コロナがいっこうに収まらない中、吉田耕司さんの追悼写真展を訪れて写真を眺めているうちに、とても不思議な気分にとらわれた。 素朴に言葉にするなら「これは誰が撮った写真なのだろう?」とでもいう気分なのだが、もちろん撮ったのは吉田さんに決まっている。 吉田耕司さんとわたしは面識があるが、親しくしていたという程ではない。生前に展示に訪れた際、在廊していた氏と言葉をかわしたことはあるが、エネルギッシュなおじさんが少し苦手なので、ちょっと壁を作っていたと思う。その時は至って元気に見えたのだが、ご病気の知らせをうかがってから間もなく亡くなってしまった。 人が亡くなってしまう時は本当にあれよあれよという間で、それが不可解に過ぎるから葬儀という仕組みがあるのだが、焼香に上がるほどの間柄でもなく、ただ言葉を交わしたことのある人がふといなくなってしまって、宙ぶらりんな気持ちになった。 わたしたちは亡くなった作家