Web会議のファシリテーションについての連載記事の2つ目は、「会議準備編」になります。
連載1つ目の「考え方編」では、Web会議をファシリテーションする際の4つのポイントについて書いてみましたが、この記事では、Web会議を開催する前の「準備」について、コパイロツトでWeb会議をする際に意識していることを書いてみたいと思います。
会議アジェンダの作成
会議前の準備としてまず重要になるのが「会議アジェンダの作成」です。アジェンダの作成は、当然のことながら対面での会議でも重要な要素ですが、Web会議の場合にはその重要性がさらに高まると感じています。
もし、アジェンダが曖昧な状態で会議に臨んだとするならば、伝えにくい&聞き手の反応がわかりにくい状況の中で目的や内容を説明し共通認識を作っていく必要があり、それは非常に手間がかかることです。アジェンダを事前に共有することはもちろんのこと、理想的には、参加者とすり合わせをして参加者全員が納得しているアジェンダが会議開始時点で確定させておけると良いと思います。
アジェンダを作成する際には、できれば、同時に作業可能なクラウド上のファイルを使用することをおすすめします。
アジェンダは、会議の直前や、会議時に変更されるケースもありますが、そうなると、もしクラウド上のファイルではなくローカルのファイルで作成していた場合、参加者が持っているアジェンダ情報が異なってしまいます。同じ情報を共有するためには、再度メールなどで参加者に送る必要がありますが、会議中にそのような作業が発生してしまうのは、望ましい状況ではありません。可能であれば、常に同じ情報を共有し、同時に編集が可能なクラウド上のファイルでアジェンダを作成することをおすすめします。
以前のブログ記事で「会議のアジェンダの作り方」について書いているので、ご関心ありましたらお読みいただければ幸いです。
資料の共有
次は、「資料の共有」です。Web会議では紙などで資料を物理的に共有することはできません。そのため、参加者に資料の内容を伝えるためには、Web会議ツールの画面共有機能を使用するか、資料の電子ファイルを共有する必要がありますが、参加者が見たいタイミングで資料を見られるように、できるだけ電子ファイルを共有しておくことが望ましいと考えています。
具体的には、クラウドや共有サーバーにファイルを置いて共有するか、それらのツールが使えない場合にはメールやチャットで共有しても良いですが、いずれにしても、誰もが同じ資料を見られる状態を作っておくことが不可欠です。もし、紙の資料や手書きのメモを共有する可能性がある場合には、事前に、PDFにしたり、スマホのカメラアプリで写真を撮った上で共有すると、議論はよりスムーズになると思います。
MTGで使用する道具の準備
次は、MTGで使用する道具の準備についてです。
Web会議では、対面のMTGであれば使えるはずのホワイトボードや付せんが使えないので、その代替手段を用意しておく必要があります。音声のやり取りだけだとコミュニケーションしづらい部分もありますが、別の道具を用意しておくことで、スムーズな議論を行うことができます。
▶Web会議ツール
なにはともあれ、これがないと始まりません。 基本的にはそれぞれの会社で提供されているものを使用する形になるかと思いますが、もし、会社で契約しているWeb会議ツールがなければ、「ZOOM」「Googleハングアウト」「FaceTime」あたりをおすすめしたいと思います。いずれも無料で使用できるツールです。
それらの中でも、個人的には「Zoom」をおすすめしたいと思います。映像や音声品質の安定感が素晴らしく、毎日のように使用していても、ほとんどストレスを感じたことがありません。また、録画ができたり、ホワイトボード機能やバーチャル背景機能もあったりと、使用者がストレス無く使える品質を提供してくれていると感じています。
「Zoom」が使えない環境であれば、Googleハングアウトもおすすめです。Zoomほど多様な機能を備えているわけではありませんが、Googleカレンダー上からURLを発行できるので、使い始める負担はとても少ないと思います。
もう一つのおすすめは「FaceTime」です。こちらはAppleが提供しているサービスで、iPhone、iPad、MacBookなどのApple製品から使用することができます。一般的にはWeb会議ツールという位置づけではないかもしれませんが、音声・画像の品質はZoom以上ではないかと感じることもあるくらい、便利なツールです。
