「悪人」が輝いたっていいじゃないか
日本人は「敗北」に感動する 高校野球アニメ「おお振り」の意図 【後編】
2010年11月20日 12時00分更新
(c) ひぐちアサ・講談社/おお振り製作委員会
野球アニメで、あえて敗北にフォーカスする。みんなが共感できるのは、「痛み」だから。
記事前編でそんなこだわりを語った水島努監督が、特に苦心したのは「悪役」だった。監督曰く、「悪人が輝いたっていいじゃないか」。
どういうことなのか聞いていくと、そこには若者の輝きに向けた、大人からのまなざしがあった。悪役・呂佳を通して、テンプレートにはまらない、新しい野球アニメの魅力を探っていく。
おおきく振りかぶって~夏の大会編~
今年から硬式で新設された県立西浦高校野球部。気弱だがコントロールは抜群なピッチャー・三橋を擁する西浦高校は、全国高校野球選手権埼玉大会を、3回戦の崎玉高校、4回戦の港南高校と順調に勝ち進んでいった。いよいよ5回戦、美丞大狭山と対戦する西浦だが、スタンドには、美丞大狭山高校野球部のコーチ・呂佳の姿が。自分たちのプレーは呂佳たちによって研究されており、苦戦を強いられる。オフィシャルサイトはこちら。
監督・水島努氏について
1965年生まれ。長野県出身。演出家。主な監督作品に、「ジャングルはいつもハレのちグゥ」「xxxHOLiC」「侵略!イカ娘」「おおきく振りかぶって」(ファーストシーズン)など。
「悪役」呂佳をクローズアップした理由
―― 「おおきく振りかぶって~夏の大会編~」では、「負けた瞬間」に重点を置いて描いたというお話でしたが、西浦の対戦相手、美丞大狭山高校のコーチ・呂佳の描写もインパクトがありましたね。第1話のシーン冒頭、「おお振り」らしいさわやかな始まりを予想したところに、呂佳が「いよう、負け犬」と、西浦に負けた桐青野球部の弟・利央に絡むところから始まるという。
水島 そうですね。第2シリーズで初めて「悪役」が出たという感じですよね。
―― 悪役、ですか。呂佳のシーンから始めたのはなぜですか。
勝つために手段は選ばない 呂佳
仲沢呂佳は、美丞大1年で桐青高校野球部のOB。名門・桐青高校野球部でレギュラーになるが、3年生の夏の大会では初戦敗退。そのときの嫌な記憶から、自身は野球を続けずに、桐青中学時代の同級生・滝井が監督をする美丞大狭山高校野球部でコーチを務めている。勝つためには手段を選ばないところがあり、3年生の倉田を正捕手に推薦する代わりに、自分の言うことを聞かせ、ラフプレーを強要する。
(c) ひぐちアサ・講談社/おお振り製作委員会
水島 好きだからですね、呂佳が。桐青高校時代、自分たちが3年の代に初戦負けして、しかもそれが自分のサヨナラエラーだったりして、それでいろいろと思うところがあって、結果として悪いやつになっちゃって――何かその気持ちが分かるんです。キャラクターとして人気が出るタイプではないかもしれないですけどね。DVDに入れる未放映分として、「第12.5話」を作っているんですが、そこでも呂佳のエピソードを、けっこう大きめに描いています。
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