リチウムイオン充電池の10倍もの容量、実現すればEVもスマホも性能が格段に伸びる可能性
夢の「リチウム空気電池」実現に向け技術的ブレークスルー
2015年10月30日 20時53分更新
ケンブリッジ大学は10月29日、リチウムイオンの10倍もの容量が期待される「リチウム空気電池」の実用化に向けたブレークスルーを発見したと発表した。
リチウム空気電池は空気中の酸素を用いる二次電池(充電池)で、リチウムの酸化/還元反応で充放電する。現在のリチウム充電池の5~10倍以上にものぼる電力貯蔵が可能と期待されているが、空気を供給することから化学反応のコントロールが難しく、酸化リチウムの付着や余剰水分の混入などにより電極の性能が急速に劣化してしまう点が問題となっていた。
ケンブリッジ大学の研究チームは、電極として多孔質グラフェンを併用しつつ、リチウムの溶液にヨウ化リチウムを添加することで、水酸化リチウムの可逆的な反応ができることを発見した。金属リチウムの反応よりも電圧は低いものの、電極の劣化がほとんどない長寿命化と安定した充放電を実現できたとしている。
ただし、現在のところ純酸素と水を使っての電気-化学反応の確認。理想とされるリチウム空気電池は普通の空気を利用するが、二酸化炭素や窒素といった成分もリチウムと反応してしまい、これをどう解決するかという問題も残る。研究チームでは、「それでも実用化に少なくとも10年はかかる」としているようだ。
とはいえ、現在のリチウムイオン充電池はそれまでの電池を超えるエネルギー密度を実現したことにより、携帯電話やEV、ドローン、ウェアラブル機器など数多くの機器を登場させた経緯がある。それらの製品により世の中がどう変わったかを考えれば、さらなる高エネルギー密度を実現するリチウム空気電池には大きな期待が寄せられる。