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【東京ゲームショウ2006】
SCE久夛良木氏「今こそPS3がネットに接続するための最高のチャンス」

 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の久夛良木健代表取締役社長 兼 グループCEOは、東京ゲームショウ2006で「PS3が創る次代のエンタテインメント」と題した基調講演を行なった。基調講演後のトークセッションでは、「プレイステーション 3(PS3)」の20GB HDDモデルにHDMI端子を標準搭載するとともに、標準価格を49,980円へ値下げすることが明らかにされた。


ネットワークの向こう側から瞬時にデータを取り出すことが可能な時代に

SCEの久夛良木健代表取締役社長兼グループCEO
 基調講演の冒頭、久夛良木氏は同社ブースで上映している「リッジレーサー7」や「バーチャファイター5」、「機動戦士ガンダム Target in Sight」、「ファイナルファンタジー13」といったPS3で発売を予定しているタイトルの映像を紹介。「プレイステーションの発売から12年間が経つ中で、どれだけ多くのイノベーションが起こり、業界全体でどれだけ大きなコンテンツを生み出したかがおわかりになると思う」と語った。

 続けて、ファミリーコンピュータから始まるハードウェアやソフトウェアの進化に触れたのち、「リアルタイム性やリアルレスポンス性は、PCを含めて他のシステムと最も異なる違いを生み出している」と発言。さらに「そのためのユーザーインターフェイス(UI)であるコントローラは最も進化していると言え、今後も我々が創造していなかったようなUIが続々と提案され、その中の一部は将来にわたって定着するものになる」とした。

 また、「10年ほど前にオラクルが提唱した『ネットワークコンピュータ』は、当時のネットワーク環境やコンピュータのスペックなどの用意で普及には至らなかった」ものの、現在ではこれらの課題が乗り越えられていると久夛良木氏は指摘。「巨大な計算パワーと大容量のデータベース、そしてそれらを瞬時に引き出す検索エンジンの登場によって、ユーザーは携帯電話からでもネットワークの向こう側にアクセスすることが可能になった」と語った。


地図データのネットワーク共有で「どこでもドア」を実現

グランツーリスモのデータ測定の模様
 久夛良木氏がコンピュータエンタテインメント産業の中で重要視するのは地図データベース(地図DB)。「現在は解像度や表示エリアごとの季節の違いといった問題があるが、各国の法務局などに記録された土地の境界線や道路図、建築図面などと地図DBが連携することで、想像以上のことが起きる」という可能性を感じているという。

 その上で久夛良木氏は「PS3のような次世代プラットフォームでは、ユーザー側から自分の周辺環境を地図DB上に登録できる『グローバルマップシステム』が考えられるのではないか」と提案。「このシステムにアクセスすることで、リアルタイムに世界中のあちこちを飛び回ることができる。こうした経験は、我々が夢見ていた『どこでもドア』に近いのではないか」と自身の考えを述べた。

 さらに「ファンタジー世界の創出も大事な要素で、ナンジャタウンやディズニーランド、映画に登場する仮装の世界など、いろいろな産業界の方の参加が可能になるとともに、ゲーム制作者側でも連携によって風景のデータ化作業などの軽減が可能になる」と発言。久夛良木氏は「そうして軽減できた部分は、アーティスト性やゲーム性の部分に持って行くべきだと考えている」とした。

 久夛良木氏は、「グランツーリスモで自動車産業と提携しているように、今後はさらに多くの提携や挑戦が続く。そうした際に、ネットワーク越しのグローバルマップシステムは多くの場面で活用が期待できる」と述べる。その上で「PS3に限らず、次世代プラットフォームがネットワークに接続して、開放的に利用できる必要があるのではないか」とし、「オープンなネットワーク、オープンな開発環境を用意することで、斬新なアイデアが出てくる」と語った。

 また、「Web 2.0という言葉があるが、潜在的に皆さんの中にあるものを含めて、その可能性の一端を示すものがどんどん登場している」と指摘。「人々はマスには入れない、ロングテールのテール部分に入るものに面白いものがあると気づいている。さらに、自ら発信したいという意識も芽生えている」と述べた。


PS3をインターネットに接続しはじめる最高のチャンスが到来

PS3をネット接続する最高のチャンスが到来
 久夛良木氏は「初代PSを発売した12年前はマスクROMからCD-ROMへとメディアの変化を狙ったことで、リピート生産やコスト面の課題回復を享受でき、一時停滞していたコンピュータエンタテイメント産業が再び活性化した」と指摘。その一方で「最近では再び売れるものと売れないものに分かれはじめ、ユーザーもクリエイターがチャレンジした作品に手を出さなくなっている」との懸念を見せた久夛良木氏は、「イノベーションがないところに持続的な発展はなく、そうした課題を1つ1つ解決して、来るべきネットワーク中心の世界に備える必要がある」と強調した。

 1つの課題例として久夛良木氏は、ネットワークインフラを挙げる。「IP電話サービスでの障害が今日の新聞で報じられていたように、これが現実の世界かもしれない」と語る久夛良木氏は、「ギガビットイーサネットといっても初代PSのバンド幅にまだ到達しておらず、まだまだエミュレーションができない現状にある」と発言。しかし、「PS3が表現できるHDクオリティをネットワークで実現するにはまだ時間がかかるが、10年後には状況が変わっているかもしれない」と期待を示す。

 その上で、「そうした時代には、PS3が内蔵する計算パワーやBD-ROMのような大容量メディアの存在も不可欠」と述べた久夛良木氏は、「そうした中でもゲーム機を買ったら誰でもテレビに接続し、PS3をインターネットに接続し始める最高のチャンスが到来した」と語った。


