11月19日、KDDIおよびNECは千葉県千倉において、海底ケーブル「SJC(Southeast Asia-Japan Cable)ケーブル」の陸揚げ作業を報道陣に公開した。現地で行なわれた発表会では、KDDIが今回のSJCケーブルの事業について、NECが海底ケーブル事業について説明した。
日本酒で始まり、シャンパンで締める?
SJCケーブルは、シンガポールと千葉県の千倉を直接結ぶ長距離海底ケーブルで、中国、香港、フィリピン、ブルネイなどの支線を合わせると総延長9000kmにおよぶ。2013年中旬を目指して敷設が進められており、今回は千葉県千倉での陸揚げ作業が報道陣に公開された。
陸揚げが行なわれた千葉県の千倉は房総半島最南端の南房総市に属しており、九十九里の波が高いことからサーフィンのメッカとして知られている。KDDIは、ここに陸揚げされた海底ケーブルを収容する局舎(千倉海底線中継所)を持っており、今回の海底ケーブルもこの千倉局舎に引き込まれる。
さて、まずは作業概要を説明しておく。KDDI千倉局舎の約1km沖には、北九州で海底ケーブルを積み込んだ国際ケーブル・シップ(KCS)のケーブル敷設船「KDDI PACIFIC LINK」が停泊している。このケーブルを海岸から陸揚げし、局舎に引き込むという作業だ。サーファーのメッカということで、当日は波も高く、風はそれなりに強かったが、天候は問題ないようだ。7時前からケーブルの先端をくくりつけたワイヤーを地上で巻き取っていく作業がスタートする。
敷設船からはケーブルが送出され、地上ではケーブルの先端をつないだワイヤーが引っ張られていく。地上と敷設船の担当者間では常時トランシーバーで会話しながら、テンションを調整しているようで、ケーブルに取り付けられた黄色いブイがどんどん海岸に近づいてくる。そして、間の作業の様子は、水上バイクが常時監視しているようだ。それにしても、外洋から直接吹き付ける風はかなり冷たい。
無事、ケーブルの先端が陸揚げされると、思いのほか細いのに驚く。寿司屋で太巻きを頼んだら、細巻きが出てきたような感じだろうか。海底ケーブルといえば、それこそ何本ものケーブルが束ねられた、ぶっといケーブルが陸揚げされるようなイメージがあるが、実際は6ペア12心の光ファイバーケーブルがシールドされて収容されているだけ。それでも、初期状態で16Tbpsという大容量伝送を実現するという。光波長多重技術、恐るべしである。
陸揚げされたケーブルの先端には、今度はシャンパンがかけられる。このシャンパンはケーブル敷設船からいっしょに送られたもので、浮き輪の中に入っていたものだ。ちょっと粋なはからいといえる。
なお、海上のケーブルはブイを外して沈めた上、漁業などに影響が出ないよう、海岸の1.5km沖合までは地底に埋められるとのこと。一方、今回のケーブル敷設船は40km沖合にまでケーブルを伸ばし、プロジェクトを担う別事業者(TE SubCom)に引き渡されるという。
スムースな作業工程に感心することしきり
陸揚げされたケーブルは、その後海岸沿いの道路の下の管路をくぐり、そのままKDDI千倉局舎まで牽引され、マージンをとって局舎背後からいったん半回転。局舎前面の地下からケーブルピットを経由し、ネットワーク機器の並ぶ部屋まで引き込まれる。なお、千倉局舎も東京電力から2系統の給電を受けるほか、停電などを想定し、56時間もつガスタービン式の発電機を備える信頼性の高い作りとなっている。
見学してまず驚いたのは、事前に作業がきちんと分担されているからか、作業が時間通りにきちんと完了することだ。ブイが到着すれば、そそと作業員が片付けに現われ、ケーブルの先端が現れれば、作業員が整列して、余ったケーブルを巻き取っていく。多くの業者が関わっているにもかかわらず、現場監督が怒鳴るわけでもなく、淡々と作業が進んでいくのだ。前回のUNITYも同じような進行だったようなので、かなり場慣れしているのだろう。
もう1つ面白かったのが、思いの外、人海戦術なことだ。現場で働いていた機械は、おそらくケーブルを巻き取るウィンチくらいしかなく、あとは作業員がケーブルを引き回している。作業の省力化などはあるものの、基本的な作業のやり方に関しては、昔から意外に変わってないだろうと推察される。
(次ページ、アジアのトラフィック増に応えるSJCケーブル)