ご好評いただいたCPU黒歴史も、インテルとAMDのネタが尽きてきた。もともとx86は、ほかのアーキテクチャーに比べてそれほど製品数が多くない。また、RiSE Technologiesの「mP6」のように、会社ごと黒歴史化しそうだったのにSiSに買収されて、今では台湾DM&P社としてといまだに残っているコアもある。RiSE社自身はともかく、mP6コアを黒歴史入りさせるのは、まだ時期尚早だろう。
お詫びと訂正:掲載当初、m6Pと記載していましたが、正しくはmP6でした。ここに訂正するとともに、お詫びいたします。(2011年11月24日)
そこで今回は黒歴史というよりも、「世に出なかったCPU」をまとめて解説しよう。
UMC U5S
“黒”歴史という意味では、燦然と輝く真っ黒CPUのNo.1が台湾UMCの「U5S」シリーズだ。連載65回の冒頭でも触れたが、インテルの「Intel 486」をデッドコピーして、しかもU5Sという「あたかもP5グレード用」を思わせる型番を付けて販売した。実際、日本でも販売されているのを見たことがある。
ちなみに、省電力性が高いように“見せかけた”「GREEN CPU」なるロゴをつけたり、Windows 3.1が動作することを示すために「Microsoft Windows Compatible」ロゴを付けたりと、いろいろ芸は細かかった(マイクロソフトが本当にこのCPUにロゴ認証を出したのかは定かでない)。Intel 486のデッドコピーだからもちろんWindowsは動くだろうが、省電力に関してはそうした仕組みやプロセスの工夫などは皆無であった。
動作周波数は25~40MHzまで。ほかにIntel 486SX相当にした「U5SX」という製品もあった。さらにDX2/DX4相当品も製造する予定があったようだが、その前にインテルに訴えられて、まずU5S/U5SXシリーズの米国での販売が不可能となった。これに続いて全世界での販売を差し止める訴訟が始まる前に両社は和解し、このシリーズは生産中止になった。明らかに非合法なので、当然とは言える。
この連載の記事
-
第807回
PC
Core Ultra 200H/U/Sをあえて組み込み向けに投入するのはあの強敵に対抗するため インテル CPUロードマップ -
第806回
PC
トランジスタ最先端! RibbonFETに最適なゲート長とフィン厚が判明 IEDM 2024レポート -
第805回
PC
1万5000以上のチップレットを数分で構築する新技法SLTは従来比で100倍以上早い! IEDM 2024レポート -
第804回
PC
AI向けシステムの課題は電力とメモリーの膨大な消費量 IEDM 2024レポート -
第803回
PC
トランジスタの当面の目標は電圧を0.3V未満に抑えつつ動作効率を5倍以上に引き上げること IEDM 2024レポート -
第802回
PC
16年間に渡り不可欠な存在であったISA Bus 消え去ったI/F史 -
第801回
PC
光インターコネクトで信号伝送の高速化を狙うインテル Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第800回
PC
プロセッサーから直接イーサネット信号を出せるBroadcomのCPO Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第799回
PC
世界最速に躍り出たスパコンEl Capitanはどうやって性能を改善したのか? 周波数は変えずにあるものを落とす -
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