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これだから有線イヤフォンはやめられない。DUNU「DK3001 BD」のサウンドにノックアウトされた
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- SOUNDEARTH
2024年12月6日 08:00
DUNU-TOPSOUND(DUNU)の「DK3001」シリーズに、5年ぶりの新モデル「DK3001 BD」が登場した。
初代「DK3001」が登場したのは2016年のこと。同社が持つハイブリッドドライバー技術を活かしたハイエンドモデルと位置づけられ、国内ポータブルオーディオファンから注目を集めたことを記憶している。
シリーズ第2弾モデル「DK3001 PRO」は2019年のリリースとなった。初代の4ドライバー構成から5ドライバー構成へと変更、さらにスイッチングコネクタを採用するなど、後継機らしい進化を遂げていた。
そして2024年。満を持してのお目見えとなったシリーズ最新モデル、DK3001 BD(オープンプライス/実売79,980円)はどのような音を聴かせてくれるのだろうか。さっそく確かめていこう。
デザインを一新したハウジングに9ドライバーを搭載
そもそもDUNUがどのようなブランドなのか、簡単に振り返ってみたい。
設立は1994年で、当時はオーディオメーカーのOEM/ODM事業をメインに展開していた。そこから徐々にオリジナル製品の開発を進め、日本市場には2012年にコンシューマー向けイヤフォンを投入したという。ただ、その存在が広く知られたのは2013年秋のヘッドフォン祭で披露された、アジアメーカー初のハイブリッドイヤフォン「DN-1000」がキッカケではないだろうか。
以降、ハイブリッドイヤフォンを中心としながら、独自ドライバーの開発を強みにラインナップを拡充。製品のリリースペースは決して早くはないが、その分ひとつひとつのモデルにこだわるブランド。それが筆者がDUNUに抱く印象だ。
そんなDUNUがハイエンドモデルとして発表した初代DK3001は、それまでの「DN」という製品ラインを再構築。ただの注力モデルではなく、DUNUの製品コンセプトを明確化し、ブランドイメージをユーザーにアピールすることを狙った記念碑的モデルでもあった。
現行の「GLACIER 川」(GLACIER)をはじめ、DKシリーズよりも上位に位置づけられるモデルは存在するが、それでもDKシリーズはDUNUにとって少し特別なのではないだろうか、と筆者は考えている。
さて、そんなシリーズの最新モデルとなるDK3001 BDは、やはり力が入っていると感じさせると同時に、その見た目からしてチャレンジングだ。
従来モデルの面影がまったくない。これまでのハウジング形状が円形だとすれば、DK3001 BDは三角形。航空宇宙グレードのアルミニウム合金の1つのブロックからCNC加工されたホワイトの筐体に、「30」「01」と製品名がアニメやゲームで見るような雰囲気のフォントでプリントされている。
本体はジルコニウム・セラミックコーティングで仕上げられており、質感はマットで光沢はないが、滑らかで安っぽさを感じさせない。
ちなみに、製品名につく「BD」は「BrainDance」の略。DUNUはDK3001 BDが“感覚的な心とつながるデバイス”であり、「音楽を聴くことは、五感と心の両方を刺激する体験である。“HyperDream”のような超現実的なリスニング体験に浸ってください」と説明している。GLACIERではその名の通り氷河にインスパイアを受けたデザインが採用されたように、DK3001 BDの独創的なデザインもHyperDreamが由来となっているのであろう。
また、この“超現実的なリスニング体験”を生み出すためのドライバーは、ダイナミック×1、バランスド・アーマチュア(BA)×4、マイクロプラナードライバー×4の合計9ドライバーによるハイブリッド構成と豪華だ。
それぞれ具体的に見ていくと、まずダイナミックドライバーには、フラッグシップであるGLACIERと同じ高性能ダイナミックドライバーを搭載。独立したフレキシブル・サスペンションを備えたというバイオセルロース振動板を採用し、低域を担う。
