超絶衰退する秋葉原――都市学者・クリスタラーの「中心地理論」が予言する秋葉原の未来

 
「失われた20年」と言われてから既に何年も経っているのだけど、この20年間、都市環境は決して静止していたわけではない。それどころか、この20年間で都市環境は劇的に変化している。そのベンチマークとなる場所は日本中の至るところにあるのだけど、今回の記事では「オタクの聖地」とも呼ばれている東京都台東区の「秋葉原」にスポットを当ててみる。

でも、その前に、ありきたりの「秋葉原論」ではつまらないのでw、都市に関する理論を一つ紹介しておこう。ドイツの都市学者のヴァルター・クリスタラーが作った「中心地理論」である。これは大学で都市工学か建築学を専攻していれば教わる、比較的オーソドックスな理論である。ま、簡単に言えば、「レア(希少)なものほど都心に集まる」という現象を示す理論である。

例えば、最近、明治大学の駿河台キャンパスの「リバティタワー」(1998年竣工)に象徴されるような高層ビル型の“都心”に立つ大学のキャンパスが増えているのだけど、それは日本が少子化社会で、学生数が減少しているからである。つまり、若者がレア(希少)な存在だからなのである。その反対に、学生数がとても多かった90年代以前には、大学のキャンパスは都心から離れた“郊外”に建設・移転されていたことを思い返せば、両者は鮮やかなコントラスト(対比)を成している。

このクリスタラーの「中心地理論」を今回の記事に合わせて商業建築(店舗)から説明すると、この理論は、レア(希少)な商品を販売する店ほど都心に集まる、ということを示している。レアな商品とは購入頻度の少ない商品のことである。その代表格は高価な貴金属(ジュエリー)である。だから、例えば、全国のどの都市でも、その都市の都心(ど真ん中)はどこなのかを知りたいならば、貴金属店がたくさんある場所を探してみればいいのである。東京なら銀座である。その反対に、レアではなくて、購入頻度の多い商品、例えば、食料品などは、家のすぐ近所のスーパーで買うことができる。よって、ここにも前述と同じコントラスト(対比)を見い出すことができる。いずれにせよ、これがクリスタラーの「中心地理論」なのである。

では、これで、この理論のインストール(頭の準備体操)は完了したと思うのでw、早速、「秋葉原」の戦後を少し追ってみた。

戦後、秋葉原は日本有数の「電気街」として栄えた。そのきっかけは秋葉原の近くに理科系(電気系)の大学があったからなのだけど、それはさておき、当時の家電製品は多くの人々にとってはまだ高価な商品だった。つまり、家電製品は購入頻度の少ないレア(希少)な商品だったのである。でも、それから高度経済成長期に入って、家電製品が人々の手に届きやすくなるに連れて、つまり、家電製品が購入頻度の多い商品になるに連れて、何が起きたのだろうか。秋葉原が「電気街」としての地位を失いはじめたのである。その理由は前述のクリスタラーの「中心地理論」で説明できることは繰り返して言及するまでもないだろう。人々は家電製品を秋葉原の「電気街」ではなくて、家のすぐ近所のチェーン店(ヤマダ電機など)で購入するようになったのである。

それでも、秋葉原は衰退しなかった。理由までは分からないけど、それはさておき、秋葉原は「電気街」から「オタクの聖地」へと変貌を遂げた。でも、忘れてはならないのは、クリスタラーの「中心地理論」が明らかにしているように、秋葉原が「オタクの聖地」となれたのは、「オタク」と呼ばれる人々がレア(希少)な存在だったからである。オタク関連商品の購入頻度は、都市圏全体で見れば、とても少なかったからなのである。

さて、ここからが本題である。現在、「オタク」と呼ばれる人々の人口は増加の一途をたどっている。「オタク」と呼ばれる人々は、もはやレア(希少)な存在では決してない。そうなると、「オタクの聖地」の秋葉原は今後どうなるのだろうか。クリスタラーの「中心地理論」は一体、どんな秋葉原の未来を「予言」しているのだろうか。その答えは、今回の記事のタイトルに書いた通りである。人々はオタク関連商品を「オタクの聖地」の秋葉原ではなくて、家のすぐ近所のチェーン店(アニメイトなど)で購入するようになるのである。「オタクの聖地」としての秋葉原は「超絶衰退」するに違いない(キリッ)。以上です。ではまた。

ところで、ここからは全くの余談になるのだけど、今月、僕は産まれて初めて、その「アニメイト」へ行ってきたw。その時の僕のツイッター(@mihatsuikutoshi)の備忘録を載せておく。

■ 前日(2013年1月2日)

@mihatsuikutoshi
秋葉原についてもブログ記事書くか…。(中略)でも、その前に先にアニメイトを実際に見に行かないとなぁ。一度も行った事がない。チェーン店化する秋葉原。イオンモールが「東京」をチェーン店化しているようにアニメイトは「秋葉原」をチェーン店化。

@mihatsuikutoshi
イオンモールにアニメイトが入っているとは知らなかった。やはり僕の情報は古いな。ヤバイ。RT @gudachan: そうですね。アニメイトの全国への拡大が本来は物好き文化であるオタク文化の画一化を進めたところもあると思います。本来は雑居ビルの奥にある「敷居の高いお店」だったのに、今やイオンモールテナントになりつつあるし・・・

@mihatsuikutoshi
イオンレイクタウンにも入っていたとは。。 RT @gudachan: いまや10店舗がイオンテナントのようですよ! http://www.animate.co.jp/shop/

■ 当日(2013年1月3日)

@mihatsuikutoshi
アニメイト着いた。人生初アニメイト、ドキドキ…

@mihatsuikutoshi
雑誌が全部ビニール詰め。書棚がツルツル光ってる。眩しい、眩しいよ…

@mihatsuikutoshi
アニメイトの客層は若い。学生さんはまだ冬休みのようだ。男女比は半々。意外。いわゆるオタクっぽい客しかいないと思っていた、全然違った

@mihatsuikutoshi
店内のあちこちに液晶ディスプレーがある、それぞれがアニメの音楽をガンガン流している。だが音量は調整されていて音楽が重なることはない、巧みの技

@mihatsuikutoshi
陳列棚にはビニール詰めの雑誌、ビニール詰めの漫画コミック、ビニール詰めのライトノベル、CD、DVD、アニメのイラストが入った各種文房具、下敷き、消しゴム、ストラップ、などなど

@mihatsuikutoshi
店内は広告だらけ、床にもアニメのイラスト入りの広告が描かれている、天井には旗、店内に流れてる音楽がうるさい、これは「けいおん!」だな、けいおんしかわからないorz

@mihatsuikutoshi
レジ前は客が並んでいる、だがどう見ても普通の学生さん、むしろ男性客よりも女性客のほうが多いかも。何を買っているんだろう?

@mihatsuikutoshi
壁には各種イベント情報、中古品の売買情報も。アニメイトにはアニメに関する全てがあるようだ、すごい。店は決して広くはないが、膨大な情報が詰まっている。濃密なパッケージ空間。

@mihatsuikutoshi
若い男性客たちがカードの交換をしている、何のカードだ? 交換というよりはカードゲームっぽい。客の手持ちカードの束がすごい、その束を双方が持っている

@mihatsuikutoshi
何か買おうかと思ったけど、変なめまいがしてきたorz、初音ミクのグッズを探したが初心者には発見できなかった。