主張

冬の電力逼迫 安定電源の確保が急務だ

経済産業省が今冬の電力需給について、過去10年で最も厳しくなるとの見通しを示した。特に来年2月には、電力供給の余力を示す予備率が全国各地で3%台にまで低下するとみている。

電力需給が逼迫(ひっぱく)する中で大型発電所のトラブルが起きれば、大規模停電に発展しかねない。経産省では家庭や産業界に対し、無理のない範囲での省エネを呼び掛ける方針だが、必要に応じて法律に基づく厳しい節電要請も躊躇(ちゅうちょ)すべきではない。

日本が発電所の主力燃料として利用する液化天然ガス(LNG)の価格は世界的に高騰している。今年1月にはアジア各国が厳冬でLNGの調達を拡大し、品不足が発生したことで西日本地域では電力需給が逼迫した。

そうした想定外の事態に備えるためにも、電力会社はLNG調達を含めて電力供給に万全を期してもらいたい。

太陽光などの再生可能エネルギーの導入が広がり、電力各社は稼働率が低下した古い石油火力発電所を休廃止している。一方、脱炭素化で火力発電所の新設は手控えられ、原発の再稼働も進んでいない。冬場は太陽光発電の稼働も低調なため、電力の需要増に供給が追い付かなくなってきた。

来年2月には東京電力管内で3・1%に下がり、関西や九州など電力6社管内も3・9%にとどまる見通しだ。電力供給に最低限必要とされる3%は確保できるものの油断はできない。電力需給逼迫への備えは急務だ。家庭や産業界の協力が欠かせない。

経産省では自家発電設備を持つ企業から電力を公募し、電力不足に対応する方針だ。電力各社もLNG在庫を増やしており、同省では今冬のLNG不足は回避できるとみている。引き続き十分な燃料確保に努めてほしい。

懸念されるのは、電力不足が慢性化する恐れだ。天候などの自然条件に発電量が左右される再生エネが拡大する中で、その変動を調整する電源として火力発電は必要だ。だが、脱炭素化で金融機関は化石燃料を使う火力発電への融資を縮小しており、安定電源の確保が喫緊の課題だ。

政府は安全性を確認した原発の早期再稼働を主導するのに加え、高効率の火力発電所の円滑な更新投資を促すような制度改革にも取り組んでもらいたい。

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