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米澤穂信による連作短編集『遠まわりする雛』および、それを原作としたアニメ『氷菓』は千反田えるが春... 米澤穂信による連作短編集『遠まわりする雛』および、それを原作としたアニメ『氷菓』は千反田えるが春の予感を告げ、締めくくられる。これはなぜか。それがこの短い文章が答えようとする問いである。 「寒くなってきたな」 しかし千反田は、少し驚いたように目を見開き、それから柔らかく微笑んで、ゆっくりとかぶりを振った。 「いいえ、もう春です」*1 以上は、『遠まわりする雛』の結部からの引用であり、この折木奉太郎と千反田えるのやりとりはアニメ『氷菓』最終話「遠まわりする雛」でもほぼそのままといっていいかたちで使われ、そして物語は終わる。 夕暮れの道中で交わされるこの短い発話のうちには、いくつもの暗示や暗喩が読み込めることは疑いがない。たとえば、春を告げる千反田の言葉のうちに、青春的なるものへの「保留」から始まった折木の物語が、あからさまに、避けようもなく青春という「春」に向かいつつあることの暗示ともとれる