中域と高域にはBAドライバーを採用。そして4基のマイクロプラナードライバーが、従来のダイナミックドライバーやBAドライバーの能力を遥かに超える超高域を実現するとしている。これらのドライバーは、独立した4チャンネルのサウンドガイドと電子クロスオーバー・システムによって緻密に制御され、正確な周波数特性と一貫性の高い位相アライメントを生み出すという。
5種類のイヤーピースをはじめ豪華付属を用意
付属品も奢られている。ケーブルは二次精製工程を経て精製された高純度4芯単結晶銅ケーブルで、ナイロンダンピングレイヤーで覆われている。入力端子は独自のセルフロック式プラグシステム「Q-Lock Mini」を採用。上位機には4種類のプラグが付属するが、DK3001 BDには3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスコネクターが同梱される。
またイヤフォン側は2ピン式を採用した。前モデルのDK3001 PROはMMCXで販売されており、DK3001 BDも本国ではMMCXで先行販売されたが、日本での販売においては2ピン式でのリリースが決定したようだ。
イヤーピースは5種類を同梱。前モデルからラインナップが一新されており、現行の最新モデルや上位機に付属されるイヤーピースの詰め合わせセットのようになっている。
グレー(と公式で紹介されているが、実際の見た目はホワイト)の「Balanced Eartips」は、「幅広い音楽ジャンルに対応し、正確な再生とバランスの取れた素直なサウンドプロフィールを実現」するとしている。DUNUが独自開発したという「S&S Eartips」は、柔軟なシリコンのみで作られており、透明な外観からは傘の外側と音のガイドチューブの両方がまっすぐな壁になっていることが見て取れる。
またDUNUが新開発した「Candy Eartips」は、柔軟性のあるシリコン製の外傘を使用するとともに、厚みのあるサウンドチューブでサポート力を強化したという。赤色の軸が特徴の「Atmosphere Enhancement Eartips」は低域を増強するとしており、エントリーモデル「TITAN S」に同梱されるBassイヤーピースと同様のものだろう。ここまでの4種類はシリコンタイプで、サイズはS&S EartipsがXS/S/M/Lの4サイズ、ほかはS/M/Lの3サイズだ。
もう1つ、フォームタイプの「Foam Eartips」を用意。ノイズ・アイソレーションを強化し、「低音の存在感を高めながら、オーディオソースのハーシュネスを和らげる」と説明されている。こちらはイヤーピースを指で潰してから耳に入れて、徐々に膨らみながら耳の形にフィットするタイプのため、ワンサイズとなる。
このほか、ホワイトレザーのキャリングケース、保護イヤフォン収納ポーチ、 クリーニングブラシ、マイクロファイバークロス、3.5mm to 6.35mm変換プラグ、ケーブルクリップが付属品として用意されている。
高解像度で切れ味のあるサウンド
前置きが長くなってしまったが、いよいよサウンドをチェックしていこう。Astell&Kern「A&norma SR25 MKII」と組み合わせ、イヤーピースはBalanced Eartipsを装着して聴いていく。
まず全体の印象を伝えておくと、解像度と分離感の高い、軽やかな音がする。中域を支点に少しだけシーソーが高域に傾いたバランスで、低域よりも高域の厚みが特徴的だ。そういった意味ではフラットサウンドではないかもしれないが、「全部の音を余す所なく鳴らしてやろう」という、ある種モニターライクな再現性を持っている。
そして逆に、余計な付帯音を乗せず、元々ない音は徹底して鳴らさない。例えるなら「軽量級なのに圧倒的な手数でKOを量産するボクサー」のように、切れ味がありクリアだが、密度がある。知らずにこの音を聴いた者に、多大なインパクトを与えてくる。
YOASOBI「アイドル」でそれは起きた。眩しくて思わず目を閉じてしまうように、「うわっ!」とイヤフォンを耳から外してしまった。いきなり「こんな音はいってたっけ?」という高音の群れが襲ってきたからだ。そのきらびやかな音の洪水を耳で浴びる覚悟を決めてイヤフォンを再装着すると、今度は高音のパレードに楽しくなる。
