『ARC Raiders』は、世界の謎を解き明かす“冒険重視”のPvPvEサバイバルシューターだった。開発者に、イタリア愛炸裂の世界づくりやゲームプレイについて訊いた

『ARC Raiders』開発陣に、発売の延期や大きな方向性の転換を経験した本作の現在地と、その魅力について訊いた。

パブリッシャーのNexonおよびデベロッパーのEmbark Studiosは、11月14日から17日まで韓国で開催された「G-STAR 2024」にて『ARC Raiders』開発陣へのインタビューを開催した。本誌もインタビューに参加し、『ARC Raiders』プロデューサーのDaniele Viteli氏とコミュニケーション・ディレクターSven Grundberg氏に話を伺う機会を得た。発売の延期や大きな方向性の転換を経験した本作の現在地と、その魅力について訊いた。

『ARC Raiders』は、三人称視点で繰り広げられるPvPvEアクションサバイバルシューターだ。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S。本作の舞台となるのは、地上にはびこるロボット集団「アーク」(ARC)の襲撃から身を守るため人々が地下コロニーへと追いやられた世界、いわゆるポストアポカリプス(文明が崩壊した世界)だ。プレイヤーはそんな世界のレジスタンス「レイダー」の一員となり、ときにはほかのレイダーと協力して生き延びるための物資を確保したり、ときには資源を奪い合ってほかのレイダーたちと戦うことになる。


──『ARK Raiders』の概要を教えてください。

Sven Grundberg(以下、Sven)氏:
簡潔にいえば、本作は「マルチプレイヤー型のPvPvE脱出シューター」です。常に状況が変化する緊張感の高いゲームプレイと、深いストーリーに裏打ちされた、ポストアポカリプス的ながら非常に美しい舞台世界が特徴です。

コミュニケーション・ディレクターのSven Grundberg氏


──本作のデザイン面について、敵となるロボット軍団「アーク」がとてもミステリアスで魅力的に感じました。デザインの上でこだわっている部分などを教えて下さい。

Daniele氏:
おっしゃる通り、開発にあたりミステリアスで惹き付けられるようなビジュアルであることはとても大事であると考えています。アークの機械ならではの動きが戦闘の楽しさにも繋がるよう開発されており、そうした要素は謎解き要素にも活用されています。

プロデューサーのDaniele Viteli氏


Sven氏:
我々の共通認識として、Sci-Fi(サイエンスフィクション)をテーマにしています。今の時代、AIを含めて機械の存在感が増してきている中、それらは脅威と捉えられている側面もあれば未来を作るものとして期待されている側面もあります。いずれにしても今までの想像を超えてきている分野で、これを題材にした作品が作れないかと考えました。もうひとつのテーマとしては「レトロフューチャー」があり、ビジュアルでもストーリーでもどこかノスタルジアを感じられるようにしています。


──本作では、ゲームプレイにおいて「音」が重要な要素となるそうですね。なぜ音にこだわるのか、また具体的にどのような場面で音がゲームに影響を及ぼすのか、聞かせて下さい。

Daniele氏:
本作のゲームプレイでは感覚を研ぎ澄ませて周辺環境に気を配る必要があるのですが、その中でも音は重要な要素となるようにデザインしています。音に注意を払わないと、状況によっては大変なことになるかもしれません……。幸いなことに我々Embark Studiosには世界トップクラスのオーディオエンジニアが在籍しており、彼らに才能を発揮してもらうことで素晴らしいものが仕上がりました。

Sven氏:
本作の美しさを演出する一環として、音にはこだわっています。レトロで懐かしい雰囲気とアークの恐ろしさや緊張感を両立させ、ゲームへの没入を助ける役割を担っています。ゲームプレイの面では、音をヒントにプレイの指針を立てたり、判断の基準にしたりできます。

──本作ではPvPvE作品としてほかのプレイヤーと遭遇した場合、協力するか競争するかを選ぶことができます。このコンセプトはどういった経緯でゲームに組み込まれたのでしょうか。

Daniele氏:
当初は協力プレイのみで開発を開始しました。ですが、「ゲームは複数の要素が折り重なることで面白くなる」という考えのもと、開発の途中で「PvP要素を盛り込み、協力と両立させよう」という決断を下しました。フレンドとのプレイだけではなく、見知らぬプレイヤーとのコミュニケーションも楽しんでいただきたいです。また、本作のメインとなるのはクエストであり、「世界の謎」を解き明かすことが目的となります。中にはあえて戦闘をしないという選択を提示してくるクエストもあるので、協力か競争か、あるいは戦い自体を避けるのか、という選択を楽しんでほしいです。

*探索中に出会ったほかのプレイヤーに協力を申し出ることもできる


──PvPvE作品では「脱出ポイントで待ち伏せをして、ほかのプレイヤーから戦利品を奪う」といったプレイがしばしば見られます。そうした戦術に対しては、どのような対処法が用意されているのでしょうか。

