自動運転レベル3の法整備が進んだ
2019年12月1日から施行となった道路交通法改正で、運転中の携帯電話使用、いわゆる「ながらスマホ」(ながら運転)の厳罰化が話題になっている。しかその横で、レベル3の自動運転技術実用化のための改正も用意されていた。
それが「自動車の自動運転の技術の実用化に対応するための規定の整備」だ。こちらの施行は2020年5月下旬までの施行が予定されている。
ちなみにレベル3の自動運転とは、高速道路などの限定エリアでクルマのシステムが運転手に代わってクルマの運転操作を行なう。そのときに運転手は、周囲の状況を監視する必要はない。レベル3の自動運転中は、運転手はハンドル操作から解放されるのだ。ただし、何か問題が発生したり、もともとの走行条件から外れたときは、運転操作をシステムから運転手に引き継ぐというもの。
だが、こうしたレベル3の自動運転は、実際のところ実用化に至っていない。その理由のひとつに“法整備の遅れ”があった。
レベル3の自動運転では、運転手が運転に関与しない状況がある。自動運転システムが操縦しているときに発生した交通事故は、いったい誰が責任をとるのかという問題があったのだ。また、従来の法律では、そもそもシステムがクルマを運転するということが想定されておらず、それをどのような形で認めるのかが決まっていなかった。そうした法的な問題をクリアするために、いろいろな規定を定める必要があった。
そして、今回の「自動車の自動運転の技術の実用化に対応するための規定の整備」には、ポイントが3つある。
道路交通法改正の3つのポイント
1つ目が「自動運行装置の定義」が定められたこと。「自動運行装置」で走行することも、道路交通法上の「運転」に含まれることになった。これにより、自動運転中の事故の責任は、運転手が担うことになった。ついにシステム(自動運行装置)による走行が認められることになったのだ。
ちなみに自動運行装置が使用できる条件は、クルマごとに国土交通大臣が定めるという。どんな装置を積んだクルマが、どのようなシチュエーションでレベル3の走行が可能となるのかは、車種ごとに定められるようだ。
2つ目のポイントは「自動運行装置を使用する運転者の義務」だ。自動運行装置による走行中でも、一定の条件から外れた場合は、自動運行装置での走行は禁止になり、運転手が運転操作を引き継ぐことが義務づけられた。また、自動運行装置による走行中は、運転手はスマートフォンやカーナビ画面の注視を許されることになる。まさにレベル3の自動運転そのものを想定した規定と言えるだろう。ただし、運転の引継ぎが義務になるため、レベル3での自動運転中に寝たり飲酒することはできない。
そして3つ目のポイントは「作動状態記録装置による記録等」の規定だ。つまり自動運行装置には作動状態を記録し保存する必要があるとされた。記録できないときは、自動運行装置による走行は不可となる。状況によっては警察に記録を提出する必要もあるという。
また、これらの規定に違反した場合は「自動運行装置使用条件違反」「作動状態記録装置不備」「自動運行装置の整備不良」といった罰則も定められた。違反点数は2点で、反則金が普通車で9000円だ。
こうした道路交通法の改正により、レベル3の自動運転技術実用化は現実的なものとなった。残るは技術的な問題と言えるだろう。あまりに簡単に「運転不能! 運転手に運転交代」となるようでは、使い物にならない。また、システム(自動運行装置)から運転手への運転操作の受け渡しをいかにスムーズに行なうかという課題もある。
しかし、夢のように思えていた自動運転も、少しずつ前進しているということがわかる。レベル3を実現する量産車の、一刻も早い登場を期待したい。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
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