今回のことば
「ゼロ・グラビティ(GRAVITY)は、NASAの人が見ても、実際に宇宙で撮影したような映像にしたかった」
(フレームストア・Steve Macpherson CTO)
キャストよりVFXスタッフが先に出る、異例のスタッフロール
ハリウッド映画「ゼロ・グラビティ」(原題・GRAVITY)は、日本では、2013年12月に公開され、大きな話題を集めた作品だ。第86回アカデミー賞では、監督賞、撮影賞、視覚効果賞などを受賞。主演のサンドラ・ブロックさんは主演女優賞にノミネートされた。
宇宙空間に投げ出された2人の宇宙飛行士の生還をテーマとしたこの映画は、約4年間に渡って、約400人が参加して制作。そして、宇宙空間が舞台となるため、全編の約8割にVFXが使用されているのが特徴だ。
最後に流されるスタッフロールで、キャストよりも、VFXのスタッフの名前が先に掲示されるという異例のものになっていることからも、この映画におけるVFX技術の重要性がわかるだろう。
「アルファンソ・キュアロン監督が強い情熱で取り組んだ映画。すべてのプロセスに監督が関わり、20人のアニメーターに対しても直接指揮をとった」というのは、この映画制作に、3DCGおよびVFXの制作に加わった英フレームストアでCTO(最高技術責任者)を務めるSteve Macpherson 氏。
撮影には技術面でのさまざまな工夫が
ゼロ・グラビティでは、宇宙空間の無重力状態を表現するために、人形、ロボットも多用。人間の撮影には、コンピュータ制御したカメラを使い、その映像にアニメとCGを組み合わせて、リアルな映像を実現した。
「脚本をみて、視覚効果を入れなくてはならないのはどこかということを抽出し、それが技術的に可能かどうかを検証するところから作業は始まった」と、Macpherson氏は制作当初の状況を振り返る。
バーチャルカメラによる撮影や、CGやアニメーションとの組み合わせ、全身を利用したモーションキャプチャーによる撮影、ワイヤーを使った俳優の撮影も行い、そこから、俳優の顔や体の一部分だけを抜き出して、宇宙飛行士の服や、地球や宇宙ステーションなどの背景のCGと組み合わせ、映像として完成させるという仕組みだ。
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