ボーカルが少しだけ前に立つが、非常に解像度が高いため、バックに流れる音を分析的に聴き込むことができる。これは超ハイエンドな有線イヤフォンにも通ずる、完全ワイヤレスイヤフォンではまだ到達しきれない再現能力だ。オーディオ的な喜びというべきか、このように聴こえていなかった音が聴けるから、有線イヤフォンはやめられない。
音の余韻がスッキリとしていてスピード感があり、ジャギジャギとしたエレキギターとも相性が良いサウンドだ。KANA-BOON「ソングオブザデッド」ではリフが最高に気持ちよく、コーラスやAメロのバックに流れるこのラインが楽曲のノリの良さを生み出していたのかと気付かされる。また高音を特徴としながら、シャカシャカとした鳴らし方はしないので、安っぽさや耳への刺さりとは無縁ということもお伝えしたい。
ここからは豊富に用意されたイヤーピースを試していこう。まずはS&S Eartipsだが、こちらに付け替えると低域の厚みが増して、先程までの高域プラス/低域マイナスのバランスがフラットに変化する。その分、強烈な高域は奥に引っ込むが、よりオールマイティなサウンドになった。こっちのけんと「はいよろこんで」は楽曲の重心が下がり、ビートにパワフルさが出る。ボーカルやボイスパーカッションの切れ味も相まって、そのリズムに自然に身体が動き出してしまう。
続いてCandy Eartipsだが、中域に厚みがあるピラミッドバランスになり、ボーカル曲との相性が良くなる印象だ。また音に柔からさが生まれて、切れ味が少しマイルドになり、空気感のようなものが出てくる。tuki.「晩餐歌(弾き語りver)」は他のイヤーピースでは弾き語りならではの余韻がうまく表現されていなかったが、音の分離と響きのバランスがちょうどよくなり、楽曲の世界観に没入できるようになった。
Atmosphere Enhancement Eartipsを装着すると、低域にズンとした重量感が出る。今回聴いたなかで最もパワフルだが、ボワンとせず引き絞られている。ただ増量されたものとは違う、力強いという言葉がピッタリな低音だ。Creepy Nuts「オトノケ - Otonoke」ではリズムが硬質になり、サビの疾走感あるメロディとの対比が際立つ。
そしてFoam Eartipsは、装着して耳に馴染んできた段階で遮音性能が高いことがわかる。音楽を再生すれば、高解像度に加えてノイズ感が減少しているため、まさに音源に収録された音だけが聴こえるように感じられる。バランスとしてはフラット寄りで、低域から高域までを継ぎ目なく鳴らす、DK3001 BDのハイブリッドドライバーの能力が遺憾なく発揮されるようだ。
Mrs.GREEN APPLE「点描の唄 feat.井上苑子」ではお互いの歌声を引き立て合い美しいハーモニーを奏でつつ、それぞれがボーカリストとして主張する様が、高い分離感によって描き分けられることに鳥肌が立った。
有線イヤフォンの魅力を再確認
近頃は有線イヤフォンで新製品が出ると、極端にハイエンドかエントリーのどちらかであることが多いように思う。より良いモデルへのステップアップを考えたり、気分によって使いわける複数台持ちには、ミドルレンジの選択肢がもっと増えてくれるとありがたい。
DK3001 BDは、ハイブリッド構成の旨味をしっかり感じさせてくれるモデルであるとともに、最近手薄だったミドル〜ハイの層を厚くする意味でも期待度の高いモデルだ。個人的には、このあたりの価格帯には個性的なモデルが多いように思うのだが、DK3001 BDもその例に漏れず個性があり、それが魅力となっている。
実際に、このワイドレンジかつハイスピードな“イヤフォンとしてのベースとなる実力”は非常に高く、他社の10万円を超える高級有線イヤフォンにも負けていない。そう考えると、7万円台という価格は手が届きやすく、かなり魅力的。現在2〜3万円のちょっと良い有線イヤフォンを使っているユーザーからすれば有力なステップアップ候補になるし、情報量も多いので、組み合わせるDAPをグレードアップした時でも、その音質向上を実感できるはず。末永く使える相棒になってくれるだろう。
普段は完全ワイヤレスイヤフォンばかり使ってしまっているけど、やっぱりこのレンジの有線イヤフォンって良いな。オーディオ趣味の楽しみを、DK3001 BDが思い出させてくれた。