先日ボーズの新製品発表会を見に行きました。私、メーカーの発表会には滅多に出ないのですが、やたら気合の入った招待状が届いたことと、この時期に気合の入った発表となれば、まあアレしかないだろう、だったらちょっと現物が見たいな、と考えたからです。
そこに出てきたのが「SoundTouch」と呼ばれる、Wi-Fiルーターに接続して使う製品群でした。ああ、やっぱり。
国内の数社からもネットワーク・オーディオの関連製品発表がアナウンスされております。先日発表されて話題となったバッファローのオーディオ向けNAS(ネットワーク・アタッチト・ストレージ)「DELA」ブランドの製品は、値段の高さと同時に「SSDの微細振動を吸収するフローティングドライブマウンター」「ハイレゾ仕様の高品質LANケーブル」といった仕掛けが盛り込まれておりまして、ハイエンドオーディオの世界を上げる気満々です。そうしたアイディアとTCP/IPで接続するネットワークストレージのデータ品質がどう関係するのかを想像するのは難しいですが、こういうものが好きな方は結構いらっしゃるでしょう。
兎にも角にも、ここから先、オーディオ関係の新製品はネットワークがらみのものが増えてくると思われます。そうした取材の現場でも、あるメーカーのトップから「ネットワーク・オーディオさえ軌道に乗っていれば、ホーム・オーディオはここまで落ちることはなかった。ここが正念場」という言葉を聞きました。
言い方を変えますと、ホーム・オーディオはそこまで危機的な状況なわけです。テレビのニュースでテレビが売れないという話題は流れているようですが、オーディオが売れないという現実はオーディオから流れてきませんので、参考資料をひとつ挙げておきましょう。
社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)の発表による「民生用電子機器国内出荷統計」によりますと、テレビなどの映像機器とカーAVC機器を除いた、音声機器の年間国内出荷実績は以下のようになります。
- 2000年 3786億円
- 2001年 3315億円
- 2002年 2818億円
- 2003年 2470億円
- ……(略)……
- 2013年 1017億円
これは据置型のアンプやスピーカーだけでなく、ポータブルオーディオシステムも含む金額です。マニア向けの市場は活況を呈しているように見えますので、うっかりすると見逃しがちですが、音楽が売れていないのだから一般にオーディオ機器が売れないのは当たり前ということです。
そこで現在の主たるオーディオソースである家庭用IT機器、すなわちスマホやタブレットをオーディオ機器と関連付け、底を打っているオーディオ機器の売上を何とかしようというのが、現在のネットワーク・オーディオ盛り上げ機運なのであります。