしょう、その責任を背負っているから言うのでしょう。はてなブックマークに掲載されたコメントは、星なども含めてはてな社のコンテンツでしかない。誹謗中傷コンテンツをアルゴリズムによって評価しトップに出しているのははてな社です。はてなブックマークは、どうみても個人がケツをもつアーキテチャーではない。「インターネットにおいて意見を述べる自由」などたいそうなお題目を述べるのであれば、それに相応わしいアーキテクチャーをつくってから言ってほしい。それができないのであれば、コンテンツのモデレーションをしてください。そうしたことにまったく無自覚であることは驚くより他ありません。

はてな社が「サービスの健全性を守る」と言ったことは意味があります。わたしもはてなのアカウントはもっていますが、今回の記事は無関係です。つまるところ、はてなは自社のサービスのことだけが重要なのであって、それが世界にどういう影響を与えているかについては考えない。誹謗中傷を公式に「論評」として許容してしまう「サービスの健全性」とはなんなのでしょうか。そのようなものを守ってもらう必要がわからない。わたしに何の益があるというのでしょうか。勝手な会社の都合の押し付けで、第三者である記事の執筆者の周辺で憎悪を撒き散らされても困るだけなのです。自己責任という言葉すら当てはまっていない。この誹謗中傷や憎悪のブーストが、はてな社の責任でなくてなんなのだろう。どのコメントを優先的に見せるかというアルゴリズムを調整しているのははてな社だし、言いっ放しを許容しつづけているのもはてな社なのです。「サービスの健全性」とはまさにはてな社にとっての益のことでしかなく、公益性でもなんでもないわけで、それをインターネット一般の集合知のような顔をして厚顔無恥な主張をするのはいいかげんやめませんか。そのかつて言われた「集合知」の理念が、いまはてなブックマークでどのような「集合知」を生みだしているのでしょうか。わたしが今回経験したような誹謗中傷をブーストしつづける暴力装置が、なんの「知」を生み出しているのでしょうか。