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今年の「#文学」
tohramiki.hatenadiary.org
前回の終わりに、これからという時に死んでしまったのは金子正次のようだ、と書いた。 金子正次さんには一度だけ会ったことがある。映画『竜二』*1が公開される少し前のことだ。 僕は大学を卒業し、エロ本の出版社にアルバイトでもぐり込んだものの半年あまりで馘になってしまい失業中だった。学生時代、リズム・アンド・ブルーズのバンドを一緒にやっていた小林広司という男が、自主映画の製作や公開をする小さな事務所を作ったから暇なら手伝わないか、と言った。それで毎日渋谷の南平台にある雑居ビルの一室に通い、電話番をしながらぽつぽつとアルバイトの原稿などを書いて過ごしていた。1983年の春頃のことである。 ある日、小林が「主役の人がたったひとりで資金を集めて作ってしまった35ミリの映画があるらしい」と言い、事務所の仲間数人で試写を観に行った。それが『竜二』だった。場所は銀座にある小さな試写室だった。 終わってから金子
父の命日が近づいている。今年は十三回忌だそうだ。早いものだ、と思う。 十二年前に死んだ僕の父親は、役者を生業にしていた。 芸名を戸浦六宏*1といった。 父の職業を訊かれ「俳優でした」と答えると「それは御苦労なさったのではないですか」と言われることがある。やはり世間には役者イコール食えないというイメージがあるのだろう。しかし幸いなことに僕は何不自由なく育った。四つ上の兄と二人の兄弟だが、兄が高校に上がると同時に別々の部屋を与えられたし、バカ兄弟は揃って浪人までしてスネをかじり大学まで出して貰った。父にはいくら感謝してもし尽くすことは出来ない。 ただ、父の職業が俳優だということで、生前ひとつだけ困ることがあった。いや、今でもある。例えば、こういうことだ──。 ある日、都心へ仕事の打合せなどで出かける。ところが打合せは思いのほか早く終わってしまい、ポッカリと時間が空く。都心というのは渋谷とか新宿
今年の六月に急逝したAV女優・林由美香について書き残しておく。 それにしても気がついてみればこのコラムでは死んでいった者達のことばかり書いている。金子正次と菊地健二に始まり、リチャード・マニュエルにリック・ダンコ。死んだウチの親父にネコのぎじゅ太、そして奥山貴宏。『追想特急〜lostbound express』というタイトルが知らず知らずにそうさせているのだろうか? 死人に口なしという言葉を持ち出すまでもなく、亡くなった人に対してものを書くのはデリケートな行為だ。いたずらにセンチメンタルになってはいけないし、そもそも我々は自分という小さな鏡に映った相手しか描くことが出来ない。しかし出来る限りの尊敬を持ってすれば、文章は遠くへ行った人達のために何かを成せる行為でもある。当たり前の話だが、写真家は死者の肖像を撮ることは出来ない。そして、亡くなった人達だけが我々に教えてくれることが確実に、ある。
「踊るんだよ」羊男は言った。「音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ」村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』より。 眠れぬ夜がいくつかあり、奥山貴宏の著作を読み返す日々が続いた。それは同時に「生きるとはどういうことなのか」「世界をリアルに感じるとはどういうことなのか」を考え直す時間だった。奥山の著作は生前に刊行されたものが三冊。まずは二冊の闘病記『31歳ガン漂流』(ポプラ社)と『32歳ガン漂流エヴォリューション』(牧野出版)。そして一冊の小説『ヴァニシングポイント』(マガジンハウス)。本来はこの、ファンの間では『VP』と呼ばれ愛されている小説について書くつもりだった。だけど事情が変わった。それ以前にハッキリさせなければならないことが出来た。正直、こんなことはあまりにあたりまえの話なので書く必要なんて無いと思っていた。だけど世界は想像以上にひどいことになっているらしい。だからハッキリさせる。
「そこには眼に映るより複雑な状況がある──」ニール・ヤング。 先月2月の16日、HMJMのウェブサイトにて、オリジナルDVDのリリースを休止するという正式なアナウンスがされた*1。これに関しては、それ以前にライター安田理央が自身のサイト“安田理央の恥ずかしいblog“にかなり詳しい分析と感想を書き、それに対して雨宮まみがやはり自身の“NO!NO!NO!”にカンパニー松尾へのインタビューを三回に分けて掲載し、さらに安田への反論と意見を書いた。 AV業界と関係ない人には、カンパニー松尾、HMJM、オリジナルDVDと言っても何のことかサッパリ判らないかもしれないけれど、すみません、それをココに書き始めるとクドくなるので興味のある方はそれぞれのサイトに行って読んでみてください。安田くんと雨宮さんの意見は時系列で“NO!NO!NO!”に整理されています。また、カンパニー松尾、HMJMに関しては本家H
タイニイ・バブルス アーティスト: サザンオールスターズ,桑田佳祐,SOUTHERN ALL STARS出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント発売日: 1989/06/25メディア: CD クリック: 48回この商品を含むブログ (4件) を見る 6時起床。お風呂に入り、玄関から新聞を取ってストレッチしながら眺めると、朝日の一面、目次のピックアップのような欄に桑田佳祐さんの顔写真と「サザン、来年より活動休止」とある。数日前にスポーツ紙がスクープで報じ、その後もネット等で噂されていたのは本当だったんだなという想いと同時に──朝日の一面になるのがスゴイという意味ではないが、やはり国民的なバンドなんだなという気が改めて、した。僕は年齢的に近いということもあり、サザンオールスターズという存在を知ったのは早い方だと思う。あれは確か浪人時代、毎月毎月隅から隅まで穴の空くほど見ていた『プレイヤー
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