おすすめサービス:
・Zoom
・Googleハングアウト / Google Hangouts Meet
・FaceTime
▶議論をサポートしてくれるツール
●オンラインドキュメントツール
会議の質を高める上で、議論を可視化するということはとても重要になりますが、その点で、オンラインドキュメントツールは有用なツールです。
たとえば、GoogleDocsやオンライン版のWordなど、複数の人で同時に編集できるツールがあると、意見を随時書くことができますし、議事録を共同で作成することもできます。
これがあると、仮にインターネットの回線状況が悪くお互いの声が聞こえにくい場合にも、双方の考えを正しく伝えることができるので、Web会議の際はオンラインドキュメントツールを併用することをおすすめします(なお、コパイロツトでは対面の会議でも必ずオンラインドキュメントツールを使用しており、議事録も複数人で作成するケースが多いです)
議事録については、こちらの過去ブログをご覧ください。
おすすめサービス:
・GoogleDocs
・オンライン版のWord
●チャットツール
上記のオンラインドキュメントツールと同じように、Slack、Teamsなどのチャットツールも議論をサポートしてくれる便利なツールです。これらをWeb会議時に併用すると、話の内容を補足したり、誰かが話をしているときに意見を提示することができたり、ちょっとした確認をしたりすることもできるため、議論の質が高まると感じています。
チャットツールを導入していない企業であれば、Web会議ツールが備えているチャット機能を活用したり、電子メールでも良いと思いますが、何かしらテキストベースでやり取りできるツールを補完的に用いることで、Web会議のやりづらさも大きく改善されると考えています。
おすすめサービス:
・Slack
・Teams
・Facebookメッセンジャー
●オンラインホワイトボードツール
対面のMTG時にホワイトボードや付せんを使用するケースは多いと思いますが、オンライン上でも同様なことができるサービスが提供されています。
たとえば、Googleが提供しているJamboardは、下図のような形で付せんに意見を書き込んでいくことができます。書いた付せんは自由に移動可能なので、KJ法的に意見を整理しやすいツールになっています。
おすすめサービス:
・Jamboard
・miro ホワイトボード
・ Zoomのホワイトボード機能
●タイマーアプリ
コパイロツトでは、会議をスムーズに進行するために、タイマーを使っています。たとえば、対面の会議では、iPadにインストールしたタイマーアプリで発表時間を可視化していますが、Web会議の場合、PC上のタイマーアプリを使い、それを画面共有でお互いが見られる状態をつくることもあります。 よく使用しているのは、Time Timerです。Android/iPhone/Mac/Windowなど各種デバイス用のアプリが用意されています。
Time Timerは有料のアプリですので、もし導入が難しい場合にはTimer Tabなどの無料ツールでも良いと思います。Timer Tabも、シンプルな機能・デザインなので、おすすめです。
おすすめサービス:
・Time Timer
・Timer Tab
Web会議時に、タイマーアプリとともに画面を共有するイメージ:
▶Web会議を快適に行うための環境づくり
次は、Web会議を快適に行うための環境づくりについてです。これらは無くてもなんとかなるものではあるのですが、Web会議の快適さが全く変わってくるので、強くおすすめしたいと思います。
●イヤホン(一人ずつWeb会議に参加する場合は不可欠)
まずはイヤホンです。これについては、これまでも、テレビ会議を劇的に円滑にする簡単なノウハウ | Social Change!など多くの記事で言及されていることですが、非常に重要なので、ここでも言及しておきたいと思います。
Web会議をスムーズに行うためには、音声の質が最も重要になってくるのですが(聞こえづらかったりすると話にならない)、お互いに聞きやすい状態を作るために、マイク付きイヤホンの使用をおすすめしたいと思います。
イヤホン自体は特別なものである必要はなく、スマートフォンを購入した際に付属されているようなものでも問題ありません。無い場合にも、1000円くらいで販売しているので、可能であれば、会社としてまとめて購入・配布しても良いのではないでしょうか。