Sven氏:
脱出ポイントで真正面から戦闘することももちろん可能ですし、リスクを嫌う場合は戦闘なしで脱出ができるようなアイテムやガジェットを使うことができるので、プレイスタイルにあわせた選択をしてもらえると思います。ゲーム全般を通して、賢い戦術を選ぶことはとても重要です。たとえば、1対多数のような不利なケースでも、アークを利用して敵プレイヤーにぶつけて囮にすることで、戦闘を避けるようなことも可能です。

── 同じくEmbark Studiosが手がけたシューターである『THE FINALS』とは、ターゲットにしているプレイヤー層は異なるのでしょうか。

Sven氏:
その2作品は違う層を惹き付けるタイトルだと考えています。『THE FINALS』はゲームスピードが速く、アクション要素も強いチームベースのシューターです。反対に『ARC Raiders』は比較的ゆっくりとしたペースで状況が変化していく、サバイバルやアドベンチャーの要素が強い脱出シューターです。我々が意図してターゲット層を変えたというよりは、ゲームの毛色の違いによって自然と違う層に訴求していると考えています。

どちらのタイトルもプレイヤーのみなさんに好きなようにプレイしていただきたいですが、競争や勝利にフォーカスしている『THE FINALS』に対して、『ARC Raiders』に関しては準備に時間をかけることを楽しんでいただきたいです。仲間と一緒に綿密に戦略を立てて、次のセッションの目標を話し合うことが『ARC Raiders』の醍醐味のひとつになっています。


──PvPからPvPvEへの変更や、基本プレイ無料から有料買い切りへの変更など、本作の開発には紆余曲折あったように見受けられます。こういった変更には何か大きなきっかけがあったのでしょうか。

Sven氏:
ゲームの開発というものは議論を重ねて試行錯誤していくものです。 PvPvEの導入も買い切り型への移行も、何か大きなきっかけひとつで決まったというわけではありません。限られたリソースの中でどうすれば最高のゲームができるのか、チームとして話し合った結果としてこのかたちになりました。

──本作を実際に遊んだ印象として、脱出シューターとしては探索要素が強く、マップも作りこまれて魅力的だと感じました。こういったアドベンチャー的要素が強く押し出されている理由について教えて下さい

Sven氏:
さまざまな脱出サバイバルゲームから得たインスピレーションとして、「このジャンルにアドベンチャー要素を加えることでさらに進化させられる」と思いました。なので、Nexonに『ARC Raiders』の企画提案をした時点から「アドベンチャーの要素は絶対に入れたい」と伝えていました。その世界の中に滞在したくなるような好奇心を惹き立てられる場所を用意することはとても重要だと考えているので、プロジェクトを進める中でも重点を置いてきました。

ゲームの世界の中を探索している感覚がある、発見があるということはすごく大事です。なので、ポストアポカリプスの荒涼とした世界をいかに魅力的に見せるか、いかに滞在していて「楽しい、ワクワクする」と感じさせるかにこだわっています。現実の地球上の景色からインスピレーションも受けていますし、『ARC Raiders』ならではの景色にも力を入れていました。

──ゲーム内世界のモデルになった実在のロケーションなどがあれば教えて下さい。

Daniele氏:
イタリア人の私にぜひ語らせてほしいのですが、実は『ARC Raiders』は南イタリアが舞台で、レッジョ・ディ・カラブリア(イタリア半島先端の沿岸部、シチリア島に面した都市)やナポリ、ヴェスヴィオ火山のようなイタリアの実在するロケーションからインスピレーションを受けています。また、舞台が未来世界のポストアポカリプスということで、現代に実在する教会の未来の姿など「南イタリアが未来でどうなっているのか」という描写も盛り込んでいます。


──テストプレイ中に開けることができない箱を発見しました。謎を解明しようとなんとか脱出ポイントまでその箱を運んだのですが、何も起こらず……。答えられる範囲で構わないので、あの箱について教えて下さい。

Daniele氏:
それはフラストレーションを与えてしまって申し訳ないです、秘密にしているものではないのでお答えできます。その箱は、デリバリーステーションに運んでもらうと装備がもらえます。分かりづらくて申し訳ありません。こういったフィードバックをいただくことで改善すべき点が分かるので、大変ありがたいです。まだまだ初期段階のゲームだと考えていますので、これからもフィードバックをもとに改善していきます。

──日本のプレイヤーに向けてお2人からメッセージをお願いします。

Sven氏:
まず、これまでにプレイしていただいたテストプレイヤーの皆さんには感謝を申し上げます。 PC以外のプラットフォームを含め、リリースまでにまだまだテストをしていきますので、ぜひご参加いただきたいです。皆さんと一緒にゲームを作っていく形で開発を進めていきたいと思っていますので、忌憚のないフィードバックをお待ちしています。引き続きのご注目をよろしくお願いいたします。

Daniele氏:
Sven氏に大事な部分を言われてしまいましたね(笑)イタリア人の私としては、本作は気軽なイタリア旅行としても楽しんでいただきたいと思っています。「(日本語で)ありがとう!」

左・Daniele Viteli氏、右・Sven Grundberg氏


ARC Raiders』はPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに2025年リリース予定だ。

[聞き手・編集:Sayoko Narita]
[執筆・編集:Daijiro Akiyama]

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