PSシリーズ以外のプラットフォーム向けソフトの配信も視野に

 また、ネットワークとパッケージメディアに関しては、「この2、3年に関しては相互補完的な役割を示すのではないか」と見通しを示す。そして、「従来のシステム下で埋没しかかっているクリエイター、それに自らの好みを発信したいと考えるユーザーの双方をネットワークによって、情報のやり取りやユーザーが提案したコースの配信などの遊び方も可能になる」と語った。

 久夛良木氏は、「PS3ではインターネット接続機能やWebブラウザ、HDDを標準搭載し、セキュアな通信をしながら、テキストや画像などを一元的に管理できるようになる」と指摘。さらに「HDMIでテレビに接続して、ゲームに加えた楽しみ方が実現できることを提案していきたい」と抱負を語った。

 PS3ではまた、初代PSやPS2などをプレイできるエミュレーション機能を持っている。久夛良木氏は、同社ハードウェアに加えて、「メガドライブなどの他のプラットフォーム向けソフトウェアもエミュレーションで提供したい」との考えを示し、配信元プラットフォームの拡大を示唆した。

 また、PS3の試遊台を全世界に数万台以上設置する中で、販売店と協力してネットワーク接続を進めたい考えを示す。久夛良木氏は「プロモーションに加えて、電子決済機能を備えた携帯電話などをかざして少額課金によってゲームを持ち帰ってもらえるようなスタイルも実現できるかもしれない」と述べた。

 さらに、「Folding@home」のような難病のDNA解析を早期に発見するプロジェクトに対して、PS3が搭載するCPU「Cell」を活用することを提案。同社内で現在実験を行なっていると言い、「ユーザーの同意を受けたPS3からプロジェクトに参加していくことで、社会や人類全体に対する貢献も可能になる」とPS3が持つ幅広い可能性を披露した。


エミュレーション機能では初代PSやPS2に加え、他のプラットフォームタイトル配信の可能性も Folding@homeのような社会貢献プロジェクトへの活用も

久夛良木氏「これまでの10年より、これからの10年が遙かに進化」

 「ゲーム機はゲーム機として見られがちだが」と前置きした久夛良木氏は、「これまで述べたように、PS3ではネットワークの進化とともに様々なことが実現可能になる」と発言。「コンピュータエンタテインメント産業において、共通のサーバーにアクセスすることが可能になれば、ゲームの開発環境でもFolding@homeのような試みが可能になる」と語ると共に、「これまで誌面でしか知ることが出来なかった情報も、ネットワークを通じてメーカーから直接得られるようになるかもしれない」と語った。

 久夛良木氏はさらに「ユーザーからの提案でゲーム性が広がる可能性や、パッケージではなかったライブ性を持たせた作品も提供できる可能性がある。ここで、毎日が新しい世界がまもなく始まるということを認識していただきたい」と述べる。

 最後に久夛良木氏は「これまで映画の世界にしか存在しなかったものを、手に入れられられるのは喜ぶべきこと」と発言。「ゲームの世界が今までどれだけ進化しているかはご承知の通りだが、これから10年間は遙かに進化していくのではないか」と語り、「コンピュータエンタテインメント分野が率先して世界をリードしようとする状況の中で、PS3などの新しいプラットフォームがその役割の一端を担えることは嬉しく思う」と述べ、同社が開発を進めるPS3向けソフト「AFRIKA」の映像を紹介して基調講演を締めくくった。


20GBモデルのPS3値下げを発表。PS4の可能性も示唆

トークセッションではPS3の値下げを発表
 基調講演に続いて、日経BP IT Pro発行人の浅見直樹氏をモデレーターにしたトークセッションが開かれた。

 トークセッションの冒頭は基調講演の内容に関するもので、浅見氏から久夛良木氏へ質問が行なわれた。PS3に関する質問の中で、量産開始時期が9月末に遅れた点に関して久夛良木氏は「非常に申しわけなく思っている」とコメント。「現在は遅れを取り戻すべく作業を進めている」とした。

 また、上位モデルにのみHDMI端子を搭載していることに関しては、「PS3を発表したE3 2005の段階では、HDMI端子やフルHDに対応しているテレビがほとんど登場していなかった経緯もあり、搭載を見送っていた」という。しかし、それらが急速に普及していく中で「時代はもっと早まるという考えから、20GBモデルにも搭載することを決定した」と述べた。

 「値段が高いと言われているが」との質問には、「まず最初に米国で値段を決定した」と回答。「(20GBモデルの499ドルという設定は)全然問題ないという声が多かった」と言い、欧州に関しても同様の声が多かったという。一方で、「日本では高いよという声がなかなか収まらないという声が多い」と発言。「よく考えたら、他の通貨で決めてから日本円に逆算し、さらに消費税を入れたら高いと言われるようになったようだ」と述べた。

 その上で久夛良木氏は、「高い高いと言われるようになったら夢の実現は果たせない」と語り、「爆弾発言になるが、20GBモデルをHDMIを搭載しつつ、49,980円に値下げする」と発表。会場からはどよめきとともに、拍手が上がった。

 最後に浅見氏からは「プレイステーション 4への考えは」という質問があった。これに対して久夛良木氏は「まだ無い」と回答しながらも、「ひょっとしたらCELLを含めた計算パワーがネットワークの向こう側に溜まっていき、最適にアクセスする世界が実現できた場合には、それ自体がPS4になる可能性はあるかもしれない」と語った。


関連情報

URL
  ソニー・コンピュータエンタテインメント
  http://www.scei.co.jp/
  東京ゲームショウ2006
  http://tgs.cesa.or.jp/

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SCEJ、PS3の20GBモデルを49,980円に価格改定。HDMIも標準搭載


(村松健至)
2006/09/22 16:02
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