【前編】オレンジ代表 井野元英二氏インタビュー
『宝石の国』が気持ちいいのは現実より「ちょっと早回し」だから
2018年06月02日 12時00分更新
3DCGアニメの雄、オレンジの井野元英二代表に訊く『宝石の国』
フルCGアニメーションという、日本のTVシリーズ作品ではまだ珍しい形で制作されたアニメ『宝石の国』。日本のフルCGアニメは、主にメカなどの硬質なものを描くSFジャンルで発展してきたが、『宝石の国』でメインとなるのは、「宝石」と呼ばれる人型キャラクターだ。
手がけたのは、本作品が「初元請け」となる3DCG制作会社 オレンジ。同社を設立し、自らも『宝石の国』CGチーフディレクターを務める井野元英二氏は、『宝石の国』をフルCGアニメーションで表現するにあたり、キャラクターへの感情移入を最も重視したという。TVシリーズという、まだ3DCGアニメを見慣れない層にも受け入れられるCG表現とは何か。“不気味の谷”の越え方を伺ってみた。
井野元英二氏:プロフィール
1970年生まれ。CGアニメーション制作会社「有限会社オレンジ」代表。マンガ家アシスタント、イラストレーターを経てCGの世界へ。ゲームムービーなどを手がけた後、TVアニメ『ゾイド -ZOIDS-』(1999年)への参加を皮切りに『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002年)をはじめ多数のアニメCGパートを担当。2005年にオレンジを設立。同社CGパートの代表作として『創聖のアクエリオン』(2005年)、『マクロスF』(2008年)、『コードギアス 亡国のアキト』(2012年)、『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』(2013年)などがある。手描きの作画と違和感なく共存するCG表現に定評があるが、初元請け作品のTVアニメ『宝石の国』(2017年)ではフルCGアニメに挑戦、大好評を得た。現在もCGディレクターとして第一線で活躍中。
TVアニメ『宝石の国』ストーリー
宝石たちの中で最年少のフォスフォフィライトは、硬度三半とひときわ脆く、靭性も弱くて戦闘に向かない。また、他の仕事の適性もない。そのくせ口だけは一丁前という、まさに正真正銘の落ちこぼれだった。そんなフォスに、三百歳を目前にしてやっと初めての仕事が与えられる。それは、博物誌編纂という仕事。地味な仕事に不満なフォスだったが、彼はその目で世界を見、様々なことを経験する中で、しだいに大きなうねりに飲み込まれてゆく。そしてついに、彼は望まぬかたちで、欲しかった“強さ”を手にするのだが──。
スタッフ
原作:市川春子「宝石の国」(講談社『アフタヌーン』連載)、監督:京極尚彦、シリーズ構成:大野敏哉、キャラクターデザイン:西田亜沙子、CGチーフディレクター:井野元英二、コンセプトアート:西川洋一、色彩設計:三笠 修、撮影監督:藤田賢治、編集:今井大介、音楽:藤澤慶昌、音響監督:長崎行男、制作:オレンジ
キャスト
黒沢ともよ/小松未可子/茅野愛衣/佐倉綾音/田村睦心/早見沙織/内山夕実/高垣彩陽/内田真礼/伊藤かな恵/小澤亜李/種﨑敦美/茜屋日海夏/広橋涼/皆川純子/能登麻美子/釘宮理恵/中田譲治/生天目仁美/桑島法子/原田彩楓/上田麗奈/伊瀬茉莉也/朴璐美/M・A・O/斎藤千和/三瓶由布子
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「CGは好かれない」を乗り越えるための15年間
―― TVアニメ『宝石の国』は、オレンジさん初の元請け作品となりました。井野元さんはTwitterで喜びの声をあげられていましたね。そして、『宝石の国』はセールス的にもヒットしました。おめでとうございます。
井野元 ありがとうございます。私がオレンジを設立してから約15年、フリーランスだった頃も含めると20年以上CG制作に携わってきましたが、ようやく元請け作品を作ることができました。
―― 『宝石の国』はフルCGアニメのTVシリーズものという、現在の日本のアニメーションとしてはレアな形で制作されましたが、会社としての目標にはどんなものがありましたか?
井野元 まず、日本でフルCGでTVシリーズというのは、他社さんも含めて制作する会社というのはごくごく限られていて、2~3社ぐらいしかないのが現状なんですね。フルCGは、制作に時間もかかりますし、まず日本のアニメのなかで、CGは、お客さんに受け入れてもらいにくい、好かれてこなかったという状況がありました。
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