はじめに
こんにちは!データ推進室の鶴谷、池田、腰高、安藤です。
私たちが所属するデータ推進室で、独自の制度「クラウド利用支援制度」を立ち上げました。
本記事では、制度立ち上げの背景から、運用に至るまでをご紹介したいと思います。
本記事は、データ推進室 Advent Calendar 2024 3日目の記事です
クラウド利用支援制度とは?
クラウド利用支援制度は、データ推進室の教育研修制度の1つで、クラウド環境(Google Cloud、AWS)を自己負担なく利用できる制度です。
対象者はデータ推進室に所属するメンバーで、自己学習でクラウド環境を利用したいと考えている方が対象です。自己学習を通じ、スキル向上やキャリア開発を行うための支援を目的に立ち上げました。
【利用用途例】
- 自己学習でクラウド環境を利用したい
- 実際にクラウド環境を触って勉強したい
- 新しい技術を試してみたい
- Kaggleや競プロでの計算資源として使いたい
月額利用上限額を複数パターン用意し、使用用途に合った月額利用上限額を選択して申請できる仕組みとなっています。
制度立ち上げのきっかけ
制度立ち上げのきっかけは、「専門性をより深められる機会がもっとあると良い」「利用できるクラウド環境がないので自己学習ができない」というメンバーからの声でした。
データ推進室では、個人の成長を支援するための制度として教育研修制度があります。(以下は一例です)
例:技術活動への支援制度
- 国内外のカンファレンスへの参加
- 技術書購入
- 資格取得支援
- 社内勉強会
しかし、クラウド環境利用に関する支援制度はありませんでした。例えば、社内でGoogle CloudやAWSの研修を受けた後、自己学習で勉強したい場合の費用は個人の自己負担となっていました。
また、kaggleなどの社外コンペに参加しているメンバーも多く、個人で契約した環境を使用している状況でした。
そこで「メンバーが気兼ねなく学習に取り組む事ができる機会を提供したい」という想いから、教育研修制度の一環として制度立ち上げの企画検討をスタートさせました。
フィージビリティスタディ(以下、F/S)を実施して分かった事
まずは、ニーズがどれほどあるのかの調査や運用検証のため期間限定でF/Sを行いました。想定以上の利用申請がありニーズが高い事が分かった一方で、運用改善の必要性も見えてきました。
気づき1:運用負荷
申請管理やクラウド環境の発行、権限設定作業を手動で行っていたため、管理が煩雑となり運用の負荷が課題として上がりました。
気づき2:想定より利用されていなかった
当初は申請期間を毎月設け、全員一律期間での利用を前提として制度を開始しましたが、利用後のアンケート結果で、以下の理由から低消費の方も多くいることが分かりました。
理由
- 申請期間が決まっていた為、とりあえず申請期間内に申込みをしてクラウド環境を確保したが、業務が忙しく利用できなかった
- 申請はしたが、明確な目的がなく利用が進まなかった
- 利用したい時に申請期間外だったため、利用できなかった
- そもそも消費しないといけない認識がない(利用したい時に使って、無理して使わなくても良い認識)
そこで、長期制度の継続を見据えた打ち手として、検討・改善を行いました。
改善1:運用負荷改善
独自システムの試作開発
まずは手動で行っていた管理・運用の打ち手として、手軽に管理・運用を行うための独自管理システム「Sabot(さぼっと)」の試作開発を進めました。
「Sabot」でできること
- WebUIでの申請・承認フロー
- 各種通知
- 申請に対してクラウド環境を自動セットアップ
- クラウド環境のガードレール違反・コスト超過の監視
社内標準のガードレールの実装について
日次でクラウドサービスの設定のチェックとコストの集計を行い、セキュリティ的に危険な設定や費用の超過を検知したら利用者と管理者に通知されます。
セキュリティ的に危険な設定について、リクルートでは社内標準のガードレールの施策があり、それを適用しています。
セキュリティガードレールについては、過去にGoogle Cloud での事例を GCPでセキュリティガードレールを作るための方法と推しテク で公開しておりますので、ぜひご覧ください。
運用負荷の改善に成功
管理システム「Sabot」の導入により、手動で行っていた申請管理や、ガードレール監視が自動でできるようになり、運用負荷を大幅に軽減することができました。 また、利用者向けのサポートページや問い合わせ窓口も設置し、利用者が迷わない仕組みも整備しました。
改善2:フローの見直しと制度改善
利用したい時に利用できた方が良い、という声から「明確に利用目的を持っている人が、利用したい時にいつでも申請ができ、すぐにクラウド環境を使える制度」としてフローを見直して制度を改善。より、利用者の声に寄り添った制度になりました。
新フローの特徴
- 使いたい機能や検証したい事が出てきた際に、すぐに申請でき利用する事ができる
- 申請期間に縛られない為、前もって申し込んでおく必要がない
- 不要になったら返却でき、延長申請も可能
制度継続に向けて
F/Sからはじまり、制度を運用して約1年半。
制度として継続的に運用できるように、アンケートの実施やニーズ分析、利用者からの声を反映し、運用の再設計を重ね制度改善に努めました。
- アンケート結果を精緻化し、数値を分析
- 利用者の声の解像度を上げるため、個別に利用者ヒアリングを行った
- 運用フローの検証
- 運用負荷の洗い出し
利用者が使いやすい制度にするにはどうすれば良いかを問い続け、よりニーズに沿った形で運用フローを改善することにも成功。 現在、多くのメンバーが利用しており、制度として定着してきました。
制度を立ち上げてよかったこと
アンケートの結果では制度継続をしてほしいという声が沢山ありました。 しかし、中には利用が難しかったという声や、操作性の改善の声もあったため、どのように改善していくか今後検討していきたいと思います。 学びとして、制度の実現と継続において、利用者のニーズをしっかり把握・理解することが重要であると感じました。
利用者の声(一例)
- 利用体験が非常に良かった。普段試せないことを試せた
- 何をしても事業に影響を与えることなくクラウドのリソースを作成・削除・編集でき、クラウドへの理解が深まった
- いい制度だと思うので、継続してほしい
- かなり自由にサービスを利用できてよかった
- 初心者には利用がいろいろ難しかった
- AWS CLIを使ってローカルPCから操作することができない点は改善してほしい
制度立ち上げにおいては多くの課題にも直面しましたが、「個人の成長機会」を作ることができ、やりがいを感じています。 今後も引き続き、ニーズに沿った制度を目指して改善をしていきたいと考えています。
最後に
今回は、データ推進室の独自制度「クラウド利用支援制度」をご紹介させていただきました。
データ推進室では、積極的に学習する人を応援し、個人の専門性を高めるための支援に力を入れています!
ご興味のある方は、
データ推進室特設ページ
もぜひご覧ください。
データエンジニア
鶴谷 誠文
阿波踊りが趣味。仕事では、部長としてデータエンジニアの専門機能向上を担当しています。
データエンジニア
池田 (Y)
ほとんど無害
人事・スタッフ
腰高 里奈
エンジニアやデータサイエンティスト組織の専属人事です。新人研修やオンボーディング、ブランディングを担当しています。
人事・スタッフ
安藤 美沙子
ブランディング、イベント企画運営・デザイン、教育研修等を担当しています。