『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』先行プレイ感想。緊張感ある撃ち合い、不気味で寂しい廃墟……時間が経っても、シリーズの“味”は色濃く残る

セガは11月21日、サバイバルホラーFPS『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』を発売予定。本記事では、先行プレイを通じて感じた『S.T.A.L.K.E.R.』ならではの魅力をお届けする。

セガは11月21日、GSC Game Worldが開発する『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』を発売する。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com/Microsoft Store)/Xbox Series X|Sで、Xbox/PC Game Pass向けにも提供される。

『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』は、PCゲームファンからカルト的な人気を誇るサバイバルFPS『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズのおよそ15年ぶりとなる最新作だ。チョルノービリ原発事故によってさまざまな怪奇現象やミュータントが現れるようになった立ち入り禁止区域を舞台に、プレイヤーはさまざまな派閥から危険な仕事を請け負う「ストーカー」となって生き延びる。

筆者は過去作リマスター『S.T.A.L.K.E.R.: Legends of the Zone Trilogy』のPR記事で、本シリーズがいまどのような立ち位置にいて、いかに特別なゲームなのかを語った(関連記事)。加えて、本作のインタビューでも「あの面白さが引き継がれそうで安心した」とも述べた(関連記事)。

では、『S.T.A.L.K.E.R. 2』のプレイ体験の上では具体的にどのような点が良いのだろうか? 本記事では、先行プレイを通じて感じた『S.T.A.L.K.E.R.』ならではの魅力を、筆者なりの視点からお届けする。なお、プレイしたのはPC版の発売前ビルドであることをご留意いただきたい。

快適ではない銃撃戦を、冷たく寂しいフィールドで繰り広げる


筆者が真っ先に思いつく『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズの魅力は、大きく分けて「銃撃戦」「探索による報酬(ルート)」「廃墟」の3つだ。以下でそれぞれ解説していく。

まずは、「銃撃戦」のおもしろさだ。「FPSなんだから、そんなの当たり前だろ」と思うかもしれないが、本作の面白さは他のFPSとは少し異なる。それは、本作の銃の挙動がリアルかつ扱いづらいことによって生まれる緊張感だ。

銃の反動はとても強く、フルオート連射でまともに当てることはまず難しいため、しっかり狙いながら少しずつ撃たなければならない。拾える銃はスコープやサイトが付いていないことも多く、狙いづらいアイアンサイトで戦わなければならない場面もある。他にも、品質の悪い銃や使いこんで摩耗した銃は精度が低下してなかなかヒットしなかったり、弾詰まりを起こしたりと、トラブルが多発する。

だからこそ、本作の撃ち合いは慎重になる必要がある。身を隠しながら敵を狙ったり、徐々に間合いを詰めていかなければならない。敵をスポッティングするような便利な機能はないため、夜間の撃ち合いは敵の視認が難しく、ある程度決め撃ちをしなければならない場合もある。こうした戦いづらいシステムは、少しの被弾で深手を負って、最悪死に至るというシビアなバランスとマッチして強い緊張感を生んでいる。


この点は、最新作でも一切変わりない。現代のユーザーにあわせて銃が当てやすくなったり、シビアなバランスがゆるくなっていたりということはなく、このもどかしさや緊張をそのまま味わえるのだ。過去作から長い年月が経っていることもありまず心配になった部分だが、筆者がプレイした限りではファンがかなり安心できる内容だった。とはいえ改善が一切行なわれていないわけではなく、武器ホイールを採用するなどゲームバランスに影響しないところで便利になっているところがあるのも好印象だ。


次に、「探索による報酬」。本シリーズはノンリニアなゲームプレイになっていて、フィールドを自由に探索できる。過去作ではいくつかの自由に探索できる箱庭同士がつながっているような作りだったが、本作ではついに完全にオープンワールドといえるものになった。エリア間のロード時間によって現実に引き戻される時間が少なくなり、より没頭できる。

フィールドはプレイヤーの思うがままに歩くことができるが、そこにはたくさんの困難が待ち受ける。道を歩いていれば悪党がいて突然戦闘になるし、放射能汚染で変異した凶暴な動物に襲われることもある。建物に足を踏み入れてみたら、放射能汚染がひどく、しっかり対策しないと無事には入れないこともある。自由に探索できるとはいえ、一歩一歩気を緩めずに歩かなければならないという体験は本作ならではだ。


