先端科学ってなんだかよくわからないけど、かっこいいよね!
ASCII.jp編集部が「んもーテクノロジー的なことならなんでもいいんだゾ!」ということで、これからしばらく各ライターが好きにテクノロジーを語っていく。まず第1回目として、編集氏より「おまえ、加速器好きだから、好きに書け。次、好きなところ行っていいから」との打診があり、核融合炉実験施設とか地下500mへ行くチャンスということで、以下では先端科学のハードウエアのセクシーさについて紹介していこう。
まず日本は、多種のジャンルで先端科学を突き進んでいる。その一例として、2013年に話題となったヒッグス粒子を発見したCERNにも、筑波にある高エネルギー加速器研究機構(高エネ研、KEK)が協力しており、KEKではKEKBによる実験で、CP対称性の破れの研究を行ない、2008年に小林・益川博士がノーベル物理学賞を受賞している。素粒子物理学方面ではトップを走っているといってもいいだろう。
もちろん、素粒子物理学とはなにか、加速器で何をしているのかといった内容になると、とても難解になってしまう。ものすごく端的に説明すると、ビッグバン直後の状態を作って、物質の秘密を解き明かそうとしている。物質とは何なのか、力(重力など)とは何か、質量がなぜあるのか、そんな身近なことを探っているのだ。また加速器技術は医療方面では癌治療に取り入れられているし、放射光を利用した実験・分析を利用する企業も多い。
といっても、正直なところ、よくわからないという人も多いだろう。筆者もそうで、初めて加速器を見て、その説明を受けたとき、何がなにやらだった。それ以上に衝撃を受けたのは、機器のかっこよさだ。メカメカしく、そして、効率重視の設計から生まれる美しさ。でもその割りに泥くさい。
もうひとつ脳裏に浮かんだことは、『別に先端科学ってわからなくても、こういうビジュアルから入るのもいいんじゃないか』だった。
いきなり科学誌を読んでもわからないし、挫折して興味を無くすよりは「なんかかっこいい」レベルでも、多くの人が知っていることもアリだし、人がここまでのものを作れることのすごさを知っていることは、子供だけでなく、大人も知っていれば、何かと蔑ろな意見の多い先端科学への見方も変わるだろう。
「その研究が何の役に立つのか」。よくいわれることだが、素粒子である電子が発見されたときも、その言葉が飛んだが、電子の振るまいがわかっていなければ、IT機器は存在していないし、いまの文化形態もなかったことになる。20~30年先に役立つ研究をしているわけだ。またその過程で生じた研究結果が何かしらの開発に取り入られて、新しい技術が開発されたり、発見があったりといったメリットもある。
それ以降、頻繁に取材を行ない、書籍を作成したり、ASCII.jpで記事を書いたり、ふらっと応募したグローバル・フォトウォーク@KEKでKEK最優秀作品賞と研究者委員審査部門最優秀作品賞をいただいたりしている。
なお、素粒子物理学や宇宙については、ASCII.jpでもインタビューを行なった多田将博士の『すごい実験―高校生にもわかる素粒子物理の最前線』『すごい宇宙講義』がオススメ。Webで連載されている『カソクキッズ』も参考になるだろう。
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