クラウドへのデータ移行は、企業にとって重要なステップです。しかし、大量のデータを安全かつ効率的に移行するのは容易ではありません。
そこで登場するのが、MicrosoftのAzure Data Boxです。このサービスは、大規模なデータ移行をシンプルかつ迅速に行うための強力なツールです。
本ブログでは、Azure Data Boxの特徴、利点、そして具体的な使用例などご紹介します。
はじめに
クラウド移行の重要性
現代のビジネス環境は急速に進化しており、デジタルトランスフォーメーションが企業の競争力を左右する重要な要素となっています。
その中でも、クラウドへの移行は、企業が持続的な成長を遂げるために欠かせないステップです。
以下の理由から、その重要性が増しています。
- コスト削減:物理的なサーバーやデータセンターの維持費を削減できます
- スケーラビリティ: ビジネスの成長に合わせてリソースを柔軟に拡張可能です
- セキュリティ: 最新のセキュリティ技術でデータを保護します
- 災害復旧: データのバックアップと迅速な復旧が可能です
- イノベーション: 新しい技術やツールを迅速に導入できます
Azure Data Boxの概要
Azure Data Boxは、Microsoftが提供するデータ移行サービスです。大量のデータを物理ストレージデバイスに保存し、安全かつ効率的にAzureクラウドに移行するためのソリューションです。
主な特徴は以下の通りです。
- 大容量対応:最大80TBのデータを一度に移行可能です
- セキュリティ:データはAES256ビット暗号化で保護され、転送中も安全です
- 操作性:Azureポータルからデバイスを注文し、ローカルWeb UIで設定が可能です
このサービスは、ネットワーク帯域が限られている環境や、大量のデータを迅速に移行する必要がある場合に特に有効です。
Azure Data Boxのプラン
Azure Data Boxには、さまざまなデータ移行ニーズに対応するための複数のプランがあります。Azure Data Boxはレンタルで利用できるため、必要な期間だけ利用することが可能です。
それぞれのプランの特徴を簡単にご紹介します。
- Azure Data Box
- 容量:最大100TB
- 用途:大規模なデータ移行に最適です
- 特徴:標準のNASプロトコル(SMB/CIFSおよびNFS)を使用し、AES 256ビット暗号化でデータを保護します
- Azure Data Box Disk
- 容量: 各ディスク8TB、最大5台で合計40TB
- 用途:中規模のデータ移行や複数回のデータ転送に適しています
- 特徴:USB/SATAインターフェイスを備え、128ビット暗号化が適用されています
- Azure Data Box Heavy
- 容量:最大1PB
- 用途:非常に大規模なデータ移行に適しています
- 特徴:堅牢な自己完結型デバイスで、大量のデータを迅速に移行可能です
- Azure Data Box Gateway
- 用途:オンラインデータ転送
- 特徴:仮想アプライアンスとして機能し、Azureとの間でデータを移動します。
これらのプランは、データの量や移行の頻度に応じて選択できます。
どのプランが最適か、具体的なニーズに基づいて検討します。
ユースケース
一回限りの大規模データ移行
企業がオンプレミスのデータセンターからクラウドに大量のデータを移行する際に、Azure Data Boxは非常に有効です。
例えば、古いデータセンターを閉鎖してAzureに移行する場合や、バックアップテープのデータをクラウドに移行する場合に利用されます。
これにより、ネットワーク帯域を圧迫することなく、大量のデータを迅速かつ安全に移行できます。
定期的なデータバックアップ
定期的なデータバックアップが必要な場合、Azure Data Boxは理想的なソリューションです。
例えば、毎月のバックアップデータをクラウドに転送する場合や、継続的に生成されるデータを定期的にAzureにアップロードする場合に使用されます。
Data Box Gatewayを利用することで、オンプレミスのデータを継続的にクラウドに転送することが可能です。
ディザスタリカバリ(災害復旧)
ディザスタリカバリシナリオでもAzure Data Boxは重要な役割を果たします。
災害時に迅速にデータを復旧するために、定期的にデータをAzureにバックアップしておくことができます。
これにより、物理的な障害や自然災害からデータを守り、ビジネスの継続性を確保します。
Azure Data Boxの利用手順
Azure Data Boxを利用してデータをクラウドに移行する手順は、以下の通りです。
- デバイスの注文
- Azureポータルにサインインし、Azure Data Boxを注文します
- 注文時には、データの転送元と転送先のAzureリージョンを指定します
- 注文が完了すると、デバイスが発送されます
- デバイスの受け取りとセットアップ
- デバイスが届いたら、セットアップを行います
- デバイスを電源に接続し、ネットワークケーブルを使用してホストコンピューターに接続します
- デバイスのローカルWeb UIにアクセスし、初期設定を行います
- Azureポータルから提供されるパスワードを使用してサインインします
- データのコピー
- デバイスがセットアップされたら、データのコピーを開始します
- Robocopyやrsyncなどのツールを使用して、データをデバイスにコピーします
- デバイスの共有フォルダーにデータをコピーすることで、データが安全に保存されます
- デバイスの返送
- データのコピーが完了したら、デバイスをAzureに返送します
- Azure Data Boxの配送には特定の配送業者の指定はなく、地域の運送業者を通じてストレージデバイスを配送しています
- また、自己管理型の発送オプションも提供しており、ユーザーは自分の信頼する配送業者を選択することができます
- ローカルWeb UIで出荷準備を行い、デバイスをオフにしてケーブルを取り外します
- 返送ラベルを確認し、デバイスを梱包して返送します
- データのコピーが完了したら、デバイスをAzureに返送します
- データの確認とアップロード
- デバイスがAzureデータセンターに到着すると、データのアップロードが自動的に開始されます
- Azureポータルでデータのアップロード状況を確認し、エラーがないかチェックし、データが正常にアップロードされたことを確認します
まとめ
本記事では、Azure Data Boxについてご紹介しました。
オンプレミスからクラウドの移行というと、どうしてもネットワーク経由で行うイメージがありますが、Azure Data Boxを利用すればオフラインでのクラウド移行が可能です。
データ量が多く移行を躊躇していたケースなどでは検討の価値があると思います。
本記事が選択肢の一つとして参考になれば幸いです
森﨑 湧斗(日本ビジネスシステムズ株式会社)
セキュリティビジネスグループの森﨑です。 普段はネットワーク案件ベースで、今期よりセキュリティコンサル業務も対応しております。 今後は自身で学んだセキュリティ関連の内容を投稿していきたいと考えております。 趣味としては、2か月に1回旅行に行くことです。 行ったことない場所から選んで、事前計画を考え、いつもパートナーに提案してるのが、小さな楽しみです。
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