衛星軌道上で2000人規模ライブ!? 宇宙エレベーターはリニアモーター!?
とある魔術の禁書目録と宇宙エレベーターの熱い関係
2013年03月16日 11時00分更新
大ヒット上映中の「劇場版 とある魔術の禁書目録 ―エンデュミオンの奇蹟―」。前回に引き続き、映画の舞台となる宇宙エレベーター「エンデュミオン」の疑問質問を宇宙エレベーター協会の会長さんにぶつけてみたぞ。
会長さまに宇宙エレベーターについて、さらに質問ですの!
前回に引き続き、「劇場版 とある魔術の禁書目録 ―エンデュミオンの奇蹟―」の舞台となっている宇宙エレベーター「エンデュミオン」についての素朴な疑問を、劇中でのシーンともリンクさせつつ、一般社団法人宇宙エレベーター協会の大野修一会長に伺ってみた。最初は、クライマーを昇降させる動力源について。
エンデュミオンはリニアモーターで昇降するんですの?
大野 「前回解説したように、宇宙エレベーターは静止軌道上のステーションから垂れているテザーがそのままレールとしての役割を果たします。
リニアモーターの場合は、コイルもしくはリアクションプレートに相当するものが、レール上に敷設されている必要があります。それが何万km分ともなると、相当な重さになりますね。
たとえば、福岡市のリニア地下鉄のリアクションプレートは、クラッド鋼板で、1kmあたり約32トンだそうです。つまり、10万kmだと3200万t。さすがにテザーが切れてしまうのでは。
エンデュミオンで呼称されている“リニア”は我々の知るリニアモーターではなく、何かしらの愛称かもしれませんね。もしかすると“まっすぐ”という意味でリニアと呼ばれているとか」
―― エンデュミオンは施設のガラスに太陽光発電機能を備えているんですの。宇宙エレベーターも太陽光エネルギーで動くんですの?
大野 「太陽光発電パネル1枚あたりの発電量にもよりますが、俯瞰図を見る限り、施設自体の維持用では。軌道ステーション側まで給電しているとは思えないですね。軌道ステーション側は独立して太陽光発電だとか、もっと進んだ発電方法を採用しているはずです。マイクロウェーブなんてかっこいいものもありますし」
―― そういえば、会長さま。クライマー自体の動力はなんですの?
大野 「いまのところ、クライマーはテザーをローラーで挟んで登っていくと考えられているので、燃料方式やソーラー発電方式などが検討されています。あとは動画で採用したレーザー推進。地上側からレーザーで押し上げるという方法ですね。あとは赤外線レーザーで動力分のエネルギーを受けてモーターを回すというやり方も考えられています」
エンデュミオンから中継ステーションまで、約1日で到着
これは可能なんですの?
大野 「静止軌道上まで1日だと、単純に計算して平均時速1500kmで上昇することになります。現在、構想されている宇宙エレベーターの様々なプランは、時速200~300km。その5~7.5倍だと、コリオリの力の相殺が問題なりますね」
―― コリオリの力ってなんですの?
大野 「宇宙エレベーターの場合、上昇時は西に、下降時は東に向けた力が発生するんです。慣性力の一種なんですが……そうですね、ペットボトルを持って、その場で回転しながら腕を前出したり、胸元に戻したりすると体感できると思います。
これは速さに比例して力の働きが強くなるので、対策が必要ですよね。エンデュミオンは最低17基のクライマーがあるので、配車タイミングでコリオリの力を相殺しているかもしれませんが」
―― そのコリオリの力が相殺できれば1日でもいけるかも……?
大野 「そうですね。ただし、宇宙空間、無重力環境下に行くことになるため、ゆっくり上昇しながら重力下とは違う生活様式に慣れていってもらったほうが、安全性を確保できますね。
たとえば、水。顔に付着すると、したたり落ちないので、そのまま溺死とかありえます。壁に当たったら表面張力でバーっと広がっちゃうから、メンテナンスが大変。そして宇宙酔いもありますね。というわけで、5日くらいかけて宇宙に行ったほうが安全です」
―― ところで、時速200~300kmのクライマーがいまの限界なんですの?
大野 「NASAのプランには時速300kmと記されていたので、それを書いたエドワード博士に聞いてみたんですよ。なぜ時速300kmなのかと。
どうも特に考えていなくて、『毎日走るもので一番速いのは新幹線だよね、だから300kmなんだよ』と言われまして(笑)。先ほど述べたように、時速1500km/24hというのは、乗り物としてはどうなんだろうと思うのですが……これも学園都市の技術で解決してるのかもしれません」
―― クライマーはどんな形なんですの?
大野 「まだ決まっていませんね。意見を募集しているような状況です。たとえば、私が描いたものは上から見ると“C”の形をしています。テザーをわざわざ切るわけにもいかないので、はめやすい形を考えた結果です。
現在の技術競技会では、テザーをローラーで挟む方法が一般的ですが、そのうちまったく違うやり方が生まれるかもしれません」
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