アノマリーと呼ばれる現象も探索を困難にする理由のひとつだ。アノマリーには近づくと引き込まれて深手を負うもの、突然炎に包まれるもの、電撃が起こるものなど危険がいっぱいで、そのほとんどは目視しづらい。プレイヤーは、無限に投げることができるボルトを怪しいところに投げ、安全な道を慎重に割り出していく必要がある。

そうしたオープンワールドを探索するほど有利に働くのは特筆すべき点だ。本作はサバイバルホラー的な側面も兼ね備えており、弾薬や回復アイテムといったリソースは常に不足しているし、銃も摩耗して使い物にならなくなっていく。探索をおろそかにしすぎるとすぐにリソースが枯渇する可能性があるが、アイテムを取りすぎても重量制限にかかってしまうため、取捨選択するという要素もある。


探索してリソースをたくさん貯めていればダメージを負っても心の余裕ができるし、最初こそチープでボロボロな銃ばかりだが、ゲームの進行にあわせて強い銃やアーマー、アタッチメントなどが手に入ったときは本当に嬉しい。ちゃんと向き合えば向き合うほど報酬が大きいという、ゲーマーが感じる喜びに訴えかけてくるのだ。「早くこの銃を撃ちたい!」「これがあれば、戦いやすくなるのでは?」と今後の攻略の方法に思いを巡らせる瞬間は最高にテンションが上がる。

敵との戦闘においても有利になることがある。本作には個別の対処法が用意された敵やアノマリーが存在しており、例としてゾンビのような不死の敵が挙げられる。ゾンビは痛みを感じないため、完全に行動不能にするにはたくさんの銃弾を要する。しかし、実はゾンビの近くには彼らを操るコントローラーと呼ばれる存在がおり、それを見つけ出して倒すことで根本から対処できる。こうした対処法は探索して得られる読み物などによってわかるそうだ。


最後に、「廃墟」の魅力は見逃せない。チョルノービリ原発事故後の世界ということもあって、東欧らしい荒涼とした雰囲気の世界は見ごたえがある。彩りの少ない自然や、無骨でどこか寂しいコンクリート造の建物など、一見して「綺麗!」と思えるような景色ではないが、退廃的な美しさは確実に存在する。何度も現地取材しているそうで、それがUnreal Engine 5のパワーで美麗に描かれることにより、“廃墟フェチ”に強く訴えるものになっている。また、過去作で印象的なロケーションが年月を経た姿で登場したり、入れなかった建物に入れるようになったりと、ファン向けのロケーションも多数存在する。

筆者が特にお気に入りなのは、放射能に関連する汚染された施設だ。長年誰も立ち入らなかったことで朽ちた壁や錆びたパイプなどビジュアル的に見どころがあるのはもちろん、人が作ったものなのに、人の業によって入れなくなってしまっているという状況は得も言われぬ感情に襲われる。かつてここで起きたことが想像されるような形で死体やオブジェクトが配置されているところもあり、胸が締め付けられた。

以上が、『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』をプレイして改めて感じた『S.T.A.L.K.E.R.』ならではの魅力だ。FPSの中でもかなりクセがあり、あらゆるゲーマーにオススメできるわけではない。しかし、今回は過去作にはほとんどなかった親切なチュートリアルが導入されているし、サブスクサービスXbox/PC Game Pass向けにも提供される。本作の魅力が刺さるゲーマーにより広く知れ渡ったらとても嬉しい。

『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』は、PC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com/Microsoft Store)/Xbox Series X|S向けに11月21日発売予定。Xbox Game Pass向けにも提供される。


なお、先行プレイの環境はASUSに用意していただき、第14世代 intel Core i7 CPU、NVIDIA RTX 4090 / RTX 4080 Superを搭載したゲーミングPCやGtG 1msの高速応答を実現したゲーミングモニター「ROG Strix XG256Q」を使用した。ハイクオリティ・ハイパフォーマンスな環境でゲームを楽しめたので、快適に本作をプレイしたい方はぜひチェックしてみてほしい。

Mio Tsukuru
Mio Tsukuru

ゲームの歴史が好きなフリーライター。FPSやADVを主食とし、新旧コンソールゲームからPCゲームまで気になるゲームを幅広く遊ぶ。Nintendo Switchでレトロゲームを買い漁るのが趣味。

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