会議の主催者やファシリテーターの方には、参加者にイヤホンを用意してほしい旨、事前に依頼をしていただけると良いかなと思います。
●スピーカーフォン(複数人が同じ場所から参加する場合には不可欠)
1)お手軽なスピーカーフォン
上のイヤホンでの会議参加は、参加者個人が別々の場所から参加することが前提となりますが、一方で、複数人が同じ場所からWeb会議に参加する場合に不可欠なのがスピーカーフォンです。
スピーカーフォンは性能によって値段もそれなりに変わってくるのですが、「とにかくすぐに始めたい」という場合には1万円程度のスピーカーフォンから導入してみると良いのではないかと思います。たとえば下記。
2)10人くらいでも使えるスピーカーフォン
参加者が10人程度を超えてくる場合には、スピーカーフォンと参加者の距離が遠くなってくるため、参加者の声が拾いにくくなってしまうという問題が起こります。そのような場合には、複数のスピーカーフォンを連結して使用できるものが便利です。
スピーカーフォンの連結イメージ: (出典:https://sound-solution.yamaha.com/products/uc/yvc-330/index)
3)遠隔から参加している人たちの声をクリアに聴きたいときのスピーカーフォン
さらに、「遠隔から参加している人たちの声をもっとクリアに聴きたい」という場合には、スピーカー性能の高い製品もありますので、対面で参加している人数が多い場合(=広い会議室に集まって参加している場合)には、下記などの導入もオススメです。こちらは弊社の会議室でも導入していますが、20人を超える広さの会議室でも、クリアに音声を聞くことができると感じています。
おすすめツール:
・Anker PowerConf
・YAMAHA YVC-300
・YAMAHA YVC-1000
●複数の画面にする
Web会議に参加する際、複数の画面を使用できると会議効率が一気に高まるので、それもオススメしたいと思います。
たとえば、下記のような環境が構築できると、サブ画面には参加者の顔を写しながら、メイン画面では資料を表示したり、議事録を書いたりすることができます。画面が一つだと、それらが同時に表示できず行き来しないといけないため、スマホでも良いので、併用すると良いと思います。
- ノートPCと外部ディスプレイ
- ノートPCとタブレット
- ノートPCとスマホ
- 複数台のスマホ
●バーチャル背景
自宅からWeb会議に参加する際に部屋が写ってしまうことを気にされる方もいらっしゃるかと思いますが、そのような方はZoomの「バーチャル背景機能」を使ってみてください。背景画像を自由に設定することができるので、部屋の状況を気にすること無く、会議に参加することができます。
なお、オススメは、会社の会議室を写真に撮って、バーチャル背景に設定することです。在宅から参加しても、会議室にいるように装えます(笑)
Web会議や各種オンラインツールのURL共有
以上で諸々のツール・環境の準備ができると思いますが、最後に忘れてはいけないのは、Web会議や各種オンラインツールのURLを事前に共有しておくことです。
GoogleカレンダーなどのWebカレンダーで共有しておくと、その情報を探す手間も少なくて済みますので、会議主催者やファシリテーターの方はお忘れなく。
だいぶ長くなりましたが、以上が会議前の準備のおすすめでした。 もちろん、いきなり全部を理想状態にする必要もありませんので、できるところから実行いただければと思いますが、会議の主催者・ファシリテーター(ツールが苦手な場合には、得意なメンバー)が中心となって、Web会議をしやすい環境を用意いただければと思います。
会議時のファシリテーションをどうやるか
では、次に会議時のファシリテーションはどうすればよいか。
この記事の続編として、実際の会議時に必要となることを下記に書いていますので、合わせてお読みいただければ嬉しいです。
以上、お読みいただき、どうもありがとうございました。
Web会議を実施される方々の参考になるところがあれば嬉しいですし、また、おすすめのやり方などがございましたら教えていただければ幸いです。
プロジェクトファシリテーター、プロジェクトコンサルタント。
プロジェクト・組織の推進をPMとして関わりながら、プロジェクト・組織の未来に必要なナレッジ・知を言語化するサポートをしています。
対象分野は民間企業のDX領域が中心となりますが、シンクタンク・パブリックセクターでの勤務経験から、公共政策の立案・自治体DXに関する業務も担当しています。