2014年に非常に注目を集めたガジェットといえば、VRヘッドマウントディスプレーの「Oculus Rift」が挙げられる。11月29、30日、そのOculus Rift向けアプリを30時間で一気に作ってしまおうというハッカソン「第3回Oculus Game Jam in Japan」(OcuJam)が開催された。熱気にあふれていた2日間の様子をレポートしていこう。
全国4つの会場で同時開催!
ハッカソンとは、「ハック」と「マラソン」を合わせた造語で、プログラマーやデザイナー、プランナーなどの開発者がチームを組んで短期間でひとつのソフトウェアを作り上げるイベントだ。高いスキルのクリエイターの技を目の当たりにできたり、人脈が広がったり、何より文化祭的な雰囲気が楽しかったりと、日本でもここ1、2年ほどで注目を集めている。
そのOculus Rift版がOcuJamで、初代開発キット(DK1)がリリースされてから約半年後の2013年11月に第1回を実施した。日本におけるOculus Riftは、個人開発者や小規模グループが目を引くアプリをつくってブームを顕在化させてきただけあって、そうした才能同士をつなげてくれるOculus Game Jamは非常に意義のあるものだ。
今回は、東京目黒アマゾン、東京西新宿ニフティ、大阪メディオ、沖縄琉球大学という4会場にわかれて全国同時に開催した。おおまかな流れは、事前に「こんなのを作ってみたい」とアプリのアイデアを募集し、同じ会場でつくりたい企画が一致した人同士でチームを結成。詰めた企画のお披露目や、ソフトの中間発表というマイルストーンを経て、2日目の17時に開発を終了し、みんなの前でプレゼンして試遊し合う──という感じだった。
筆者は1日目の午前中と、2日目の夕方に東京の目黒アマゾン会場を訪れた。最初は気力に満ちてフレッシュだった会場が、2日目にはいい感じにどんよりした雰囲気に急変していて「すごい……ハッカソンっぽい!」と実感してしまった。しかし、プレゼンになると和やかなムードになり、ユニークなアイデアがあればあちこちから笑い声が上がる。試遊会では、目黒会場のみ一般参加者も招き入たこともあって、いつものOculus Rift体験会のような活況だった。
ゲームエンジンだけでなくクラウドサービスも活用
OcuJamでは、企業の協賛も目立った。Oculus Riftがここまでムーブメントになった背景には、「Unity」や「Unreal Engine」といったソフト開発エンジンの対応が大きく貢献している。これらのツールを使えば、なるべくコードを書かずに、既存のアセット(プログラムやモデル、モーション、音楽などのソフト資産)を組み合わせて調整することで、ソフトを生み出すことが可能だ。
いずれも業務用途にも使われているほど表現力が高いにもかかわらず、Unityはフリー版で、Unreal Engineは月額19ドルでOculus Riftコンテンツを作れる。VRという表現のフロンティアにもかかわらず、そうした制作環境にかけるもろもろのコストが下がったこともあって大勢のクリエイターが集まっているのだ。
OcuJamではUnityだけでなく、さらに一歩進んでニフティの「mobile backend」、国内ではGMOクラウドが代理店の「PhotonCloud」、Kiiの「Kii Cloud」といった、Unityと組み合わせて使えるクラウドサービスも紹介していた。
一番違いがわかりやすくかったのが、面白法人カヤックの原真人さんがメインで開発し、過去に何度か展示会で出展していた「Little Witch Pie Delivery」。西新宿ニフティ会場にあった新バージョンでは、mobile backendを利用して新たにランキング機能を実装していた。現地の試遊会では、ちょうどゲームセンターで上位を狙うように、高いスコアを出そうと何度かトライする人も出ていた。
VRコンテンツでは、ユーザーが「すごい!」と驚いて一度で終わってしまうものもあるが、クラウドサービスの併用で自分の腕が上がる楽しさを提案して、さらなるリピーターにつなげられそうだ。ちなみに筆者も試したら34位でした……。うん、次はがんばります。
(次ページでは、「出来上がったゲームを紹介!」)