情報セキュリティカンファレンス「CODE BLUE」が12月18日、19日と東京の御茶ノ水で開催された。2014年2月に第1回の開催を経て、今回2回目の開催。参加者の8割は日本人であるが、イスラエル、ベルギー、スウェーデン、ポルトガル、米国、ロシア、韓国、香港、台湾など世界各国から参加者が集まった。
CODE BLUEは、「世界トップクラスのサイバーセキュリティ専門家による研究成果を共有することで、最新のサイバーセキュリティ技術情報の交換と国際的交流、参加者への教育・学習・気付きの機会を提供する国際会議。企業向けに、国内・海外からの多様なサイバーセキュリティ専門家同士の交流を通して、共同研究・事業提携の促進、リクルーティングの機会提供、グローバルな視点を持った人材育成」を狙いとしている。
記者会見で発起人の篠田加奈氏は、「第1回のスピーカーがヘッドハンティングされたり、大きな講演会に呼ばれるようになったりしている」と、一定の成果を報告した。
世界各国から登壇者が集まる中で、サイバーセキュリティ先進国のイスラエルからは、初日キーノートに、イスラエルのケレン・エラザリ氏が登壇。セキュリティを考えるうえで「サイバー空間」について示唆に富む下記5つの視点を挙げた。
- サイバー空間とインターネットは同じではなく、サイバー空間の方が大きい。(多くの人は、同じだと考えている。)
- サイバー空間では、悪者は、創造的で、革新的で、協力しているという事実。(善者もそうならないと、太刀打ちできない。)
- サイバー空間では、世界をよくない方向へすることに多大なリソースが使われている。
- サイバー空間では、一番弱いところと同じくらい、私たちは弱い。(つまり、私が単体で強いことは、何の意味もない。)
- サイバー空間では、ギャップがある。専門家の人と一般の人のギャップを埋められない、それを理解すること。
著者自身が一番印象的だったことは、5のギャップである。
東京オリンピックが開催される2020年には、500億ものデバイスがインターネット環境に接続する。ただ、多くの人が、ハッカーやなどの専門家と同じ知識を、一般の人は持つことはできないだろう。エラザリ氏が指摘した通り、こうした「専門家」と「一般の人」のギャップは日々広がるばかりであり、このギャップをどう埋めていくかが、今後鍵となりそうである。2020年まで5年しかない。今後、CODE BLUEのような会議が果たしていく役割は大きいだろう。
午後には、チェックポイントのインバー・ラズ氏も「物理セキュリティ:サイバーセキュリティがすべてではない」のセッションで登場。OSが入っている機器で、USBポートが外部にあるデバイスがいかに危険なのかを、自身でATM、病院、空港のハッキングした手法を、ユーモアたっぷりで紹介した。もちろん、本稿では、セキュリティ上そうした手法はお伝えできない点は、ご容赦いただきたい。
筆者紹介──加藤スティーブ
イスラエルの尖った技術に着目して、2006年にイスラエル初訪問。2009年にISRATECHを設立し、毎月40~60社のスタートアップが生まれるイスラエル企業の情報を日本へ発信し続ける。2012年にはイスラエル国内にも拠点を設立。イスラエルのイノベーションを日本へ取り込むための活動に着手する。ダイヤモンドオンラインにて「サムスンは既に10年前に進出! 発明大国イスラエルの頭脳を生かせ」を連載。
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