「KORG iELECTRIBE」は1999年発売の電子楽器、コルグ「ELECTRIBE・R」の操作感とサウンドを再現したiPadアプリだ。
リアルタイムシンセシスの分厚い音、ライブ演奏を考慮した操作の楽しさなど、さすがにメーカー自ら開発したソフトだけあって、楽器アプリの中でも完成度は最高だ。iPadで銘機がまさに「復活」したわけである。しかもそのお値段、なんと1200円!※
※ 2010年6月30日までの限定価格。それ以降は2300円。それでも十分安い
それにしても、このところコルグはかっ飛んだ製品を立て続けにリリースしている。「KAOSSILATOR PRO」をはじめ、iPhoneサイズの超小型アナログシンセ「monotron」、そして生産終了かと思われたELECTRIBE・MX/SXも、SDカードに対応して復活した。そのダメ押しとも言えるのが今回の「iELECTRIBE」だったのだ。
そこで我々はメーカー自らアプリを開発した経緯と、何より動作している現物を確認するため、コルグ本社へ足を運んだ。iELECTRIBEを企画した佐藤隆弘氏と開発マネージャーの福田大徳氏、インターフェイス設計の井上和士氏とサウンドデザインの大田祐樹氏、そしてオリジナル「ELECTRIBE」の開発を担当した金森与明さんの5名にご登場願った。
また今回はYouTubeで「ELECTRIBE」と検索するとまっさきに出てくる「Denkitribe」さんこと高橋啓治郎さんもお招きし、演奏者としての立場でコメントをいただいた。なお高橋さんは、今回iELECTRIBEのプリセットパターンを担当している。
ずっとELECTRIBEがやりたかった
―― コルグからiPadアプリが出たということに驚きました。楽器メーカーとしては初のリリースで、社内の合意形成に苦労されませんでしたか?
福田 そこは「KORG DS-10」※の成功が大きかったと思いますね。
佐藤 コルグの製品は、まずユニークであることが重要なんです。それと、この開発チームはいつも新しいことをやっていて、PC用の「KORG Legacy Collection」※に始まり、私と井上は「KORG DS-10」を作りました。いつも楽器として使える面白いディバイスを探していて、そこにiPadがハマった感じですね。
※ KORG DS-10 : ニンテンドーDS上にKORG MS-10をコンセプトとしたアナログシンセを再現したパッケージ
※ KORG Legacy Collection : MS-20、Polysix、Mono/Poly、M1、Wavestationなど往年のシンセを、PC上のソフトウェアとして再現
―― 開発のアイデア自体は、かなり前からあったと言うことですね。
佐藤 iPadの存在が噂になり始めたころから「面白そうだなあ、やりたいね」という話はしていました。それ以前から、ずっとELECTRIBEがやりたかったんですよ。
―― 最初のリリースが「ELECTRIBE・R」(1999年発売)を再現したものなんですが、この機種になった理由は?
福田 リズムマシーンと言うことで、音程を気にせずに誰でも使えるところですね。メロディーが入ると音楽的な知識が必要ですが、リズムなら誰でも楽しめますから。
高橋 僕はELECTRIBEの中では「R」が一番好きだったので、RでiELECTRIBEを作ると聞いて、すごく嬉しかったです。
―― オリジナルの開発者でもある金森さんは、こっちにも関わられてるんですか?
金森 僕はチェックを少しやったくらいで、僕の知らないところで知らない間に出来上がっていた感じですね。びっくりしました。でも他のメーカーに真似されるより、自分の会社の開発チームにやられた方が気分はいいですね。
―― 僕は実機を触った経験がないので分からないのですが、iELECTRIBEの音色には満足してますか?
金森 バッチリだと思います。気がついたときにはもう音が鳴っていて、本物と同じパターンが鳴っていたので「ああやられた」って言うか。
大田 iPad自身の出音もいいと思いますし、低音の厚みも出ていると思いますよ。