The Game Awardsのユーザー投票賞最終ラウンドは「中国発の基本プレイ無料ゲーム」が過半数を占める結果に。“人口パワーと記念配布の強み”を巡り物議を醸す

The Game Awardsのユーザー投票型アワード「Players’ Voice」において、最終ラウンドの5作品が発表。4作品が中国発のゲームであり、さらに3作品が基本プレイ無料ゲームという点を受け、波紋を広げているようだ。

The Game Awards運営元は12月10日、ユーザー投票型アワード「Players’ Voice」において最終ラウンドまで勝ち残った5作品を発表した。このうち4作品が中国発のゲームであり、さらに3作品が基本プレイ無料ゲームという点を受け、波紋を広げているようだ。

The Game Awards(以下、TGA)は、毎年恒例となるゲームの祭典だ。同イベントでは、さまざまな珠玉のゲームたちに、Game of the Year(以下、GOTY)を始めとしてジャンル・音楽・アートなどの枠組みのなかで栄誉が贈られる。今年のTGA 2024は日本時間12月13日9時30分から開催予定だ。

TGAにおける各種アワードの受賞者は、審査員投票90%とユーザー投票10%による混合投票で決定されるという(公式サイトFAQ)。ユーザー投票は公式サイトのほか、中国からはbilibiliを通じておこなわれており、日本時間12月12日11時まで受け付けられている。またTGAにおいては、ユーザー投票100%で決定されるアワード「Players’ Voice」も存在。最初に30タイトルがノミネートされたのち、全3ラウンドの勝ち残り方式で絞り込まれていく。

そんなPlayers’ Voiceについて本日12月10日、TGA 2024における最終ラウンドに残った5タイトルが発表された。『黒神話:悟空』『原神』『鳴潮』『ゼンレスゾーンゼロ』、および『エルデンリング』のDLC「SHADOW OF THE ERDTREE」がラインナップされている。

人気作が名を連ねているものの、とある共通点が指摘されている。フロム・ソフトウェアが手がけた『エルデンリング』のDLC「SHADOW OF THE ERDTREE」以外は、すべて中国の開発・運営元による作品となっている点だ。さらに『原神』『鳴潮』『ゼンレスゾーンゼロ』については、基本プレイ無料のライブサービスゲームである。こうした点から投票に偏りが生じているのではないか、といった見方もあるようだ。

というのもPlayers’ Voiceの最終ラウンドに残った作品のうち『黒神話:悟空』は、中国の開発元Game Scienceが手がけた作品だ。PS5/Steam向けに8月20日に発売され、Steamでは初日に同時接続プレイヤー数が220万人以上となる大盛況を博した(SteamDB)。一方で海外マーケティング調査機関GameDiscoverCoによれば、発売初日の本作Steam版のプレイヤーの国別割合の推定値は、88.1%が中国からのユーザーだという。またValveが毎月公開している「Steamハードウェア&ソフトウェア 調査」によると、8月は中国語ユーザーがもっとも多くの割合を占めており、2位の英語と通例よりも大きな差をつけていた(関連記事1関連記事2)。

中国といえば人口約14億人を擁する大国。今後もPlayers’ Voiceにおいて中国ユーザーからの人気が受賞に直結するのではないかといった懸念も生じているようだ。ちなみに『黒神話:悟空』は、ユーザー投票のみでアワードが決定される「Golden Joystick Awards 2024」において最優秀賞Ultimate Game of the Yearを獲得している(関連記事)。

『原神』『鳴潮』『ゼンレスゾーンゼロ』についても中国発のタイトルであり、それぞれ基本プレイ無料ゲームだ。なかでも『原神』は2022年のTGAにおいて実際にPlayers’ Voiceを受賞。この際には受賞を記念して、ゲーム内有償通貨となる原石が合計800個配布される大盤振る舞いがおこなわれた。基本プレイ無料ゲームではTGAに限らず、アワード受賞などのタイミングでプレイヤーにプレゼントが実施されることも一般的。作品への評価だけでなく、そうした“利益”を期待するユーザーも多く投票していると思われる。

なおTGAへの「ノミネート作品」は、全世界の100を超えるメディア、およびインフルエンサーなどから選ばれた審査員によって選出されているとのこと。Players’ Voiceについても同様の選出方法となる。一方でノミネートを経ての賞、いわゆるアワード選びのプロセスは異なる。他アワードは前述審査員が選ぶことに対して、Players’ Voiceではユーザーたちの投票によってナンバーワンが選ばれる。数多ければ有利になるのである。

ちなみに昨年のTGA 2023でもPlayers’ Voiceに『原神』がノミネートされ上位5作品まで勝ち残ったものの、受賞したのはGOTYも獲得した『バルダーズ・ゲート3』。また、『原神』以外の作品はすべて買い切り型ゲームであった。今年は一転して5作品中3作品が中国発の基本プレイ無料ゲームということで、今後のPlayers’ Voiceの在り方を巡って懸念も寄せられているようだ。

TGAにおいては基本プレイ無料ゲームやライブサービスゲームが選出されやすい「Best Ongoing Game」や「Best Mobile Game」といった部門もある。数的優位性や報酬駆け引きが絡んできた現在のPlayers’ Voiceが、本来運営側が意図した機能や意義を果たしているのか、気になるところである。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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