米国最大の音楽イベントSXSW2014が3月7日から開催されているが、米IBMは屋台バン「IBM Food Truck」を出店した。これはIBMリサーチが進める「コグニティブ・クッキング」の研究成果だ。
テキサス州オースティンで開かれるSXSW(South by Southwest)は本来は音楽イベントながら、映画関連やIT関係のコンベンション・カンファレンスのイベントにもなっており、さまざまな企業や起業家が集まる場となっている。
IBMリサーチはCognitive Computing(認識コンピューティング)と呼ばれる、人間の脳のように働くコンピュータの開発を行っており、その代表的な成功例が「ワトソン」。チェスの世界王者に勝利し、自然言語を理解してクイズ番組にも出場した人工知能システムだ。
「コグニティブ・クッキング(Cognitive Cooking)」は、さまざまな食品の味を組み合わせて新しい料理を開発する試み。現在でも食品と料理を科学する分子ガストロノミー(奇矯な料理が話題になるが本来は目新しさを追求するわけではなく、タンパク質の変性する温度から卵の茹で方を考えるような料理への科学的アプローチ)という料理のジャンルがあるが、その一環とも考えられる。
IBMリサーチはニューヨーク料理教育研究所(Institute of Culinary Education)の協力を受け、数万にもおよぶ食材の成分や味をデータベース化、このいわばビッグデータ解析をワトソンが行い、新しい味、新しい料理のレシピを生成する。このレシピに従ってプロのシェフが調理した料理を屋台バンで提供している。IBM Food TruckはSXSW2014だけでなく、さまざまな場所に出没して営業を行っているという。
食材や味を組み合わせて創りだされたまったく新しい料理というものは、思いつきや試行錯誤で作られては大抵の場合ひどいシロモノになってしまうものだが、ときおりたまには市場に受け入れられて定着する。期間限定で発売されるとんでもない味の奇抜なカップ麺やスナックもそのひとつと言えそうだが、Cognitive Cookingはそういったビジネスにもワトソンが利用できる可能性を示唆している。ともあれ、”コンピュータが考え出した料理”というだけでも実はすごいことではないだろうか。