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記憶と忘却の物語。 (『CUT』2003 年 12 月) 山形浩生 ゼーバルト『アウステルリッツ』は不思議な小説... 記憶と忘却の物語。 (『CUT』2003 年 12 月) 山形浩生 ゼーバルト『アウステルリッツ』は不思議な小説だ。たぶんその不思議さは、最初のページを読み終えてページをめくった瞬間にこちらを見つめている、動物や人間たちの目の写真のところで強烈に感じられるだろう。もしかすると、それは単にそれが目の写真だから、一瞬本に見返されているようなそんな印象が生じるせいかもしれない。でもゼーバルトの他の小説でもそうだけれど、『アウステルリッツ』の写真と文章は、妙な連動ぶりを示している。なくてもいいような単なる添え物としてではなく、写真が文の一部として読まれている、そんな感じだ。この小説と似たようなものを挙げるとすれば、クリス・マルケルが撮った『ラ・ジュテ』かもしれない。『12モンキーズ』のもとになった短編映画だ。映画といっても、それは多くのスチル写真を並べ、それにナレーションをつけることで成立していた
2008/10/27 リンク